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第29話 「敵主力艦隊捕捉!」
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〈シュニザー戦闘機隊〉
「…逃げたか?」
「その様ですね…」
シュニザーとトーピドの2人は肩で息をしながら周囲警戒と残存機の確認を行った結果、M-2戦闘機が3機、M-3急降下爆撃機1機が撃墜されていることがわかった。
新鋭機の奇襲にしてやられてしまったが、本来は艦隊の直掩機として残るはずだったトーピドに助けられたエースは礼を重ねて言いつつ、急いで針路を南南東へと向けた。
先に撤退した編隊は今頃艦隊の上空にいるだろうか。
シュニザーは彼らの無事を祈りつつ満身創痍の戦闘機隊を率いて帰投した。
〈第1混成航空艦隊〉
アンカーはすっかり晴れた空と水平線を眺めながら、慌ただしく動く整備員達や誘導員達の働きぶりを観察していた。
艦隊司令は多大なる権限と発言力を持っているが、こういう下っ端の軍人達が作業している時は案外暇なのだ。
もっとも、彼らの様な存在無しでは決して成り立たないのが組織というものであるが。
そんなアンカーがいる艦橋の横に位置するマストに掲げられた猫のシルエットを模した将旗がバタバタと音を立てている中、無事帰還したM-3、M-4隊のパイロットとイグロレが敬礼の交換をしながら報告の確認を行った。
「どうだった?レーヴェン島は?」
「レーヴェン島自体はほぼ予定通りに掃討したんですが、その…」
言葉を濁すにタランに不信感を覚えた作戦参謀は首を傾げながら言った。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「…帰還する最中、突如現れた敵機に編隊が襲われまして。それで少佐と大尉がまだ連絡が取れないんです」
「なんだと?敵機って、1機だけか?」
首肯する彼には待機命令を与えておいたが、イグロレはたった1機にあのシュニザーとトーピドがやられたとは到底思えなかった。
誘導員達も帰ってこない戦闘機隊のことを案じる様に空に視線を走らせていたがそのうちの1人が誘導旗をほっぽり投げ、両手を振りながら大声で飛行甲板中の乗組員に報せた。
「友軍機だ、M-2戦闘機だ!おぉーい!!」
「…いたぞ、作戦参謀殿!戦闘機隊です!」
「わかったから総員退避。着艦の邪魔をするなよ!」
乗組員達は皆笑顔で飛行甲板を開け、戦闘機隊の帰還をいまかいまかと待ちわびた。
トーピド機を先頭に着艦した戦闘機隊のパイロット達は疲労困憊といった様子であったが、駆け寄る乗組員達に無理矢理笑いながら抱擁やハイタッチを交わした。
そして最後のシュニザーが降りてくると、アンカーが艦橋から身を乗り出して彼の功績を称えた。
「良くやった少佐!貴官のおかげで任務はほぼ達成だ。…本当にお疲れ様だ!」
「らしくない褒め方ですね、ボス。でも、素直に受け取っておきますよ」
少し照れ気味だった彼だが実際、4割が御の字と言わせたイグロレの期待に良い意味で裏切った彼らの技量は凄まじいものだった。
戦後、両国の資料や証言を元に算出された命中率は驚異の89パーセントだった。
その被害を受けたレーヴェン島は2番滑走路以外使用不可となり、組織的機能を失った。
そんな大戦果を挙げた喜ぶ彼らのもとに急報が伝えられた。
「艦長!敵です、艦隊です!方位132。数は10隻程度、距離1万2000!」
「なんじゃと?すぐそこではないか!なぜもっとはように気づかんかったんじゃ!」
ガーゴイラに怒鳴られ首をすくめる見張員はささやかな反撃を行った。
「この双眼鏡に文句を言ってくださると助かります、艦長!」
「ふざけとる場合かアホタレめ!警報を鳴らせ。総員、第1戦闘配置!」
この警報が艦内に鳴り響くと同時に、乗組員達は潮が引くようにパイロット達から離れ、各々の部署に走り去っていった。
置いてけぼりを食らったパイロット達はイグロレに戦果報告を行い、機体を収容してくれる整備員達へ例もそこそこに艦内へと姿を消した。
それらを見終わったアンカーは軍帽を被り直しながら双眼鏡を食い入る様に見つめる見張員に話しかけた。
