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第三部 青年編
EX:エレクトラの野望①
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※第五十八回と第六十三回の裏エピソードとなります。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
行政庁の総督の部屋で、シベリウスに尻穴を責められながらエレクトラは語った。連合軍の今の状況についてだ。
(※第五十八回参照)
「戦況こそ優位ですけど、もうここらが限界なんでさぁ。兵士たちはばてばて。糧秣と軍資金は底を尽きがち。参加国は増税続きでぼちぼち反乱も起きている様子でしてね……」
そんなことはとっくに存じている。バカにしないで欲しいとイプセンは返した。教団も各地にスパイを送り込んでいて、各国の内情を受け取っている。イーズモーとゲースティアに大規模な住民反乱の気配が漂っている。
「その二カ国が一番多くの兵士と軍費を出しているそうですからね。チンゼー諸国も議論にあるそうですよ。そこまでサイゴークに義理立てする必要があるのか、という声があがっているようです」
「ふふ。パラッツォ教はチンゼーにも人を送っていたんですかい?」
「肌の黒い信徒もおりますからね……」
チンゼー人の信徒らは、貧乏人や中産階級ばかりだった。神の元では皆が平等という教団の教えに魅力を感じて宗旨変えしたのだ。メジェイド教や土着宗教はその辺について曖昧にしていたから、生活に苦しむ彼等を救えてやれなかった。
もう1つの魅力がパラッツォ教にはあった。魔法で冷房を効かせた礼拝所があり、そこに行けば、肌の白い経典の巫女達とセックスができるのだ。宗旨変えした者は大体が男ばかりであった。
「じゃあ、チンゼーもそちらさんの耳には筒抜けというわけですかねえ。こりゃあ参った! あははは!」
アヌスに指を挿れられながら、エレクトラは高々と笑った。教団の諜報網は恐ろしい。ヘンリックはもっと興味深い事を教えてくれた。
「教主様は各大陸にいるサキュバスを、教団に味方するよう取り込んでいらっしゃったのです」
魔族を味方に組み入れる。これは教団の敵対勢力にとって至極厄介だった。各国には魔界から密航してきた淫魔や、ニンゲンや亜人との間に生まれたあいのこが暮らしていた。
サキュバスが産む子はほとんど娘である。半魔の彼女達は母親に美貌と魅力的なボディを与えられ、男との交合が盛んに起こった。それゆえに『先祖返り』が起こり、母と同じくサキュバスとなるのだ。但し魔界だと最下級ランクに位置づけられる様な、チンケな魔力しか持てなかったが。
それでもあいのこ達は誘惑の魔法を駆使できた。たいていはほんの数日しか効果は無かったが、抱いた男を魅了し、骨抜きにさせた。教団の為に各国の貴族の情報を仕入れていたのは彼女たちだった。
「……勝てませんねえ。こりゃ」
エレクトラのアヌスがきゅっ、と絞られる。情報は武器だ。スパイでもある彼女は痛感している。イーガもサキュバス達を取り込んで間諜に仕立てないと駄目だろうと思った。
「それで、貴方の目論見は何なのです? 敵のくせにこちらに利する様な情報を与えようとしたのは何故でしょう?」
「まだ、あっしは提案を出しちゃいませんよ。今が停戦を行う最大の機会だってことを言いたいんでさぁ」
エレクトラの口から策が出された。教主コーザを直々に呼び出せ。魔王と恐れられる彼に働いて欲しい。
目的はイズヴァルトと触手姫を捕らえることだ。サート攻めの中核とも言える亜人達を捕虜にするのでもいい。この作戦はコーザが出なければ失敗する。
捕らえた後も反抗させない様にさせたい。逃げればおじゃんになる。それは人を惹きつけ服従させるコーザの魔が無ければ出来ない事だ。
「それと、教団にはまだ隠し玉がいっぱいあるんでしょう? たとえば、枢機卿の皆さんとか……」
「その名をどうして、エレクトラ!」
