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48、破廉恥な嫁でも良いデスカ? *
しおりを挟むフッ……と意識が浮上して、瞬きを繰り返しながら目を開けた。
辺りは薄暗いけれど、カーテンを開けたままの窓の外にはビルの明かりが瞬いていて、お陰で今いる部屋の中の様子がぼんやりと見て取れる。
だだっ広い部屋に見慣れぬ調度品。壁に掛かった風景画。扉付きキャビネットには60Vサイズの大型テレビ。
ああ、そうか。 ここはホテルの……。
「ホテルっ?!」
ガバッと跳ね起きると、改めてキョロキョロと周囲の様子を窺った。
キングサイズのベッドの上。真っ白いシーツに大きな枕。隣でこちらに体を傾けるようにして眠っているのは……。
「トオル……」
「ん、なに?」
「えっ……キャッ!」
小さく呟くと、不意にグイッと腕を引かれ、再びベッドに倒れ込んだ。
すかさず上からのし掛かられ、唇が塞がれる。
「ん……ふ…っ」
肉厚な舌が滑り込んできて、咥内を一舐めされる。
ペチャッ……と音を立てながらゆっくり離れると、両手で頬を固定して、額に、目蓋に、鼻の頭に、チュッチュとキスが落とされる。
最後に再び唇を啄み始めたところで、ヨーコは透の胸をグイッと押し返し、「ちょっと待った~!」と大声を張り上げた。
「えっ、ここで『待て』って言う?」
キョトンと見下ろす透に睨みをきかせ、
「『待て』どころじゃ無いデスヨ! 外が暗くなってますヨ! 一体何時なんですか?!」
透の返事を待たずに身を翻してベッドサイドのデジタル時計を見ると、表示されている数字は11:52。
きっと、絶対に、これは昼の11時52分では無い。もうすぐ日付が変わろうとしているのだ。
「どうして起こしてくれなかったのデスカ! 皆さんが心配して待ってますヨ!」
慌てふためくヨーコを尻目に、透はフッと笑ってヘッドボードに背を預ける。
「家にはホテルに泊まるって電話しておいたから大丈夫」
「いっ、いつの間に?!」
「ヨーコが寝てる間に」
「マジですかっ!」
「うん、マジで」
空港には昼頃に着けばいいので、ホテルで朝食を摂ってから家に帰ろうとしれっと言われ、ヨーコは顔色を失った。
「皆さんにホテルでエッチしてるって丸わかりじゃないデスカ!」
「いいだろ、今更。 婚約してるんだし」
「良くないデスヨ! 恥ずかしいじゃないデスカ!」
「ハハッ、明日になったら恥ずかしがるヨーコが見れるのか。楽しみだな」
「楽しみにしてる場合じゃ無いデスヨ! ふしだらな女だと思われてしまいマス! こんなことでは、もうお嫁に行けませんヨ~!」
「俺がもらうから大丈夫」
全く動じないのを見ていたら、焦っている方が馬鹿らしくなって来た。
自分もヘッドボードにもたれ掛かり、透の隣に並ぶ。
「……ずっと起きていたのデスカ?」
「いや、さっきヨーコの声で目が覚めたばかりだよ。 俺も疲れてたから」
その言葉で、夕方の激しい行為を思い出す。
着物越しの愛撫。
立ったまま、自ら前をはだけ、舌と指だけでイかされた。
何の隔たりも無いナマでの行為。
トオルの大きくて硬い漲りがピッタリと隘路を埋め尽くし、卑猥な音をさせながら中を蹂躙した。
顔を歪め、額に大粒の汗を浮かべて無我夢中で貫く透の、恍惚とした表情。
乱暴過ぎるほどの激しい行為だったのに、ただひたすら絶頂へと向かって荒い息を吐いていた彼が愛しくて堪らなかった。
最奥で受け止めた熱い精。
直接的な刺激に、何度もイかされた。
望まれるまま、肌襦袢を羽織って透に跨り、体を仰け反らせながら自ら腰を振っていた。
下から激しく突き上げられ、奥底から抉られ、揺さぶられ……
最後は蕾を意地悪くキュッと抓られて、潮を吹いた直後に意識を手放した。
「でも寝る前にちゃんとヨーコをベッドに運んで身体を拭いたからね。 それからシャワーを浴びて、振袖をフロントに預けてからヨーコの寝顔を見ながら寝たんだ」
ーーんっ? 身体を拭いて……振袖?!
サラッと言われたけれど、聞き捨てならない言葉が並んでいたような気がする。
その内容を脳内で反芻して、顔がボッと火を吹いた。
「身体を……拭いてくれたのデスカ?」
「うん。シャワーの方がいいかと思ったけれど、完全に気を失ってたからベッドの上で身体を拭くだけにした。十分では無いだろうけど、精液まみれよりはマシだから」
「精液……まみれ……」
「うん。振袖もベタベタだったから、クリーニングに出してもらうようフロントに預けたからね。仕上がったら家に送ってもらえるから心配しないで」
「ベタベタの振袖を……クリーニング……黒瀬家に……」
両手で顔を覆い、「イヤぁあああ~っ!」と悲鳴をあげると、透が不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「大丈夫だよ。ホテルは花嫁衣装で着物の取り扱いは慣れてるんだ。汚れが残らないようにちゃんとシミ抜きしてくれるから」
「違~~う!」
問題のポイントがズレまくっている。
ホテルからクリーニング済みの振袖なんかが届いたら、黒瀬家の面々がイヤでも2人の行為を連想してしてしまうではないか!
「こんな羞恥プレイ、耐えられマセン! もうお嫁に行けないデス~!」
「ハハッ、だから俺が嫁にもらうって」
「そういう意味じゃないデスヨ~! シクシク…」
「ハハッ、泣き真似も可愛いな」
いつの間にやら泣き真似もサラッと見破るようになっていた。
この男の学習能力、半端ない!
「恥ずかしついでだからさ……今からもう一回、いい?」
三日月みたいに目を細め、目尻にシワを寄せて、フワリと微笑んだ。
大好きな笑顔。 下半身がキュンとした。
「……こんなに破廉恥な女でも、お嫁に迎えてくれますか?」
「うん、破廉恥でエロくて可愛いヨーコがいい。 俺のになって」
「もうとっくに……トオルのものですよ」
顔が近付いて、唇が重なった。
どうせ恥ずかしついで。 思いっきり破廉恥になって、思う存分愛しあおう。
ゆっくりとベッドに倒れ込んだら、あとはもう、何の隔たりもない熱い時間があるだけだった。
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