「君、敵は南東から来てるんだな?」
「はッ。その通りであります」
「どれどれ…。なるほど、見つかったか………叩き潰してやる」
敵に視認されたというのに嬉しげなアンカーの表情とは裏腹な最後の一言は誰にも聞き取られなかった。
そしてさらに新たな情報が飛び込んできた。
「ッ司令!艦長!機影です。距離2万、方位300」
「数は?」
「まばらですが少なくとも30以上かと。真っ直ぐこちらに来ます!」
これにアンカーは頷きながら命令を飛ばした。
「よし、引っかかったぞ。これは敵の陸軍航空隊だろう。全艦に通達、全速力で半島に帰還するぞ」
「しかし司令。逃げるにしてもこのままでは警戒艦隊と接敵します。それにあの航空隊に捕まってしまいますよ」
ベストロニカが警戒艦隊と航空隊の存在を危惧する意見を述べたが、アンカーはこれを肯定しつつ自身の行動計画を説明した。
「その通りだ少佐。そこで戦艦と重巡戦隊を前面に押し出しながら撤退する。ロングレンジから敵の警戒艦隊を叩くんだ。駆逐艦の8割を後方に集中配置し、対空防御にあたらせる」
「敵航空隊から逃げつつ、一気に警戒網を突破するおつもりですね。ですけど司令。5空は使用されないのですか?」
「彼らには戦闘機以外上げさせない。最大戦速で帰還するんだ。なるべく速度を落としたくないんだ。帰り道が追い風なら尚更」
「わかりました。では、レッソン司令にはそのように伝えてよろしいですね?」
「頼む」
しかしまぁ案の定というかなんというか、レッソンは怒りを露わにした。
最初は信号旗で知らせたところ
「何の為の航空機か。我が5空の力をもってして敵艦隊を叩かせてもらう」
とわざわざ無線で怒鳴り散らしてきたのだ。
アンカーが彼に全く出番を与えなかったことがより怒りに拍車をかけ、このような受け取り方をしてしまったらしい。
時間がない中なんとか宥め賺し、第1混成航空艦隊は撤退を開始した。
と同時に陸軍に航空支援と平和大橋への攻撃要請を行った。
待ってましたとばかりに両隊は滑走路を飛び立ち、各々の向かうべきところへ出撃していった。
〈スカリー航空隊〉
「敵主力艦隊捕捉!突っ込めぇッ!!!」
「「「おおおお!!」」」
「…逃げたか?」
「その様ですね…」
シュニザーとトーピドの2人は肩で息をしながら周囲警戒と残存機の確認を行った結果、M-2戦闘機が3機、M-3急降下爆撃機1機が撃墜されていることがわかった。
新鋭機の奇襲にしてやられてしまったが、本来は艦隊の直掩機として残るはずだったトーピドに助けられたエースは礼を重ねて言いつつ、急いで針路を南南東へと向けた。
先に撤退した編隊は今頃艦隊の上空にいるだろうか。
シュニザーは彼らの無事を祈りつつ満身創痍の戦闘機隊を率いて帰投した。
〈第1混成航空艦隊〉
アンカーはすっかり晴れた空と水平線を眺めながら、慌ただしく動く整備員達や誘導員達の働きぶりを観察していた。
艦隊司令は多大なる権限と発言力を持っているが、こういう下っ端の軍人達が作業している時は案外暇なのだ。
もっとも、彼らの様な存在無しでは決して成り立たないのが組織というものであるが。
そんなアンカーがいる艦橋の横に位置するマストに掲げられた猫のシルエットを模した将旗がバタバタと音を立てている中、無事帰還したM-3、M-4隊のパイロットとイグロレが敬礼の交換をしながら報告の確認を行った。
「どうだった?レーヴェン島は?」
「レーヴェン島自体はほぼ予定通りに掃討したんですが、その…」
言葉を濁すにタランに不信感を覚えた作戦参謀は首を傾げながら言った。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「…帰還する最中、突如現れた敵機に編隊が襲われまして。それで少佐と大尉がまだ連絡が取れないんです」
「なんだと?敵機って、1機だけか?」
首肯する彼には待機命令を与えておいたが、イグロレはたった1機にあのシュニザーとトーピドがやられたとは到底思えなかった。
誘導員達も帰ってこない戦闘機隊のことを案じる様に空に視線を走らせていたがそのうちの1人が誘導旗をほっぽり投げ、両手を振りながら大声で飛行甲板中の乗組員に報せた。