驚きのあまりにシベリウスは、彼女の尻穴から指を抜いてしまっていた。
枢機なる者達、いわゆる、教団の『枢機卿』はごく一部しか知られていない。
彼等はニンゲンではなかった。ツノが生えずに生まれたオーガの『忌み子』達。かつていたエチウ=オーガのように魔法を駆使できた。しかも前世の記憶をもつ転生者達でもある。
教祖・コージュは旅の途中で彼等と知り合い、共にパラッツォ教の布教に勤しんだ。しかし彼等は危険な魔法と思想の持ち主だった。
ゆえにカナザワースの北に位置する名もなき島にある、古代の洞窟墓地の奥深くに閉じ込められた時期もあったとシベリウスは聞いていた。枢機卿らはそれほどの禁忌と言えた。
コーザの代で地下牢から出され、枢機卿という名で教団の要職に就くことが出来たが、行動を著しく制限された。カナザワース島と温泉がよく出るノトゼタシア島しか出歩けない。
それから、司祭騎士と経典の巫女を増やすという名目で美しい女をあてがわれ、一日のほとんどを法悦に費やされる様にさせられてもいた。彼等から生まれた子は誰もが美男美女のオーガであったが、驚くほどに無力で無能だった。
「普通のオーガの倍以上の寿命と、それにも増したきんたまのお持ち主ですが、お子さん方は……」
「ああ。教団もあのオーガ達の扱いには困っている。みんな気のいい優しい連中らしいがな」
「そいで、無能オーガ製造機械、とやゆされているそうですが、しかしながら枢機卿御本人さま方は、えらくとんでもない魔法の使い手だとか?」
「枢機卿様方を外に出すのを教主様は嫌うでしょう。しかし、戦力としては魅力的でもあるとは言えます。あの方々が扱う『神聖魔法』、イグナチオの術式。あれに打ち勝てるのはコーザ様以外、おりません」
ああ、イグナチオの術式。エレクトラは禁書図書館にある古代の魔道士による魔導書を思い出した。その著者は、彼女の前世とゆかりの深い転生人でもあった。
カソリックのごく一部、つまりは教皇や司教らが使えたという『奇蹟』という名でカモフラージュした魔法を、イエズス会のイグナティウス=ロヨラが発展させたのが神聖魔法だ。
エレクトラは前世ではキリスト教徒であったから、魔導書が記す術式についてぼんやりだが理解することが出来た。この本に目をつけていたアドルフと読み込んで使えるように試してみた。
エレクトラは少々であったが、天才少年アドルフは本に書かれた内容をほとんど覚えてしまった。
「エレクトラ、この魔法は精霊に力を借りるんじゃなくて、自分の霊魂に働きかける術式なんだよ」
人間が持つ魔力を己の霊魂に働きかけ、隠された力を引き出す魔法。それがイグナチオの術式だという。魔導書では神を信ずる者であれば、誰もが扱えると記していた。
信じる神によって術式回路は変わる。けれども、己の心に信仰心があればたとえ、神のご加護がきかない違う土地、違う世界にいても神聖魔法は引き出せる。神を仰ぐのではなく己の中に神の一部があると識れ、と。
枢機卿はその魔法を習得し、練磨の末に究めた者達であった。しかしイプセンによれば彼等は、エレクトラが読んだイグナチオの術式以上のものに発展させているという。
「聖マサタクトゥスの術式、と枢機卿らは呼んでいるそうですよ。無論、彼等の前世に、その様な名前の聖人がいたそうですが……」
「マサタクトゥス? 聞いたことないですねぇ。あっしが信奉していたロシア正教じゃあ、聞いたことがない名前ですよ」
なるほど。イプセンは腕組みした。枢機卿らは多くを語らなかったから、彼等の前世はどんな世の中だったかを知ることが出来なかった。
けれどもエレクトラの提案は、エチウの教主に受け入れられた。彼は新型の魔法兵器を開発した枢機卿らと、腕自慢の亜人の傭兵であるトールキンとマリベーラを連れて行くことに決めた。
そうして、転移魔法が使えるサキュバスの手を借りて密かにサートの銀山町へと入った。
イズヴァルト達が総攻撃をかける日の前夜だった。
□ □ □ □ □
「お久しぶりですね、エレクトラ=ガモーコヴィッツさん」
