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降下作戦
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十月十三日午前三時。
有志連合軍、軍事同盟軍は敵味方関係なく攻撃を開始したエクムント新大統領に怒り狂い、一時休戦してでもエクムント新大統領を抹殺すべきと意見を合致させた。
といっても両軍疲弊しきっており、まともに艦隊運用が出来る部隊は限られていた。
第一戦闘艦隊、全滅。 司令官パウルス高等大将 戦死(軍事同盟軍)
第二戦闘艦隊、壊滅。 司令官ゾマー中将 戦死(軍事同盟軍)
第三戦闘艦隊、三割健在。 司令官シュニッツラー中将 重傷(軍事同盟軍)
第四戦闘艦隊、六割健在。 司令官ゼッフェルン中将 健在(軍事同盟軍)
第五戦闘艦隊、半壊。 司令官バンベルガー少将 重傷(有志連合軍)
第六航宙艦隊、壊滅。 司令官マインツ大将 戦死(軍事同盟軍)
第七航宙艦隊、八割健在。 司令官ウィリバルト中将 重傷(有志連合軍)
第九航宙艦隊、壊滅。 司令官ルートウィヒ中将 戦死(有志連合軍)
第十航宙艦隊、九割健在。 司令官ヨハネス中将 健在(軍事同盟軍)
第十二機動艦隊、壊滅。 司令官フロイデンタール少将 戦死(軍事同盟軍)
第十三機動艦隊、壊滅。 司令官ゲープハルト少将 戦死(軍事同盟軍)
第十四機動艦隊、三割健在。 司令官ランゲンバッハ少将 軽傷(軍事同盟軍)
混成艦隊、壊滅。 司令官ハルコルト中将 軽傷(有志連合軍)
リーコン要塞 司令メッゲンドルファー少将 健在(有志連合軍)
このようにほぼ全ての司令官が戦死、重軽傷を負っており、まともに指揮が出来るのはハルコルト中将以下五人にティーメ少将の六人だけという有様だった。
リーコン星の裏手に集結した両軍はゾラ連合軍として行動を開始すべく作戦会議を開いた。
参加者の面々はゼッフェルン中将、ヨハネス中将、ハルコルト中将、ランゲンバッハ少将、メッゲンドルファー少将の五人とティーメ少将の計六人にそれぞれの副官、参謀長、参謀。そして空戦隊総隊長としてアンハルトが出席した。
つい先ほどまで殺し合いをしていた関係だったが今はそんなことを言っている暇はない。
両軍の総力を結集してエクムント新大統領を止めなければならない。
そう考えていたアンハルトだったが定刻となり作戦会議が始まった。
「さて、まず両軍の戦力を確認するとともに総司令官を決めなければ」
ゼッフェルン中将が開口一番にそう言った。
確かに今現在、復活したゾラ連合軍は継ぎ接ぎもいいところな編成だった。
有志連合軍、軍事同盟軍の総司令官は意識不明、戦死といった状況にあり指揮系統の統一化は急務だった。
「この中で一番経験豊富なゼッフェルン中将は如何だろう?」
そうハルコルト中将が言ったが即答で拒否された。
「いや、俺は…俺たちは負けた身だ。総司令官には相応しくない」
「しかしそんなことを言っている暇はありませんし、我々有志連合軍には適任者がおりません。是非、お願いしたい」
「貴官がそう言っても有志連合軍の兵士らはどうだ?」
「…失礼しました」
一同が若干気まずい空気に黙ったがハル平和連合軍のティーメ少将がそれを取り除くべく発言した。
「そうですねぇ…総司令官はブレーメン中将でよろしいんじゃありません?」
「は?俺ですか?」
キョトンとする彼には周りの提督らが納得するような雰囲気を醸し出していることが理解出来なかった。
「いや、ちょっと待って下さい!俺はこの中で最年少ですよ!?適任者とは思えません!」
「そうかな?」
ティーメ少将ののほほんとした口調に少し落ち着きを取り戻したハルコルトは改めて理由を聞いた。
「うーん。理由ねぇ。まずゼッフェルン中将の言い分を聞いた場合、残る候補者は私にメッゲンドルファー少将にブレーメン中将の三人だけ。しかし私はいきなり現れた新参者。はっきり言ってゾラ連合軍の内情に疎い。メッゲンドルファー少将は…」
「俺は防御指揮の自信ならあるが艦隊運用は苦手でね」
メッゲンドルファー少将が恥ずかしそうに頭を掻く。
