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遭遇戦
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先に被害を出し、更に出し続けたのは帝国軍だった。
「戦艦キャロル被弾!大破!」
「敵艦隊、総攻撃を開始した模様!」
「空戦隊はまだか!?いつ上げれる!」
「空戦隊発進可能まであと十分!」
「こちら空母エイベル!被害甚大!戦線離脱の許可を求む!戦線離脱の………」
「空母エイベル、通信途絶!やられたのか!クソッ!!」
帝国軍の通信回線は悲鳴で満たされた。
ただ予想していなかった宙域から敵艦隊出ただけではこんな混乱には襲われない。
敵艦隊の三将が効率的に帝国軍を狩っていっているからである。
「押しなさい!今この好機を逃してはなりません!!」
特に先頭でチャールズ軍各艦隊を率いるマッケンジー少将の第十二艦隊は帝国軍第五空母艦隊に襲いかかっていた。
「空母はこれ以上被害を出すな!戦艦、重巡洋艦、シールドの壁を作れ!食い止めろ!!」
ニューカッスル中将は必死に空母を艦隊の最奥部に逃している。
戦艦がシールドを最大展開しているが第十二艦隊の圧倒的スピードに対応できていない。
続々と艦隊の内に侵入され、ゼロ距離攻撃を仕掛けてきている。
空母エイベルに続いて軽空母エリーゼが機関をやられ、航行不能となった。
戦闘開始から十分。
第五空母艦隊の損耗率はついに五十パーセントを超えた。
「閣下…!我が艦隊の損耗率が半分を超えました!」
第五空母艦隊参謀長パーキンソン准将が悲痛な声で報告する。
「大丈夫だ!空戦隊を発艦させろ!反撃だ!!」
しかしニューカッスル中将は勝ちを確信したような顔で准将に振り返った。
「犠牲は大きかったが勝った。第十二艦隊が突出している。これを一気に空戦隊で叩く!」
その言葉と同時に各艦隊の空母や戦艦から戦闘機が発艦し始める。
セント・ヴィンセントⅢの管制官がウィリアムに発艦許可を与える。
「ウェールズ中佐。お気をつけて」
「おう!ウィリアム・ウェールズ中佐だ!エリザベスⅡ、出る!」
第一親衛艦隊臨時旗艦セント・ヴィンセントⅢから風防に青薔薇の紋章が描かれたエリザベスⅡがカタパルトで発艦した。
続いて四機のエリザベスが発艦し、ウィリアムに追従する。
「行くぞお前ら!狩りの時間だ!!」
「イエッサー!」
チャールズ軍第十二艦隊目掛けてスズメバチのように帝国軍空戦隊が躍りかかる。
「しまった!」
マッケンジー少将が慌てて対空砲火を浴びせるが一個艦隊に三個艦隊分の空戦隊が襲い掛かったのだ。
たちまち第十二艦隊の艦艇はシールドを艦砲や戦艦のミサイルで剥がされ、戦闘機に肉薄されて一気に撃沈されていく。
「艦隊損耗率八十パーセントを超えました!司令官!!」
オペレーターが絶叫し、指揮席に座るマッケンジー少将を見上げる。
「あぁ…なんということだ…私のミスで…お爺様に合わす顔がない…」
絶望のあまり指揮席からふらふらと立ち上がり、拳銃を腰のホルスターから抜き取る。
そしてそれをこめかみに向ける。
「司令官!それはなりません!!」
それを大慌てで副官や参謀が拳銃を取り上げ、指揮席に座らせる。
「貴方には最後まで艦隊を指揮する義務がおありです!それを忘れ、死に向かおうとするとは何事か!!亡くなられたマッケンジー元帥閣下からは何を学ばれたのだ!!!」
そう怒り狂って説教をしたのは今年で六十になる第十二艦隊参謀長シリル・アスカム准将だ。
マッケンジー元帥がまだ少将の頃から亡くなるまで第十二艦隊の参謀や参謀長を務めた。
そして孫のトム・マッケンジー少将が着任してからも若い司令官を補佐していた。
だからこそ自分は司令官を支えなければという思いで絶望の淵のマッケンジー少将を大声で叱ったのだ。
「降伏するにしろ、徹底抗戦するにしろ、ご自分でお決めくだされ!」
最後の一喝をした直後、艦橋のすぐ近くをビームがかすめ艦橋内を明るく照らした。
シールドが破られ霧散したようだ。
「敵戦艦五隻接近!」
艦長がオペレーターの声を聞いて応戦指示を出す。