およそ10年ぶりに再会した教主コーザに、エレクトラは呑まれそうになった。2メートルある身体から、いつまでも嗅ぎ続けたい香りが漂っていた。爽やかで豊かな、そして、女の本能を疼かせるにおいだ。
実際、コーザとは過去に何度も寝たことがあった。あの巨大な『聖根』に貫かれただけでも達してしまった。あんなものがすんなりと入ってしまうのに驚かされたが、赤ん坊を産んだことがあるのだから、原理的には受け入れられる。
「お久しぶりですねぇ……」
会談の場となったその部屋には誰もいなかった。エレクトラは思わず床に座り込み、股を開いてしまった。虜囚の彼女は全裸だったから、性交で擦り切れた陰毛と陰裂が丸見えになった。
先ほどまでシベリウスとイプセンにペニスでこねくり回され、ほぐれてぐじゅぐじゅになった肉の園は濡れており、彼等が奥底に残していた精液がこぼれ出ていた。
「おやおや。会って早々に『法悦』をですか? 以前の貴方は仕事の話をされてからでしたのに?」
「あはは。悪だくみを含まないおまんこをするようになってから、ゆるくなってしまったんでさぁ。さあ、お話の前に『法悦』をいただきましょうかねぇ?」
コーザはうなずいた。彼女の股の前にひざまづくと、ぬるりとした生暖かい泉に口づけた。分厚く柔らかい唇で、エレクトラの神経を熱くする。
教主はクンニリングスをしなくても女を濡らし、弛緩させ、受け入れさせることが出来る。しかし手や口で女性を楽しませる行いを好んでいた。前戯があると男女ともども、『法悦』を深く味わえるからだ。教典でも推奨されている。
陰裂を味わい、愛液をすすり、エレクトラに激しい喜悦を与えるとコーザは言った。
「エレクトラさんは妊娠しているようですね。身体をいたわった方がよいでしょう」
「そりゃあたまげた。40にもなって子供ができるとは、ずいぶんと珍しいこともあるもんですね?」
「それだけお腹の子の父親の精が優れた物だということですよ……この酸味であれば、ホーデンエーネンの、オーガの血をひいた小領主階級の者に違いありません」
亜人の子を孕んだニンゲンの女は、愛液の酸味がやや強くなるとコーザは言った。特にホーデンエーネンの、昔から騎士として存在する貴族との子は独特で、米酢の様な味になるという。
ホーデンエーネン人。それを聞いたエレクトラは、イズヴァルトとまた授かったのかと思った。
(マイヤさんには申し訳ないですねぇ……。)
コーザが法衣の裾をはだけ、怒張した『聖根』を握る。雄大なそれは、生きた男根型の魔除けにも見えた。
抱き上げられ、『聖根』の先端がエレクトラの中に侵入していった。ひと撫でされるだけで絶頂に達した。苦しそうに喘ぎながら彼女は教主の声を聞く。
「エレクトラさん。お腹の赤ちゃんを大事になさってください。滋養をつけ、健康な男の精を吸わせて大きく育てるのです」
特に腹の子の父親の精液をだ。それが母体の体調を整えるとサキュバス達はコーザに教えた。母のクラリスもコーザが腹の中にいる間、朝昼晩と夫の精液を膣に吸わせた。この行いが果たしてニンゲンに役立つかどうかはわからないが。
「……お腹の子は、女の子になるでしょう。この子の父親はとても女の人の尻に敷かれやすい人のようですね。だから女性がよってたかるのかと思われます」
やはりイズヴァルトの子だとエレクトラは確信した。イズヴァルトは半分、女にいいなりになっているところがある。マイヤといちゃいちゃしていた頃は文字通り、彼女のお尻に敷かれていた。ついでだが尻穴にも、ちゅっちゅと口づけしたとも聞いていた。
「この子はきっとすくすくと育ち、愛らしく美しい娘になるはずです」
エレクトラの膣の中で動きながらコーザは約束する。母の美貌と父の魅力を受け継いだ子になると。同時に彼は予感していた。
このお腹の子の姉は優れた戦士として名を残すだろうが、お腹の子は殿方に愛されてちやほやされるタイプの女性になるだろう。傾国の美女というやつである。
