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Zinnoberrote Rüstung(朱の装甲隊)
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朱色の装甲服を着たアイスナー大佐は艦橋の三階下にある広い通路で装甲隊と合流した。
ユランガルに所属している装甲隊二百名はZinnoberrote Rüstung(朱の装甲隊)と呼ばれ全隊員朱色の装甲服、スペースソード、スペースアックス、スペースナイフ、ビームライフルと統一された装備を使用している。
意味は装甲隊隊長のカール・クヌート・ツヴァイク大佐の趣味だ。
そう、ただそれだけ。
しかしネームド仕様を許可されるぐらいには精強な装甲隊であり、過去に一度、帝国軍陸戦隊第七連隊と交戦し、引き分けに持ち込むほどの屈指の実力を誇る。
しかしツヴァイク大佐とネルソン大佐はその時両隊に所属しておらず、交戦した記録はない。
ツヴァイク大佐はネルソン大佐と同じく二十七歳。
目は茶色で髪は朱色に染めており、髪の生え際が地毛の黒に戻っていることが多い。
身長は百七十五センチ。身体はネルソン大佐ほどではないが引き締まっている。
顔はお世辞にもイケメンとは言い難いがツヴァイク隊の隊員達(連合では隊名は隊長の苗字、帝国では連隊番号)がよく言った。
「隊長は人を切り倒してる時が一番カッコいい顔をしているぜ」
得意武器はネルソンのスペースソードと違って大振りのスペースアックスを使用することが多い。
ちなみにアイスナー大佐はツヴァイク大佐と仲が良い。
歳がだいぶはなれているが二人が気にしたことはなかった。
「アイスナー大佐!敵は戦闘機格納庫で足止めしているそうです。急ぎましょう」
「了解」
艦内の保安隊が敵装甲隊を機関銃で牽制し時間稼ぎをしているのだ。
二人を先頭に朱の装甲隊は走り出す。
盾で機関銃の弾を弾きながら前進する敵装甲隊に保安隊が潰走する前になんとか戦闘機格納庫へとたどり着いた。
ツヴァイク大佐はスペースアックスを地面に音高く突き立て、大声で叫ぶ。
「蹴散らせ!Attack‼︎」
アイスナー大佐や部下も雄叫びを上げる。
「うぉおおおお!!」
相手の隊長も負けじと吠えた。
「行くぞー!!」
「うらぁあああ!!」
両隊四百人と一人がだだっ広い戦闘機格納庫で肉弾戦を開始した。
ちなみに艦内は人工的に重力を発生させる為、スペースソードなどは赤く輝いてはいない。
アイスナー大佐は朱の装甲隊ではないので敵の装甲隊と色形が同じ装甲服だがヘルメットに専用の”剣”を模したペイントを施している為敵味方見間違えられることはなかった。
まず大柄な装甲兵がアイスナー大佐の前に立ち塞がった。
スペースソードを二本持ってその体格に見合わぬ速攻を仕掛けてくる。
スペースソードとスペースナイフの二刀でアイスナー大佐は確実に弾き、反撃を開始する。
「せぇえいやぁ!!」
ナイフを投げつけ、相手がそれを弾いたその一瞬につけ込んだ。
両手でスペースソードを握り、胸めがけて突き刺す。
大柄な装甲兵は悲鳴を上げる前に逆流してきた血をヘルメット内に吐き散らかし、ドッと背中から倒れた。
予備に何本かあるスペースナイフを出し、胸から引き抜いたスペースソードを床に突き刺し、次のターゲットを探す。
ちょうど二人組でこちらに接近してくる敵装甲兵と目が合い、反射的にスペースナイフを投げる。
続けてもう一本。
最初の一本はもちろんスペースソードで弾かれたが、同じ弾道ですぐに来た二本目には弾くことも、避けることも出来ない敵は頭に深々とスペースナイフを打ち砕かれ、膝をつき、ゆっくり倒れていった。
「野郎っ!」
仲間をやられた怒りに身を任せ、敵装甲兵は体当たりを仕掛けてきた。
スペースソードを引き抜くまもなく、アイスナー大佐はその体当たりを受けた。
「ぐぉっ…!」
思いの外体重があった敵装甲兵に転倒を余儀なくされた。
「はっはー!死ねぇえええ!!」
