王を恨んだ妃 第1章~復讐~

木継 槐

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幼少期~煌の視点~

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その日から、劉 権ユ・ゴンは俺専属の教育係となった。

権は教育係として優秀で、俺の苦手より得意を生かしてくれる男で、尚且つ俺の嫌味やつらみもすべて聞いてくれる相談役にもなった。

それと同時ほどに王妃である俺の母、が病で帰らぬ人となり、俺はここにいる理由もなくなるのだと覚悟した。

しかし権のおかげで王室の一員としてとどまることが出来た。

下のものの話によると権が毎日父上を訪ねて説得に説得を重ねてくれたらしい。

心の拠り所を求めていた俺にとってはそんな権の存在がとても大きくなっていた。

ファン世子様。劉都長様がいらっしゃいました。」
「通せ。」

「世子様、お加減いかがでしょうか?」

俺は毎日のように来る権を信頼し、武術も自発的に鍛錬を積むようになった。

しかし学は基本の事以外は頭に入れようとしなかった俺に、父母ともお節介に手を焼いていたが、権は全く俺を責めることは無かった。

そんなある日道場にいる俺の元に権が訪れた。

「権ではないか、何用だ?」
「本日はお日柄も良いですから、世子様に贈り物を届けにまいった次第でございます。」

「贈り物?一体なんだ!?」
官職の者からは誕生日や時季の贈り物は時々王室に届くが、大体額を積むためのものばかりで俺にとっては不快感を感じるだけだった。

しかし権は王室ではなく、道場にまで足を運んで届けに来た。
俺にとってはそれはとても優越感に浸ることが出来た。

「こちらは東方の国より取り寄せました、"彼岸花"でございます。」
「ほう……どんな作用があるんだ?」

当時の俺は毒の名前は知っていても、その毒が何から取られるものなのか分かっていなかった。

そんな俺の問いに、権はニタリと微笑んだ。

「はい。こちらは健康を増進する作用があるとのことです。世子様には常に健やかであらせられることを心から祈っております。是非お飲みくださいませ。」

「そうか!お前はよくわかってるな!!」
「滅相もございません。さぁ、お茶にございます。」

俺は何も怪しむことなく、その渡された彼岸花の粉末をお茶で流した。

その直後だった。
「ヒグッ……ゔ……!?」

まるで喉を焼くような熱さと息苦しさが俺の体を襲った。

「どうかいたしましたか?」

俺の異変に権は驚いたのか俺の方を支えた。
呼吸はすぐに不可能になり、俺は意識を失った。

目を閉じる直前……権は……微かに微笑んで見えた。
しかしその意味を俺には理解出来なかった。
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