一通りの予感を口に出した後、コーザは『聖液』をエレクトラの中に放った。胎児がいる女には素晴らしい栄養剤となるものだ。悦びと充実を覚えながらエレクトラはがっくりとうなだれた。絶頂の連続で身体は疲れ切っていた。
「あは。あはは。素晴らしい予言をいただき光栄ですよ……」
コーザは『聖根』を引き抜いた。広がったエレクトラの膣口からどろりとした精液がこぼれ出た。
「さて、仕事の話というものを始めましょう、エレクトラさん」
身をよじるエレクトラの裸体を眺めながらコーザは言った。『聖根』はじんじんとしていて硬いまま。まだ法悦を求めたがっている。彼女の膣に仕掛け薬が施されていたからだ。ゴブリンに仕込まれた麻薬は、淫魔の子をも虜にする強力なものだった。
彼女はソファに寝かされると語り始めた。教団の力を貸してくれ。ホーデンエーネンに産まれた厄介な女王に対抗できる国を作りたい。その為に教団の力を借りたい。
「教主様は断れませんよ。イズヴァルトさんと私は、アヅチハーゲンでとんでもないものを聞いてみてしまったんです。パラッツォ教徒たちがそれこそゴミの様に海に捨てられた。騙し討ちで殺された」
ホーデンエーネンとパラッツォ教は停戦状態にあるが、いつまた戦争が起こるかわからない。信徒らも奴隷として外国に売り飛ばされている。コーザは部下の多くが、ホーデンエーネンとの戦争を再開させたいと望んでいるのを知っていた。
しかし教典にはこう記されている。神への信奉を続ければ迫害をうけるのもありうること。左の頬をぶたれれば分かり合う為に女は己のヴァギナを、男は菊門を相手に差し出せと。そもそもが非暴力主義なのだ。パラッツォ教は。
「北部に展開するホーデンエーネン軍のやり方は、『ナチス』のそれとおんなじでした。私の前世の世界にあった組織の名前ですがね……」
聞きなれない単語。それでもその名を聞いて教主は目を泳がせた。かつて、彼が知り合った転生人が教えてくれた異界の政治組織の名だ。パラッツォ教とはまるで真逆の事をしでかした、悪魔の軍団みたいな存在だったと聞いた。
キンキ大陸北部で行われていた、パラッツォ教徒の虐殺と連行。それが王家の意向ではない事を教主は知っている。積極的に行うのは大陸南部の大領主達と、その庶流によって構成される近衛騎士団だった。
近衛騎士団は暴虐そのものだ。行軍途中に立ち寄る村や町に、珍しい宝物があったり、美しい娘がいれば難癖をつけて奪う。大貴族としての矜持というものが無かった。とにかく勇猛であれ、という教訓だけだ。彼等の騎士道にあったのは。
近衛騎士団は王国の『癌』ともいえる。良識ある人達、あるいは、国王セインと愛妾トーリは嫌っていたが、取りつぶそうとすれば、大貴族達の反逆に遭うのは必定だ。
「でもキンキ大陸北部にホーデンエーネンとは別の国が出来れば、近衛騎士団とかいうごろつき集団が容易に手出しできなくなります」
「その為に国造りを、ということですね?」
「ええ。そのあるじとして、あたしはあの坊やに賭けているんですよ……」
会えば教主もきっと気に入るはず。エレクトラは薄く笑いながら股を広げた。教主の『聖液』がこぼれ出た陰裂は、ゆっくりとぜん動して受け入れたがっていた。
濡れて光るラヴィアを見たコーザの怒張が、先走りの露を垂らしながら高く持ち上がった。あの女陰は困りものですね。魔人をも惚けさせる麻薬を仕込んだヴァギナは、挿れて放つのを繰り返したくなる代物だった。
教主はエレクトラに覆いかぶさった。『聖根』の玉石が彼女の柔肉に撫でられ、痺れるような快感を受けた。それがしばらく続くと全体に伝わる。そもそもの締りの良さと濡れ具合に、媚の毒が仕込まれた沼から抜け出すのは、なかなかに難しいことだった。
夢中になって『法悦』を与えて来るコーザに抱かれ、エレクトラは満足していた。生涯の『好敵手』とした人物が今の自分を見れば、また女を使ってたぶらかそうとするのか、とあざ笑うだろうが致し方ない。目的の為には使える武器をできるだけ使う。