「となると必然的にブレーメン中将になるんですよねぇ」
「えぇ…」
確かに消去法的にそうだがそれでいいのかと思ったハルコルトだったがゼッフェルン中将らの推薦でゾラ連合軍臨時総司令官となった。
「それで戦力は?」
「現状動ける艦隊は第三、四、五戦闘艦隊。第七、九航宙艦隊。第十四機動艦隊。それとハル平和連合軍第二防衛艦隊だけだ。艦艇数は約八百隻といったところだな」
「しかし、実際は違うんでしょう?」
「…その通りだ。無傷、小破の艦艇は三百五十隻余り。しかも半数以上が駆逐、軽巡洋艦だけとなっている」
ハルコルトの問いにあまりにも弱りきったゾラ連合宇宙軍の実情を吐露したゼッフェルン中将の顔は暗い。
他の提督たちも同様の表情を見せる。
作戦会議参加メンバーのうち若い参謀の一人が唯一怪訝な顔でいるのをアンハルトが察して理由を説明する為にゼッフェルン中将を誘導した。
「ゾラ星に降りれる艦艇は百隻強といったところですか?」
「…そうなるな」
ゼッフェルン中将は苦い顔に、勇将と謳われるランゲンバッハ少将もどうしようもないといったように両手を挙げた。
そこまで聞いてやっと若い参謀が全てを理解した。
「そ、そうか!大気圏!」
その通り。
大気圏突入に耐えれる艦艇は基本的に戦艦、重巡洋艦の二種類のみ。
例外に降陸艦という大気圏突入用の艦艇があるが。
具体的には耐熱ジェルを搭載した艦艇ならなんでも降りることが出来る。
しかし積載量が少ない小型艦は武装、弾薬、ワープ用のエンジンを載せると耐熱ジェルを載せるスペースがない。
それと航空戦艦や空母も降りることが出来ない。
何故か。
その理由は艦載機にある。
航空戦艦にしろ空母にしろ運用するにあたって艦載機の補給、整備にコストを大幅に割く。
そうすると必然的に耐熱ジェルを搭載する余裕がなくなるのだ。
しかも耐熱ジェルは大量に艦底に展開し、一回こっきり。
そうなると降りれる艦艇は自ずと明らかになるわけだ。
「で、降陸艦の数は?」
「リーコン要塞のも含めると四百隻はあるぞ」
続くアンハルトの質問に今度はメッゲンドルファー少将が答える。
「では作戦部隊は降陸艦全隻に旗艦となる戦艦とその護衛とし、降下作戦を実施。首都を制圧し、あの兵器を破壊する!」
「はっ!」
ハルコルトの指示に全員が敬礼とともに返答する。
意外とハルコルト中将、総司令官も様になっているな。
そう思ったアンハルトだった。
「あのぉ…」
そののほほんとした特徴的な声ではない声が全員の意識が発声源へと向けさせる。
「ティーメ少将、何か?」
ハルコルトが代表して彼に発言権を与えた。
すると彼はとんでもないことを言ったのだ。
「あの電磁兵器…名を”ヘレ”と言います。超強力な電磁波を放出し、あらゆるものを発火させます。具体的には…」
そう淡々とした声で説明された提督たちは驚愕し、ついで憤慨した。
「何故その様な重要なことを発射前に知らせてくれなかったのだ!」
「私に言われても…」
「では!何故今言う!?」
「たった十分前にハルから連絡が来たんですよ!」
「なに…?」
ランゲンバッハ少将の怒りの前に冷静さを保てないティーメ少将だったがアンハルトらの仲裁により息を整えることが出来た。
「私は出撃前にハル政府から秘密裏に指令を受けました。その指令は秘密兵器であるヘレの存在を突き止めること。名さえ知らず、どの様な効果をもたらすものかも知らず、私は出撃しました。そしてヘレが発射された時、あれが秘密兵器だというのはすぐに分かりました。効果も推測しました。しかし確証がなかった」
「そこにハルから連絡が?」
「その通りです」
アンハルトはなるほどなという顔になるのを見て今度はハルコルトが発言し、謝った。
「この話が本当なら、ティーメ少将に非は無い。…憤ってすまなかった」
他の提督も多くの情報に混乱しつつもティーメ少将に頭を下げた。
ティーメ少将は居心地が悪くなったのか幕僚を従え、出撃の準備に移ると言い残し退出した。
「彼も実際のところ何がなんだかという状況なのでしょう。それでも自身の持てる情報を提供してくれました。しかし引っかかることが一つ…」
「どうした、ホーエンツォレルン大佐」
