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第51話 第3次カーリス海海戦
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ルンテシュタット王国とスカリー帝国の間で続けられた講和交渉は決裂した。
そもそも御前会議を無断欠席したハンニル2世には講和を結ぶ気がさらさら無かったので、投げ返された帝国の返答にブチギレた。
思い通りにいかない戦争に不貞腐れていた国王は1年前の怒りが再燃した様だ。
ハンニル2世は新陸軍本部長ラヴォトノフ大将にアルフォードを断固撃退するよう命じ、海軍本部長ドクトラには
「これが最後の機会だ!しくじるな!!」
と身勝手に厳命した。
上陸護衛のスカリー帝国・カーリス皇国海軍を引き寄せて王国海軍が叩く──
これがアンカーの立案した迎撃作戦だ。
そもそも敵艦隊は既にカーリス海に布陣しており、こちらを大軍で待ち構えている。
なら数の多い帝国海軍を上陸艦船から引っぺがして各個撃破すれば良いとアンカーは考えたのだ。
理由としては単純な艦隊決戦、もしくは航空決戦を敵艦隊に挑んだところで全ての艦種の数で劣っており、撃滅されるのがオチだからだ。
それよりも上陸準備で忙しい彼らにちょっかいをかけ、上手く引き離せれば陸の友軍は艦砲射撃に晒されることも無く、アンカー達海軍は場所によっては陸からの支援も期待出来るかもしれない。
具体的な作戦案を練ったアンカーは、出動する全艦艇の司令級の人物と陸軍の要人を招いて最終作戦説明をルンテシュタット、スカリー両国の講和交渉決裂前にし終わっていた。
「さぁ、勝つか負けるか。やるしかない」
カーリス海に到着したルンテ第1航空艦隊、第1艦隊、第1高速機動艦隊はアンカーの命令により、行動を開始した。
〈カーリス海・スカリー帝国艦隊〉
「上級大将閣下!提督殿!見張員から水平線に敵艦艇と思しき艦影ありとの報告です!」
「……全艦第1配備」
「ハッ!」
たまたま幕僚達と昼食をとっていたゲールッツはいつもと変わらず、食堂に飛び込んで来た報告を淡々と聞き、即座に命令を下して席を立った。
続々と集まってくる人と情報を整理している艦橋に現れたゲールッツは双眼鏡を持って見張員に尋ねた。
「艦影はどこだ?」
「3時の方角です!」
「ありがとう」
双眼鏡を覗き込んで言われた方角を見ると確かにルンテの艦艇がうろついている。しかし数は4~5隻で、しかも遠距離にしても小さすぎる。
「あれは駆逐艦ですかね、閣下?」
右目で単眼望遠鏡を覗くアメルハウザー少将がいつの間にか隣に立っていて、自身の予想を確信に変えたい様子で尋ねてきた。
「恐らくは。だが積極的に近寄っては来ないな」
「何が目的なんでしょうな」
「……監視を続けろ。戦艦の有効射程に入り次第連絡を寄越してくれ。わしは上陸隊との会議がある」
「了解致しました!」
そうアメルハウザーに言い残して、ゲールッツは当初この問題を危険視せずに陸軍と打ち合わせに熱を入れていた。
しかし、わずか1時間後の夕暮れ。
「敵機来襲!敵機来襲!」
全艦に警報が鳴り響き、今から寝ようとしていた水兵達が飛び起きて各部署に就くべく甲板上に上がると、遠くからルンテ陸軍のA-1双発爆撃機やM-4雷撃機らがM-2戦闘機を多数伴ってやって来るのが見えた。
「レーダーには映っていなかったのか!!」
「申し訳ありません。また故障してしまって……」
上陸隊との打ち合わせで艦を離れていたゲールッツに代わり、留守を預かっていたアメルハウザーの苛立ちを含んだ怒声に電探士は思わず首を縮める。
「彼に怒っても仕方ありません、少将。それより閣下が皇国艦隊からお戻りになられるまで指揮をお願い致します!」
慌てて若い副長が間に入り、アメルハウザーも支援兵装の不調を電探士に当たっても意味が無いと納得して矛を収めた。
そして先程とは打って変わって、隻眼の参謀長は手早く艦隊に命令を飛ばした。
「全艦艇、輪形陣を維持!全空母から邀撃機を上げて皇国艦隊にも迎撃態勢を整える様に伝えろ!」
スカリー帝国艦隊の上陸部隊を除いた実働部隊の空母2隻からGe-5戦闘機が続々と発進していく。
この空母2隻はそれぞれ”シュナイドブレッド”、”ミドルク・フォン・サン=シッキラー”という名を持つ正規空母であり、特に帝国の国家元首に等しい権限を持つシッキラー総統の名を冠する空母はスカリー帝国海軍の予算を大部分使用されて建造されたものである。
今回が初実戦のこの空母には70機ほどの航空機を載せられるスペースを設けているものの、予算不足でレーダーや一部対空火器の未設置など不備が所々露見している。
なんとか残った予算をかき集めて第1艦隊旗艦リーゼホルストにはレーダーが設置されたものの、不調続きと振るわない。
この様に外面重視、しかもシッキラーの希望全面押しの状態は海軍幹部から嫌われている。
さて、前述した通り索敵に難ありのスカリー帝国艦隊へ攻撃を仕掛けたルンテシュタット航空隊だが、圧倒的艦艇数から放たれる対空砲火に文字通り近づくことすらままならない状況に陥っていた。
そもそも御前会議を無断欠席したハンニル2世には講和を結ぶ気がさらさら無かったので、投げ返された帝国の返答にブチギレた。
思い通りにいかない戦争に不貞腐れていた国王は1年前の怒りが再燃した様だ。
ハンニル2世は新陸軍本部長ラヴォトノフ大将にアルフォードを断固撃退するよう命じ、海軍本部長ドクトラには
「これが最後の機会だ!しくじるな!!」
と身勝手に厳命した。
上陸護衛のスカリー帝国・カーリス皇国海軍を引き寄せて王国海軍が叩く──
これがアンカーの立案した迎撃作戦だ。
そもそも敵艦隊は既にカーリス海に布陣しており、こちらを大軍で待ち構えている。
なら数の多い帝国海軍を上陸艦船から引っぺがして各個撃破すれば良いとアンカーは考えたのだ。
理由としては単純な艦隊決戦、もしくは航空決戦を敵艦隊に挑んだところで全ての艦種の数で劣っており、撃滅されるのがオチだからだ。
それよりも上陸準備で忙しい彼らにちょっかいをかけ、上手く引き離せれば陸の友軍は艦砲射撃に晒されることも無く、アンカー達海軍は場所によっては陸からの支援も期待出来るかもしれない。
具体的な作戦案を練ったアンカーは、出動する全艦艇の司令級の人物と陸軍の要人を招いて最終作戦説明をルンテシュタット、スカリー両国の講和交渉決裂前にし終わっていた。
「さぁ、勝つか負けるか。やるしかない」
カーリス海に到着したルンテ第1航空艦隊、第1艦隊、第1高速機動艦隊はアンカーの命令により、行動を開始した。
〈カーリス海・スカリー帝国艦隊〉
「上級大将閣下!提督殿!見張員から水平線に敵艦艇と思しき艦影ありとの報告です!」
「……全艦第1配備」
「ハッ!」
たまたま幕僚達と昼食をとっていたゲールッツはいつもと変わらず、食堂に飛び込んで来た報告を淡々と聞き、即座に命令を下して席を立った。
続々と集まってくる人と情報を整理している艦橋に現れたゲールッツは双眼鏡を持って見張員に尋ねた。
「艦影はどこだ?」
「3時の方角です!」
「ありがとう」
双眼鏡を覗き込んで言われた方角を見ると確かにルンテの艦艇がうろついている。しかし数は4~5隻で、しかも遠距離にしても小さすぎる。
「あれは駆逐艦ですかね、閣下?」
右目で単眼望遠鏡を覗くアメルハウザー少将がいつの間にか隣に立っていて、自身の予想を確信に変えたい様子で尋ねてきた。
「恐らくは。だが積極的に近寄っては来ないな」
「何が目的なんでしょうな」
「……監視を続けろ。戦艦の有効射程に入り次第連絡を寄越してくれ。わしは上陸隊との会議がある」
「了解致しました!」
そうアメルハウザーに言い残して、ゲールッツは当初この問題を危険視せずに陸軍と打ち合わせに熱を入れていた。
しかし、わずか1時間後の夕暮れ。
「敵機来襲!敵機来襲!」
全艦に警報が鳴り響き、今から寝ようとしていた水兵達が飛び起きて各部署に就くべく甲板上に上がると、遠くからルンテ陸軍のA-1双発爆撃機やM-4雷撃機らがM-2戦闘機を多数伴ってやって来るのが見えた。
「レーダーには映っていなかったのか!!」
「申し訳ありません。また故障してしまって……」
上陸隊との打ち合わせで艦を離れていたゲールッツに代わり、留守を預かっていたアメルハウザーの苛立ちを含んだ怒声に電探士は思わず首を縮める。
「彼に怒っても仕方ありません、少将。それより閣下が皇国艦隊からお戻りになられるまで指揮をお願い致します!」
慌てて若い副長が間に入り、アメルハウザーも支援兵装の不調を電探士に当たっても意味が無いと納得して矛を収めた。
そして先程とは打って変わって、隻眼の参謀長は手早く艦隊に命令を飛ばした。
「全艦艇、輪形陣を維持!全空母から邀撃機を上げて皇国艦隊にも迎撃態勢を整える様に伝えろ!」
スカリー帝国艦隊の上陸部隊を除いた実働部隊の空母2隻からGe-5戦闘機が続々と発進していく。
この空母2隻はそれぞれ”シュナイドブレッド”、”ミドルク・フォン・サン=シッキラー”という名を持つ正規空母であり、特に帝国の国家元首に等しい権限を持つシッキラー総統の名を冠する空母はスカリー帝国海軍の予算を大部分使用されて建造されたものである。
今回が初実戦のこの空母には70機ほどの航空機を載せられるスペースを設けているものの、予算不足でレーダーや一部対空火器の未設置など不備が所々露見している。
なんとか残った予算をかき集めて第1艦隊旗艦リーゼホルストにはレーダーが設置されたものの、不調続きと振るわない。
この様に外面重視、しかもシッキラーの希望全面押しの状態は海軍幹部から嫌われている。
さて、前述した通り索敵に難ありのスカリー帝国艦隊へ攻撃を仕掛けたルンテシュタット航空隊だが、圧倒的艦艇数から放たれる対空砲火に文字通り近づくことすらままならない状況に陥っていた。
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