32 / 53
第32話 目標、平和大橋!
しおりを挟む
5月6日午後1時24分。
A-1双発爆撃機20機とA-2戦略爆撃機10機、M-2戦闘機18機で構成された48機の大編隊は真っ直ぐ平和大橋を目指して高度4000から5000を飛行していた。
快進撃を続ける帝国軍を見下ろしながら、この飛行隊ー第111特務飛行隊を率いるロンデバル中佐はさらに高度をとるように命じた。敵の対空砲圏内に入ったからである。
「目標まで残り10分。目標高度6500」
「中佐、戦闘機隊の我々では6000が限界です!」
「なら俺たちの盾になるんだな」
「自分達は敵戦闘機の盾であったとしても、対空砲火の盾ではありません!」
「根性で上がれ。それぐらいの技量を見せてみろ。後で色つけて報告してやる」
「ッ?!…行くぞお前ら!愛機をしっかりおだてろよ!」
「「「ひぃ~」」」
M-2戦闘機隊は高度6000を、A-1双発爆撃機隊は高度6500。
そしてA-2戦略爆撃機隊は高度7000まで上昇し、雲海がまばらにある空域に突入した。
所々に点在する雲に隠れ、目標に接近していこうという算段だったのだが、対空砲弾が空を引き裂いて飛んできた。
「おいでなすった!」
ロンデバルは機長席の背もたれから体を離し、背筋をピンと伸ばした。
爆撃手に先行偵察隊から送られてきた橋の位置情報を伝える様に通信士と航法士に命令し、自身はその針路上ぴったりになる様に操縦桿をゆっくりと動かす。
平和大橋の最も脆い部分に確実に当てる為には進入角度が極めて重要である。
予定通りの針路をとってから1分とたたずに、すぐ下を飛んでいたA-1双発爆撃機が2番エンジンから火を噴き上げて墜落していった。
「各機、当たらないように何かしらに祈っとけよ!」
「何かしらってなんなんですかぁ!?」
ロンデバルの注意喚起に真横のA-2戦略爆撃機の若いパイロットが震えた声で質問してきた。
その会話に割り込むように通信を入れてきた上のA-2戦略爆撃機のパイロットは
「いいか、俺にしとけ!俺は最近運が良いんだ!絶対安全だぜ?」
と自分自身に太鼓判を押した途端に、その機体が炎を上げて撃墜された。
「うわぁああ?!」
それを見た若いパイロットは思わず操縦を誤り機体を揺らしたがなんとか安定させた。
「おう若いの!黙っといた方が当たらんらしい。せいぜいお口にチャックしとくんだな!」
これを一部始終を見ていたロンデバルは落ちていった友軍機の不運に呆れつつ、若いパイロットに真剣な声で忠告した。
さらに2分経過すると対空砲火が止んだ。
安心したのも束の間、攻撃が止んだ理由は敵戦闘機が迎撃に上がってきたからであった。
「戦闘機隊、迎え討て!」
随伴のM-2戦闘機隊は一気に急降下しつつ敵機と交戦を開始した。
「俺達はこのまま進む。しっかりついてこいよ。……残り6分!」
迎撃に上がってきた敵の戦闘機はわずか10機程度であろうか。
レーヴェン島が空襲に遭い、さらに第1混成航空艦隊への報復攻撃の為、平和大橋付近の基地は戦闘機が不足していたのだ。
この時点で作戦勝ちだったのだが、戦闘は終わるまで何があるか分からない。
ロンデバル以下28機の爆撃隊はスピードを上げ、編隊下で争う両軍戦闘機隊を横目に平和大橋目掛けて前進を続けた。
「見えてきたぞ、平和大橋だ!」
爆撃手が斜め下前方に視界に入ってきた巨大建築物を指差しながら叫んだ。
長さ約5キロ、高さ50メートルの超大型の橋である。
元々は第1次オストメニア大戦でのルンテシュタット、スカリー両国の平和維持や国交回復、文化的・物質的交流を目的として建設されたものだが、今となっては帝国の最重要補給ルートとして使われてしまっている。
王国政府はこれを危機と思い、奪取よりも破壊する方針へと舵を切った。
もちろん攻撃拠点として再活用することを国王や大多数の陸軍幹部は唱えたのだが、これに大貴族や反戦派が対抗してきたのである。
反戦派の中には作戦計画を練った陸軍本部長カート元帥もおり、最終的には大貴族達の圧力に渋々国王ら戦争派が折れた。
その様な経緯があるこの作戦は成功しても失敗しても、政治的・軍事的意味を持つのである。
そしてその平和大橋に向け、ついに爆撃隊の爆弾槽が開いた。