「友軍機だ、M-2戦闘機だ!おぉーい!!」
「…いたぞ、作戦参謀殿!戦闘機隊です!」
「わかったから総員退避。着艦の邪魔をするなよ!」
乗組員達は皆笑顔で飛行甲板を開け、戦闘機隊の帰還をいまかいまかと待ちわびた。
トーピド機を先頭に着艦した戦闘機隊のパイロット達は疲労困憊といった様子であったが、駆け寄る乗組員達に無理矢理笑いながら抱擁やハイタッチを交わした。
そして最後のシュニザーが降りてくると、アンカーが艦橋から身を乗り出して彼の功績を称えた。
「良くやった少佐!貴官のおかげで任務はほぼ達成だ。…本当にお疲れ様だ!」
「らしくない褒め方ですね、ボス。でも、素直に受け取っておきますよ」
少し照れ気味だった彼だが実際、4割が御の字と言わせたイグロレの期待に良い意味で裏切った彼らの技量は凄まじいものだった。
戦後、両国の資料や証言を元に算出された命中率は驚異の89パーセントだった。
その被害を受けたレーヴェン島は2番滑走路以外使用不可となり、組織的機能を失った。
そんな大戦果を挙げた喜ぶ彼らのもとに急報が伝えられた。
「艦長!敵です、艦隊です!方位132。数は10隻程度、距離1万2000!」
「なんじゃと?すぐそこではないか!なぜもっとはように気づかんかったんじゃ!」
ガーゴイラに怒鳴られ首をすくめる見張員はささやかな反撃を行った。
「この双眼鏡に文句を言ってくださると助かります、艦長!」
「ふざけとる場合かアホタレめ!警報を鳴らせ。総員、第1戦闘配置!」
この警報が艦内に鳴り響くと同時に、乗組員達は潮が引くようにパイロット達から離れ、各々の部署に走り去っていった。
置いてけぼりを食らったパイロット達はイグロレに戦果報告を行い、機体を収容してくれる整備員達へ例もそこそこに艦内へと姿を消した。
それらを見終わったアンカーは軍帽を被り直しながら双眼鏡を食い入る様に見つめる見張員に話しかけた。
「君、敵は南東から来てるんだな?」
「はッ。その通りであります」
「どれどれ…。なるほど、見つかったか………叩き潰してやる」
敵に視認されたというのに嬉しげなアンカーの表情とは裏腹な最後の一言は誰にも聞き取られなかった。
そしてさらに新たな情報が飛び込んできた。
「ッ司令!艦長!機影です。距離2万、方位300」
「数は?」
「まばらですが少なくとも30以上かと。真っ直ぐこちらに来ます!」
これにアンカーは頷きながら命令を飛ばした。
「よし、引っかかったぞ。これは敵の陸軍航空隊だろう。全艦に通達、全速力で半島に帰還するぞ」
「しかし司令。逃げるにしてもこのままでは警戒艦隊と接敵します。それにあの航空隊に捕まってしまいますよ」
ベストロニカが警戒艦隊と航空隊の存在を危惧する意見を述べたが、アンカーはこれを肯定しつつ自身の行動計画を説明した。
「その通りだ少佐。そこで戦艦と重巡戦隊を前面に押し出しながら撤退する。ロングレンジから敵の警戒艦隊を叩くんだ。駆逐艦の8割を後方に集中配置し、対空防御にあたらせる」
「敵航空隊から逃げつつ、一気に警戒網を突破するおつもりですね。ですけど司令。5空は使用されないのですか?」
「彼らには戦闘機以外上げさせない。最大戦速で帰還するんだ。なるべく速度を落としたくないんだ。帰り道が追い風なら尚更」
「わかりました。では、レッソン司令にはそのように伝えてよろしいですね?」
「頼む」
しかしまぁ案の定というかなんというか、レッソンは怒りを露わにした。
最初は信号旗で知らせたところ
「何の為の航空機か。我が5空の力をもってして敵艦隊を叩かせてもらう」
とわざわざ無線で怒鳴り散らしてきたのだ。
アンカーが彼に全く出番を与えなかったことがより怒りに拍車をかけ、このような受け取り方をしてしまったらしい。
時間がない中なんとか宥め賺し、第1混成航空艦隊は撤退を開始した。
と同時に陸軍に航空支援と平和大橋への攻撃要請を行った。
待ってましたとばかりに両隊は滑走路を飛び立ち、各々の向かうべきところへ出撃していった。
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