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グングニル、始動
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移住暦四百二十七年十月十三日午前零時。アルベルト達を乗せたハル平和連合第二防衛艦隊はリーコン星に到着した。
リーコン星付近の宙域は地獄と化していた。
遡ること二日前。アルベルト達がハル星に到着した時、既に戦闘は開始されていた。
十月十一日午前七時。
制宙権を掌握した軍事同盟軍の第十七駆逐艦隊がリーコン要塞に攻撃を行った。
「進め!突撃せよ!要塞砲など恐るるに足らず!」
そう叫ぶ四十八歳のツックマイヤー少将の両手には朝食のビックサンドが握られており指揮官席で口一杯に頬張っていた。
この行動は要するにリーコン要塞を、要塞砲グングニルを舐めていたのである。
たかが一門の砲で何が出来るのかと。
だが要塞内の指揮官達は本気だった。
特に要塞司令のメッゲンドルファー少将はやる気満々であり、グングニルが相応の成果を出すことを疑っていなかった。
そしてグングニルはその期待に応えた。
「グングニル、薬室内圧力上昇!」
「エネルギー充填率百パーセント!」
「照準良し!要塞砲グングニル、発射準備良し!」
ウィリバルトや他の提督の視線を受けながらメッゲンドルファー少将は左腕を上げ、下げた。
「アプシーセン!!!」
リーコン要塞の背後(ゾラ星側)からミサイルやビームで攻撃をしてくる駆逐艦隊の方向に移動した要塞砲グングニルの砲身が赤く、青く、白く光る。
そして純白の熱線が一直線に発射され第十七駆逐艦隊の右翼を貫いた。
百五十二隻中、四十隻が右翼に配置していたがその内三十二隻が轟沈、さらに八隻は大破炎上した。
機動力の高い駆逐艦隊の四分の一が瞬時に壊滅したのだ。
ツックマイヤー少将はビックサンドを手から落とし、大声で退却を命じた。
「し、進路反転!面舵一杯!要塞砲の射程から離脱しろぉ!!」
航海長が大慌てで舵を切り、各艦もそれに続く。
だがグングニルは五分後にエネルギー充填率五十パーセントで追い討ちをかけた。
今度は左翼に突き刺さり、二十隻余りが轟沈した。
「敵戦艦一隻、巡洋艦五隻、駆逐艦多数轟沈!敵艦隊後退していきます!!」
頭のヘッドフォンを放り投げ、喜びあうオペレーター達に半瞬遅れて提督達や要塞司令は歓喜の咆哮を上げた。
だがウィリバルトのみ暗い顔をしていた。
不審に思った副官アイスナー大佐が第七航宙艦隊参謀長シュムーデ准将と共にウィリバルトに沈んだ表情のわけを尋ねた。
するとウィリバルトはごく当たり前のことを勝利に酔う友軍戦士に発した。
「要塞砲グングニルは強い。強すぎる。かつては共に戦った同胞をいとも簡単にこの宇宙から退場させたのだぞ。貴官らは心が痛まんか?」
すると頭に包帯を巻いたブレーメン中将が立ち上がり、ウィリバルトに重い一言を投げかけた。
「私もかつての同胞を殺すのは心苦しい。しかしそれが親であろうと兄弟であろうと、信じる道を違えてはもはや他人。敵です。こちらが恩を与えれば仇となり返ってくるやもしれません。今は、致し方ないことなのです」
先日の第一次リーコン沖会戦で父を葬った若い中将は会戦終了後、ペルツ大尉、ナウマン准将から、父の遺言を受け取り、一日を自室で過ごした。
そのことを知っている諸将は重苦しい雰囲気の中、ただ黙るしかなかった。
ウィリバルトは一言、
「すまない」
と言い、戦闘態勢の解除と半日の休息を命じて要塞司令室を後にした。
第一次リーコン要塞攻防戦は圧倒的な力を見せつけた要塞砲グングニルによって攻撃側、軍事同盟軍第十七駆逐艦隊の約四十パーセントを消し飛ばし、有志連合軍の勝利に終わった。
戦闘時間は僅か二十分足らずだった。
「なんということだ!!」
そう言って怒声とともに作戦会議室の机を叩いたのは軍事同盟軍総司令官兼第一戦闘艦隊司令官ハラー・パウルス高等大将だ。
「まさかこれほどの威力とは…」
落ち着いた声を出すも衝撃を隠せないのは副司令官兼第六航宙艦隊司令官カール・マインツ大将である。
十一日午後一時、総旗艦ライヒスブルクに再度集まった提督達は激しく動揺していた。
ツックマイヤー少将は衝撃のあまり、熱を出して寝込んでしまった。
しかし攻撃をやめるわけにもいかず、是非我々にと言ってきた
第四戦闘艦隊司令官ルドウィッグ・ゼッフェルン中将、
第十二機動艦隊司令官マクシミリアン・フロイデンタール少将、
第十三機動艦隊司令官ロフ・フォン・ゲープハルト少将ら三人の提督達が第二次リーコン要塞攻防戦に出撃することとなった。
軍事同盟軍の作戦としては三艦隊が保有する空戦隊を囮とし、要塞砲グングニルの注意を引きつつ、要塞空戦隊やグングニルを攻撃することだ。
もちろんそう簡単に成功するなど軍事同盟軍の提督達は思ってもいなかった。
要塞砲の出力百パーセントから五十パーセントまでは戦艦でさえシールドを貫通することが第一次リーコン要塞攻防戦で分かっている。
つまり要塞砲が空戦隊に発射した直後、五分以内にグングニルを破壊しなければ要塞砲射程圏内にいる軍事同盟軍の艦艇は純白の矢の餌食となるのだ。
