15 / 63
ドーヴァー星域大会戦
しおりを挟む
戦闘開始から一時間、アルベルトとアンハルトは空戦隊室で作戦の確認を行っていた。
「そろそろ我々に出撃命令がくるはずだ。総員、気を引き締めておくように」
空戦隊の隊長となったアンハルトは隊員達にそう告げた。
「第一空戦隊は私が率いる。第二空戦隊はバイエルン中佐、第三空戦隊はノダ少佐に任せる」
「はっ!」
隊員達の緊張した声が部屋の中を満たした。
「アンハルト、ようやく俺たち隊長になれたな?」
アルベルトがアンハルトに歩み寄って話しかけた。
「まぁ前回の会戦、私たちは試験機に乗っていたからな。階級が隊長になる資格があっても試験機のパイロットには任せられんというのが上にはあったんだろう」
「でも今回は違う。腕が鳴るよ」
するとそこへノダ少佐がやってきた。
彼は地球を捨てて新たな惑星を探す旅に出た日本人の末裔だった。
フルネームはシンヤ・ノダ。歳は二十二。
体格は小柄で百五十センチしかない。しかし彼自身はコンプレックスとも思ってもいなかったようだ。
「大佐殿、今回の作戦よろしくお願いします」
「ええ、頼りにさせて頂きます」
戦闘がすでに始まっているというのに空戦隊室はのどかなものだった。
しかし艦橋から来た指令によってその空気は一気に張り詰めたものとなってしまった。
「総員、各々の機体に行け!」
アルベルトがそう言いつつ自分の機体に乗り込んで発進用滑走路へと向かう。
隣にはアンハルトもいた。
「ハッチ開放。パトリオットA、B、発進を許可する」
「了解、パトリオットA、発進する!」
「パトリオットB、出撃します」
アルベルトが叫び、アンハルトが落ち着いた声でコールした。
閃光。爆発。
音の無い世界で繰り広げられる戦い。
一つの光が飛び散るたびに数百という命が消えていく。
その世界の中でアルベルトは新たな戦果を自分の戦果ページに追加した。
これで三機目。
アンハルトやノダ少佐も二機ずつ墜としている。出撃して十五分でこの戦果だった。
艦隊戦の戦況はやや帝国側が有利だが気を抜くと一気に逆転される可能性を秘めている。
連合は当初の作戦通り帝国軍と接近戦を繰り広げている。
この光景を見ている者達の中で、ある若者が自分の席から立ち上がった。
短く切った金髪、高い背丈、階級は大佐。
その者の名はアーサーといった。
アーサーは自分の船の艦橋から出て行こうとした所を副長に止められた。
「艦長!何処へ行かれるおつもりです?」
「知れたこと。私があの空戦隊を倒しに行くのだ」
「し、しかし」
焦った表情で副長が引き止めようとするが新たな制止の声が飛んでくる前に先に声を放った。
「副長、この艦のこと後は任せた。ウィリアム、行くぞ」
いつの間にかアーサーの後ろにいた弟に声をかけ、第二皇子と第四皇子は格納庫へと向かいそれを諦めた視線で見送る副長だった。
彼らが乗る機体はエリザベスIIである。
帝国の主力機であるエリザベスの改良型でついこの間完成したばかりだった。
その機体に乗り込んだウィリアムが兄に疑問を放った。
「兄上、俺たちって皇子だよなぁ?」
「そうだが」
「皇子って普通パイロットじゃないだろ」
「そうかもしれん」
アーサーの返事は淡々としている。
「だが陛下の後継者となるには文武どちらかで優秀でなければならないというのが陛下のお気持ちだ。そしてそれが私たちにとってパイロットというだけだ」
この言葉は辛辣を極めた。
特に何もせずふんぞり返っている第一皇子のことを影で批判しているからである。
「そろそろ我々に出撃命令がくるはずだ。総員、気を引き締めておくように」
空戦隊の隊長となったアンハルトは隊員達にそう告げた。
「第一空戦隊は私が率いる。第二空戦隊はバイエルン中佐、第三空戦隊はノダ少佐に任せる」
「はっ!」
隊員達の緊張した声が部屋の中を満たした。
「アンハルト、ようやく俺たち隊長になれたな?」
アルベルトがアンハルトに歩み寄って話しかけた。
「まぁ前回の会戦、私たちは試験機に乗っていたからな。階級が隊長になる資格があっても試験機のパイロットには任せられんというのが上にはあったんだろう」
「でも今回は違う。腕が鳴るよ」
するとそこへノダ少佐がやってきた。
彼は地球を捨てて新たな惑星を探す旅に出た日本人の末裔だった。
フルネームはシンヤ・ノダ。歳は二十二。
体格は小柄で百五十センチしかない。しかし彼自身はコンプレックスとも思ってもいなかったようだ。
「大佐殿、今回の作戦よろしくお願いします」
「ええ、頼りにさせて頂きます」
戦闘がすでに始まっているというのに空戦隊室はのどかなものだった。
しかし艦橋から来た指令によってその空気は一気に張り詰めたものとなってしまった。
「総員、各々の機体に行け!」
アルベルトがそう言いつつ自分の機体に乗り込んで発進用滑走路へと向かう。
隣にはアンハルトもいた。
「ハッチ開放。パトリオットA、B、発進を許可する」
「了解、パトリオットA、発進する!」
「パトリオットB、出撃します」
アルベルトが叫び、アンハルトが落ち着いた声でコールした。
閃光。爆発。
音の無い世界で繰り広げられる戦い。
一つの光が飛び散るたびに数百という命が消えていく。
その世界の中でアルベルトは新たな戦果を自分の戦果ページに追加した。
これで三機目。
アンハルトやノダ少佐も二機ずつ墜としている。出撃して十五分でこの戦果だった。
艦隊戦の戦況はやや帝国側が有利だが気を抜くと一気に逆転される可能性を秘めている。
連合は当初の作戦通り帝国軍と接近戦を繰り広げている。
この光景を見ている者達の中で、ある若者が自分の席から立ち上がった。
短く切った金髪、高い背丈、階級は大佐。
その者の名はアーサーといった。
アーサーは自分の船の艦橋から出て行こうとした所を副長に止められた。
「艦長!何処へ行かれるおつもりです?」
「知れたこと。私があの空戦隊を倒しに行くのだ」
「し、しかし」
焦った表情で副長が引き止めようとするが新たな制止の声が飛んでくる前に先に声を放った。
「副長、この艦のこと後は任せた。ウィリアム、行くぞ」
いつの間にかアーサーの後ろにいた弟に声をかけ、第二皇子と第四皇子は格納庫へと向かいそれを諦めた視線で見送る副長だった。
彼らが乗る機体はエリザベスIIである。
帝国の主力機であるエリザベスの改良型でついこの間完成したばかりだった。
その機体に乗り込んだウィリアムが兄に疑問を放った。
「兄上、俺たちって皇子だよなぁ?」
「そうだが」
「皇子って普通パイロットじゃないだろ」
「そうかもしれん」
アーサーの返事は淡々としている。
「だが陛下の後継者となるには文武どちらかで優秀でなければならないというのが陛下のお気持ちだ。そしてそれが私たちにとってパイロットというだけだ」
この言葉は辛辣を極めた。
特に何もせずふんぞり返っている第一皇子のことを影で批判しているからである。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
転生少女は大戦の空を飛ぶ
モラーヌソルニエ
ファンタジー
薄っぺらいニワカ戦闘機オタク(歴史的知識なし)が大戦の狭間に転生すると何が起きるでしょう。これは現代日本から第二次世界大戦前の北欧に転生した少女の空戦史である。カクヨムでも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる