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酔っ払いモモンガ、捕獲される6
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「あ、あった……!!私のスマホ!!」
幸いにして、その後手渡されたコートの中からスマホを確保することができた。
ここまでずいぶん流され続けてきたがとにかくスマホが戻ってきたというのは大きな一歩だ。
「ありがとうございます、本当に、色々と、色々とお世話になりましてっ!!」
「いやいや、気にすることはねぇよ。むしろいくら世話してもしたりねぇ位だし」
「は、はい?」
やはり自分は小動物と同じ扱いなのではないか?と思わず冷や汗が流れるが、ここは深く考えるのをやめ、好意的に受け取っておこうと心に決める。
とりあえず、そのままコートを羽織り、ベッドに上にちょこんと座りなおすと、真面目な顔で榎本に向き直る。
「あの、それでなんですが、そろそろお暇を…」
「?もうそんな時間か?今日は休みだろ、嬢ちゃん」
「え、いや、確かにそうなんですが…」
自分はそんなことまで話したのか。
全く記憶にないが、知っているはずのないことを知られているのだとしたら、自ら喋ったとしか考えられない。
「後で家まで送って行ってやるから、少しゆっくりしていったらどうだ?店に入ってみたかった、と言っていたが、酔っぱらってて碌に店の中も見てなかっただろう」
「そ…それは確かに」
気になる。
気にはなる…が。
「あの、そもそも、ここって………」
恐る恐る尋ねた柚香に、榎本は破顔し、「あぁ、そういや言ってなかったな」と。
「ここは店の二階だよ。住居として使用しててな」
「あぁ!」
通りで、店を出た記憶がないはずだと納得した。
「だから下に降りればすぐ店だ。二階にゃ、この部屋と簡単なキッチン、風呂くらいしかないからな。
昨日のうちに軽く風呂にも入れたんだが、その様子だと覚えてないだろ?」
「ふ、風呂…」
「やっぱりな。まぁいい。その辺はまぁ、おいおいってことで、どうする?」
どうする、と言われても。
「あの、今日の所はやっぱり……」
店の事は気になるが、正直に言えば今はそれどころではない。
「この服は後でお返ししに来ますし、ここがお店の二階なら、家には歩いてでも帰れるんで…」
送ってもらう必要はない、そこを強調したいところだったのが、榎本が気にしたのはそこではなかった。
「?何を言ってる?その服は返す必要なんてないぞ」
「え?」
思わず、きょとんとして着用済みの服を見下ろす柚香。
「それどころか、さっき持ってきた服、あれは全部お前のものだ。ちょっと少ないが、一週間分くらいにはなるだろ」
「?????」
「残りはまぁ後で買い足すとして、化粧品なんかも必要だな。そればっかりは肌の具合もあるし。
……若いとはいえ、艶があっていい肌だ」
そういって、遠慮なく柚香の頬に触れ、掌でその感触を確かめる。
まるで、恋人同士のような距離感に戸惑う。
「化粧品…?は、別に必要ないかと。すっぴんでも全然帰れます。むしろ普段あんまり化粧とかしないんで…」
「なるほど。だから肌がきれいなんだな。だが基礎化粧品位は一通り揃えたほうがいいだろう」
「???」
どうしよう。会話が通じない。
この人は一体何を言っているんだろうと、本気で悩んだ。
その様子をみて、榎本にも思うところがあったのだろう。
「どうした嬢ちゃん?……いや、柚香、だな」
「は、はいっ!!」
びくん、と思わず胸が高鳴る。
急に呼び捨てされたとか、そんなことがどうでもよくなって、背筋がピンと伸びた。
「昨日も言ったかと思うが、俺は重い男でな。
俺のものになったからには、これからの生活の全ては俺の管理下に置かれると思ってほしい。
身の回りのものも、人間関係もすべてだ」
――――――はい?