けれども、彼女はこれが最後だと思っていた。もう40を過ぎた。エルフの血が流れているから老けるのは遅いだろうが、色香で男を落とすのは、そろそろ苦しいのではないかと考え始めていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
行政庁の総督の部屋で、シベリウスに尻穴を責められながらエレクトラは語った。連合軍の今の状況についてだ。
(※第五十八回参照)
「戦況こそ優位ですけど、もうここらが限界なんでさぁ。兵士たちはばてばて。糧秣と軍資金は底を尽きがち。参加国は増税続きでぼちぼち反乱も起きている様子でしてね……」
そんなことはとっくに存じている。バカにしないで欲しいとイプセンは返した。教団も各地にスパイを送り込んでいて、各国の内情を受け取っている。イーズモーとゲースティアに大規模な住民反乱の気配が漂っている。
「その二カ国が一番多くの兵士と軍費を出しているそうですからね。チンゼー諸国も議論にあるそうですよ。そこまでサイゴークに義理立てする必要があるのか、という声があがっているようです」
「ふふ。パラッツォ教はチンゼーにも人を送っていたんですかい?」
「肌の黒い信徒もおりますからね……」
チンゼー人の信徒らは、貧乏人や中産階級ばかりだった。神の元では皆が平等という教団の教えに魅力を感じて宗旨変えしたのだ。メジェイド教や土着宗教はその辺について曖昧にしていたから、生活に苦しむ彼等を救えてやれなかった。
もう1つの魅力がパラッツォ教にはあった。魔法で冷房を効かせた礼拝所があり、そこに行けば、肌の白い経典の巫女達とセックスができるのだ。宗旨変えした者は大体が男ばかりであった。
「じゃあ、チンゼーもそちらさんの耳には筒抜けというわけですかねえ。こりゃあ参った! あははは!」
アヌスに指を挿れられながら、エレクトラは高々と笑った。教団の諜報網は恐ろしい。ヘンリックはもっと興味深い事を教えてくれた。
「教主様は各大陸にいるサキュバスを、教団に味方するよう取り込んでいらっしゃったのです」
魔族を味方に組み入れる。これは教団の敵対勢力にとって至極厄介だった。各国には魔界から密航してきた淫魔や、ニンゲンや亜人との間に生まれたあいのこが暮らしていた。
サキュバスが産む子はほとんど娘である。半魔の彼女達は母親に美貌と魅力的なボディを与えられ、男との交合が盛んに起こった。それゆえに『先祖返り』が起こり、母と同じくサキュバスとなるのだ。但し魔界だと最下級ランクに位置づけられる様な、チンケな魔力しか持てなかったが。
それでもあいのこ達は誘惑の魔法を駆使できた。たいていはほんの数日しか効果は無かったが、抱いた男を魅了し、骨抜きにさせた。教団の為に各国の貴族の情報を仕入れていたのは彼女たちだった。
「……勝てませんねえ。こりゃ」
エレクトラのアヌスがきゅっ、と絞られる。情報は武器だ。スパイでもある彼女は痛感している。イーガもサキュバス達を取り込んで間諜に仕立てないと駄目だろうと思った。
「それで、貴方の目論見は何なのです? 敵のくせにこちらに利する様な情報を与えようとしたのは何故でしょう?」
「まだ、あっしは提案を出しちゃいませんよ。今が停戦を行う最大の機会だってことを言いたいんでさぁ」
エレクトラの口から策が出された。教主コーザを直々に呼び出せ。魔王と恐れられる彼に働いて欲しい。
目的はイズヴァルトと触手姫を捕らえることだ。サート攻めの中核とも言える亜人達を捕虜にするのでもいい。この作戦はコーザが出なければ失敗する。
捕らえた後も反抗させない様にさせたい。逃げればおじゃんになる。それは人を惹きつけ服従させるコーザの魔が無ければ出来ない事だ。
「それと、教団にはまだ隠し玉がいっぱいあるんでしょう? たとえば、枢機卿の皆さんとか……」
「その名をどうして、エレクトラ!」
驚きのあまりにシベリウスは、彼女の尻穴から指を抜いてしまっていた。
枢機なる者達、いわゆる、教団の『枢機卿』はごく一部しか知られていない。
