14 / 63
遠征帝ジェームズ九世
しおりを挟む帝国十六代皇帝ジェームズ九世は椅子に座り外の風景を眺めていた。ただその椅子は宇宙空間に浮かぶ巨大戦艦の指揮席だった。
彼の目の前には連合軍遠征艦隊がその姿を、見せ始めていた。
全宇宙の統治を目指す彼は不敵に笑った。
八月二十日連合遠征艦隊はドーヴァー星域にワープアウトした。そして敵艦隊を発見した。
「全艦ワープアウト、敵艦隊正面にあり。数は六百隻前後です」
シュタルクの艦橋で静かにそして緊張した空気の中行われる各艦との情報の交換作業中、各司令官が予想していた情報が旗艦に飛び込んだ。
「総司令官閣下!敵艦隊の中央部に巨大戦艦が一隻確認でき、艦型は"エドワード一世"です!!」
「やはりか…」
ビスマルク中将は独語した。
ジェームズ九世は歴代の皇帝の中でも最も好戦的で最も戦果を上げた皇帝だ。
その彼はさすがに廷臣等に止められて遠征はしないが今回のような防衛戦には嬉々として最前線に赴いてくる。
なので連合軍各司令官はこのことをある程度予想していたのだ。
ともかく敵軍の総帥がわざわざ最前線まで出向いてくれたならそれ相応の対応をするだけのこと。気分が高揚してきたビスマルクは部下達に伝達した。
「お前たち、今回もわざわざ敵国の皇帝陛下が最前線まで赴いてくれたぞ。ちゃんと歓迎パーティーの準備は出来てるだろうな?」
たいして上手くない冗談がこの時はある程度の数の部下にうけた。
それから真面目な顔になって、ビスマルクは
全艦隊に総力戦用意を命じた。
互いの陣形は連合が魚鱗、帝国が鶴翼を敷いている。互いに数の差を理解した陣だ。
連合の前部はビスマルク中将、左翼はハウクウィッツ少将、右翼はブレーメン少将、そして中央部はウィリバルトの航宙艦隊が配置された。
対して帝国は前部にマンチェスター大将、左翼にはオブライエン少将、右翼は第四空母艦隊を指揮するサウサンプトン中将、中央部はジェームズ九世の第一親衛艦隊、そして後方にニューカッスル中将率いる第五空母艦隊という陣容となっている。
サウサンプトン中将は黒人の巨漢で歳は四十。身長は二メートル二センチもある。
彼の正面には立ちたくないというのが兵士達の本音である。
ただその見た目に反して性格はとても穏和で優しい人だ。
なるべく敵には降伏を呼びかけ、助けられる命は敵兵であっても助けるというのが彼のモットーだった。
第五空母艦隊艦隊司令官のニューカッスル中将は三十五歳の青年でサウサンプトン中将と真逆の性格をしており、しばしば彼と作戦の意見対立が目立つ。
そんな彼らを統率する能力がジェームズ九世にはあった。彼はこの大会戦が帝国の勝利となることを疑っていなかった。
そして今ドーヴァー星域大会戦の火蓋が切って落とされた。
「アプシーセン!!」
「ファイアー!!」
両軍の総司令官の怒号に各艦の砲手は応えた。帝国はビーム、連合はミサイルの壁を互いに押し付けあった。
やはり威力とスピードに勝るビームがミサイルをへし折りつつ接近するが連合軍各艦のシールドに当たって閃光を撒き散らして消えていく。
対して次弾装填がビームより速く済むミサイルは数で帝国艦隊のシールドを噛みちぎろうとするが巧みな操艦で避けられることもしばしばあった。
戦闘開始から二時間、戦局は両軍の空戦隊の出撃で大きく動いた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ロイレシア戦記:赤の章
方正
ファンタジー
遥か昔、世界は灰色の空の下、大地は枯れて荒野が世界の果てまで続いていました。
人々は魔物に怯え、暗闇の世界を細々と暮らしていました。
ある日、空から星が落ちました。
その星を受け止めた人は、世界を照らす光の魔法を手に入れました。
星を受け取った人は旅人して、世界を照らす旅を始めました。
旅を続ける中、旅人を王として慕う四人の騎士が現れました。
最後の旅に魔人と戦うことになり、魔人の王を倒すと旅人は命を落としてしまいます。
旅人は四人の騎士達と誓いを立てることになります。
世界を照らし続ける事を旅人は約束しました。
騎士達は4つの方角を向いて、大地を守る事を約束しました。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
何なりとご命令ください
ブレイブ
SF
アンドロイドのフォルトに自我はなく、ただ一人、主人の命令を果たすためにただ一人、歩いていたが、カラダが限界を迎え、倒れたが、フォルトは主人に似た少年に救われたが、不具合があり、ほとんどの記憶を失ってしまった
この作品は赤ん坊を拾ったのは戦闘型のアンドロイドでしたのスピンオフです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる