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17、お前からキスしろよ
しおりを挟むずっと……好きだった?!
「う…… そ……だって、そんな…… 」
ーーだって、天にいは女の子にモテてて、彼女だっていて、私はいつだって弟分の颯太で……。
「そんな素振りは無かったってか? 当然だ。見せないように、悟られないように、必死で気持ちを抑え込んでたからな」
天馬が長い睫毛を伏せると、整った顔に憂いが加わって、なおさら美しく見えた。
「いつの間に好きになっちゃったんだろうな……いや、ずっとお前のことを可愛いヤツだって、そばに置いておきたいとは思ってたよ。だけどそれは弟分としての感情だったはずで…… 」
ーーうん、私だってそう思ってた。天にいにとって私は弟分の颯太でしかないんだって。
「でも、そう思う時点でもう特別だったんだよな……近くにい過ぎて分からなかったけど」
天馬は口元を歪めて、 自虐的な顔をした。
「あのさ……颯太、ドン引きするなよ?」
「えっ、ドン引き? それは事と次第による」
「そんじゃ言わない」
「嘘ウソウソ! ドン引きしないよ! 絶対しないから言って! お願い、この通り!」
楓花が顔の前で手のひらを合わせて拝むと、天馬がニヤリと口角を上げて、楓花が既に見慣れたあの悪魔のような微笑みを浮かべた。
「……キスしろよ」
「えっ?」
「お前からキスしたら話してやる」
「え~っ、自分から話を振ったくせに!」
「聞きたくないの? 俺が楓花にムラムラって来た話」
「ムラムラっ?!」
そんなのめちゃくちゃ聞きたいに決まってる。いや、ムラムラだから聞きたいっていう訳じゃなくて、どこにどのようにムラムラしたのか単純に興味が……
ーーって、私は欲求不満か!
「今更何を照れてるんだよ。あの日は自分から積極的にキスしてきたくせに」
「あれは!……もう会わないと思ってたから……」
ゴニョゴニョ言っていたら、
「しょうがないな。今日は特別サービスな」
「えっ、サービ……んっ!」
不意に頬に手を添えられ口づけられた。すぐに離れるだろうと思っていたそれは、予想に反して磁石のようにくっついたままで、すぐに唇を割り舌を差し入れてきた。
「はぁっ……ふっ……ん…」
甘いキスだ……と思った。
こっちに帰って来てから既に何度もキスをされたけれど、これは今までのとは違って優しくて丁寧だ。丁寧で甘い。
口蓋を舌先でチロチロとくすぐったかと思うと、次はレロッと舐め回す。ぬるりとした舌遣いで口内を愛撫されて、唾液まで甘い蜜に変わったようだった。
最後にチュッと下唇を啄んでからゆっくりと唇が離れていくと、名残惜しくて思わず「あっ……」と声が出た。
ーー凄い……気持ちの繋がったキスは、こんなにも蕩けそうになるんだ……。
楓花の気持ちを見透かすように、天馬は目を細めてフワリと柔らかく微笑む。
身体を起こしてベッドのヘッドボードに枕を立てかけクッションにすると、そこに背を預けて座り、楓花を呼び寄せる。
「こっちに来て、ここに座って」
自分の膝の間に楓花を座らせ後ろから抱き締めると、うなじに唇をあて、満足げに鼻を擦り付けた。
「いいか、マジでドン引きするなよ……」
耳許で囁かれて、楓花はコクリと頷いた。今度は茶化すことなく耳を澄ませる。
「俺さ……実は楓花を女として意識した瞬間をハッキリ覚えてるんだよな……」
「えっ、本当?」
振り返ろうとしたら、
「恥ずかしい話をするからこっち見んな」
と顔をグイッと前に向けられた。
「高校の卒業式の日、校庭」
「えっ、誰の?」
「俺の」
「ああ……」
覚えている。11歳の私が精一杯のお洒落をした挙句、結局自分は弟分の颯太だと思い知っただけの日。
7歳の歳の差を見せつけられたようで随分落ち込んだっけ……。
「あの時のお前がとても綺麗で……」
「えっ?」
「膝小僧を見てムラッときた」
ーーええっ?!
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