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52、全身くまなく舐めるらしいデス

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 透とヨーコのために赤城が手配してくれた座席はファーストクラスで、しかも通路を挟んだ隣同士だったので、快適以外の何物でもなかった。

 ヨーコと接していたい透が何かとヨーコの席に来ては向かい側の補助椅子に座って来るので、広いはずの空間が狭苦しくなった感は否めないけれど、膝にかけたブランケットの下で少しだけイチャイチャしたり、人目を忍んでキスしたり出来たので、それはそれで楽しい時間だった。

 

 大きなスーツケースをゴロゴロと引きながら到着口の自動扉から出ると、乗客を待つ人垣に、雛子と朝哉の顔が見えた。

「透さん、ヨーコさん、お帰りなさい!」

 手をブンブン振っている可愛らしい顔に、涙腺が緩む。ほんの1週間振りだというのに、既に懐かしい。

「ヒナコ~!」
「ヨーコさん!」

 ひしっ!と抱き合いながら再会を喜んでいると、2人を囲む様に男性2人が立って、顔を見合わせた。

「兄さん、お帰り。婚約おめでとう」
「ああ、ありがとう」

 その言葉に雛子がガバッと顔を上げて、大きな瞳をキラキラさせた。

「そうよヨーコさん、日本で結納を済ませたんですってね。おめでとう! ビックリしたけど嬉しいわ!もうすぐお義姉さんね。結婚式はいつ?」

 キュン!

 大好きな雛子の笑顔に癒される。
 そして『お義姉さん』!!!

「私がヒナコのお義姉さんになるのデスカ?!」
「勿論よ。朝哉のお兄さんの奥様ですもの」
「オクサマ!」

 魅惑的な言葉の数々にトキメキが止まらない。

「トオル~、私がヒナコのお義姉さんですヨ~! 最高デス~!」

 ウルウルしながら透を見たら、

「そう。だから早く俺の奥さんになってよ」

 フンワリ微笑みながらサラリと言われた。

 そう言えば、結納は交わしたものの、具体的な結婚式の日取りについては決めて来なかった。
 
 黒瀬家の面々はそのつもりだったのだろうけど、何せ結納が済んですぐに当の本人達はホテルに籠ってしまったし、翌朝は恥ずかしい会話の数々に時間を取られ、その後はすぐにアメリカに戻る準備。
 ずっとバタバタで、そんな話をする余裕も無かったのだ。

 そして何より、透がまだ、ヨーコの両親に直接会っていないというのもある。


 4人で会話をしながら空港のエントランスを出ると、すぐに黒塗りのリムジンが横付けされて、竹千代が車のトランクを開けてくれた。

「ヨーコ、お帰り。凱旋帰国だな」
「タケ~、私は闘いに勝利しましたヨ~!」

 嬉しさのあまり竹千代にハグしようとしたら、速攻で透に腕を掴まれ後ろに引っ張られた。
 透の胸にポスンと背中が収まり、長い腕で拘束される。

「……ハグ禁止」

 拗ねたような声で言われてクスッと笑ったら、「俺って余裕なさ過ぎ? カッコ悪い?」と焦っているので、「カッコ悪くても好きデスヨ」と言ったらニコニコ顔になった。

 朝哉と竹千代が、「ゲロ甘」、「マジか!」と言いながら驚いた顔で見て来たのが心外だったけど、雛子が胸の前で指を組みながら「素敵!」と言ってくれたので良しとしよう。


 5人の乗ったリムジンは、一路マンハッタンを目指す。今日は渋滞も酷くないようで、車の流れもスムーズだ。

「今から市内のレストランで食事でもしないか? 日本での様子を聞きつつ婚約祝いって事で。焼肉でも寿司でもいいし……」

「焼き肉っ?!」

 朝哉の提案にヨーコが目を輝かせたところで、透が「いや、今日はアパートに帰るよ」と即答した。

「トオル?」

ーーお祝いしてくれるって言ってるのに。焼肉なのに?

 だけど、シートに置いていた手に上から手を重ねてギュッと握られて、透の意図を察した。

ーーあっ……。

「……ソウデスネ。今日はこのまま帰りマス」
 
「朝哉、ヨーコさん達は時差ボケで疲れてるんじゃないかしら」
「そうか、残念だけど、お祝いは後日改めてだな」

 雛子の無自覚のナイスフォローで話はまとまり、そのままミッドタウンイーストの透のアパートの前で降ろしてもらう。

 エレベーターで30階まで上がり、玄関に入って荷物を下ろした途端に抱き締められた。

「やっと思い切り触れられる……」

 深い息を吐きながら言われ、ジンワリと嬉しさが込み上げてくる。

「ハイ……触れられますネ」
「もっと……触ってもいい?」
「モチロンですヨ……。私も触れて良いデスカ?」
「フッ……勿論」

 言うが早いか膝裏に手を差し込まれ、お姫様抱っこで寝室に運ばれた。


「トオルっ、まずはシャワーを! 旅の汚れを落とさねば!」
「俺が綺麗に舐めるから大丈夫」
「舐めるっ?!」
「うん、舐める。全身くまなく」

 ベッドにドサリと落とされて、「キャッ!」と短い悲鳴が上がった。

 その姿を見下ろしながら、透は着ていたジャケットを床に放り投げ、素早く全裸になる。

 ヨーコはまだトレンチコートさえ脱がないまま、どうしたものかと躊躇していた。
 15時間のフライトの後だ。丸1日シャワーを浴びていなくて身体は汗ばんでいるし、このまま抱かれるのは気が引ける。

 ……と考えているうちに透がベッドに飛び乗って来て、ヨーコのコートを脱がせにかかった。

「ちょっ、ちょっと待ってクダサイ! やはりこのままデハ、女性としての尊厳が……」

 コートにかかっていた手がピタリと止まる。

「尊厳? 関係無いよ。そんなのが吹き飛ぶくらい、すぐに気持ち良くさせるから」

 コートから手を離すとそのままカットソーを捲り上げ、ブラジャーを乱暴に引き下げて、胸の頂にむしゃぶりついた。
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