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初の依頼
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その日の午後、一人の女性が探偵事務所を訪れた。
季依は女性と依頼書のプロフィールを照らし合わせてから席に案内した。
「お茶どーぞ。」
女性が顔を上げると、お盆なお茶を3つ乗せた華弥子がにっこり微笑んだ。
「これ、私が飲んだ中で一番おいしかったの!」
「そ、そうなの。」
華弥子の子供の用なしゃべり方に、女性は困惑した表情でお茶を受け取った。
「かや、あまりお客さんを困らせないの。」
「むぅ……ホントのことなのに。」
季依は華弥子からお茶を受け取ると、横の席を叩き「こちらに来なさい」と合図した。
「驚かせてすみません、あの子も悪気はないんです。」
「えぇ……。」
季依は改めて女性の顔を見て、プロフィールと比べて感じた表情の暗さに目を細めた。
「今日の依頼内容は、”彼氏の浮気調査”でよろしいですか?」
「いえ……浮気の証拠は掴んでいるんです。相手の名前も。ただ、どうしても別れるだけでは収まりがつかなくて。」
「そうですか……。ではどう言った内容にいたしましょう。」
「浮気相手が二度と彼氏に近づけないようにしてください。」
女性の依頼に、華弥子はぽかんと女性の顔を覗き込んだ。
「華弥子。口開けっ放しやめなさいよ、恥ずかしい。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
「失礼いたしました……。改めてご依頼内容の通りに善処いたします。」
季依が頭を下げると、女性はお金と自ら撮ったという彼氏と浮気女の写真を置いて事務所を後にした。
華弥子は女性に『ばいばーい!』と元気良く手を振った。
「かや、もういいんじゃない?」
「今日はちょっと楽しかったわ。」
「この間から気になってたんだけど、その子供っぽい言動どうにかしたら?」
「どうして?このほうが人の本性がわかりやすいでしょ?」
「……考えあっての行動なら止めないわ、ごめん。」
「いいよぉ~。」
季依がお茶を入れ直すと、華弥子がタバコに火をつけた。
「へぇ、かやも不良なのね。」
「まぁ!!不良じゃないわ。ちゃんと法律は守ってるわ!」
「あんた日本の法律分かってる?20歳未満はタバコもお酒もOUT。」
「私、もうじき3桁よ?」
「……この話はやめるわ。」
季依は華弥子の妄言に呆れつつ、本題に移った。
「それより……あの女性どう思う?」
「どうって?」
「あんたの所見を聞いてるの。あんたの”儀式”にそぐうかってこと。」
「う~ん、どこにでもいる女の人って感じね。ただ……」
華弥子はそこまで言って口をつぐんだ。そして、女性の置いていった男女の写真とプロフィールの写真を見比べた。
「ただ何?」
「彼女も浮気女みたいな雰囲気に見えるだけよ。」
「……へぇ、それは面白いわね。」
次の日、季依と華弥子は浮気相手の女……ではなく彼氏に焦点を当てて調査を始めた。
男の名はサトシと報告を受けていた。
尾行を続けていると、彼氏は待ち合わせに先に来ていた浮気女に手を振った。
しかし、その時呼ばれていた名前に季依と華弥子は顔を見合わせた。
「ノボル!遅いよ!」
「ごめんごめん!!ばあちゃんの調子悪くてさ。」
2人はほぼ確信はしたもののとりあえず一日中ついて回ることにした。
季依は女性と依頼書のプロフィールを照らし合わせてから席に案内した。
「お茶どーぞ。」
女性が顔を上げると、お盆なお茶を3つ乗せた華弥子がにっこり微笑んだ。
「これ、私が飲んだ中で一番おいしかったの!」
「そ、そうなの。」
華弥子の子供の用なしゃべり方に、女性は困惑した表情でお茶を受け取った。
「かや、あまりお客さんを困らせないの。」
「むぅ……ホントのことなのに。」
季依は華弥子からお茶を受け取ると、横の席を叩き「こちらに来なさい」と合図した。
「驚かせてすみません、あの子も悪気はないんです。」
「えぇ……。」
季依は改めて女性の顔を見て、プロフィールと比べて感じた表情の暗さに目を細めた。
「今日の依頼内容は、”彼氏の浮気調査”でよろしいですか?」
「いえ……浮気の証拠は掴んでいるんです。相手の名前も。ただ、どうしても別れるだけでは収まりがつかなくて。」
「そうですか……。ではどう言った内容にいたしましょう。」
「浮気相手が二度と彼氏に近づけないようにしてください。」
女性の依頼に、華弥子はぽかんと女性の顔を覗き込んだ。
「華弥子。口開けっ放しやめなさいよ、恥ずかしい。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
「失礼いたしました……。改めてご依頼内容の通りに善処いたします。」
季依が頭を下げると、女性はお金と自ら撮ったという彼氏と浮気女の写真を置いて事務所を後にした。
華弥子は女性に『ばいばーい!』と元気良く手を振った。
「かや、もういいんじゃない?」
「今日はちょっと楽しかったわ。」
「この間から気になってたんだけど、その子供っぽい言動どうにかしたら?」
「どうして?このほうが人の本性がわかりやすいでしょ?」
「……考えあっての行動なら止めないわ、ごめん。」
「いいよぉ~。」
季依がお茶を入れ直すと、華弥子がタバコに火をつけた。
「へぇ、かやも不良なのね。」
「まぁ!!不良じゃないわ。ちゃんと法律は守ってるわ!」
「あんた日本の法律分かってる?20歳未満はタバコもお酒もOUT。」
「私、もうじき3桁よ?」
「……この話はやめるわ。」
季依は華弥子の妄言に呆れつつ、本題に移った。
「それより……あの女性どう思う?」
「どうって?」
「あんたの所見を聞いてるの。あんたの”儀式”にそぐうかってこと。」
「う~ん、どこにでもいる女の人って感じね。ただ……」
華弥子はそこまで言って口をつぐんだ。そして、女性の置いていった男女の写真とプロフィールの写真を見比べた。
「ただ何?」
「彼女も浮気女みたいな雰囲気に見えるだけよ。」
「……へぇ、それは面白いわね。」
次の日、季依と華弥子は浮気相手の女……ではなく彼氏に焦点を当てて調査を始めた。
男の名はサトシと報告を受けていた。
尾行を続けていると、彼氏は待ち合わせに先に来ていた浮気女に手を振った。
しかし、その時呼ばれていた名前に季依と華弥子は顔を見合わせた。
「ノボル!遅いよ!」
「ごめんごめん!!ばあちゃんの調子悪くてさ。」
2人はほぼ確信はしたもののとりあえず一日中ついて回ることにした。
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