「総司令官。何故ハル政府はティーメ少将に真実を教えずに送り出したのでしょう?」
有志連合軍、軍事同盟軍は敵味方関係なく攻撃を開始したエクムント新大統領に怒り狂い、一時休戦してでもエクムント新大統領を抹殺すべきと意見を合致させた。
といっても両軍疲弊しきっており、まともに艦隊運用が出来る部隊は限られていた。
第一戦闘艦隊、全滅。 司令官パウルス高等大将 戦死(軍事同盟軍)
第二戦闘艦隊、壊滅。 司令官ゾマー中将 戦死(軍事同盟軍)
第三戦闘艦隊、三割健在。 司令官シュニッツラー中将 重傷(軍事同盟軍)
第四戦闘艦隊、六割健在。 司令官ゼッフェルン中将 健在(軍事同盟軍)
第五戦闘艦隊、半壊。 司令官バンベルガー少将 重傷(有志連合軍)
第六航宙艦隊、壊滅。 司令官マインツ大将 戦死(軍事同盟軍)
第七航宙艦隊、八割健在。 司令官ウィリバルト中将 重傷(有志連合軍)
第九航宙艦隊、壊滅。 司令官ルートウィヒ中将 戦死(有志連合軍)
第十航宙艦隊、九割健在。 司令官ヨハネス中将 健在(軍事同盟軍)
第十二機動艦隊、壊滅。 司令官フロイデンタール少将 戦死(軍事同盟軍)
第十三機動艦隊、壊滅。 司令官ゲープハルト少将 戦死(軍事同盟軍)
第十四機動艦隊、三割健在。 司令官ランゲンバッハ少将 軽傷(軍事同盟軍)
混成艦隊、壊滅。 司令官ハルコルト中将 軽傷(有志連合軍)
リーコン要塞 司令メッゲンドルファー少将 健在(有志連合軍)
このようにほぼ全ての司令官が戦死、重軽傷を負っており、まともに指揮が出来るのはハルコルト中将以下五人にティーメ少将の六人だけという有様だった。
リーコン星の裏手に集結した両軍はゾラ連合軍として行動を開始すべく作戦会議を開いた。
参加者の面々はゼッフェルン中将、ヨハネス中将、ハルコルト中将、ランゲンバッハ少将、メッゲンドルファー少将の五人とティーメ少将の計六人にそれぞれの副官、参謀長、参謀。そして空戦隊総隊長としてアンハルトが出席した。
つい先ほどまで殺し合いをしていた関係だったが今はそんなことを言っている暇はない。
両軍の総力を結集してエクムント新大統領を止めなければならない。
そう考えていたアンハルトだったが定刻となり作戦会議が始まった。
「さて、まず両軍の戦力を確認するとともに総司令官を決めなければ」
ゼッフェルン中将が開口一番にそう言った。
確かに今現在、復活したゾラ連合軍は継ぎ接ぎもいいところな編成だった。
有志連合軍、軍事同盟軍の総司令官は意識不明、戦死といった状況にあり指揮系統の統一化は急務だった。
「この中で一番経験豊富なゼッフェルン中将は如何だろう?」
そうハルコルト中将が言ったが即答で拒否された。
「いや、俺は…俺たちは負けた身だ。総司令官には相応しくない」
「しかしそんなことを言っている暇はありませんし、我々有志連合軍には適任者がおりません。是非、お願いしたい」
「貴官がそう言っても有志連合軍の兵士らはどうだ?」
「…失礼しました」
一同が若干気まずい空気に黙ったがハル平和連合軍のティーメ少将がそれを取り除くべく発言した。
「そうですねぇ…総司令官はブレーメン中将でよろしいんじゃありません?」
「は?俺ですか?」
キョトンとする彼には周りの提督らが納得するような雰囲気を醸し出していることが理解出来なかった。
「いや、ちょっと待って下さい!俺はこの中で最年少ですよ!?適任者とは思えません!」
「そうかな?」
ティーメ少将ののほほんとした口調に少し落ち着きを取り戻したハルコルトは改めて理由を聞いた。
「うーん。理由ねぇ。まずゼッフェルン中将の言い分を聞いた場合、残る候補者は私にメッゲンドルファー少将にブレーメン中将の三人だけ。しかし私はいきなり現れた新参者。はっきり言ってゾラ連合軍の内情に疎い。メッゲンドルファー少将は…」
「俺は防御指揮の自信ならあるが艦隊運用は苦手でね」
メッゲンドルファー少将が恥ずかしそうに頭を掻く。
「となると必然的にブレーメン中将になるんですよねぇ」
「えぇ…」
確かに消去法的にそうだがそれでいいのかと思ったハルコルトだったがゼッフェルン中将らの推薦でゾラ連合軍臨時総司令官となった。