逆手に持ち直したスペースソードがアイスナー大佐に向けられたその時。
「黙れ」
スペースナイフを背後から首にかけられ、一気に横に引かれる敵装甲兵。
「な、にぃ…」
そう言い残し、切れた首からは大量を血が迸る。
ヘルメットはもちろん上半身の装甲服まで朱に染めたアイスナー大佐は助けてくれた人物を声で把握していた。
「助かったぞ、ツヴァイク大佐」
「いえ、貴方に助けてもらった数々の貸しのひとつを返しただけですよ」
そう言って手を伸ばし、アイスナー大佐を助け起こしたツヴァイク大佐は血に塗れた姿を見て笑った。
「大佐、これまでにないほど良い色をしてますね。これでいつでも朱の装甲隊に入れますよ」
「馬鹿。三十六のおっさんにはエリート部隊は務まらんさ」
「ははは。そう言いながらもう二人片付けたんでしょ。ならまだまだいけます…よっと!」
持っていたスペースアックスを後ろから迫っていた敵装甲兵に一閃。
腹を掻っ捌き、血を振り撒きながら倒れる敵の死骸を横目にツヴァイク大佐はもう一度アイスナー大佐に話しかける。
「俺はこれで五人目ですがね」
「お見事。さて、そろそろ掃討戦か」
「えぇ。うちは他と違いますからね」
改めて周りを確認すると二百人いた敵装甲隊は五十人余りになっており、一塊になっていた。
盾を構え、ジリジリと後退し始めている。
朱の装甲隊はスペースライフルに持ち替え、半包囲攻撃の準備を整える。
「降伏しろ!貴様らに勝ち目は無い!」
「うるさい!貴様も装甲兵なら分かるだろう!投降は死よりも恥ずべき行為だ!」
残念ながら部下の面々はもう嫌だ…という顔をしているが。
ツヴァイク大佐の呼びかけに応じない敵の装甲隊隊長は四十過ぎの人物だった。
「俺の名はクライバー大佐だ!貴様ら朱の装甲隊の隊長は誰だ!俺と一騎討ちしろ!」
「いいだろう。俺はツヴァイク大佐だ。その勝負、乗った!」
装甲隊には隊長、もしくは代理の者が部隊の危機に遭った時、一騎討ちを挑む、挑まれることがある。
クライバー大佐は百七十センチほどの身長を少し上回るスペースバトルアックスを構える。
「「はぁああああ!!!」」
二人の雄叫びがヘルメット越しに戦闘機格納庫内で木霊した。
ユランガルに所属している装甲隊二百名はZinnoberrote Rüstung(朱の装甲隊)と呼ばれ全隊員朱色の装甲服、スペースソード、スペースアックス、スペースナイフ、ビームライフルと統一された装備を使用している。
意味は装甲隊隊長のカール・クヌート・ツヴァイク大佐の趣味だ。
そう、ただそれだけ。
しかしネームド仕様を許可されるぐらいには精強な装甲隊であり、過去に一度、帝国軍陸戦隊第七連隊と交戦し、引き分けに持ち込むほどの屈指の実力を誇る。
しかしツヴァイク大佐とネルソン大佐はその時両隊に所属しておらず、交戦した記録はない。
ツヴァイク大佐はネルソン大佐と同じく二十七歳。
目は茶色で髪は朱色に染めており、髪の生え際が地毛の黒に戻っていることが多い。
身長は百七十五センチ。身体はネルソン大佐ほどではないが引き締まっている。
顔はお世辞にもイケメンとは言い難いがツヴァイク隊の隊員達(連合では隊名は隊長の苗字、帝国では連隊番号)がよく言った。
「隊長は人を切り倒してる時が一番カッコいい顔をしているぜ」
得意武器はネルソンのスペースソードと違って大振りのスペースアックスを使用することが多い。
ちなみにアイスナー大佐はツヴァイク大佐と仲が良い。
歳がだいぶはなれているが二人が気にしたことはなかった。
「アイスナー大佐!敵は戦闘機格納庫で足止めしているそうです。急ぎましょう」
「了解」
艦内の保安隊が敵装甲隊を機関銃で牽制し時間稼ぎをしているのだ。
二人を先頭に朱の装甲隊は走り出す。
盾で機関銃の弾を弾きながら前進する敵装甲隊に保安隊が潰走する前になんとか戦闘機格納庫へとたどり着いた。
ツヴァイク大佐はスペースアックスを地面に音高く突き立て、大声で叫ぶ。
「蹴散らせ!Attack‼︎」
アイスナー大佐や部下も雄叫びを上げる。
「うぉおおおお!!」
相手の隊長も負けじと吠えた。
