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ドーヴァー星域大会戦
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戦闘開始から一時間、アルベルトとアンハルトは空戦隊室で作戦の確認を行っていた。
「そろそろ我々に出撃命令がくるはずだ。総員、気を引き締めておくように」
空戦隊の隊長となったアンハルトは隊員達にそう告げた。
「第一空戦隊は私が率いる。第二空戦隊はバイエルン中佐、第三空戦隊はノダ少佐に任せる」
「はっ!」
隊員達の緊張した声が部屋の中を満たした。
「アンハルト、ようやく俺たち隊長になれたな?」
アルベルトがアンハルトに歩み寄って話しかけた。
「まぁ前回の会戦、私たちは試験機に乗っていたからな。階級が隊長になる資格があっても試験機のパイロットには任せられんというのが上にはあったんだろう」
「でも今回は違う。腕が鳴るよ」
するとそこへノダ少佐がやってきた。
彼は地球を捨てて新たな惑星を探す旅に出た日本人の末裔だった。
フルネームはシンヤ・ノダ。歳は二十二。
体格は小柄で百五十センチしかない。しかし彼自身はコンプレックスとも思ってもいなかったようだ。
「大佐殿、今回の作戦よろしくお願いします」
「ええ、頼りにさせて頂きます」
戦闘がすでに始まっているというのに空戦隊室はのどかなものだった。
しかし艦橋から来た指令によってその空気は一気に張り詰めたものとなってしまった。
「総員、各々の機体に行け!」
アルベルトがそう言いつつ自分の機体に乗り込んで発進用滑走路へと向かう。
隣にはアンハルトもいた。
「ハッチ開放。パトリオットA、B、発進を許可する」
「了解、パトリオットA、発進する!」
「パトリオットB、出撃します」
アルベルトが叫び、アンハルトが落ち着いた声でコールした。
閃光。爆発。
音の無い世界で繰り広げられる戦い。
一つの光が飛び散るたびに数百という命が消えていく。
その世界の中でアルベルトは新たな戦果を自分の戦果ページに追加した。
これで三機目。
アンハルトやノダ少佐も二機ずつ墜としている。出撃して十五分でこの戦果だった。
艦隊戦の戦況はやや帝国側が有利だが気を抜くと一気に逆転される可能性を秘めている。
連合は当初の作戦通り帝国軍と接近戦を繰り広げている。
この光景を見ている者達の中で、ある若者が自分の席から立ち上がった。
短く切った金髪、高い背丈、階級は大佐。
その者の名はアーサーといった。
アーサーは自分の船の艦橋から出て行こうとした所を副長に止められた。
「艦長!何処へ行かれるおつもりです?」
「知れたこと。私があの空戦隊を倒しに行くのだ」
「し、しかし」
焦った表情で副長が引き止めようとするが新たな制止の声が飛んでくる前に先に声を放った。
「副長、この艦のこと後は任せた。ウィリアム、行くぞ」
いつの間にかアーサーの後ろにいた弟に声をかけ、第二皇子と第四皇子は格納庫へと向かいそれを諦めた視線で見送る副長だった。
彼らが乗る機体はエリザベスIIである。
帝国の主力機であるエリザベスの改良型でついこの間完成したばかりだった。
その機体に乗り込んだウィリアムが兄に疑問を放った。
「兄上、俺たちって皇子だよなぁ?」
「そうだが」
「皇子って普通パイロットじゃないだろ」
「そうかもしれん」
アーサーの返事は淡々としている。
「だが陛下の後継者となるには文武どちらかで優秀でなければならないというのが陛下のお気持ちだ。そしてそれが私たちにとってパイロットというだけだ」
この言葉は辛辣を極めた。
特に何もせずふんぞり返っている第一皇子のことを影で批判しているからである。
「そろそろ我々に出撃命令がくるはずだ。総員、気を引き締めておくように」
空戦隊の隊長となったアンハルトは隊員達にそう告げた。
「第一空戦隊は私が率いる。第二空戦隊はバイエルン中佐、第三空戦隊はノダ少佐に任せる」
「はっ!」
隊員達の緊張した声が部屋の中を満たした。
「アンハルト、ようやく俺たち隊長になれたな?」
アルベルトがアンハルトに歩み寄って話しかけた。
「まぁ前回の会戦、私たちは試験機に乗っていたからな。階級が隊長になる資格があっても試験機のパイロットには任せられんというのが上にはあったんだろう」
「でも今回は違う。腕が鳴るよ」
するとそこへノダ少佐がやってきた。
彼は地球を捨てて新たな惑星を探す旅に出た日本人の末裔だった。
フルネームはシンヤ・ノダ。歳は二十二。
体格は小柄で百五十センチしかない。しかし彼自身はコンプレックスとも思ってもいなかったようだ。
「大佐殿、今回の作戦よろしくお願いします」
「ええ、頼りにさせて頂きます」
戦闘がすでに始まっているというのに空戦隊室はのどかなものだった。
しかし艦橋から来た指令によってその空気は一気に張り詰めたものとなってしまった。
「総員、各々の機体に行け!」
アルベルトがそう言いつつ自分の機体に乗り込んで発進用滑走路へと向かう。
隣にはアンハルトもいた。
「ハッチ開放。パトリオットA、B、発進を許可する」
「了解、パトリオットA、発進する!」
「パトリオットB、出撃します」
アルベルトが叫び、アンハルトが落ち着いた声でコールした。
閃光。爆発。
音の無い世界で繰り広げられる戦い。
一つの光が飛び散るたびに数百という命が消えていく。
その世界の中でアルベルトは新たな戦果を自分の戦果ページに追加した。
これで三機目。
アンハルトやノダ少佐も二機ずつ墜としている。出撃して十五分でこの戦果だった。
艦隊戦の戦況はやや帝国側が有利だが気を抜くと一気に逆転される可能性を秘めている。
連合は当初の作戦通り帝国軍と接近戦を繰り広げている。
この光景を見ている者達の中で、ある若者が自分の席から立ち上がった。
短く切った金髪、高い背丈、階級は大佐。
その者の名はアーサーといった。
アーサーは自分の船の艦橋から出て行こうとした所を副長に止められた。
「艦長!何処へ行かれるおつもりです?」
「知れたこと。私があの空戦隊を倒しに行くのだ」
「し、しかし」
焦った表情で副長が引き止めようとするが新たな制止の声が飛んでくる前に先に声を放った。
「副長、この艦のこと後は任せた。ウィリアム、行くぞ」
いつの間にかアーサーの後ろにいた弟に声をかけ、第二皇子と第四皇子は格納庫へと向かいそれを諦めた視線で見送る副長だった。
彼らが乗る機体はエリザベスIIである。
帝国の主力機であるエリザベスの改良型でついこの間完成したばかりだった。
その機体に乗り込んだウィリアムが兄に疑問を放った。
「兄上、俺たちって皇子だよなぁ?」
「そうだが」
「皇子って普通パイロットじゃないだろ」
「そうかもしれん」
アーサーの返事は淡々としている。
「だが陛下の後継者となるには文武どちらかで優秀でなければならないというのが陛下のお気持ちだ。そしてそれが私たちにとってパイロットというだけだ」
この言葉は辛辣を極めた。
特に何もせずふんぞり返っている第一皇子のことを影で批判しているからである。
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