同い年が母になりました。

家族の再構築

４

「...。」
智世さんは困った顔をしてその場から立ち去ろうとしていたが、俺はその体を市役所の中に引っ張り込んだ。

「智世さん...俺の、いや、父さんの奥さんにならなきゃ家族構築も何も無いだろ？」

「...でも、願掛けが...。」
まだそんな事考えてたのかよ、智世さんって意外と頑固者だな。

俺は智世さんの背に合わせて少し腰を曲げた。
「願掛けっていうのは、バレたらおしまいなんだけど。」
「ッ...が、ガーン。」

智世さんの口はショックだったのか、口角がへの字に下がっていた。

ってか...口で言ったよ、この人。
しかも...ガーンて...。

「...ブフッ！」
俺は無表情のまま思わず吹き出してしまった。

「ッ...」
「いや、悪ぃ。とにかく願掛けは無かったことにして、順追ったほうがいいと思う...んだけど。」

俺の言葉に、智世さんは少し一点を見つめて悩んでからコクリと頷いた。

市民課に届けを提出すると、『おめでとうございます』と機械的に返事をされた。

多分俺と智世さんが結ばれたと思ったらしい。

俺は訂正しようとも思ったけどやめた。

横で智世さんがあまりに嬉しそうに指をモソモソ動かしてた姿に、ワクワクが染み出ていたから。