戦場立志伝

決戦前夜

　有志連合軍の面々は額を集めてリーコン基地の防衛法を練っていた。
初戦に出てきたのはあのピーター・フォン・ブレーメン中将だった。
彼は荒々しい攻め方を得意としており多少の被害では怯まず攻撃を続行してくる為、帝国軍から恐れられていた。但し、短気な性格が災いしよく持久戦や戦線膠着になると突撃を命じて返り討ちにあうということも多々ある。
そんな荒武者のような提督を迎え撃つは息子の
ハルコルト・フォン・ブレーメン中将に決定した。
本人たっての希望でもあったが彼と関わりが薄い提督達は彼が裏切ることを懸念していた為、
先鋒を務めることによってそれを払拭しようと図ったのである。
無論ハルコルトは実の父親だからとて手を抜くことなど一切考えてなかった。
彼は父親のことが大嫌いなのだから。

ゾラ星の衛星軌道上で待機していた第八航宙艦隊の百二十隻は一ヶ月程の睨み合いから一転、リーコン基地に接近してきた。
司令官の性格上、一ヶ月も睨み合いをするなどありえないことだったが恐らく上層部から止められていたのだろう。
その理由は軍事同盟側が有志連合側の兵力を把握していなかったからであろう。
しかし一ヶ月程経ち、集めた情報が信用出来ると上層部が踏んだ為ピーター中将に攻撃命令が下った。
ピーター中将指揮下の第八航宙艦隊の後方にはツックマイヤー少将率いる百五十二隻の第十七駆逐艦隊が配置されている為、第一次討伐隊は
二百七十二隻になる。
対するハルコルト中将の艦隊は第十一、十五、十六艦隊の敗残兵である百十五隻の混成艦隊だった。
最前線兵力は同じでも前回の大会戦に参加していない第八航宙艦隊の方が士気は高い。
ウィリバルトは増援を送ると提案したがハルコルト中将はそれを拒否した。
二倍の兵力差を覆して実父に対して威張るつもりなのである。
中将という階級を持ちながらやはりそういう所は若造であるな、と思うウィリバルトだった。
しかしそのハルコルトの願い虚しくウィリバルトは密かに増援の用意を進めていたのであった。
リーコン星沖で起こった会戦、リーコン沖会戦はほぼ同数の兵力で同じ名字、同じ血を分かつ者が戦った。
先にピーター中将が布陣し、微速前進をしつつ哨戒艇を各地にばらまいていた。
続いてハルコルト中将も布陣を敷いた。
両陣営とも横陣を選択し、徐々に距離を詰めて行った。
そして戦闘が開始された。
戦闘開始時刻は十月二日午後一時二十分。
そしてその日はアルベルトが"ジェームズ"を脱出した日でもあった。