18 / 56
17、恋に堕ちるには (4) side透 *
しおりを挟む翌日、ヨーコのアパートに押し掛けたら、案の定彼女は全てを忘れていた。
ちょっと挫けそうになったけれど、勇気を振り絞って部屋の中に入り込むことに成功した。
BLの世界は興味深く、想像以上に盛り上がっていい雰囲気になった。
そこまでする気なんて無かったのに、酔った勢いもあって、キスして身体に触れてしまった。
『Ouch! It’s killing me! (痛い、やめて)』
彼女を痛がらせてしまったことがショックだった。
テクニック不足を露呈してしまった。
彼女の家に来れると思って浮かれるばかりで準備不足だった。
よく考えたら避妊具も準備していないじゃないか!
妊娠した場合、心身共に負担がかかるのは女性側だ。こういうのは男性側が気を付けてあげなきゃいけないのに……。
ヨーコが寝ている間に知識を詰め込む事にした。
ーーふむふむ、まずは言葉や雰囲気でその気にさせる……か。
『キスが上手ければ、それだけでもイける』、『気持ちが昂まれば自然に濡れてくる』、『Gスポットを見つけろ』、『舌技が大切』。
Googleさんは優秀だ。調べても調べても新たな情報が出てくる。
ーーそれ以前に、雰囲気作りって、どうしたらいいんだよ……。
『壁ドン』、『床ドン』、『顎クイ』、『バックハグ』……。
種類が多くて混乱してくるが、暗記は得意なので全部頭にインプットした。
動画も見て動きを覚えた。
あとは隣で眠る彼女の寝顔を見つめながら、脳内で繰り返しシミュレーションする。
ここまでしてしまったんだ。これで駄目なら次は無い。少しぐらい強引なくらいに攻めて、どうにかして振り向かせるんだ……。
そして勝利の女神が振り向いた。
*
「うわっ、ヤバイ……」
昨夜の行為を思い出しただけで勃ってしまった。今すぐまたシタイ。
駄目だ、サカりすぎはドン引きされるとGoogleさんが言っていた。
29歳の成人男性として節度ある行動を心掛けねば。
「ん……」
寝返りをうって上を向いたヨーコが、腕を伸ばして「う~ん」と大きく伸びをした。
今の声で起こしてしまったようだ。面目ない。
「おはようヨーコ、まだ午前4時ちょっと過ぎだから、もう少し寝てていいよ」
「ぎゃっ!」
亀のように腕を引っ込めて、目をパチクリさせている。
「……トオル…さん?」
ーーえっ、まさかこの反応は!
「もしかして、また覚えていない……とか?」
ヨーコは布団を鼻の辺りまで引っ張り上げると、「覚えています……ヨ」と布団の中でムニョムニョ言った。
半分隠れていても顔が真っ赤なのが分かった。可愛すぎる。
「ハハッ……良かったです。忘れられてたら身体で思い出させるしか無いと思っていました」
「身体で……デスカ?」
「そう……例えばキスとか……」
チュッと啄むようなキスを落とす。
「例えば指の感覚……」
そっと胸に手を滑らせ、豊満で柔らかい膨らみに指を沈める。
「あ……っ…」
「思い出しましたか?」
「デスカラ、ちゃんと覚えてるって……」
「こっちはどうですか? 俺の形をちゃんと覚えてますか?」
下半身に手を伸ばす。
割れ目に沿って撫で上げると、既にそこは潤っていて、指に愛液が纏わりついてきた。
「おりこうですね。ココが俺の指を思い出してちゃんと反応してくれました」
「もうっ、恥ずかしいデス! トオルさんは言葉責めが上手すぎマス!」
「言葉だけですか? コレは気持ち良くない?」
蕾に愛液を塗り付けてクルクルと丸く撫でると、太腿を擦り合わせて身悶えした。
「やっ……あっ……!」
「ヨーコ、どう? 気持ち良くない? ちゃんと教えて」
「あ……っ…気持ち……い……デス…」
「いい子だ。一回ココでイかせてあげるね」
指の動きを速くして、小刻みに震わせる。
「あっ、ああっ、凄い……やっ…」
鼻にかかった甘い声に、頭が沸騰した。
ーー駄目だ、サカるな、今日は紳士的に……。
「トオル、気持ちい……もっと…」
「くそっ!」
ーーもう知るか! Google、ゴメン!
恋に堕ちるのは一瞬だ。
だけどこの恋は一瞬で終わらせたりなんかしない。
追い掛けて捕まえて抱き潰して……。
攻めて攻めて攻めまくって、身も心も離れられなくなるまでトロトロにして……。
一生の恋にする。
透はバサッと布団を捲り上げると、彼女の脚の間に勢いよく顔を沈めた。
0
お気に入りに追加
868
あなたにおすすめの小説
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「50kg以上はデブ」と好きな人に言われ、こじらせた女のそれから
国湖奈津
恋愛
中学生の時、初恋を迎えた私。
初恋の相手はぽっちゃり系女子が好きという噂を手に入れた。
本人に確かめてみると、確かにぽっちゃり好きという返事が帰ってきたのだが、よくよく話を聞いてみると話が怪しくなってきて…。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
初色に囲われた秘書は、蜜色の秘処を暴かれる
ささゆき細雪
恋愛
樹理にはかつてひとまわり年上の婚約者がいた。けれど樹理は彼ではなく彼についてくる母親違いの弟の方に恋をしていた。
だが、高校一年生のときにとつぜん幼い頃からの婚約を破棄され、兄弟と逢うこともなくなってしまう。
あれから十年、中小企業の社長をしている父親の秘書として結婚から逃げるように働いていた樹理のもとにあらわれたのは……
幼馴染で初恋の彼が新社長になって、専属秘書にご指名ですか!?
これは、両片想いでゆるふわオフィスラブなひしょひしょばなし。
※ムーンライトノベルズで開催された「昼と夜の勝負服企画」参加作品です。他サイトにも掲載中。
「Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―」で当て馬だった紡の弟が今回のヒーローです(未読でもぜんぜん問題ないです)。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる