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107、保育士、再スタート
しおりを挟む「月白楓花です。よろしくお願いします」
月曜日。
昨日金森先生から勤務表を送られた楓花は、翌日から早速出勤させてもらうことに決めた。
出勤する日をドキドキしながら待っているよりも、昨日久しぶりに感じたワクワク感や前向きな気持ちが消えないうちに現場に飛び込んでしまった方が、なんとなく上手くいきそうな気がしたから。
「飯島恵子です。金森先生と同じ62歳のおばあちゃん。若い人が来てくれて嬉しいわ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「上村マキ、48歳の主婦です。ここから徒歩5分の家に住んでいて、『かぜはな』にもたまに行ってるのよ」
「あっ、覚えています!先週もう1人の御婦人と2人でいらしてくれましたよね」
「ああ、あれ、旦那の母親。一緒に住んでるのよ」
飯島先生については昨日金森先生から話を聞いているので知っている。元病棟主任で金森先生のお友達だ。
マキ先生は3年前まで東京に住んでいたのだけれど、御主人のお父様が亡くなったのをきっかけに御主人の実家である名古屋でお姑さんと同居を始めたのだそうだ。
息子さんは東京の大学に通っているという。
「こっちで何かお仕事をしたいな……って思ってたら、義母を連れて病院に行った時に求人の張り紙を見つけてすぐに申し込んだの。東京ではモール内の託児スペースでバイトしてたから慣れてたし」
保育士に元看護師に託児所経験アリの主婦。少数精鋭という感じで頼もしい。
それにみんな気さくで、楓花を温かく迎えようという空気が感じられて嬉しかった。
楓花が天馬の彼女だというのは金森先生以外には伏せてある。いきなり気を遣わせたくなかったし、楓花に抜けている部分があったら気兼ねなく注意してもらいたいと思ったから。
ーーずっと内緒にするわけにはいかないだろうけど、慣れるまでは新人としてビシバシ鍛えてもらおう。
今日預かっている子供は4名。
外来看護師の子供が2名に病棟看護師の子供が2名。
本日の担当は金森先生とマキ先生で、そこに楓花が補助として入ることになっているのだけれど、飯島先生も「暇だからお手伝いしていくわ」と、そのまま残ることになって、結局4人で子供のお世話をすることになった。
ーー本当にアットホームで自由だ……。
「預かっている人数が少ない分それぞれのキャラクターをしっかり把握できるし、親からの希望にも応えやすいのよ」
金森先生のお話に相槌を打ちながら、手元の連絡帳にメッセージを書き込んでいく。
子供のお昼寝の時間に4人で丸テーブルを囲んで雑談中だ。
今日のお昼までで気付いたこと。
ここは病院の中の託児室と言いながらも、幼稚園並みにしっかりしたスケジュールが組まれていて、きめ細やかなお世話がされている。
絵本の読み聞かせにお絵かきの時間、お弁当の時間にオヤツに昼寝に手遊び歌。
年齢に応じて名前を書く練習や平仮名の練習もさせている。
「大変そうですけど、やり甲斐もありますね」
楓花の言葉にマキ先生も「そうなのよ」と同意する。
「私も最初は前にバイトしてた託児スペースのノリで来たから驚いたんだけどね、ただ勝手に遊ばせて怪我のないよう見張ってるだけじゃなくて、『子育てのお手伝いをさせてもらっている』って思うと身が引き締まるわよね」
「『子育てのお手伝いをさせてもらっている』……素敵な言葉ですね」
楓花がそう言うと、マキ先生が「天馬先生の方針なのよ」と答えたものだから、「えっ!」とペンを持つ手が止まる。
「最初にここで採用が決まった時に、天馬先生に言われたの。『僕は未婚で子育ての経験がありませんから、名ばかりの責任者です。ですが、大事な職員の大事なお子さんを預からせていただいている。子育てのお手伝いをさせてもらっていると思って真面目に取り組んでいます。あなたにも同じ気持ちで子供たちと向き合っていただけたら嬉しいです』って」
続いて「天馬先生って渋くて素敵よね~。アレで独身なんて絶対にモテるわ。ナースが放っておかないだろうね」なんて言うものだから、金森先生と目を合わせて苦笑するしかない。
ーーどうしよう、やっぱり天馬とのことを話したほうがいいのかな。
その時ドアがガラリと開いて、噂の人物がひょっこりと顔を覗かせた。
ーーああっ!
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