彼等はニンゲンではなかった。ツノが生えずに生まれたオーガの『忌み子』達。かつていたエチウ=オーガのように魔法を駆使できた。しかも前世の記憶をもつ転生者達でもある。
教祖・コージュは旅の途中で彼等と知り合い、共にパラッツォ教の布教に勤しんだ。しかし彼等は危険な魔法と思想の持ち主だった。
ゆえにカナザワースの北に位置する名もなき島にある、古代の洞窟墓地の奥深くに閉じ込められた時期もあったとシベリウスは聞いていた。枢機卿らはそれほどの禁忌と言えた。
コーザの代で地下牢から出され、枢機卿という名で教団の要職に就くことが出来たが、行動を著しく制限された。カナザワース島と温泉がよく出るノトゼタシア島しか出歩けない。
それから、司祭騎士と経典の巫女を増やすという名目で美しい女をあてがわれ、一日のほとんどを法悦に費やされる様にさせられてもいた。彼等から生まれた子は誰もが美男美女のオーガであったが、驚くほどに無力で無能だった。
「普通のオーガの倍以上の寿命と、それにも増したきんたまのお持ち主ですが、お子さん方は……」
「ああ。教団もあのオーガ達の扱いには困っている。みんな気のいい優しい連中らしいがな」
「そいで、無能オーガ製造機械、とやゆされているそうですが、しかしながら枢機卿御本人さま方は、えらくとんでもない魔法の使い手だとか?」
「枢機卿様方を外に出すのを教主様は嫌うでしょう。しかし、戦力としては魅力的でもあるとは言えます。あの方々が扱う『神聖魔法』、イグナチオの術式。あれに打ち勝てるのはコーザ様以外、おりません」
ああ、イグナチオの術式。エレクトラは禁書図書館にある古代の魔道士による魔導書を思い出した。その著者は、彼女の前世とゆかりの深い転生人でもあった。
カソリックのごく一部、つまりは教皇や司教らが使えたという『奇蹟』という名でカモフラージュした魔法を、イエズス会のイグナティウス=ロヨラが発展させたのが神聖魔法だ。
エレクトラは前世ではキリスト教徒であったから、魔導書が記す術式についてぼんやりだが理解することが出来た。この本に目をつけていたアドルフと読み込んで使えるように試してみた。
エレクトラは少々であったが、天才少年アドルフは本に書かれた内容をほとんど覚えてしまった。
「エレクトラ、この魔法は精霊に力を借りるんじゃなくて、自分の霊魂に働きかける術式なんだよ」
人間が持つ魔力を己の霊魂に働きかけ、隠された力を引き出す魔法。それがイグナチオの術式だという。魔導書では神を信ずる者であれば、誰もが扱えると記していた。
信じる神によって術式回路は変わる。けれども、己の心に信仰心があればたとえ、神のご加護がきかない違う土地、違う世界にいても神聖魔法は引き出せる。神を仰ぐのではなく己の中に神の一部があると識れ、と。
枢機卿はその魔法を習得し、練磨の末に究めた者達であった。しかしイプセンによれば彼等は、エレクトラが読んだイグナチオの術式以上のものに発展させているという。
「聖マサタクトゥスの術式、と枢機卿らは呼んでいるそうですよ。無論、彼等の前世に、その様な名前の聖人がいたそうですが……」
「マサタクトゥス? 聞いたことないですねぇ。あっしが信奉していたロシア正教じゃあ、聞いたことがない名前ですよ」
なるほど。イプセンは腕組みした。枢機卿らは多くを語らなかったから、彼等の前世はどんな世の中だったかを知ることが出来なかった。
けれどもエレクトラの提案は、エチウの教主に受け入れられた。彼は新型の魔法兵器を開発した枢機卿らと、腕自慢の亜人の傭兵であるトールキンとマリベーラを連れて行くことに決めた。
そうして、転移魔法が使えるサキュバスの手を借りて密かにサートの銀山町へと入った。
イズヴァルト達が総攻撃をかける日の前夜だった。
□ □ □ □ □
「お久しぶりですね、エレクトラ=ガモーコヴィッツさん」
およそ10年ぶりに再会した教主コーザに、エレクトラは呑まれそうになった。2メートルある身体から、いつまでも嗅ぎ続けたい香りが漂っていた。爽やかで豊かな、そして、女の本能を疼かせるにおいだ。