平和大橋付近に停泊する駆逐艦や巡洋艦は爆撃隊を見るや一斉に砲門を開いて対応した。
しかし。
「爆撃、よーい!…投下!投下!!投下!!!」
A-1双発爆撃機、A-2戦略爆撃機の大きく広げられた爆弾槽から次々と落ちていく500キロ爆弾(1機あたり×5)と1トン爆弾(同×4)は砲火が散見する空を一気に降下していき、橋板上に止まる車両や物資、兵士達をもれなく薙ぎ払った。
爆風は横方向だけでなく着実に橋板や関節部分にダメージを与え、ついには集中して狙われた中央部分にヒビが入り、崩落した。
「退避!退避ぃーッ!!!」
被弾を避けれた両端の帝国軍は一斉に陸地へと走っていったが間に合わず遥か下の海へ落下する兵士もおり、外れた爆弾のごく一部は不運な水雷艇を撃沈するなど帝国軍は散々な目に合った。
「やったぞー!!」
「ザマァ見やがれ帝国軍め!!」
「ゼスト(地獄)に堕ちろ!!」
爆撃隊の面々は大声を上げ、帝国を貶しながら帰還した。
今回の平和大橋戦ではA-1双発爆撃機3機、A-2戦略爆撃機3機の撃墜が確認されたが、例え帝国軍が爆撃隊全機を撃墜したとしても何ものにも変え難い損害を負った。
平和大橋が使用不可能になったことで侵攻軍の補給経路はほぼ断絶し援軍も望めないという状況に陥った。
帝国軍司令部は進軍を直ちに停止し、奪取したサーバ港へと向かうしか選択肢が無かった。
そしてそれをみすみす見過ごす王国軍ではなかった。
A-1双発爆撃機20機とA-2戦略爆撃機10機、M-2戦闘機18機で構成された48機の大編隊は真っ直ぐ平和大橋を目指して高度4000から5000を飛行していた。
快進撃を続ける帝国軍を見下ろしながら、この飛行隊ー第111特務飛行隊を率いるロンデバル中佐はさらに高度をとるように命じた。敵の対空砲圏内に入ったからである。
「目標まで残り10分。目標高度6500」
「中佐、戦闘機隊の我々では6000が限界です!」
「なら俺たちの盾になるんだな」
「自分達は敵戦闘機の盾であったとしても、対空砲火の盾ではありません!」
「根性で上がれ。それぐらいの技量を見せてみろ。後で色つけて報告してやる」
「ッ?!…行くぞお前ら!愛機をしっかりおだてろよ!」
「「「ひぃ~」」」
M-2戦闘機隊は高度6000を、A-1双発爆撃機隊は高度6500。
そしてA-2戦略爆撃機隊は高度7000まで上昇し、雲海がまばらにある空域に突入した。
所々に点在する雲に隠れ、目標に接近していこうという算段だったのだが、対空砲弾が空を引き裂いて飛んできた。
「おいでなすった!」
ロンデバルは機長席の背もたれから体を離し、背筋をピンと伸ばした。
爆撃手に先行偵察隊から送られてきた橋の位置情報を伝える様に通信士と航法士に命令し、自身はその針路上ぴったりになる様に操縦桿をゆっくりと動かす。
平和大橋の最も脆い部分に確実に当てる為には進入角度が極めて重要である。
予定通りの針路をとってから1分とたたずに、すぐ下を飛んでいたA-1双発爆撃機が2番エンジンから火を噴き上げて墜落していった。
「各機、当たらないように何かしらに祈っとけよ!」
「何かしらってなんなんですかぁ!?」
ロンデバルの注意喚起に真横のA-2戦略爆撃機の若いパイロットが震えた声で質問してきた。
その会話に割り込むように通信を入れてきた上のA-2戦略爆撃機のパイロットは
「いいか、俺にしとけ!俺は最近運が良いんだ!絶対安全だぜ?」
と自分自身に太鼓判を押した途端に、その機体が炎を上げて撃墜された。
「うわぁああ?!」
それを見た若いパイロットは思わず操縦を誤り機体を揺らしたがなんとか安定させた。
「おう若いの!黙っといた方が当たらんらしい。せいぜいお口にチャックしとくんだな!」
これを一部始終を見ていたロンデバルは落ちていった友軍機の不運に呆れつつ、若いパイロットに真剣な声で忠告した。
さらに2分経過すると対空砲火が止んだ。
安心したのも束の間、攻撃が止んだ理由は敵戦闘機が迎撃に上がってきたからであった。
「戦闘機隊、迎え討て!」
随伴のM-2戦闘機隊は一気に急降下しつつ敵機と交戦を開始した。
「俺達はこのまま進む。しっかりついてこいよ。……残り6分!」
