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第二次リーコン要塞攻防戦
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決行日。
今回の作戦の指揮を任された第四戦闘艦隊司令官ゼッフェルン中将は旗艦シャルンホルストに第十二機動艦隊司令官フロイデンタール少将、第十三機動艦隊司令官ゲープハルト少将を招き、決戦前の乾杯をした。
ゼッフェルン中将は元々酒はあまり飲まないがここぞという時は決まってアルコールを摂った。
ジンクスのようなものだ。
ちなみに戦艦シャルンホルストは竣工より二十年経っている老朽艦である。
何故このような老朽艦を旗艦にし続けているのかというとゼッフェルン中将が三十歳のおり、第十二機動艦隊司令官の任に就いた時、当時の新造戦艦だったシャルンホルストに一目惚れしたのだ。
以来、改装を行う度に
「この見た目をあまり変えんでくれ!」
と歳下の改装担当の技術士官に頭を下げ続けている。
そして五十歳になった今でも宇宙艦隊司令部からの新旗艦打診には耳も貸さず、逆に廃艦案の兆しがあれば各司令官や軍上層部に掛け合って土下座せんばかりの勢いで懇願するのだ。
「廃艦だけはやめてくれ。この艦は俺と一緒に退役する運命なんだ!」
と。
若干拗らせてはいるがそれほど熱烈にシャルンホルストを愛しており、なんと
「伴侶はいらん!シャルンホルストが俺の嫁だ!」
と言うほどだ。
五年前のその発言によりついに軍上層部は折れ、シャルンホルストを改装する時は惜しみなく費用を出した。
実際、老朽艦のシャルンホルストでも戦績は出ており、なんと帝国戦艦二隻と正面から撃ち合った時は無傷で勝利したのだ。
ゼッフェルン中将は歴戦の戦闘指揮者でありながら愛妻家でもあったのである。
そんなゼッフェルン中将のジンクスに付き合う二人の提督、フロイデンタール少将とゲープハルト少将は共に三十二歳である。
フロイデンタール少将は物静かな参謀型の司令官である。常に常識的な考えを持ち、奇をてらわず、戦術はビスマルク提督に似ている。
それもそのはず、彼は二十一歳の大尉時代にビスマルク提督の参謀として活躍したのだ。
そして五年後、二十六歳に少将となり第十二機動艦隊司令官となったのだ。
しかしここ六年間、最前線に第十二機動艦隊は出撃命令を下されておらず久々の戦闘指揮は鈍っているのではないかと有志連合側に言われていた。
対照的にゲープハルト少将の第十三機動艦隊は宇宙海賊アビスと近年戦闘を行なっており、機動力の高いアビスの宙雷艇を二百隻屠るほどの猛者揃いの艦隊だ。
そして午後九時。
「全空戦隊、発艦せよ!要塞砲に取り付け!」
ゼッフェルン中将の指示が飛び、艦隊から戦闘機が次々と発艦していく。
旗艦シャルンホルストは一応、種類としては(旧型の)航空戦艦なので後部に滑走路がある。
しかし最新鋭のユーフテラス級航空戦艦は前部から後部にかけて滑走路がある。
何故後部から前部に滑走路が伸びたかというと元々そこまでコンパクトに戦闘機を戦艦の中に積むことが出来なかった為、前部主砲に比べてあまり使用しない後部の主砲を撤去し後部を完全な格納庫と滑走路にしたのである。
しかし同航戦や反航戦といった時、艦が腹を晒すときの主砲の数が通常の戦艦より少ない為、不利になる。
時が進み戦艦への戦闘機の積み込み方の工夫がされ、回転式の格納主砲と同じスペースに効率的に、より大量の戦闘機を載せることに成功した。
これにより着艦する側と発艦する側でごちゃごちゃしてしまう後部甲板に比べ、後部は船体の両端(一レーンずつ)のみにし、完全な着艦用滑走路とした。
さらに前部に滑走路を新設し後部と繋げ、繋げた所にエレベーター(船体の両端)を設置。
ここで着艦した戦闘機を格納庫へ送る。
発艦する戦闘機は格納庫から中央のエレベーターで前部甲板に移動し、三レーンある滑走路より順次発艦する。
