マジメ御曹司を腐の沼に引き摺り込んだつもりが恋に堕ちていました

田沢みん

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17、恋に堕ちるには (4) side透 *

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 翌日、ヨーコのアパートに押し掛けたら、案の定彼女は全てを忘れていた。
 ちょっと挫けそうになったけれど、勇気を振り絞って部屋の中に入り込むことに成功した。

 BLの世界は興味深く、想像以上に盛り上がっていい雰囲気になった。

 そこまでする気なんて無かったのに、酔った勢いもあって、キスして身体に触れてしまった。

『Ouch! It’s killing me! (痛い、やめて)』

 彼女を痛がらせてしまったことがショックだった。
 テクニック不足を露呈してしまった。
 彼女の家に来れると思って浮かれるばかりで準備不足だった。

 よく考えたら避妊具も準備していないじゃないか!
 妊娠した場合、心身共に負担がかかるのは女性側だ。こういうのは男性側が気を付けてあげなきゃいけないのに……。

 ヨーコが寝ている間に知識を詰め込む事にした。


ーーふむふむ、まずは言葉や雰囲気でその気にさせる……か。

『キスが上手ければ、それだけでもイける』、『気持ちが昂まれば自然に濡れてくる』、『Gスポットを見つけろ』、『舌技が大切』。

 Googleさんは優秀だ。調べても調べても新たな情報が出てくる。

ーーそれ以前に、雰囲気作りって、どうしたらいいんだよ……。

『壁ドン』、『床ドン』、『顎クイ』、『バックハグ』……。

 種類が多くて混乱してくるが、暗記は得意なので全部頭にインプットした。
 動画も見て動きを覚えた。

 あとは隣で眠る彼女の寝顔を見つめながら、脳内で繰り返しシミュレーションする。

 ここまでしてしまったんだ。これで駄目なら次は無い。少しぐらい強引なくらいに攻めて、どうにかして振り向かせるんだ……。


 そして勝利の女神が振り向いた。





「うわっ、ヤバイ……」

 昨夜の行為を思い出しただけで勃ってしまった。今すぐまたシタイ。

 駄目だ、サカりすぎはドン引きされるとGoogleさんが言っていた。
 29歳の成人男性として節度ある行動を心掛けねば。


「ん……」

 寝返りをうって上を向いたヨーコが、腕を伸ばして「う~ん」と大きく伸びをした。
 今の声で起こしてしまったようだ。面目ない。

「おはようヨーコ、まだ午前4時ちょっと過ぎだから、もう少し寝てていいよ」
「ぎゃっ!」

 亀のように腕を引っ込めて、目をパチクリさせている。

「……トオル…さん?」

ーーえっ、まさかこの反応は!

「もしかして、また覚えていない……とか?」

 ヨーコは布団を鼻の辺りまで引っ張り上げると、「覚えています……ヨ」と布団の中でムニョムニョ言った。

 半分隠れていても顔が真っ赤なのが分かった。可愛すぎる。

「ハハッ……良かったです。忘れられてたら身体で思い出させるしか無いと思っていました」
「身体で……デスカ?」

「そう……例えばキスとか……」

 チュッと啄むようなキスを落とす。

「例えば指の感覚……」

 そっと胸に手を滑らせ、豊満で柔らかい膨らみに指を沈める。

「あ……っ…」
「思い出しましたか?」
「デスカラ、ちゃんと覚えてるって……」

「こっちはどうですか? 俺の形をちゃんと覚えてますか?」

 下半身に手を伸ばす。
 割れ目に沿って撫で上げると、既にそこは潤っていて、指に愛液が纏わりついてきた。

「おりこうですね。ココが俺の指を思い出してちゃんと反応してくれました」
「もうっ、恥ずかしいデス! トオルさんは言葉責めが上手すぎマス!」

「言葉だけですか? コレは気持ち良くない?」

 蕾に愛液を塗り付けてクルクルと丸く撫でると、太腿を擦り合わせて身悶えした。

「やっ……あっ……!」
「ヨーコ、どう? 気持ち良くない? ちゃんと教えて」

「あ……っ…気持ち……い……デス…」
「いい子だ。一回ココでイかせてあげるね」

 指の動きを速くして、小刻みに震わせる。

「あっ、ああっ、凄い……やっ…」

 鼻にかかった甘い声に、頭が沸騰した。

ーー駄目だ、サカるな、今日は紳士的に……。

「トオル、気持ちい……もっと…」
「くそっ!」

ーーもう知るか! Google、ゴメン!


 恋に堕ちるのは一瞬だ。

 だけどこの恋は一瞬で終わらせたりなんかしない。

 追い掛けて捕まえて抱き潰して……。
 攻めて攻めて攻めまくって、身も心も離れられなくなるまでトロトロにして……。

 一生の恋にする。


 透はバサッと布団を捲り上げると、彼女の脚の間に勢いよく顔を沈めた。
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