迎撃に上がってきた敵の戦闘機はわずか10機程度であろうか。
レーヴェン島が空襲に遭い、さらに第1混成航空艦隊への報復攻撃の為、平和大橋付近の基地は戦闘機が不足していたのだ。
この時点で作戦勝ちだったのだが、戦闘は終わるまで何があるか分からない。
ロンデバル以下28機の爆撃隊はスピードを上げ、編隊下で争う両軍戦闘機隊を横目に平和大橋目掛けて前進を続けた。
「見えてきたぞ、平和大橋だ!」
爆撃手が斜め下前方に視界に入ってきた巨大建築物を指差しながら叫んだ。
長さ約5キロ、高さ50メートルの超大型の橋である。
元々は第1次オストメニア大戦でのルンテシュタット、スカリー両国の平和維持や国交回復、文化的・物質的交流を目的として建設されたものだが、今となっては帝国の最重要補給ルートとして使われてしまっている。
王国政府はこれを危機と思い、奪取よりも破壊する方針へと舵を切った。
もちろん攻撃拠点として再活用することを国王や大多数の陸軍幹部は唱えたのだが、これに大貴族や反戦派が対抗してきたのである。
反戦派の中には作戦計画を練った陸軍本部長カート元帥もおり、最終的には大貴族達の圧力に渋々国王ら戦争派が折れた。
その様な経緯があるこの作戦は成功しても失敗しても、政治的・軍事的意味を持つのである。
そしてその平和大橋に向け、ついに爆撃隊の爆弾槽が開いた。
平和大橋付近に停泊する駆逐艦や巡洋艦は爆撃隊を見るや一斉に砲門を開いて対応した。
しかし。
「爆撃、よーい!…投下!投下!!投下!!!」
A-1双発爆撃機、A-2戦略爆撃機の大きく広げられた爆弾槽から次々と落ちていく500キロ爆弾(1機あたり×5)と1トン爆弾(同×4)は砲火が散見する空を一気に降下していき、橋板上に止まる車両や物資、兵士達をもれなく薙ぎ払った。
爆風は横方向だけでなく着実に橋板や関節部分にダメージを与え、ついには集中して狙われた中央部分にヒビが入り、崩落した。
「退避!退避ぃーッ!!!」
被弾を避けれた両端の帝国軍は一斉に陸地へと走っていったが間に合わず遥か下の海へ落下する兵士もおり、外れた爆弾のごく一部は不運な水雷艇を撃沈するなど帝国軍は散々な目に合った。
「やったぞー!!」
「ザマァ見やがれ帝国軍め!!」
「ゼスト(地獄)に堕ちろ!!」
爆撃隊の面々は大声を上げ、帝国を貶しながら帰還した。
今回の平和大橋戦ではA-1双発爆撃機3機、A-2戦略爆撃機3機の撃墜が確認されたが、例え帝国軍が爆撃隊全機を撃墜したとしても何ものにも変え難い損害を負った。
平和大橋が使用不可能になったことで侵攻軍の補給経路はほぼ断絶し援軍も望めないという状況に陥った。
帝国軍司令部は進軍を直ちに停止し、奪取したサーバ港へと向かうしか選択肢が無かった。
そしてそれをみすみす見過ごす王国軍ではなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
戦場立志伝
居眠り
SF
荒廃した地球を捨てた人類は宇宙へと飛び立つ。
運良く見つけた惑星で人類は民主国家ゾラ連合を
建国する。だが独裁を主張する一部の革命家たちがゾラ連合を脱出し、ガンダー帝国を築いてしまった。さらにその中でも過激な思想を持った過激派が宇宙海賊アビスを立ち上げた。それを抑える目的でゾラ連合からハル平和民主連合が結成されるなど宇宙は混沌の一途を辿る。
主人公のアルベルトは愛機に乗ってゾラ連合のエースパイロットとして戦場を駆ける。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
第一機動部隊
桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。
祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
鋼月の軌跡
チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル!
未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる