16 / 67
16
しおりを挟む
「首輪はリボンだね………長めのリボン、うんリボン一択!!」
「え?」
突然足元から聞こえた声に慌てて下を向いた晶。
「すっかり忘れてたな」と、深いため息を吐いたのはマスターだ。
「あ、いいよいいよ~!そのラフな感じっ」
まるでカメラマンのようなスタイルで、指をファインダーに見立てた青年が、床に片膝を付き、興奮気味に抱きしめあう二人を見上げている。
「指輪は赤い糸……じゃなくて毛糸だな。猫がもて遊ぶ真赤な毛玉。マスターの方は難しいな…」
なにやら真剣な顔で小さなメモ帳に、何かを書き込んでいるが、あれは一体何だろう?
「ん~、とりあえず先に子猫ちゃんのサイズを図らせてもらっちゃおうかなぁ。はい、指出してねー」
にこにことした笑顔を浮かべながら、己のポケットからシンプルなリングゲージ(計測器)を取り出し、まるで犬にお手でもさせるかのような気軽さで晶を誘う。
押しが強すぎるその態度は、ますます営業中のホストのようにしか見えず、晶にとっては少し苦手なタイプだ。
マスターにもその態度は伝わったのだろう。
滋賀から晶を遠ざけ、「止めなさい」と制止する。
「この子には君は少し刺激が強すぎるようだ。その話はまた後にしてくれないか」
「嫌でーす」
「……滋賀くん」
「だって、今日を逃したらもうマスターは彼を表に出してはくれませんよね~?」
「そんなことは……」
「ありますよね?……ほら、そんな怖い目しちゃて」
「………挑発しているつもりかい?」
手に負えないと額に手を当てるマスター。
創作関連の仕事につく人間は得てして変わり者が多いが、彼もご多分に漏れず随分変わっている。
ただ、それだけで済めばまだ良かったのだが。
「ーー滋賀くん、そのグレアをしまいなさい」
「……ッ!」
次の瞬間、ガタゴタと、あちらこちらから聞こえる物音。
なのに不思議と空気は張り詰め、見えない力が体全体を縛り付ける。
膝から崩れ落ちそうになった晶は、直ぐ側に立っていたマスターに支えられ、その場でガクガクと震える。
ーーこれはグレアだ。
滋賀とマスター、二人の間に、見えない火花が散るように、空気さえ歪んで見える。
こんな。
なぜ、急に?
少し強引だったとはいえ、まだ普通の会話の範疇だったはずだ。
「滋賀さん、あんた何してくれてんの??うちの結が怯えてんだけど」
明るい稲妻のようなグレアの持ち主は、己のsubを胸に抱き締めピリピリとした怒りを滋賀に向ける。
この場は滋賀にとって四面楚歌。
己のsub達を守る為、皆神経を尖らせ、滋賀に非難の目を向けている。
こうなることなど、簡単に予想できたはず。
では、なぜ。
真っ赤に充血した瞳とは逆に、顔色は血の気が失せ青白いほど。
それでも尚、泰然と唇に笑みを浮かべるその様は異様にして異形。
「domの本質はグレアに現れる。
マスター、あなたのそれは柘榴の色だ。神の与えた慈悲と罪の色。
…知ってた?マスター。
猫にとって柘榴は、死を招く猛毒なんだよ」
「え?」
突然足元から聞こえた声に慌てて下を向いた晶。
「すっかり忘れてたな」と、深いため息を吐いたのはマスターだ。
「あ、いいよいいよ~!そのラフな感じっ」
まるでカメラマンのようなスタイルで、指をファインダーに見立てた青年が、床に片膝を付き、興奮気味に抱きしめあう二人を見上げている。
「指輪は赤い糸……じゃなくて毛糸だな。猫がもて遊ぶ真赤な毛玉。マスターの方は難しいな…」
なにやら真剣な顔で小さなメモ帳に、何かを書き込んでいるが、あれは一体何だろう?
「ん~、とりあえず先に子猫ちゃんのサイズを図らせてもらっちゃおうかなぁ。はい、指出してねー」
にこにことした笑顔を浮かべながら、己のポケットからシンプルなリングゲージ(計測器)を取り出し、まるで犬にお手でもさせるかのような気軽さで晶を誘う。
押しが強すぎるその態度は、ますます営業中のホストのようにしか見えず、晶にとっては少し苦手なタイプだ。
マスターにもその態度は伝わったのだろう。
滋賀から晶を遠ざけ、「止めなさい」と制止する。
「この子には君は少し刺激が強すぎるようだ。その話はまた後にしてくれないか」
「嫌でーす」
「……滋賀くん」
「だって、今日を逃したらもうマスターは彼を表に出してはくれませんよね~?」
「そんなことは……」
「ありますよね?……ほら、そんな怖い目しちゃて」
「………挑発しているつもりかい?」
手に負えないと額に手を当てるマスター。
創作関連の仕事につく人間は得てして変わり者が多いが、彼もご多分に漏れず随分変わっている。
ただ、それだけで済めばまだ良かったのだが。
「ーー滋賀くん、そのグレアをしまいなさい」
「……ッ!」
次の瞬間、ガタゴタと、あちらこちらから聞こえる物音。
なのに不思議と空気は張り詰め、見えない力が体全体を縛り付ける。
膝から崩れ落ちそうになった晶は、直ぐ側に立っていたマスターに支えられ、その場でガクガクと震える。
ーーこれはグレアだ。
滋賀とマスター、二人の間に、見えない火花が散るように、空気さえ歪んで見える。
こんな。
なぜ、急に?
少し強引だったとはいえ、まだ普通の会話の範疇だったはずだ。
「滋賀さん、あんた何してくれてんの??うちの結が怯えてんだけど」
明るい稲妻のようなグレアの持ち主は、己のsubを胸に抱き締めピリピリとした怒りを滋賀に向ける。
この場は滋賀にとって四面楚歌。
己のsub達を守る為、皆神経を尖らせ、滋賀に非難の目を向けている。
こうなることなど、簡単に予想できたはず。
では、なぜ。
真っ赤に充血した瞳とは逆に、顔色は血の気が失せ青白いほど。
それでも尚、泰然と唇に笑みを浮かべるその様は異様にして異形。
「domの本質はグレアに現れる。
マスター、あなたのそれは柘榴の色だ。神の与えた慈悲と罪の色。
…知ってた?マスター。
猫にとって柘榴は、死を招く猛毒なんだよ」
20
お気に入りに追加
596
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
兄さん、僕貴方にだけSubになるDomなんです!
かぎのえみずる
BL
双子の兄を持つ章吾は、大人顔負けのDomとして生まれてきたはずなのに、兄にだけはSubになってしまう性質で。
幼少期に分かって以来兄を避けていたが、二十歳を超える頃、再会し二人の歯車がまた巡る
Dom/Subユニバースボーイズラブです。
初めてDom/Subユニバース書いてみたので違和感あっても気にしないでください。
Dom/Subユニバースの用語説明なしです。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる