王を恨んだ妃 第1章~復讐~

木継 槐

文字の大きさ
上 下
23 / 27
邪悪な世と不審な王室

5

しおりを挟む
俺はその声ではっと我に返り、慌ててその腕をゆすったがファンの手はものすごい力で俺の手を締めあげていた。

「ッ!?」
痛みで一瞬体の力が抜けた俺は、あれよと煌の下に転がされてしまった。

「は、離せッ!!」
世子せじゃの命を狙って『離せ』だと?庶民ごときが笑わせる。」

「何だとッ!?」
俺がギっと睨みつけても、煌は瞬く間も隙を見せない。

どころか、俺の手は床にあった布巾で頭上に縛り上げられてしまった。

口で解こうにも、机の足に腕を引っ掛けられてしまって全く動けない……ッ

「……!?」
「何を驚いている?今日は"初夜"だ。……何をされるか……分かっているであろう。」

煌は語尾を生々しく息で殺しながら俺の帯に手をかけた。

背中に悪寒が混じった汗が流れるのを感じた。

「ッや、やめッ……嫌だッ!!」
どんなに声で抗おうともそのおぞましい手は動きをやめることは無い。

そして俺は荒々しく服を剥がされた。

「なんだ……男ではないか。どうりでで貧相な体つきだとは思ったが。」

「ッ……!」
あまりに自分の不甲斐なさに、俺は我を忘れて叫んだ。

「殺すッ……貴様を殺してやるッ!!」
「この状態で何をしようというのか……。」

……確かに煌の言う通りで、今の俺には武器どころか体の自由すら奪われてしまっている。

俺が言葉を失い睨みつけると、煌はさらに続けた。

「やれるものならやればいい。しかし俺に擦り傷一つつけても、お前には"死"を迎える運命のみだ。」

「はッ……、煌様こそお戯れが過ぎます。」

「戯れだと?……そなた、俺を愚弄するつもりか?」

もういい……所詮死ぬ身になったんだ……言うべきことをすべて言ってからの方がまだましだ。

俺は憎しみを言葉に乗せた。

「王室のものも、庶民と同じ赤い血が流れる身のくせに、下の者の命の価値を愚弄するとは。」

「ッそなた……」
「その愚かな考えが妹を亡きものにしたと思うと虫唾が走ります。」

煌は眉間にシワを寄せ俺の口調を聞いていたが、無言で部屋を出てしまった。

はぁ……少しせいせいしたのかもしれない。

俺の目からは涙が溢れ出ていた。

これで……俺も妹の元に行くのか……。
馬鹿げた復讐劇だったな……。

「謝那様!!ご無事ですか!?」
外から焦りが混じったヨンの声が聞こえた。

「燕、少し手を貸してはくれぬか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

軟弱絵師と堅物同心〜大江戸怪奇譚~

水葉
歴史・時代
 江戸の町外れの長屋に暮らす生真面目すぎる同心・十兵衛はひょんな事に出会った謎の自称天才絵師である青年・与平を住まわせる事になった。そんな与平は人には見えないものが見えるがそれを絵にして売るのを生業にしており、何か秘密を持っているようで……町の人と交流をしながら少し不思議な日常を送る二人。懐かれてしまった不思議な黒猫の黒太郎と共に様々な事件?に向き合っていく  三十路を過ぎた堅物な同心と謎で軟弱な絵師の青年による日常と事件と珍道中 「ほんま相変わらず真面目やなぁ」 「そういう与平、お前は怠けすぎだ」 (やれやれ、また始まったよ……)  また二人と一匹の日常が始まる

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

【完結】斎宮異聞

黄永るり
歴史・時代
平安時代・三条天皇の時代に斎宮に選定された当子内親王の初恋物語。 第8回歴史・時代小説大賞「奨励賞」受賞作品。

剣客逓信 ―明治剣戟郵便録―

三條すずしろ
歴史・時代
【第9回歴史・時代小説大賞:痛快! エンタメ剣客賞受賞】 明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった――。 維新の動乱で届くことのなかった手紙や小包。そんな残された思いを配達する「御留郵便御用」の若者と老剣士が、時に不穏な明治の初めをひた走る。 密書や金品を狙う賊を退け大切なものを届ける特命郵便配達人、通称「剣客逓信(けんかくていしん)」。 武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、二人はやがてさらに大きな動乱に巻き込まれ――。 ※エブリスタでも連載中

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

第一機動部隊

桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。 祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。

梅すだれ

木花薫
歴史・時代
江戸時代の女の子、お千代の一生の物語。恋に仕事に頑張るお千代は悲しいことも多いけど充実した女の人生を生き抜きます。が、現在お千代の物語から逸れて、九州の隠れキリシタンの話になっています。島原の乱の前後、農民たちがどのように生きていたのか、仏教やキリスト教の世界観も組み込んで書いています。 登場人物の繋がりで主人公がバトンタッチして物語が次々と移っていきます隠れキリシタンの次は戦国時代の姉妹のストーリーとなっていきます。 時代背景は戦国時代から江戸時代初期の歴史とリンクさせてあります。長編時代小説。長々と続きます。

くじら斗りゅう

陸 理明
歴史・時代
捕鯨によって空前の繁栄を謳歌する太地村を領内に有する紀伊新宮藩は、藩の財政を活性化させようと新しく藩直営の鯨方を立ち上げた。はぐれ者、あぶれ者、行き場のない若者をかき集めて作られた鵜殿の村には、もと武士でありながら捕鯨への情熱に満ちた権藤伊左馬という巨漢もいた。このままいけば新たな捕鯨の中心地となったであろう鵜殿であったが、ある嵐の日に突然現れた〈竜〉の如き巨大な生き物を獲ってしまったことから滅びへの運命を歩み始める…… これは、愛憎と欲望に翻弄される若き鯨猟夫たちの青春譚である。

処理中です...