保護猫subは愛されたい

あうる

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首輪カラーはリボンだね………長めのリボン、うんリボン一択!!」
「え?」

突然足元から聞こえた声に慌てて下を向いた晶。
「すっかり忘れてたな」と、深いため息を吐いたのはマスターだ。

「あ、いいよいいよ~!そのラフな感じっ」

まるでカメラマンのようなスタイルで、指をファインダーに見立てた青年が、床に片膝を付き、興奮気味に抱きしめあう二人を見上げている。 

「指輪は赤い糸……じゃなくて毛糸だな。猫がもて遊ぶ真赤な毛玉。マスターの方は難しいな…」

なにやら真剣な顔で小さなメモ帳に、何かを書き込んでいるが、あれは一体何だろう?

「ん~、とりあえず先に子猫ちゃんのサイズを図らせてもらっちゃおうかなぁ。はい、指出してねー」

にこにことした笑顔を浮かべながら、己のポケットからシンプルなリングゲージ(計測器)を取り出し、まるで犬にお手でもさせるかのような気軽さで晶を誘う。

押しが強すぎるその態度は、ますます営業中のホストのようにしか見えず、晶にとっては少し苦手なタイプだ。
マスターにもその態度は伝わったのだろう。
滋賀から晶を遠ざけ、「止めなさい」と制止する。

「この子には君は少し刺激が強すぎるようだ。その話はまた後にしてくれないか」
「嫌でーす」
「……滋賀くん」
「だって、今日を逃したらもうマスターは彼を表に出してはくれませんよね~?」
「そんなことは……」
「ありますよね?……ほら、そんな怖い目しちゃて」
「………挑発しているつもりかい?」

手に負えないと額に手を当てるマスター。
創作関連の仕事につく人間は得てして変わり者が多いが、彼もご多分に漏れず随分変わっている。
ただ、それだけで済めばまだ良かったのだが。

「ーー滋賀くん、そのグレアをしまいなさい」 
「……ッ!」

次の瞬間、ガタゴタと、あちらこちらから聞こえる物音。

なのに不思議と空気は張り詰め、見えない力が体全体を縛り付ける。
膝から崩れ落ちそうになった晶は、直ぐ側に立っていたマスターに支えられ、その場でガクガクと震える。

ーーこれはグレアだ。
滋賀とマスター、二人の間に、見えない火花が散るように、空気さえ歪んで見える。

こんな。
なぜ、急に?

少し強引だったとはいえ、まだ普通の会話の範疇だったはずだ。

「滋賀さん、あんた何してくれてんの??うちの結が怯えてんだけど」

明るい稲妻のようなグレアの持ち主は、己のsubを胸に抱き締めピリピリとした怒りを滋賀に向ける。

この場は滋賀にとって四面楚歌。
己のsub達を守る為、皆神経を尖らせ、滋賀に非難の目を向けている。

こうなることなど、簡単に予想できたはず。
では、なぜ。

真っ赤に充血した瞳とは逆に、顔色は血の気が失せ青白いほど。
それでも尚、泰然と唇に笑みを浮かべるその様は異様にして異形。

「domの本質はグレアに現れる。
マスター、あなたのそれは柘榴の色だ。神の与えた慈悲と罪の色。
…知ってた?マスター。
猫にとって柘榴は、死を招く猛毒なんだよ」
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