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<< ボストン旅行記 >>
2、桜子
しおりを挟む「ボストン……ですか?」
「そう、ボストンだ」
ベッドで快感の余韻に浸り、彼の腕の中で微睡んでいたら、冬馬さんが意外なことを言い出した。
ボストンへの新婚旅行……。
いや、意外では無かったかも知れない。
彼は以前から新婚旅行に行きたいと言っていたし、その前には結婚式も挙げたいと言っていたのだから。
それをことごとく拒否したのは私。
『ちゃんと結婚式を挙げよう』
『桜子の花嫁姿を見たいんだ』
『休みを取って新婚旅行に行こう』
だってそれは多分、冬馬さんの優しさ。
私は知っている。兄が病気になってからというもの、冬馬さんは休む間もなく働いて来た。
私が何も知らずボストンで勉強だけしていた間にも、彼は兄を支え、事務所を支え、孤軍奮闘していた。
そのうえ兄が亡くなってからは私を献身的に支えてくれて……。
彼がいなかったら私は孤独で押し潰されていただろうし、こんな風に穏やかな気持ちではいられなかっただろう。
私と兄のために自分の時間も仕事も犠牲にして来た冬馬さんにこれ以上の負担をかけたくないし、今は自分のことと仕事に集中して欲しいと思う。
彼に無理はさせたくないし、今度は出来る限り私が支えたいと思っているから……。
「冬馬さん、私はもう十分幸せですよ。花嫁姿で冬馬さんの隣に並んで記念写真も撮れたし、こうして毎日一緒にいられるだけで本当に……あっ……ん……っ」
言い終わる前に上から覆い被さられ、唇を塞がれた。まるで怒っているかのような激しい口づけ。痛いほど強く唇を押し付けて、舌で口内を掻き混ぜられる。
「………痛っ!」
唇が離れたと思ったら、首筋を強く吸い上げられた。短い痛みの後に、コツンと額が合わさり、至近距離から見つめられる。
「桜子……君はまだ分かってない」
「えっ?」
「新婚旅行の提案が、君を喜ばせるためだけって思ってるの?」
「それは……んっ!」
冬馬さんの右手が、まだ汗ばんでいる私の肌をスルリと滑り、胸を鷲掴む。
大きな手のひらで胸を持ち上げやわやわと捏ね回しながら、時々先端の突起をピンと弾く。
「んっ……」
思わず甘えたような声を上げると、痼ってきたところを指で摘んでクニクニと弄られる。
「……気持ちいい?」
「はい……あ…っ……」
「これは?」
今度はピンクの先端を舌でレロレロと転がしながら、手のひらは腰のラインを辿って下に向かって行く。繁みをサワサワと優しく撫でてから太腿の間にスッと割り入った。
「んっ……ああっ……い…い……です」
割れ目にそっと触れると、冬馬さんは少し意地悪い笑みを浮かべて「濡れっぱなしだな」と呟いた。
胸の膨らみを口に含みながらフッと笑われると、吐息がかかって先端が勃ち上がるのが自分でも分かる。
実際、彼が言う通りなんだろう。少し前に彼のモノで激しくイかされたソコはまだ充分に潤っていて、今また新たな液を溢れさせているのだから。
冬馬さんの太くて長い2本の指が難なく奥へと呑み込まれて行くと、既に知り尽くした『イイところ』を指の腹で擦り始める。
「ん……っ!あっ…ああっ、イヤっ!」
「桜子……ココをこうされるの……好きだろ?」
「やだっ……そんなこと……あっ、イイっ!ああっ!」
抽送を速められ、ビクンビクンと腰を跳ねさせながら、鼻にかかった声を上げてしまう。
「桜子……俺は、こうして君の身体に触れられるのが嬉しいし……俺の動き一つ一つに君が感じてくれるのも、嬉しいんだ……」
いつの間にか冬馬さんは上半身を起こし、私の片脚を肩に担ぎ上げて、局部に快感を与えることに集中していた。
ジュポジュポと水っぽい音を立てながら、3本に増やされた指が隘路を往復しては、膣壁を刺激する。ゾクゾクとした快感が奥から迫り上がって来る。
「あっ……冬馬さん…もう……もうっ……」
「イかせてあげるから……ちゃんと名前を呼んで……」
「んっ……はぁ…っ……と…冬馬……冬馬…っ!」
「おりこうだ……もうイっていいよ」
ナカを激しく擦られながら、もう片方の指先で蕾をフニフニと揺らされた。
首を左右に振ってどうにか快感を逃がそうとするけれど、甘い痺れに追い詰められていくばかり。
「イヤぁ!もう……っ!」
最後に爪の先で剥き出しのソコをカリッと引っ掻かれると、目の前で光が弾け、大きく背中をのけぞらせて絶頂を迎えた。
「桜子……俺は今、とても嬉しいよ」
「……え?」
まだ下半身をビクンビクンと震わせながら快感の余韻に浸っていると、冬馬さんがさっきまでと同じ姿勢のまま、脚の間からジッと私を見つめてきた。
「さっきも言ったけど、桜子に触れて、こうしてイク瞬間を見届けられるのが嬉しいんだ。これは桜子を喜ばせるためだけじゃなく、俺の喜びなんだ……分かる?」
「……はい」
「花嫁衣装を着た桜子を見たいのも、その姿を写真に残しておきたいのも、俺の希望で俺の喜び。同じように……新婚旅行だって、俺が行きたいんだ」
「だって冬馬さんは仕事が忙しくて疲れているのに……」
そう言うと冬馬さんは私の両膝をグイッと開いて、ソコに顔を寄せて行く。
「桜子は賢い子なのに鈍感なんだな」
「冬馬さん……?」
「冬馬……だ。忙しかろうが疲れていようがこうして何度でもセックスしたいし、新婚旅行にだって行きたい。そのためならどんな事をしたって時間を作るさ」
「とう……ま…」
「それと……桜子の全てを味わうのも俺の喜びだ」
覚えておいて……と言い捨てると同時にジュルジュルと蜜壺を吸い上げられて、強すぎる刺激に身体をくねらせ何度も達した。
蕾を甘噛みされ容赦なく攻め続けられ、遠ざかる意識の中で、冬馬さんの甘えたような声が囁く。
「なっ、行こうよ……ボストン」
ゆるゆると頷きながら、そう言えば、花嫁衣装の写真を撮るときにもこうして懇願されたんだった……と思い出す。
「冬馬さん…は……おねだり上手……だったんです…ね……」
ーーいいですね。行きましょう……ボストンに。
兄との思い出がある、あの場所に……。
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