するとレーダーを見ていた別のオペレーターが歓喜した。
「第十、第十一艦隊来援!!敵戦艦、後退していきます!」
立て続けに報告され、艦橋内は沸いた。
しかし、戦艦五隻が後退したと思えば空戦隊が襲ってきたのだ。
対艦戦闘を想定していた第十、第十二艦隊の先頭部隊はシールドの懐に潜り込まれ、一撃を戦艦や重巡洋艦のプレスコット装甲に叩き込まれる。
流石のプレスコット装甲も度重なる攻撃でついに破壊されたようだ。
第十一艦隊旗艦戦艦バターフィールドの右舷が赤く輝き爆発した。
「バターフィールドが!!」
参謀の一人が声を上げる。
バターフィールドの継戦能力はまだあるようだがだいぶ損傷しているようだ。
「戦艦バターフィールドより通信!」
「スクリーンに出せ!」
「いえ、違います!通信文です。読み上げます!」
通信オペレーターと艦長のやり取りを聞いていたマッケンジー少将とアスカム准将は通信オペレーターの声に耳を傾ける。
「我、依然として直進す。貴官らは降伏されたし。大勢は決した。ウェールズ大佐は敗者の扱いを心得ている。チャールズ皇子及びオズワルド大将に未来なし。貴官は祖父御の願いを達する為に生き残られたし。…以上です」
艦橋内は嗚咽と号泣に包まれた。
敗戦の哀しさとむざむざキャボット中将を見殺しにする悔しさが戦士達から溢れ出したのだ。
「第十一艦隊、損耗率七十パーセントを超えました…」
オペレーターが鼻をすすりながら報告すると同時にサンダーランドの巨体が大きく震える。
「三番主砲破壊されました!」
「A-五ブロック破壊されました!隔壁を閉じます!」
各所から被害の報告を受けたマッケンジー少将は悲痛な声で艦隊に動力停止とともに信号弾で降伏の意思を示した。
現在、第二親衛艦隊損耗率十パーセント、第十艦隊損耗率三十パーセント、第十一艦隊損耗率七十パーセント、第十二艦隊損耗率八十パーセント。第十二艦隊降伏。
チャールズ軍残存艦艇二百七十九隻。
第一親衛艦隊損耗率五パーセント、第四空母艦隊損耗率十パーセント、第五空母艦隊損耗率五十パーセント、第十五水雷艦隊損耗率ゼロパーセント。
帝国軍残存艦艇三百六十七隻。
「戦艦キャロル被弾!大破!」
「敵艦隊、総攻撃を開始した模様!」
「空戦隊はまだか!?いつ上げれる!」
「空戦隊発進可能まであと十分!」
「こちら空母エイベル!被害甚大!戦線離脱の許可を求む!戦線離脱の………」
「空母エイベル、通信途絶!やられたのか!クソッ!!」
帝国軍の通信回線は悲鳴で満たされた。
ただ予想していなかった宙域から敵艦隊出ただけではこんな混乱には襲われない。
敵艦隊の三将が効率的に帝国軍を狩っていっているからである。
「押しなさい!今この好機を逃してはなりません!!」
特に先頭でチャールズ軍各艦隊を率いるマッケンジー少将の第十二艦隊は帝国軍第五空母艦隊に襲いかかっていた。
「空母はこれ以上被害を出すな!戦艦、重巡洋艦、シールドの壁を作れ!食い止めろ!!」
ニューカッスル中将は必死に空母を艦隊の最奥部に逃している。
戦艦がシールドを最大展開しているが第十二艦隊の圧倒的スピードに対応できていない。
続々と艦隊の内に侵入され、ゼロ距離攻撃を仕掛けてきている。
空母エイベルに続いて軽空母エリーゼが機関をやられ、航行不能となった。
戦闘開始から十分。
第五空母艦隊の損耗率はついに五十パーセントを超えた。
「閣下…!我が艦隊の損耗率が半分を超えました!」
第五空母艦隊参謀長パーキンソン准将が悲痛な声で報告する。
「大丈夫だ!空戦隊を発艦させろ!反撃だ!!」
しかしニューカッスル中将は勝ちを確信したような顔で准将に振り返った。
「犠牲は大きかったが勝った。第十二艦隊が突出している。これを一気に空戦隊で叩く!」
その言葉と同時に各艦隊の空母や戦艦から戦闘機が発艦し始める。
セント・ヴィンセントⅢの管制官がウィリアムに発艦許可を与える。
「ウェールズ中佐。お気をつけて」
「おう!ウィリアム・ウェールズ中佐だ!エリザベスⅡ、出る!」
第一親衛艦隊臨時旗艦セント・ヴィンセントⅢから風防に青薔薇の紋章が描かれたエリザベスⅡがカタパルトで発艦した。