このように戦艦自体を大型化させ、戦闘機の搭載量も増え、着艦側と発艦側の不便も解決したのがユーフテラス級航空戦艦である。
戦艦(旧型の為、ここでは戦艦と記載する)シャルンホルストはユーフテラス級航空戦艦に比べると小型で大口径砲はあまり積んでいないが、後部を格納庫にしている為戦闘機の数はそこまで少なくはない。それに全戦艦のなかでもかなりの高速艦なので現在も最前線で戦えるのだ。
軍事同盟軍三艦隊の空戦隊約四百機が発艦し終え、要塞に近づいていく。
もちろんその様子は要塞側も察知していた。
「敵艦隊空戦隊、接近!」
「要塞の空戦隊を出せ!迎撃せよ!」
「了解!要塞空戦隊発進!パイロットは直ちに滑走路に集合!」
「艦隊は出しますか?」
「いや。空戦隊で邀撃戦闘を行い、様子を見る。だが航空戦艦や軽空母の空戦隊は出す。要塞の空戦隊では数が足らん。宇宙港の航空戦艦、及び軽空母の前は開けておけ。空戦隊を発艦させる」
「聞いたな。宇宙港の艦隊に知らせろ!」
「ハッ!」
要塞司令メッゲンドルファー少将と総司令官バイエルン中将、それに要塞各オペレーターが流れるように作戦を立案し、実行に移す。
宇宙港の旗艦で待機している諸将に連絡し、航空戦艦や軽空母から空戦隊を発艦させる。
要塞空戦隊、艦隊空戦隊の総隊長はアンハルト・フォン・ホーエンツォレルン大佐だった。
「さぁ、いこう」
その一言で全空戦隊員が雄叫びを上げ、各々の戦闘機に乗り込み次々と発艦していく。
「ホーエンツォレルン大佐。発艦を許可する」
管制官の指示に従いユランガルの指定された発進用滑走路に移動したアンハルトは高らかに宣言した。
「アンハルト・フォン・ホーエンツォレルン大佐だ。各機、持てる力を発揮し戦闘に臨め。行くぞ。私に続け!パトリオットB、発艦する!」
パトリオットBの青い機体が瞬時に加速して宇宙へ上がる。
「総隊長に遅れるな!シンヤ・ノダ中佐だ!エアハルト三十二、出るっ!!」
中佐に昇進したノダ中佐のエアハルトも後に続く。
要塞空戦隊と艦隊空戦隊が要塞前面、要塞砲グングニル前に展開する。
その数約六百機。
第二次リーコン要塞攻防戦の初戦は千機にのぼる戦闘機の格闘戦から始まった。
今回の作戦の指揮を任された第四戦闘艦隊司令官ゼッフェルン中将は旗艦シャルンホルストに第十二機動艦隊司令官フロイデンタール少将、第十三機動艦隊司令官ゲープハルト少将を招き、決戦前の乾杯をした。
ゼッフェルン中将は元々酒はあまり飲まないがここぞという時は決まってアルコールを摂った。
ジンクスのようなものだ。
ちなみに戦艦シャルンホルストは竣工より二十年経っている老朽艦である。
何故このような老朽艦を旗艦にし続けているのかというとゼッフェルン中将が三十歳のおり、第十二機動艦隊司令官の任に就いた時、当時の新造戦艦だったシャルンホルストに一目惚れしたのだ。
以来、改装を行う度に
「この見た目をあまり変えんでくれ!」
と歳下の改装担当の技術士官に頭を下げ続けている。
そして五十歳になった今でも宇宙艦隊司令部からの新旗艦打診には耳も貸さず、逆に廃艦案の兆しがあれば各司令官や軍上層部に掛け合って土下座せんばかりの勢いで懇願するのだ。
「廃艦だけはやめてくれ。この艦は俺と一緒に退役する運命なんだ!」
と。
若干拗らせてはいるがそれほど熱烈にシャルンホルストを愛しており、なんと
「伴侶はいらん!シャルンホルストが俺の嫁だ!」
と言うほどだ。
五年前のその発言によりついに軍上層部は折れ、シャルンホルストを改装する時は惜しみなく費用を出した。
実際、老朽艦のシャルンホルストでも戦績は出ており、なんと帝国戦艦二隻と正面から撃ち合った時は無傷で勝利したのだ。
ゼッフェルン中将は歴戦の戦闘指揮者でありながら愛妻家でもあったのである。
そんなゼッフェルン中将のジンクスに付き合う二人の提督、フロイデンタール少将とゲープハルト少将は共に三十二歳である。
フロイデンタール少将は物静かな参謀型の司令官である。常に常識的な考えを持ち、奇をてらわず、戦術はビスマルク提督に似ている。