「それで戦力は?」
「現状動ける艦隊は第三、四、五戦闘艦隊。第七、九航宙艦隊。第十四機動艦隊。それとハル平和連合軍第二防衛艦隊だけだ。艦艇数は約八百隻といったところだな」
「しかし、実際は違うんでしょう?」
「…その通りだ。無傷、小破の艦艇は三百五十隻余り。しかも半数以上が駆逐、軽巡洋艦だけとなっている」
ハルコルトの問いにあまりにも弱りきったゾラ連合宇宙軍の実情を吐露したゼッフェルン中将の顔は暗い。
他の提督たちも同様の表情を見せる。
作戦会議参加メンバーのうち若い参謀の一人が唯一怪訝な顔でいるのをアンハルトが察して理由を説明する為にゼッフェルン中将を誘導した。
「ゾラ星に降りれる艦艇は百隻強といったところですか?」
「…そうなるな」
ゼッフェルン中将は苦い顔に、勇将と謳われるランゲンバッハ少将もどうしようもないといったように両手を挙げた。
そこまで聞いてやっと若い参謀が全てを理解した。
「そ、そうか!大気圏!」
その通り。
大気圏突入に耐えれる艦艇は基本的に戦艦、重巡洋艦の二種類のみ。
例外に降陸艦という大気圏突入用の艦艇があるが。
具体的には耐熱ジェルを搭載した艦艇ならなんでも降りることが出来る。
しかし積載量が少ない小型艦は武装、弾薬、ワープ用のエンジンを載せると耐熱ジェルを載せるスペースがない。
それと航空戦艦や空母も降りることが出来ない。
何故か。
その理由は艦載機にある。
航空戦艦にしろ空母にしろ運用するにあたって艦載機の補給、整備にコストを大幅に割く。
そうすると必然的に耐熱ジェルを搭載する余裕がなくなるのだ。
しかも耐熱ジェルは大量に艦底に展開し、一回こっきり。
そうなると降りれる艦艇は自ずと明らかになるわけだ。
「で、降陸艦の数は?」
「リーコン要塞のも含めると四百隻はあるぞ」
続くアンハルトの質問に今度はメッゲンドルファー少将が答える。
「では作戦部隊は降陸艦全隻に旗艦となる戦艦とその護衛とし、降下作戦を実施。首都を制圧し、あの兵器を破壊する!」
「はっ!」
ハルコルトの指示に全員が敬礼とともに返答する。
意外とハルコルト中将、総司令官も様になっているな。
そう思ったアンハルトだった。
「あのぉ…」
そののほほんとした特徴的な声ではない声が全員の意識が発声源へと向けさせる。
「ティーメ少将、何か?」
ハルコルトが代表して彼に発言権を与えた。
すると彼はとんでもないことを言ったのだ。
「あの電磁兵器…名を”ヘレ”と言います。超強力な電磁波を放出し、あらゆるものを発火させます。具体的には…」
そう淡々とした声で説明された提督たちは驚愕し、ついで憤慨した。
「何故その様な重要なことを発射前に知らせてくれなかったのだ!」
「私に言われても…」
「では!何故今言う!?」
「たった十分前にハルから連絡が来たんですよ!」
「なに…?」
ランゲンバッハ少将の怒りの前に冷静さを保てないティーメ少将だったがアンハルトらの仲裁により息を整えることが出来た。
「私は出撃前にハル政府から秘密裏に指令を受けました。その指令は秘密兵器であるヘレの存在を突き止めること。名さえ知らず、どの様な効果をもたらすものかも知らず、私は出撃しました。そしてヘレが発射された時、あれが秘密兵器だというのはすぐに分かりました。効果も推測しました。しかし確証がなかった」
「そこにハルから連絡が?」
「その通りです」
アンハルトはなるほどなという顔になるのを見て今度はハルコルトが発言し、謝った。
「この話が本当なら、ティーメ少将に非は無い。…憤ってすまなかった」
他の提督も多くの情報に混乱しつつもティーメ少将に頭を下げた。
ティーメ少将は居心地が悪くなったのか幕僚を従え、出撃の準備に移ると言い残し退出した。
「彼も実際のところ何がなんだかという状況なのでしょう。それでも自身の持てる情報を提供してくれました。しかし引っかかることが一つ…」
「どうした、ホーエンツォレルン大佐」
「総司令官。何故ハル政府はティーメ少将に真実を教えずに送り出したのでしょう?」
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