続いて四機のエリザベスが発艦し、ウィリアムに追従する。
「行くぞお前ら!狩りの時間だ!!」
「イエッサー!」
チャールズ軍第十二艦隊目掛けてスズメバチのように帝国軍空戦隊が躍りかかる。
「しまった!」
マッケンジー少将が慌てて対空砲火を浴びせるが一個艦隊に三個艦隊分の空戦隊が襲い掛かったのだ。
たちまち第十二艦隊の艦艇はシールドを艦砲や戦艦のミサイルで剥がされ、戦闘機に肉薄されて一気に撃沈されていく。
「艦隊損耗率八十パーセントを超えました!司令官!!」
オペレーターが絶叫し、指揮席に座るマッケンジー少将を見上げる。
「あぁ…なんということだ…私のミスで…お爺様に合わす顔がない…」
絶望のあまり指揮席からふらふらと立ち上がり、拳銃を腰のホルスターから抜き取る。
そしてそれをこめかみに向ける。
「司令官!それはなりません!!」
それを大慌てで副官や参謀が拳銃を取り上げ、指揮席に座らせる。
「貴方には最後まで艦隊を指揮する義務がおありです!それを忘れ、死に向かおうとするとは何事か!!亡くなられたマッケンジー元帥閣下からは何を学ばれたのだ!!!」
そう怒り狂って説教をしたのは今年で六十になる第十二艦隊参謀長シリル・アスカム准将だ。
マッケンジー元帥がまだ少将の頃から亡くなるまで第十二艦隊の参謀や参謀長を務めた。
そして孫のトム・マッケンジー少将が着任してからも若い司令官を補佐していた。
だからこそ自分は司令官を支えなければという思いで絶望の淵のマッケンジー少将を大声で叱ったのだ。
「降伏するにしろ、徹底抗戦するにしろ、ご自分でお決めくだされ!」
最後の一喝をした直後、艦橋のすぐ近くをビームがかすめ艦橋内を明るく照らした。
シールドが破られ霧散したようだ。
「敵戦艦五隻接近!」
艦長がオペレーターの声を聞いて応戦指示を出す。
するとレーダーを見ていた別のオペレーターが歓喜した。
「第十、第十一艦隊来援!!敵戦艦、後退していきます!」
立て続けに報告され、艦橋内は沸いた。
しかし、戦艦五隻が後退したと思えば空戦隊が襲ってきたのだ。
対艦戦闘を想定していた第十、第十二艦隊の先頭部隊はシールドの懐に潜り込まれ、一撃を戦艦や重巡洋艦のプレスコット装甲に叩き込まれる。
流石のプレスコット装甲も度重なる攻撃でついに破壊されたようだ。
第十一艦隊旗艦戦艦バターフィールドの右舷が赤く輝き爆発した。
「バターフィールドが!!」
参謀の一人が声を上げる。
バターフィールドの継戦能力はまだあるようだがだいぶ損傷しているようだ。
「戦艦バターフィールドより通信!」
「スクリーンに出せ!」
「いえ、違います!通信文です。読み上げます!」
通信オペレーターと艦長のやり取りを聞いていたマッケンジー少将とアスカム准将は通信オペレーターの声に耳を傾ける。
「我、依然として直進す。貴官らは降伏されたし。大勢は決した。ウェールズ大佐は敗者の扱いを心得ている。チャールズ皇子及びオズワルド大将に未来なし。貴官は祖父御の願いを達する為に生き残られたし。…以上です」
艦橋内は嗚咽と号泣に包まれた。
敗戦の哀しさとむざむざキャボット中将を見殺しにする悔しさが戦士達から溢れ出したのだ。
「第十一艦隊、損耗率七十パーセントを超えました…」
オペレーターが鼻をすすりながら報告すると同時にサンダーランドの巨体が大きく震える。
「三番主砲破壊されました!」
「A-五ブロック破壊されました!隔壁を閉じます!」
各所から被害の報告を受けたマッケンジー少将は悲痛な声で艦隊に動力停止とともに信号弾で降伏の意思を示した。
現在、第二親衛艦隊損耗率十パーセント、第十艦隊損耗率三十パーセント、第十一艦隊損耗率七十パーセント、第十二艦隊損耗率八十パーセント。第十二艦隊降伏。
チャールズ軍残存艦艇二百七十九隻。
第一親衛艦隊損耗率五パーセント、第四空母艦隊損耗率十パーセント、第五空母艦隊損耗率五十パーセント、第十五水雷艦隊損耗率ゼロパーセント。
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