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<< 番外編 >>
4、本当の初夜の話 (3) side冬馬
しおりを挟むシャワーを浴び、バスローブだけを羽織ってベッドのある部屋に戻ると、愛しい彼女はまだ夢の中だった。
ベッドに腰掛けて顔を覗き込むと、額にかかった髪の束を掬い、そっと耳にかけてやる。
それだけでは物足りなくて、今指先で触れたばかりの額にそっと口づけた。
ーー 俺の奥さんは寝ていても可愛いな。
人差し指で薄い唇をなぞってみる。昨日散々キスして吸ったせいか、いつもより赤みが濃く、腫れぼったい気がする。下唇をフニフニと押したら、「ん……」と短い声を漏らして寝返りを打った。思わず口元が緩む。
昨日、婚姻届を提出し、漸く桜子が自分のものになった。日野桜子。今度こそ正真正銘の自分の妻だ。
よっぽど疲れたんだろう。これほど触っても起きる気配がない。
ホテルの高層階から見下ろす夜景とガラス窓に映る艶かしい肢体。
入籍後のテンションといつもと違うシチュエーション。やっと真実を伝えられたという開放感も手伝って、かなり気持ちが高揚していたんだろう。どれだけサカってるんだと言うくらいしつこく抱いた。
それに……もう避妊をしなくていいというのも大きかった。薄いゴム1枚の障害物さえも無くなった生の行為は、彼女の熱と反応を内側からリアルに感じさせてくれて、まさしく天にも昇る気持ちだった。
精を吐き出し満足したと思っても、その直後に彼女のうごめく内襞で扱かれ締め付けられると腰からゾクゾクと何かが迫り上がり、果てたばかりのモノがすぐに膨張を始めるのだ。
抱いても抱いても欲望は尽きなくて、抜かないままで何度も突き上げ精を放った。
きっと目覚めた時の桜子の声は嗄れていることだろう。
可哀想なくらい何度も叫ばせ啼かせてしまったから……。
昨夜……というか、もう今朝になっていたけれど……の非日常下での淫らな行為を思い出して、またしても下半身に血液が集まって来るのを感じた。
ーー全く俺は、どれだけセックスが好きなんだよ。
いや、セックス自体にはそれほど意味が無い。桜子に触れ、彼女を喜ばせ、一つになれる行為だからこそ、あれほどの快感と興奮を得られるんだ。
バスローブを脱ぎ捨て再びベッドに潜り込むと、桜子に跨って寝顔を見下ろす。少しだけ開いた唇が色っぽくて、硬くなっていた自分のモノが更にグンと勃ち上がる。
チュッ、チュッと唇を啄み、滾ったモノを桜子の太腿の間に擦り付けた時……
「お兄……ちゃ……」
ーーえっ?!
お兄ちゃん……そう言ってから、フッと口許を綻ばせた。
その瞬間、大志の手紙の内容をハッキリと思い出す。
『桜子のファーストキスの相手は俺だ。もっと言うならセカンドキスも』
『何度も想像して思い出して、悔しがれ!』
ーーくっそ……!
桜子の初めては全部俺だと思っていたら、実は大志に先を越されていたんだ。
アイツの気持ちを考えたら仕方がない。桜子に気持ちを伝えられなかったアイツが唯一出来た行為が、秘密のキスだけだったんだ。
ーーそれでも……
頭では理解しながらも、愛する女を奪われたくない、独占したいというオスの本能が胸をザワつかせる。
「くそっ!」
桜子の頬を両手で挟み込むと、唇を舐め、ぶつけるかのように強く重ねた。
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