人間、理解の範疇外の事を言われると、思考が停止するものらしい。
「聞いてるのか、柚香?今更酒に酔って覚えていない、なんて言われても逃がしてやれないぞ」
「は?え?全部?え!?」
「……まさか、嘘だろ、マジか」
あぁ、と額に手をあて、空を仰ぐ榎本。
むしろそれをしたいのはこちらの方だと思いつつ、柚香は恐る恐る尋ねる。
「あの……ご想像の通り、実は私、昨日の記憶が殆どないんですけど…」
昨日、私たちの間に一体何があったのか。
「せ、説明していただけないでしょうか……!?」
幸いにして、その後手渡されたコートの中からスマホを確保することができた。
ここまでずいぶん流され続けてきたがとにかくスマホが戻ってきたというのは大きな一歩だ。
「ありがとうございます、本当に、色々と、色々とお世話になりましてっ!!」
「いやいや、気にすることはねぇよ。むしろいくら世話してもしたりねぇ位だし」
「は、はい?」
やはり自分は小動物と同じ扱いなのではないか?と思わず冷や汗が流れるが、ここは深く考えるのをやめ、好意的に受け取っておこうと心に決める。
とりあえず、そのままコートを羽織り、ベッドに上にちょこんと座りなおすと、真面目な顔で榎本に向き直る。
「あの、それでなんですが、そろそろお暇を…」
「?もうそんな時間か?今日は休みだろ、嬢ちゃん」
「え、いや、確かにそうなんですが…」
自分はそんなことまで話したのか。
全く記憶にないが、知っているはずのないことを知られているのだとしたら、自ら喋ったとしか考えられない。
「後で家まで送って行ってやるから、少しゆっくりしていったらどうだ?店に入ってみたかった、と言っていたが、酔っぱらってて碌に店の中も見てなかっただろう」
「そ…それは確かに」
気になる。
気にはなる…が。
「あの、そもそも、ここって………」
恐る恐る尋ねた柚香に、榎本は破顔し、「あぁ、そういや言ってなかったな」と。
「ここは店の二階だよ。住居として使用しててな」
「あぁ!」
通りで、店を出た記憶がないはずだと納得した。
「だから下に降りればすぐ店だ。二階にゃ、この部屋と簡単なキッチン、風呂くらいしかないからな。
昨日のうちに軽く風呂にも入れたんだが、その様子だと覚えてないだろ?」
「ふ、風呂…」
「やっぱりな。まぁいい。その辺はまぁ、おいおいってことで、どうする?」
どうする、と言われても。
「あの、今日の所はやっぱり……」
店の事は気になるが、正直に言えば今はそれどころではない。
「この服は後でお返ししに来ますし、ここがお店の二階なら、家には歩いてでも帰れるんで…」
送ってもらう必要はない、そこを強調したいところだったのが、榎本が気にしたのはそこではなかった。
「?何を言ってる?その服は返す必要なんてないぞ」
「え?」
思わず、きょとんとして着用済みの服を見下ろす柚香。
「それどころか、さっき持ってきた服、あれは全部お前のものだ。ちょっと少ないが、一週間分くらいにはなるだろ」
「?????」
「残りはまぁ後で買い足すとして、化粧品なんかも必要だな。そればっかりは肌の具合もあるし。
……若いとはいえ、艶があっていい肌だ」
そういって、遠慮なく柚香の頬に触れ、掌でその感触を確かめる。
まるで、恋人同士のような距離感に戸惑う。
「化粧品…?は、別に必要ないかと。すっぴんでも全然帰れます。むしろ普段あんまり化粧とかしないんで…」
「なるほど。だから肌がきれいなんだな。だが基礎化粧品位は一通り揃えたほうがいいだろう」
「???」
どうしよう。会話が通じない。
この人は一体何を言っているんだろうと、本気で悩んだ。
その様子をみて、榎本にも思うところがあったのだろう。
「どうした嬢ちゃん?……いや、柚香、だな」
「は、はいっ!!」
びくん、と思わず胸が高鳴る。
急に呼び捨てされたとか、そんなことがどうでもよくなって、背筋がピンと伸びた。
「昨日も言ったかと思うが、俺は重い男でな。
俺のものになったからには、これからの生活の全ては俺の管理下に置かれると思ってほしい。
身の回りのものも、人間関係もすべてだ」
――――――はい?
人間、理解の範疇外の事を言われると、思考が停止するものらしい。
「聞いてるのか、柚香?今更酒に酔って覚えていない、なんて言われても逃がしてやれないぞ」
「は?え?全部?え!?」
「……まさか、嘘だろ、マジか」
あぁ、と額に手をあて、空を仰ぐ榎本。
むしろそれをしたいのはこちらの方だと思いつつ、柚香は恐る恐る尋ねる。
「あの……ご想像の通り、実は私、昨日の記憶が殆どないんですけど…」
昨日、私たちの間に一体何があったのか。
「せ、説明していただけないでしょうか……!?」
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