眠れるsubは苦労性

あうる

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プロローグ

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俺にとってDOMとは、可憐なお姫様を100年眠らせた魔女と同じ。 
奴らの放つコマンドは、俺達sabにとっては呪いみたいなもの。
俺はずっとそう思っていたし、今でも変わらずそう思っている。
ーーーーーー

あ……駄目だこれ。
地面が起き上がってくるわ……。

馴染みのある強烈な眠気が襲ってきたのは、よりにもよって謝罪相手へ頭を下げたその瞬間。 

(これ、このまま寝たら大怪我するパターンだよなァ)

ワンチャン、土下寝しようと思ったら勢い余って頭打って昏睡しました、とかで納得してもらえないかな、と。

俺は、ゆっくりと近づいてくる真っ白な床を前に、やがてやってくるだろう痛みを予測しながら、諦観まじりに瞳を閉じた。
ーーーー
限界までストレスを感じると所構わず眠ってしまう。
そんな厄介な体質をもつ俺は、当然ながら就職先一つ決めるのも一苦労で。
俺の体質をよく知る、大学の先輩だった今の会社の社長に声をかけられ、そこで働くようになって5年。
なんとか自分をだましだましやって来たものの、後輩がやらかした失敗の尻拭いで出向いた先で、この大失態。

俺はもう駄目だ。  
いっそこのまま地面に埋まって永眠できないものだろうか。

白一色で整えられた壁が、目ざめたばかりの瞳に痛いくらいに突き刺さる。

「本当に申し訳ございませんでした……!!」
「い、いえ、むしろ今回の件はこちらにも非のあったことですし、言いすぎてしまったと担当者も反省しているくらいで……」 
「そんなことはありません。
あれはこちらで気づいて修正するべき案件でした」
「あの……それよりもお体の方は…」
「大丈夫です、おかげさまでなにも問題ありません。先程は大変失礼いたしました!」
「いえ。もしやこちらが無理を言ったせいで健康を害されたのではないかと、専務も大変心配されて……」
「………専務?」
「はい、四宮専務です。高倉様を医務室まで運ばれた後、先程まではここで高倉様に付き添っていらっしゃったのですが……」
「……俺を運んでくださったのも、専務さんなんですね」

口から漏れそうになるうめき声を飲み込むのに精一杯。
ーーー頼む。誰か、悪い夢だと言ってくれ。
謝罪するはずの相手先でぶっ倒れ、醜態を晒すところ間一髪で助けてもらった相手が、まさかの専務。

「あの……何故専務が私を…?
これまでは一度もお顔も拝見したことがなかったかと…」

社長の息子で海外帰りのイケメンハイスペ専務。
そんな噂を聞いたことはあったが、現物を見るのは今日が初めて。 
その貴重な機会がまさかの醜態現場とは。
運がいいのか悪いのか。

いや、悪いに決まってる。

「失礼かとは思いますが、その前にお一つ確認したいことが」

ほら。

「高倉様は、sab性をお持ちでいらっしゃいますよね?」

やっぱり、俺は運が悪い。
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