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帝国のサーベラス
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チャールズ軍のトップツーはレーダーが使えないからというだけで慌てふためいているが他の司令官は冷静に対応した。
第十ニ艦隊のマッケンジー少将は特に成果を挙げていた。艦隊の対空砲火をわざと左右に集中展開し、それを避けて上下正面から接近する空戦隊に主砲によるビームのカーテンを押し付けた。
勿論避けれる機体もいたが第四空母艦隊の空戦隊の三分の一がこれで壊滅した。
「敵機四機!正面より急速接近!」
「副砲を浴びせなさい!」
若々しく、礼儀正しい声が第十ニ艦隊旗艦サンダーランドの艦橋内を爽やかに駆ける。
トム・マッケンジー少将。歳は二十八。祖父が元軍人で最終階級が元帥という生粋の軍人家庭で育った貴族の一人である。父親はマッケンジー少将がまだ小さい頃に戦死し、大佐で終わってしまった。
そのことを昔気質な祖父は気に病み、孫のマッケンジー少将に元帥まで登り詰めることを厳命し去年脳梗塞で死亡した。
元帥の孫は期待に応えた。
帝国のサーベラスの一角を占めるほどの勇将であり、将来元帥にはなれるだろうと言われている。
サウサンプトン中将は自分の空戦部隊にしたたかに損害を与えたマッケンジー少将の艦隊防御力を遠距離から監視衛星で見て褒め称えた。
「流石マッケンジー元帥のお孫さんだ。それにしても師匠によく似た戦いをする」
そう苦笑いしながら参謀長に向かって語りかけるサウサンプトン中将は故マッケンジー元帥の弟子で戦術や空戦隊の運用、対応を重点的に指導された身である。
「しかし、ああも固まられてはジリ貧だな。よし。ニューカッスル中将とウェールズ大佐、それとバイロン中将に連絡しろ。空戦隊を一時補給も兼ねて帰投させる。第十五水雷艦隊は戦線を離脱しつつ魚雷攻撃で牽制を。第一親衛艦隊含め全艦隊は第二次攻撃に備えて前進されたし。以上だ」
この指示に近い提案はアーサーの元に届き、彼を喜ばせた。
考えていることが同じだったある。
「流石サウサンプトン中将だ。私の考えを読んでいたのだろう。よろしい。全艦隊前進!恐らく敵艦隊も前進してくるだろう。レイトン粒子の有効範囲から出たら正真正銘の激突になる。気を抜くな!!」
帝国軍は機関最大で前進を開始した。
第一次攻撃は結果的にはマッケンジー少将ら”帝国のサーベラス”達によって阻まれた。
空戦隊の二割を失ったが魚雷攻撃や空戦隊の働きによりチャールズ軍は艦隊の一割を撃沈され、また一割を中破まで追い込まれた。
そんな中チャールズ軍は前進した。
理由としてはレイトン粒子の効果範囲外に出たかったからである。惑星サウスエンド=オン=シーは要塞としては脆く、逃げ込んだところでなんの益もなかった。
更にチャールズ軍はレイトン粒子の効果時間を知らない。
サウサンプトン中将が五分ほどで攻撃を中断した為、チャールズ軍はレーダー阻害を受けない宙域へ出れるチャンスを得て、なおかつすぐに阻害範囲外へ出たいという心理をまんまと突かれたのである。
阻害範囲外に出たがったのは一番被害を受けた第二親衛艦隊の司令官オズワルド大将とチャールズ皇子だ。
「直ちにレーダー阻害範囲外へ出る!前進せよ!」
しかしその指示に異を唱えたのは”帝国のサーベラス”諸将達だった。
「敵は我々の行動の常に先にいます。しかし今だけは我々に先手を打つことが出来ます。このまま前進するより全艦隊を再編し、右翼もしくは左翼から惑星を離れ敵の虚を突くべきです」
「その通り。このまま前進しては敵の意のままですぞ」
「殿下、並びに大将閣下。何卒お聞き入れくだされ」
マッケンジー少将、マギー中将、キャボット中将がそれぞれ二人を諭したが
「ふざけるな!何故この私の命令を聞けん!?私の意に背くのか!!いいからレーダー阻害を受けない宙域まで前進せよ!良いか!?」
ジロリと航海長を睨み発進するように促す。
航海長が戸惑ったように各司令官を見るが彼らは諦めた様子で手を振り、発進を命じた。
帝国暦三百十五年十月十七日午前七時に行われた第一次攻撃の後から二時間が経過し、帝国軍とチャールズ軍が激突した。
しかし正面からではなかった。
レーダー阻害によりチャールズ軍の進路が真っ直ぐに設定されず少し斜めに、正確には帝国軍の正面から十時方向に移動していた。
反航戦である。
「レーダーに感!十時方向に敵艦隊!至近です!距離百キロ!双方射程圏内です!!」
「何!?」
アーサーが指揮席より立ち上がり、すぐに命令を下した。
「空母及び駆逐艦、軽巡洋艦は右舷側へ退避!その後空戦隊を発艦させろ!戦艦、重巡洋艦はシールドを最大展開!!」
「兄上!これはまずいんじゃ!?」
ウィリアムが珍しく動揺した。
それもそのはずチャールズ軍は戦艦を多数配備されている艦隊が多いのだ。
帝国軍にとっては不本意な形で第二次攻撃が開始された。
チャールズが不敵な笑みを、アーサーが焦りを顔に出し、共に攻撃命令を下した。
「「ファイアー!!」」
第十ニ艦隊のマッケンジー少将は特に成果を挙げていた。艦隊の対空砲火をわざと左右に集中展開し、それを避けて上下正面から接近する空戦隊に主砲によるビームのカーテンを押し付けた。
勿論避けれる機体もいたが第四空母艦隊の空戦隊の三分の一がこれで壊滅した。
「敵機四機!正面より急速接近!」
「副砲を浴びせなさい!」
若々しく、礼儀正しい声が第十ニ艦隊旗艦サンダーランドの艦橋内を爽やかに駆ける。
トム・マッケンジー少将。歳は二十八。祖父が元軍人で最終階級が元帥という生粋の軍人家庭で育った貴族の一人である。父親はマッケンジー少将がまだ小さい頃に戦死し、大佐で終わってしまった。
そのことを昔気質な祖父は気に病み、孫のマッケンジー少将に元帥まで登り詰めることを厳命し去年脳梗塞で死亡した。
元帥の孫は期待に応えた。
帝国のサーベラスの一角を占めるほどの勇将であり、将来元帥にはなれるだろうと言われている。
サウサンプトン中将は自分の空戦部隊にしたたかに損害を与えたマッケンジー少将の艦隊防御力を遠距離から監視衛星で見て褒め称えた。
「流石マッケンジー元帥のお孫さんだ。それにしても師匠によく似た戦いをする」
そう苦笑いしながら参謀長に向かって語りかけるサウサンプトン中将は故マッケンジー元帥の弟子で戦術や空戦隊の運用、対応を重点的に指導された身である。
「しかし、ああも固まられてはジリ貧だな。よし。ニューカッスル中将とウェールズ大佐、それとバイロン中将に連絡しろ。空戦隊を一時補給も兼ねて帰投させる。第十五水雷艦隊は戦線を離脱しつつ魚雷攻撃で牽制を。第一親衛艦隊含め全艦隊は第二次攻撃に備えて前進されたし。以上だ」
この指示に近い提案はアーサーの元に届き、彼を喜ばせた。
考えていることが同じだったある。
「流石サウサンプトン中将だ。私の考えを読んでいたのだろう。よろしい。全艦隊前進!恐らく敵艦隊も前進してくるだろう。レイトン粒子の有効範囲から出たら正真正銘の激突になる。気を抜くな!!」
帝国軍は機関最大で前進を開始した。
第一次攻撃は結果的にはマッケンジー少将ら”帝国のサーベラス”達によって阻まれた。
空戦隊の二割を失ったが魚雷攻撃や空戦隊の働きによりチャールズ軍は艦隊の一割を撃沈され、また一割を中破まで追い込まれた。
そんな中チャールズ軍は前進した。
理由としてはレイトン粒子の効果範囲外に出たかったからである。惑星サウスエンド=オン=シーは要塞としては脆く、逃げ込んだところでなんの益もなかった。
更にチャールズ軍はレイトン粒子の効果時間を知らない。
サウサンプトン中将が五分ほどで攻撃を中断した為、チャールズ軍はレーダー阻害を受けない宙域へ出れるチャンスを得て、なおかつすぐに阻害範囲外へ出たいという心理をまんまと突かれたのである。
阻害範囲外に出たがったのは一番被害を受けた第二親衛艦隊の司令官オズワルド大将とチャールズ皇子だ。
「直ちにレーダー阻害範囲外へ出る!前進せよ!」
しかしその指示に異を唱えたのは”帝国のサーベラス”諸将達だった。
「敵は我々の行動の常に先にいます。しかし今だけは我々に先手を打つことが出来ます。このまま前進するより全艦隊を再編し、右翼もしくは左翼から惑星を離れ敵の虚を突くべきです」
「その通り。このまま前進しては敵の意のままですぞ」
「殿下、並びに大将閣下。何卒お聞き入れくだされ」
マッケンジー少将、マギー中将、キャボット中将がそれぞれ二人を諭したが
「ふざけるな!何故この私の命令を聞けん!?私の意に背くのか!!いいからレーダー阻害を受けない宙域まで前進せよ!良いか!?」
ジロリと航海長を睨み発進するように促す。
航海長が戸惑ったように各司令官を見るが彼らは諦めた様子で手を振り、発進を命じた。
帝国暦三百十五年十月十七日午前七時に行われた第一次攻撃の後から二時間が経過し、帝国軍とチャールズ軍が激突した。
しかし正面からではなかった。
レーダー阻害によりチャールズ軍の進路が真っ直ぐに設定されず少し斜めに、正確には帝国軍の正面から十時方向に移動していた。
反航戦である。
「レーダーに感!十時方向に敵艦隊!至近です!距離百キロ!双方射程圏内です!!」
「何!?」
アーサーが指揮席より立ち上がり、すぐに命令を下した。
「空母及び駆逐艦、軽巡洋艦は右舷側へ退避!その後空戦隊を発艦させろ!戦艦、重巡洋艦はシールドを最大展開!!」
「兄上!これはまずいんじゃ!?」
ウィリアムが珍しく動揺した。
それもそのはずチャールズ軍は戦艦を多数配備されている艦隊が多いのだ。
帝国軍にとっては不本意な形で第二次攻撃が開始された。
チャールズが不敵な笑みを、アーサーが焦りを顔に出し、共に攻撃命令を下した。
「「ファイアー!!」」
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