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「君が冷たいとはとても思えない」
真摯な言葉で、「そんなはずはない」とかき口説くマスター。
「君はとても愛情深い人だ」
私はよく知っている、と告げるマスターに、微かに感じる痛みは罪悪感だろうか。
「私は、本来誰も愛せない、とても冷たい人間なんです。
何しろ、自分自身ですらも愛せないくらいですから」
「晶?そうはどういう――――――」
困惑した目でこちらを見つめ、問いただそうとするマスター。
口を開きかけたその時。
「そろそろお話は済んだかしら」
気が付けば、いつのまにか戻ってきていた、巴が悠然と扉の前に立っていた。
「随分タイミングが悪いな…」
「馬鹿ね、そういう大切なお話は家に帰ってからするものよ。
それこそベッドの中で逃がさぬようにしてからゆっくりと、ね?」
下世話な話をそうと感じさせぬ口ぶりでさらりと話し、二人の前に歩いてくると「さ、どうぞ」と持っていたベルベッドの箱を晶へと差し出す。
思わず受け取ってしまった晶だが、箱はまるで何も入っていないかのように軽い。
サイズとしてはそれほど大きくない。
丁度、女性用の宝飾品を入れるためのケースといった様子だ。
大きさから言っても、やはりこの中に入っているのは首輪なのだろう。
「晶、突き返してしまって構わないよ」
「その前にせめて中身を見てみたらどう?急いで作らせたものだから随分武骨になってしまったけど」
いずれは改良が必要ねと言いながらも、自信ありげなその様子に晶の好奇心がうずく。
「マスター」
「…いいよ、開けるだけ開けてごらん。気に入らなかったら置いて帰ればいい」
「そうね、子猫ちゃんがそう感じたのならそれでもかまわないわ」
鷹揚にうなずく巴。
意を決して、晶は蓋を開けた。
音を立てることもなく、軽く押しあげるだけで開いた蓋の中に入っていたのは、実にシンプルな銀の環。
中心に何か黒いタグのようなものが埋められている以外、装飾らしい装飾もない。
「なんだこれは」
横から見ていたマスターが手を伸ばし、環を持ち上げた。
サイズはほぼぴったり晶の首回りと同じくらいといったところか。
不思議なのは、金属製でありながらもどこにもそのつなぎ目らしきものがないこと。
「こんなものどうやって身に着ける?」
「それには特別な鍵が必要なのよ。その箱の下の布を捲ってみなさい。中に入っているから」
「……これか」
箱に貼られたベルベッドと同じ生地の布を捲れば、そこにあったのは鍵というよりも、同じデザインで作られた揃いの指輪。
「基本的に、その首輪は一度締まったら自力では二度と開かない。
その指輪の中に電子制御用のチップが入っているから、そこからの命令でしか開閉は不能。
その指輪から3キロ圏内を離れて移動した場合、警告音が鳴り響き、GPSで自動追尾を開始するの。
ちなみに10キロ以上離れた場合、その瞬間から内蔵のカメラがライブ録画を開始し、その指輪を通じてどこからでもオンライン視聴できるようになるわ。
雄吾、あなたの店につけた監視システムの応用よ」
その気になれば24時間監視することも可能だと告げる巴に、「冗談じゃない」と吐き捨てたマスター。
乱暴に首輪を元の箱に戻すと、敵意もあらわに巴を睨みつけた。
「晶を奴隷扱いする気か」
真摯な言葉で、「そんなはずはない」とかき口説くマスター。
「君はとても愛情深い人だ」
私はよく知っている、と告げるマスターに、微かに感じる痛みは罪悪感だろうか。
「私は、本来誰も愛せない、とても冷たい人間なんです。
何しろ、自分自身ですらも愛せないくらいですから」
「晶?そうはどういう――――――」
困惑した目でこちらを見つめ、問いただそうとするマスター。
口を開きかけたその時。
「そろそろお話は済んだかしら」
気が付けば、いつのまにか戻ってきていた、巴が悠然と扉の前に立っていた。
「随分タイミングが悪いな…」
「馬鹿ね、そういう大切なお話は家に帰ってからするものよ。
それこそベッドの中で逃がさぬようにしてからゆっくりと、ね?」
下世話な話をそうと感じさせぬ口ぶりでさらりと話し、二人の前に歩いてくると「さ、どうぞ」と持っていたベルベッドの箱を晶へと差し出す。
思わず受け取ってしまった晶だが、箱はまるで何も入っていないかのように軽い。
サイズとしてはそれほど大きくない。
丁度、女性用の宝飾品を入れるためのケースといった様子だ。
大きさから言っても、やはりこの中に入っているのは首輪なのだろう。
「晶、突き返してしまって構わないよ」
「その前にせめて中身を見てみたらどう?急いで作らせたものだから随分武骨になってしまったけど」
いずれは改良が必要ねと言いながらも、自信ありげなその様子に晶の好奇心がうずく。
「マスター」
「…いいよ、開けるだけ開けてごらん。気に入らなかったら置いて帰ればいい」
「そうね、子猫ちゃんがそう感じたのならそれでもかまわないわ」
鷹揚にうなずく巴。
意を決して、晶は蓋を開けた。
音を立てることもなく、軽く押しあげるだけで開いた蓋の中に入っていたのは、実にシンプルな銀の環。
中心に何か黒いタグのようなものが埋められている以外、装飾らしい装飾もない。
「なんだこれは」
横から見ていたマスターが手を伸ばし、環を持ち上げた。
サイズはほぼぴったり晶の首回りと同じくらいといったところか。
不思議なのは、金属製でありながらもどこにもそのつなぎ目らしきものがないこと。
「こんなものどうやって身に着ける?」
「それには特別な鍵が必要なのよ。その箱の下の布を捲ってみなさい。中に入っているから」
「……これか」
箱に貼られたベルベッドと同じ生地の布を捲れば、そこにあったのは鍵というよりも、同じデザインで作られた揃いの指輪。
「基本的に、その首輪は一度締まったら自力では二度と開かない。
その指輪の中に電子制御用のチップが入っているから、そこからの命令でしか開閉は不能。
その指輪から3キロ圏内を離れて移動した場合、警告音が鳴り響き、GPSで自動追尾を開始するの。
ちなみに10キロ以上離れた場合、その瞬間から内蔵のカメラがライブ録画を開始し、その指輪を通じてどこからでもオンライン視聴できるようになるわ。
雄吾、あなたの店につけた監視システムの応用よ」
その気になれば24時間監視することも可能だと告げる巴に、「冗談じゃない」と吐き捨てたマスター。
乱暴に首輪を元の箱に戻すと、敵意もあらわに巴を睨みつけた。
「晶を奴隷扱いする気か」
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