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45、 コタロー期待する
しおりを挟む「ねえコタロー、 やっぱり雑貨を見に行っちゃ駄目? 」
「…… ったく、 しょうがないな…… コイツらはロッカーに入れとこう。 氷と一緒に放り込んどけば大丈夫だろ」
「やった~! 」
ーー 『見に行っちゃ駄目?』って、 聞いた時点でもう行く気満々なくせに。 そんな上目遣いでお願いされたら駄目って言えるわけないだろっ! お前は小悪魔かっ!
「いいよ、 ほら、 雑貨ってどの店だよ」
「やった~! あのねぇ、 2階の新しいお店! 」
ああ俺って、 本当にコイツには甘々だ。
俺たちが小さい頃から良く通っているショッピングモールは、 学校から自転車で北東に12分程、 家からだと北西に12分程の距離……
つまり、 家と学校を結んだ三角形の頂点に位置しているので、 学校帰りの寄り道にはもってこいの場所だ。
2階建ての建物の1階部分には衣料品やアクセサリーのブティックの他に、 スーパーマーケットやレストラン街、 家電店などが併設されていて、 2階に上がると雑貨や本屋、 ゲームセンターに映画館まである。
ハナのことだ、 雑貨が見たいと言っても、 どうせ買い物途中で急に思いついただけで、 大して欲しいものがある訳ではないんだろう。
見たい店があるのなら、焼き肉パーティーの買い出しをする前に言ってくれよ…… とは思ったけれど、 ハナが欲しいものに興味はあるので、 とりあえずお付き合いする事にした。
ハナがエスカレーターで転びそうになったのを幸いに恋人繋ぎに成功した俺は、 絶対に離さないという意気込みでギュッと指を絡めていたけれど、 目的の雑貨屋に着いた途端、 「わっ、 可愛い! 」の声と共に、 あっけなく逃げられた。
ハナは真っ先にアクセサリーコーナーに走り、 ヘアゴムやシュシュを物色している。
そしていつものように、 めちゃくちゃ真剣に悩んでいる。
ーー ああ、 紺色のシュシュか茶色かで迷ってるのか。 両方買えば良さそうなもんだけど、 どうせお小遣いを使い込んで予算が厳しいんだろうな。
「ハナ、 どっちを買うの? 」
「う~ん、 紺色か茶色かで迷っててさ。 校則だと黒か紺か茶色でしょ? でも黒は嫌かな……って」
「両方買えば? 」
「お小遣いが残り少ないから、 ここで使い過ぎたくない」
俺が隣に立って聞いたら、 案の定予算の心配をしている。
「紺色にしとけば? 」
「えっ、コタローは紺がいいと思う? 」
「どっちもいいと思うけど、 とりあえず紺にしとけよ」
「ん? 良く分かんないけど、 まあいいや、 紺色にしとこっと」
「あっ、 私がレジに並んでる間、 コタローは勝手にいろいろ見ててね」
そう言い残して行ったので、 俺は適当に店内を見て回ることにした。
文房具コーナーでペンケースを触っていたら、 視線を感じてバッと顔を上げた。
レジの列に並んでるハナと目が合ったと思ったら、 パッと逸らされる。
ーー んんっ?
ペンケースを触る。 視線。 ハナと目が合って逸らされる。
それを無意味に3回くらい繰り返した。
念のため、 店内で移動してみた。 意味もなくぬいぐるみなんぞを触ってみる。 視線。 ハナと目が合う。 逸らされる。
ーー んんんっ?
これはなんか変だぞ。 何故だかめちゃくちゃ見られてる。
ハナの行動パターンは大抵把握してるはずなのに、 これは新しいやつだ。
頭の中にハテナマークを沢山浮かべながら落ち着かずにいたら、 買い物を済ませたハナが寄ってきて、 「ねえねえ、 コタローってイラックマのぬいぐるみが欲しいの? 」と聞いてきた?
「えっ、 別に欲しくないけど…… なんで? 」
「だってさっき触ってたじゃん、 イラックマ」
「ああ…… ただそこにあったから手に取っただけで…… どうして? 」
「ううん、 別に」
「買い物は終わった? この店はもういい? 」
店を出ようと足を外に向けたら、 腕を掴んで止められた。
「じゃあさ、 ペンケースが欲しいの? 」
「えっ、 なんで? 」
「さっき触ってたじゃん、 ペンケース」
「ああ…… 今使ってるやつのファスナーがバカになってきたから、 そろそろ買い替えどきかなって思って見てたんだけど…… 」
「どれ?! 」
食い気味で聞かれて、 ついでにさっきのペンケースコーナーに引っ張って連れて行かれた。
「どれ?! 」
「えっ? 」
「どれ? どの色? 黒色が好きだから黒いヤツがいいの? 」
「あっ…… ああ、 実はもういいなぁって思ってるのがあって、 インターネットで注文しようと思ってるんだけど…… 」
「えええっ?! 」
うわっ、 凄い勢いで驚かれて、 こっちが逆にビビるわっ!
そして俺の発言を受けてあからさまに凹んでいるハナを見て、 ふと思った。
ーー あれっ? コイツってもしかして、 俺に何かプレゼントしようと思ってないか? 誕生日か? 誕生日プレゼントなのかっ?!
そしてこの流れは、 サプライズを狙ってないか?
だけど変だ。
俺へのプレゼントだったら、 ハナはこんな風に探りを入れたりしないし、 ましてやサプライズなんて手の込んだことはしない。
自分が俺の部屋に置きたいものを独断で選ぶか、 もしくは一緒に買い物に来た時に、「コレでいいよね? 」で即決まりだ。
なんなんだ? なんでか今日は新しいパターンが多くて気持ち悪い。 ハナらしくない。
う~ん……。
ちょっと逆に探りを入れてみるか。
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