実際、コーザとは過去に何度も寝たことがあった。あの巨大な『聖根』に貫かれただけでも達してしまった。あんなものがすんなりと入ってしまうのに驚かされたが、赤ん坊を産んだことがあるのだから、原理的には受け入れられる。
「お久しぶりですねぇ……」
会談の場となったその部屋には誰もいなかった。エレクトラは思わず床に座り込み、股を開いてしまった。虜囚の彼女は全裸だったから、性交で擦り切れた陰毛と陰裂が丸見えになった。
先ほどまでシベリウスとイプセンにペニスでこねくり回され、ほぐれてぐじゅぐじゅになった肉の園は濡れており、彼等が奥底に残していた精液がこぼれ出ていた。
「おやおや。会って早々に『法悦』をですか? 以前の貴方は仕事の話をされてからでしたのに?」
「あはは。悪だくみを含まないおまんこをするようになってから、ゆるくなってしまったんでさぁ。さあ、お話の前に『法悦』をいただきましょうかねぇ?」
コーザはうなずいた。彼女の股の前にひざまづくと、ぬるりとした生暖かい泉に口づけた。分厚く柔らかい唇で、エレクトラの神経を熱くする。
教主はクンニリングスをしなくても女を濡らし、弛緩させ、受け入れさせることが出来る。しかし手や口で女性を楽しませる行いを好んでいた。前戯があると男女ともども、『法悦』を深く味わえるからだ。教典でも推奨されている。
陰裂を味わい、愛液をすすり、エレクトラに激しい喜悦を与えるとコーザは言った。
「エレクトラさんは妊娠しているようですね。身体をいたわった方がよいでしょう」
「そりゃあたまげた。40にもなって子供ができるとは、ずいぶんと珍しいこともあるもんですね?」
「それだけお腹の子の父親の精が優れた物だということですよ……この酸味であれば、ホーデンエーネンの、オーガの血をひいた小領主階級の者に違いありません」
亜人の子を孕んだニンゲンの女は、愛液の酸味がやや強くなるとコーザは言った。特にホーデンエーネンの、昔から騎士として存在する貴族との子は独特で、米酢の様な味になるという。
ホーデンエーネン人。それを聞いたエレクトラは、イズヴァルトとまた授かったのかと思った。
(マイヤさんには申し訳ないですねぇ……。)
コーザが法衣の裾をはだけ、怒張した『聖根』を握る。雄大なそれは、生きた男根型の魔除けにも見えた。
抱き上げられ、『聖根』の先端がエレクトラの中に侵入していった。ひと撫でされるだけで絶頂に達した。苦しそうに喘ぎながら彼女は教主の声を聞く。
「エレクトラさん。お腹の赤ちゃんを大事になさってください。滋養をつけ、健康な男の精を吸わせて大きく育てるのです」
特に腹の子の父親の精液をだ。それが母体の体調を整えるとサキュバス達はコーザに教えた。母のクラリスもコーザが腹の中にいる間、朝昼晩と夫の精液を膣に吸わせた。この行いが果たしてニンゲンに役立つかどうかはわからないが。
「……お腹の子は、女の子になるでしょう。この子の父親はとても女の人の尻に敷かれやすい人のようですね。だから女性がよってたかるのかと思われます」
やはりイズヴァルトの子だとエレクトラは確信した。イズヴァルトは半分、女にいいなりになっているところがある。マイヤといちゃいちゃしていた頃は文字通り、彼女のお尻に敷かれていた。ついでだが尻穴にも、ちゅっちゅと口づけしたとも聞いていた。
「この子はきっとすくすくと育ち、愛らしく美しい娘になるはずです」
エレクトラの膣の中で動きながらコーザは約束する。母の美貌と父の魅力を受け継いだ子になると。同時に彼は予感していた。
このお腹の子の姉は優れた戦士として名を残すだろうが、お腹の子は殿方に愛されてちやほやされるタイプの女性になるだろう。傾国の美女というやつである。
一通りの予感を口に出した後、コーザは『聖液』をエレクトラの中に放った。胎児がいる女には素晴らしい栄養剤となるものだ。悦びと充実を覚えながらエレクトラはがっくりとうなだれた。絶頂の連続で身体は疲れ切っていた。
「あは。あはは。素晴らしい予言をいただき光栄ですよ……」