それもそのはず、彼は二十一歳の大尉時代にビスマルク提督の参謀として活躍したのだ。
そして五年後、二十六歳に少将となり第十二機動艦隊司令官となったのだ。
しかしここ六年間、最前線に第十二機動艦隊は出撃命令を下されておらず久々の戦闘指揮は鈍っているのではないかと有志連合側に言われていた。
対照的にゲープハルト少将の第十三機動艦隊は宇宙海賊アビスと近年戦闘を行なっており、機動力の高いアビスの宙雷艇を二百隻屠るほどの猛者揃いの艦隊だ。
そして午後九時。
「全空戦隊、発艦せよ!要塞砲に取り付け!」
ゼッフェルン中将の指示が飛び、艦隊から戦闘機が次々と発艦していく。
旗艦シャルンホルストは一応、種類としては(旧型の)航空戦艦なので後部に滑走路がある。
しかし最新鋭のユーフテラス級航空戦艦は前部から後部にかけて滑走路がある。
何故後部から前部に滑走路が伸びたかというと元々そこまでコンパクトに戦闘機を戦艦の中に積むことが出来なかった為、前部主砲に比べてあまり使用しない後部の主砲を撤去し後部を完全な格納庫と滑走路にしたのである。
しかし同航戦や反航戦といった時、艦が腹を晒すときの主砲の数が通常の戦艦より少ない為、不利になる。
時が進み戦艦への戦闘機の積み込み方の工夫がされ、回転式の格納主砲と同じスペースに効率的に、より大量の戦闘機を載せることに成功した。
これにより着艦する側と発艦する側でごちゃごちゃしてしまう後部甲板に比べ、後部は船体の両端(一レーンずつ)のみにし、完全な着艦用滑走路とした。
さらに前部に滑走路を新設し後部と繋げ、繋げた所にエレベーター(船体の両端)を設置。
ここで着艦した戦闘機を格納庫へ送る。
発艦する戦闘機は格納庫から中央のエレベーターで前部甲板に移動し、三レーンある滑走路より順次発艦する。
このように戦艦自体を大型化させ、戦闘機の搭載量も増え、着艦側と発艦側の不便も解決したのがユーフテラス級航空戦艦である。
戦艦(旧型の為、ここでは戦艦と記載する)シャルンホルストはユーフテラス級航空戦艦に比べると小型で大口径砲はあまり積んでいないが、後部を格納庫にしている為戦闘機の数はそこまで少なくはない。それに全戦艦のなかでもかなりの高速艦なので現在も最前線で戦えるのだ。
軍事同盟軍三艦隊の空戦隊約四百機が発艦し終え、要塞に近づいていく。
もちろんその様子は要塞側も察知していた。
「敵艦隊空戦隊、接近!」
「要塞の空戦隊を出せ!迎撃せよ!」
「了解!要塞空戦隊発進!パイロットは直ちに滑走路に集合!」
「艦隊は出しますか?」
「いや。空戦隊で邀撃戦闘を行い、様子を見る。だが航空戦艦や軽空母の空戦隊は出す。要塞の空戦隊では数が足らん。宇宙港の航空戦艦、及び軽空母の前は開けておけ。空戦隊を発艦させる」
「聞いたな。宇宙港の艦隊に知らせろ!」
「ハッ!」
要塞司令メッゲンドルファー少将と総司令官バイエルン中将、それに要塞各オペレーターが流れるように作戦を立案し、実行に移す。
宇宙港の旗艦で待機している諸将に連絡し、航空戦艦や軽空母から空戦隊を発艦させる。
要塞空戦隊、艦隊空戦隊の総隊長はアンハルト・フォン・ホーエンツォレルン大佐だった。
「さぁ、いこう」
その一言で全空戦隊員が雄叫びを上げ、各々の戦闘機に乗り込み次々と発艦していく。
「ホーエンツォレルン大佐。発艦を許可する」
管制官の指示に従いユランガルの指定された発進用滑走路に移動したアンハルトは高らかに宣言した。
「アンハルト・フォン・ホーエンツォレルン大佐だ。各機、持てる力を発揮し戦闘に臨め。行くぞ。私に続け!パトリオットB、発艦する!」
パトリオットBの青い機体が瞬時に加速して宇宙へ上がる。
「総隊長に遅れるな!シンヤ・ノダ中佐だ!エアハルト三十二、出るっ!!」
中佐に昇進したノダ中佐のエアハルトも後に続く。
要塞空戦隊と艦隊空戦隊が要塞前面、要塞砲グングニル前に展開する。
その数約六百機。
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