この作戦はスピードが命だ。
作戦決行日は十月十二日午後九時となった。
リーコン星付近の宙域は地獄と化していた。
遡ること二日前。アルベルト達がハル星に到着した時、既に戦闘は開始されていた。
十月十一日午前七時。
制宙権を掌握した軍事同盟軍の第十七駆逐艦隊がリーコン要塞に攻撃を行った。
「進め!突撃せよ!要塞砲など恐るるに足らず!」
そう叫ぶ四十八歳のツックマイヤー少将の両手には朝食のビックサンドが握られており指揮官席で口一杯に頬張っていた。
この行動は要するにリーコン要塞を、要塞砲グングニルを舐めていたのである。
たかが一門の砲で何が出来るのかと。
だが要塞内の指揮官達は本気だった。
特に要塞司令のメッゲンドルファー少将はやる気満々であり、グングニルが相応の成果を出すことを疑っていなかった。
そしてグングニルはその期待に応えた。
「グングニル、薬室内圧力上昇!」
「エネルギー充填率百パーセント!」
「照準良し!要塞砲グングニル、発射準備良し!」
ウィリバルトや他の提督の視線を受けながらメッゲンドルファー少将は左腕を上げ、下げた。
「アプシーセン!!!」
リーコン要塞の背後(ゾラ星側)からミサイルやビームで攻撃をしてくる駆逐艦隊の方向に移動した要塞砲グングニルの砲身が赤く、青く、白く光る。
そして純白の熱線が一直線に発射され第十七駆逐艦隊の右翼を貫いた。
百五十二隻中、四十隻が右翼に配置していたがその内三十二隻が轟沈、さらに八隻は大破炎上した。
機動力の高い駆逐艦隊の四分の一が瞬時に壊滅したのだ。
ツックマイヤー少将はビックサンドを手から落とし、大声で退却を命じた。
「し、進路反転!面舵一杯!要塞砲の射程から離脱しろぉ!!」
航海長が大慌てで舵を切り、各艦もそれに続く。
だがグングニルは五分後にエネルギー充填率五十パーセントで追い討ちをかけた。
今度は左翼に突き刺さり、二十隻余りが轟沈した。
「敵戦艦一隻、巡洋艦五隻、駆逐艦多数轟沈!敵艦隊後退していきます!!」
頭のヘッドフォンを放り投げ、喜びあうオペレーター達に半瞬遅れて提督達や要塞司令は歓喜の咆哮を上げた。
だがウィリバルトのみ暗い顔をしていた。
不審に思った副官アイスナー大佐が第七航宙艦隊参謀長シュムーデ准将と共にウィリバルトに沈んだ表情のわけを尋ねた。
するとウィリバルトはごく当たり前のことを勝利に酔う友軍戦士に発した。
「要塞砲グングニルは強い。強すぎる。かつては共に戦った同胞をいとも簡単にこの宇宙から退場させたのだぞ。貴官らは心が痛まんか?」
すると頭に包帯を巻いたブレーメン中将が立ち上がり、ウィリバルトに重い一言を投げかけた。
「私もかつての同胞を殺すのは心苦しい。しかしそれが親であろうと兄弟であろうと、信じる道を違えてはもはや他人。敵です。こちらが恩を与えれば仇となり返ってくるやもしれません。今は、致し方ないことなのです」
先日の第一次リーコン沖会戦で父を葬った若い中将は会戦終了後、ペルツ大尉、ナウマン准将から、父の遺言を受け取り、一日を自室で過ごした。
そのことを知っている諸将は重苦しい雰囲気の中、ただ黙るしかなかった。
ウィリバルトは一言、
「すまない」
と言い、戦闘態勢の解除と半日の休息を命じて要塞司令室を後にした。
第一次リーコン要塞攻防戦は圧倒的な力を見せつけた要塞砲グングニルによって攻撃側、軍事同盟軍第十七駆逐艦隊の約四十パーセントを消し飛ばし、有志連合軍の勝利に終わった。
戦闘時間は僅か二十分足らずだった。
「なんということだ!!」
そう言って怒声とともに作戦会議室の机を叩いたのは軍事同盟軍総司令官兼第一戦闘艦隊司令官ハラー・パウルス高等大将だ。
「まさかこれほどの威力とは…」
落ち着いた声を出すも衝撃を隠せないのは副司令官兼第六航宙艦隊司令官カール・マインツ大将である。
十一日午後一時、総旗艦ライヒスブルクに再度集まった提督達は激しく動揺していた。
ツックマイヤー少将は衝撃のあまり、熱を出して寝込んでしまった。
しかし攻撃をやめるわけにもいかず、是非我々にと言ってきた
第四戦闘艦隊司令官ルドウィッグ・ゼッフェルン中将、
第十二機動艦隊司令官マクシミリアン・フロイデンタール少将、
第十三機動艦隊司令官ロフ・フォン・ゲープハルト少将ら三人の提督達が第二次リーコン要塞攻防戦に出撃することとなった。
軍事同盟軍の作戦としては三艦隊が保有する空戦隊を囮とし、要塞砲グングニルの注意を引きつつ、要塞空戦隊やグングニルを攻撃することだ。
もちろんそう簡単に成功するなど軍事同盟軍の提督達は思ってもいなかった。
要塞砲の出力百パーセントから五十パーセントまでは戦艦でさえシールドを貫通することが第一次リーコン要塞攻防戦で分かっている。
つまり要塞砲が空戦隊に発射した直後、五分以内にグングニルを破壊しなければ要塞砲射程圏内にいる軍事同盟軍の艦艇は純白の矢の餌食となるのだ。
この作戦はスピードが命だ。
作戦決行日は十月十二日午後九時となった。
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