コーザは『聖根』を引き抜いた。広がったエレクトラの膣口からどろりとした精液がこぼれ出た。
「さて、仕事の話というものを始めましょう、エレクトラさん」
身をよじるエレクトラの裸体を眺めながらコーザは言った。『聖根』はじんじんとしていて硬いまま。まだ法悦を求めたがっている。彼女の膣に仕掛け薬が施されていたからだ。ゴブリンに仕込まれた麻薬は、淫魔の子をも虜にする強力なものだった。
彼女はソファに寝かされると語り始めた。教団の力を貸してくれ。ホーデンエーネンに産まれた厄介な女王に対抗できる国を作りたい。その為に教団の力を借りたい。
「教主様は断れませんよ。イズヴァルトさんと私は、アヅチハーゲンでとんでもないものを聞いてみてしまったんです。パラッツォ教徒たちがそれこそゴミの様に海に捨てられた。騙し討ちで殺された」
ホーデンエーネンとパラッツォ教は停戦状態にあるが、いつまた戦争が起こるかわからない。信徒らも奴隷として外国に売り飛ばされている。コーザは部下の多くが、ホーデンエーネンとの戦争を再開させたいと望んでいるのを知っていた。
しかし教典にはこう記されている。神への信奉を続ければ迫害をうけるのもありうること。左の頬をぶたれれば分かり合う為に女は己のヴァギナを、男は菊門を相手に差し出せと。そもそもが非暴力主義なのだ。パラッツォ教は。
「北部に展開するホーデンエーネン軍のやり方は、『ナチス』のそれとおんなじでした。私の前世の世界にあった組織の名前ですがね……」
聞きなれない単語。それでもその名を聞いて教主は目を泳がせた。かつて、彼が知り合った転生人が教えてくれた異界の政治組織の名だ。パラッツォ教とはまるで真逆の事をしでかした、悪魔の軍団みたいな存在だったと聞いた。
キンキ大陸北部で行われていた、パラッツォ教徒の虐殺と連行。それが王家の意向ではない事を教主は知っている。積極的に行うのは大陸南部の大領主達と、その庶流によって構成される近衛騎士団だった。
近衛騎士団は暴虐そのものだ。行軍途中に立ち寄る村や町に、珍しい宝物があったり、美しい娘がいれば難癖をつけて奪う。大貴族としての矜持というものが無かった。とにかく勇猛であれ、という教訓だけだ。彼等の騎士道にあったのは。
近衛騎士団は王国の『癌』ともいえる。良識ある人達、あるいは、国王セインと愛妾トーリは嫌っていたが、取りつぶそうとすれば、大貴族達の反逆に遭うのは必定だ。
「でもキンキ大陸北部にホーデンエーネンとは別の国が出来れば、近衛騎士団とかいうごろつき集団が容易に手出しできなくなります」
「その為に国造りを、ということですね?」
「ええ。そのあるじとして、あたしはあの坊やに賭けているんですよ……」
会えば教主もきっと気に入るはず。エレクトラは薄く笑いながら股を広げた。教主の『聖液』がこぼれ出た陰裂は、ゆっくりとぜん動して受け入れたがっていた。
濡れて光るラヴィアを見たコーザの怒張が、先走りの露を垂らしながら高く持ち上がった。あの女陰は困りものですね。魔人をも惚けさせる麻薬を仕込んだヴァギナは、挿れて放つのを繰り返したくなる代物だった。
教主はエレクトラに覆いかぶさった。『聖根』の玉石が彼女の柔肉に撫でられ、痺れるような快感を受けた。それがしばらく続くと全体に伝わる。そもそもの締りの良さと濡れ具合に、媚の毒が仕込まれた沼から抜け出すのは、なかなかに難しいことだった。
夢中になって『法悦』を与えて来るコーザに抱かれ、エレクトラは満足していた。生涯の『好敵手』とした人物が今の自分を見れば、また女を使ってたぶらかそうとするのか、とあざ笑うだろうが致し方ない。目的の為には使える武器をできるだけ使う。
けれども、彼女はこれが最後だと思っていた。もう40を過ぎた。エルフの血が流れているから老けるのは遅いだろうが、色香で男を落とすのは、そろそろ苦しいのではないかと考え始めていた。
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