「行くぞー!!」
「うらぁあああ!!」
両隊四百人と一人がだだっ広い戦闘機格納庫で肉弾戦を開始した。
ちなみに艦内は人工的に重力を発生させる為、スペースソードなどは赤く輝いてはいない。
アイスナー大佐は朱の装甲隊ではないので敵の装甲隊と色形が同じ装甲服だがヘルメットに専用の”剣”を模したペイントを施している為敵味方見間違えられることはなかった。
まず大柄な装甲兵がアイスナー大佐の前に立ち塞がった。
スペースソードを二本持ってその体格に見合わぬ速攻を仕掛けてくる。
スペースソードとスペースナイフの二刀でアイスナー大佐は確実に弾き、反撃を開始する。
「せぇえいやぁ!!」
ナイフを投げつけ、相手がそれを弾いたその一瞬につけ込んだ。
両手でスペースソードを握り、胸めがけて突き刺す。
大柄な装甲兵は悲鳴を上げる前に逆流してきた血をヘルメット内に吐き散らかし、ドッと背中から倒れた。
予備に何本かあるスペースナイフを出し、胸から引き抜いたスペースソードを床に突き刺し、次のターゲットを探す。
ちょうど二人組でこちらに接近してくる敵装甲兵と目が合い、反射的にスペースナイフを投げる。
続けてもう一本。
最初の一本はもちろんスペースソードで弾かれたが、同じ弾道ですぐに来た二本目には弾くことも、避けることも出来ない敵は頭に深々とスペースナイフを打ち砕かれ、膝をつき、ゆっくり倒れていった。
「野郎っ!」
仲間をやられた怒りに身を任せ、敵装甲兵は体当たりを仕掛けてきた。
スペースソードを引き抜くまもなく、アイスナー大佐はその体当たりを受けた。
「ぐぉっ…!」
思いの外体重があった敵装甲兵に転倒を余儀なくされた。
「はっはー!死ねぇえええ!!」
逆手に持ち直したスペースソードがアイスナー大佐に向けられたその時。
「黙れ」
スペースナイフを背後から首にかけられ、一気に横に引かれる敵装甲兵。
「な、にぃ…」
そう言い残し、切れた首からは大量を血が迸る。
ヘルメットはもちろん上半身の装甲服まで朱に染めたアイスナー大佐は助けてくれた人物を声で把握していた。
「助かったぞ、ツヴァイク大佐」
「いえ、貴方に助けてもらった数々の貸しのひとつを返しただけですよ」
そう言って手を伸ばし、アイスナー大佐を助け起こしたツヴァイク大佐は血に塗れた姿を見て笑った。
「大佐、これまでにないほど良い色をしてますね。これでいつでも朱の装甲隊に入れますよ」
「馬鹿。三十六のおっさんにはエリート部隊は務まらんさ」
「ははは。そう言いながらもう二人片付けたんでしょ。ならまだまだいけます…よっと!」
持っていたスペースアックスを後ろから迫っていた敵装甲兵に一閃。
腹を掻っ捌き、血を振り撒きながら倒れる敵の死骸を横目にツヴァイク大佐はもう一度アイスナー大佐に話しかける。
「俺はこれで五人目ですがね」
「お見事。さて、そろそろ掃討戦か」
「えぇ。うちは他と違いますからね」
改めて周りを確認すると二百人いた敵装甲隊は五十人余りになっており、一塊になっていた。
盾を構え、ジリジリと後退し始めている。
朱の装甲隊はスペースライフルに持ち替え、半包囲攻撃の準備を整える。
「降伏しろ!貴様らに勝ち目は無い!」
「うるさい!貴様も装甲兵なら分かるだろう!投降は死よりも恥ずべき行為だ!」
残念ながら部下の面々はもう嫌だ…という顔をしているが。
ツヴァイク大佐の呼びかけに応じない敵の装甲隊隊長は四十過ぎの人物だった。
「俺の名はクライバー大佐だ!貴様ら朱の装甲隊の隊長は誰だ!俺と一騎討ちしろ!」
「いいだろう。俺はツヴァイク大佐だ。その勝負、乗った!」
装甲隊には隊長、もしくは代理の者が部隊の危機に遭った時、一騎討ちを挑む、挑まれることがある。
クライバー大佐は百七十センチほどの身長を少し上回るスペースバトルアックスを構える。
「「はぁああああ!!!」」
二人の雄叫びがヘルメット越しに戦闘機格納庫内で木霊した。
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