【R-18】キスからはじまるエトセトラ【完結】

田沢みん

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6、俺と付き合えよ

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 生まれて初めて舐められたソコは、意思に反してキュッと締まって、そして奥から何かが湧き出すようなゾクゾクした快感をもたらした。

ーー凄い……こんなに気持ちいいものなの?

 もっと……もっと舐められたい。もっとこの先に進んで気持ち良くなって、さっきから身体の奥で疼いている何かを爆発させてしまいたい。

 ともすればそちら側に引き摺られそうになる気持ちを必死で引き戻して、楓花はどうにか理性を保った。

ーーそれでもやっぱり嫌だ、こんな風に無理矢理だなんて……。

「ヤダっ! やめてってば! …… 痛っ! 」

 身体を捻って抵抗していたら、お臍の辺りに鋭い痛みが走った。

「痛……っ…」
「颯太!」

 顔色を変えた天馬が身体を起こし、楓花の傷口周囲を触診してから、ベッドを下りた。
 ゆらりと立ち上がり、愕然とした表情で見下ろしている。

「ごめん…… 俺は…… 」
「こんなの……もう嫌だ……」

 楓花が涙ぐみながらキッと天馬を睨みつける。

「天にい、酷いよ!今日はずっと天にいらしくない!どうしてこんな事をするの?!」
「なんでって、俺は……」

「好きでもないのにキスするな!こんな簡単に身体に触るな!」
「そんなの、お前の方が……」

 楓花の言葉に、天馬は小声で呟いてから、口角を意地悪く吊り上げて言い放つ。

「……お前こそ、 初めてでもないくせに何を勿体ぶってんの?」

ーーえっ?!

「そんな…… 酷いよ……」

 初めてなのに。キスだって身体を見せたのだって天にいだけなのに……。
 お腹の痛みよりも胸の痛みの方が何倍も辛い。
 やっぱり帰ってきちゃ駄目だったんだ。こんな気持ちのまま天にいに会っちゃいけなかったんだ……。

 頬がピクピクと震えたと思ったら、みるみるうちに視界が滲み、頬を涙が伝って行く。
 一度決壊した感情はもうどうしようもなくて、しまいには両手で顔を覆って「わーん!」と子供のように泣きじゃくっていた。

「ごめん……颯太、悪かったよ」

 天馬は困った顔をしながら頭をポリポリと掻くと、ベッドに腰を下ろして楓花に手を伸ばし……直前で引っ込めた。

「本当にごめん、俺が悪かった。泣き止めよ。俺は昔から颯太の涙に弱いんだ」
「ふっ……颯太って…懐かしい」

 それは天馬だけが使う楓花の呼び名。最初からこうやって名前を呼んでくれたら良かったのに。昔みたいに弟分扱いしてくれていれば、気持ちを押し殺して普通に接していられたのに……。

 再び切なさが込み上げてはらりと涙の粒を零すと、天馬がはだけたままになっていた楓花の病衣を前で合わせ、紐を結んで整えてくれた。
 ポンポンと優しく楓花の頭を撫で、切なげに眉尻を下げる。

「颯太……お前、 今、 彼氏いるの? 」

 楓花は頭に置かれた天馬の手をバッと振り払う。

「そんなのいないよ! 」

 どうして好きな人にそんな事を聞かれなきゃいけないんだろう。ずっと天にい一筋で誰とも付き合ったことなんて無いのに……。

 だけど、次に頭上から降ってきたのは予期せぬ言葉だった。


「それじゃあ……さ、俺と付き合えよ」
「えっ?! 」

 天馬はベッドから立ち上がると、笑顔で当然のように言い放った。

「とりあえず退院祝いだな。お前、明日の午前中で退院な。夕方になったら迎えにいくから、家で大人しく待ってろ」

ーーええっ?

「えっ、退院?!付き合うって、どういう意味…… 」

 天馬はそれには答えず、黙って楓花の病衣の襟元を整えると、もう一度ポンポンと頭を撫でて去っていった。

ーーどういう事?!




 翌朝。
 赤い軽自動車が病院の正面玄関に横付けされると、中から降りてきた茜が天馬の手からボストンバッグを受け取った。

「荷物はこれだけだったわよね。楓花ちゃん、忘れ物は無い?」
「うん大丈夫、ありがとう」

 楓花は天馬に支えられて車椅子から立ち上がると、白衣姿の彼を改めて見上げ、ぺこりとお辞儀をする。

「あの…… お世話になりました」

ーーお世話になったというか、襲われたというか……。

 昨夜のことを思い出すと気まずくて、フイッと目線を逸らしてしまう。

 天馬は助手席のドアを開けてから、トランクに荷物を入れている茜をチラリと盗み見て、それから楓花の耳元に顔を寄せて……

「今日の午後6時に迎えに行く。俺とのこと……考えとけよ」

 早口で囁くように言われて目を見開く。

「えっ、天にい?」

 だけど天馬はそれ以上何も語らず、楓花の背中を押して助手席に押し込めた。
 助手席から驚いた表情で見上げる楓花にフワッと柔らかく微笑んで、バン!と車のドアを閉める。

「さあ、それじゃあ目の前の家へと帰りますか……って、楓花ちゃん、顔が真っ赤よ。熱がある?! 」

 茜が運転席に座り、車のエンジンをかけたところで、助手席に顔を向けて目を丸くした。
 そこには全身の血液を顔に集めて、ガチガチの体勢で正面を見て固まっている楓花。

ーー考えとけよ……って、俺のこと……って……。

『俺と付き合えよ』っていうのは、食事に付き合うとかじゃなくって?! 


「えええっ?!」

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