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第三部 青年編
第十二回
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このエルフ達こそが、コーガ王国の『大御所さま』ことへファイスティオンの母の実家、ヌマタラシュクのエルフ達であった。
その集団の先頭、一人だけ鎧具足をまとう若く軽薄そうな金色エルフこそが、大族長ギタナスの長子、ミヒャエル。そして彼が連れていた数名のエルフ達の中には、『七本槍』と呼ばれる屈指の豪勇の者がいた。
「へファイスティオンのぼっちゃん。おれの部下達がツックバーで大手柄をあげたべえよ」
対ヒッターチ同盟に反対する家臣達が皇帝の息子のうち1人を祭りあげようとした。そいつがオダキソフィアからウーラへと向かう皇帝を捕えようとしたので、遠矢を得意とする者に射殺させた。
「同盟の崩壊を未然に防いでやったべえ。これがヌマタラシュクの凄さ、っていうもんだべえよ。あっはっはっ!」
ミヒャエルはうすっぺらい顔に笑みを浮かべて大笑いした。銀色に輝く彼の鎧は、ミナッカミニアのエルフが好む装飾でごてごてに飾られていた。
兜のひさしの上には、前のめりにしゃがんで二本の男根を膣と尻穴に入れられて喘ぐ女エルフの銀の像が取りつけられていた。卑猥な像を兜に飾るのは、ミナッカミニアのエルフの好みであった。
胸甲の左右の胸には、フェラチオをする女エルフの横顔が刻まれ、その背中には四つん這いになって尻を突きつけて振り向く裸形の美女エルフの彩色画が。これもミナッカミニアのエルフが好む装飾である。
ちなみにだが北のエルフは写実派だ。南のエルフと違いデフォルメ無しである。これを卑猥で淫欲をそそらせる良きモノと見るか、グロテスクだと見るかは人それぞれである。
他にも彼等は、勃起した自分のペニスから型をとって造った男根像を兜にかざったり、お気に入りの女の乳房や女陰のレプリカを肩甲に取りつけたりと飾るのに余念が無かった。悪趣味、と断じるのは偏見というものだろう。
「で、その皇子とは誰にあたるのかね?」
「ハッタールとかいう野郎だべえ! 千里眼の魔法で姿を見たらしいなあ。とっても太っちょでいかつい顔をしていたみてえだが、遠矢が見事に命中、だべえよ!」
喜ぼうとしたへファイスティオンの顔が凍り付いた。寄りにもよってあのハッタールか? ツックバーで一番油断ならぬ男だとは常々思っていたが、かの皇子は皇帝が最も将来を期待している長子であった。
「ははははっ! なーにしょぼくれているんだべえ?」
「あ、いやそのう……ハッタール本人だとは決まっておらぬと思うが。どうかのう、ミヒャエル殿?」
「なーにびびってるんだべえ! それもしっかり確認したらしいべえ! でっけえ声でおれっちはハッタール、なんて叫んでいたらしいべえな!」
こめかみを震わせながらへファイスティオンは嘆いた。ハッタールの決起は予想外だった。皇子周辺にも諜報を送っていたが隠しきられた。なかなかに尻尾がつかめないから、判断が鈍ってしまった。
どうごまかすか。つまりはハッタールの抹殺を、コーガ王家は知らぬ存ぜぬで返す方法を模索し始めた。この件に関わるとツックバーは同盟を切るばかりか、ヒッターチに向けていた兵をこちらに向けかねないからだ。
「……その話、絶対に言い広めぬ様によろしく頼むぞ、ミヒャエル殿?」
「わかっているべえ! わはは! おれは口が堅いから、おめえさまの都合が悪くなること、絶対に言い広めねえべえ!」
ミヒャエルが大笑いして去って行く。この後連れてきた仲間達と娼館で遊び惚ける為にだ。
「さて……どうしたものか」
へファイスティオンはまだ暖かい玉座に座り、裏から聞こえる現王の豚の鳴き声の様な喘ぎを聞きながら頭を抱えてうずくまった。
□ □ □ □ □
「ぜんぜん活躍できないでござった……」
イズヴァルトは至極残念がった。救出劇でオダキソフィアの街を駆け、残虐な魔道士や片手で100キロぐらいの斧を振る様な、たくさんの強敵と死闘を繰り広げる事を期待していたのに。
オダキソフィアに入ってみれば拍子抜け。これまで敵対した白馬騎士団の武者達が「ツックイーのエルフ様ご一向、大歓迎!」という横断幕まで作って迎え入れられたのはどういうことだろうか。
「解せぬ。ああ、解せぬでござるよ!」
イズヴァルトはその苛立ちを、貴族たちが侍らせてくれた美女たちにではなく、オダキソフィアで屈指の腕自慢と言われる武芸者達にぶつけた。暴れ足りず、鬱憤が溜まっていたからだ。
キンキ大陸屈指の勇者の武勇を間近で見られるぞと、ホージュリアとメルビナが稽古場に立ち会った。どきどき、わくわく、と2人して目を輝かせていた
ホージュリアは船上で、イズヴァルトがものすごく強いクリスタと互角以上の打ち合いをしていたのを見た事があったが、メルビナはこれが初めてだ。
イズヴァルトが長い木刀握りしめる。最初は白馬騎士団の強豪が相手だった。無理やりに突き合わされたその数、5名。
「……全員で一斉にかかって来るがよろしかろう」
何を、と怒りだす者が出た。観客の中にもいた。しかし立ち会う騎士の中で一番強いのは、イズヴァルトの構えを見ただけで恐怖を感じていた。実戦だったらまず生きて帰れないだろうな。
「……もうひとつ。貴殿らは魔法を使ってよいでござる。身体強化の魔法ぐらいは使えるでござろう?」
「ははは。小癪なことをぬかすな!」
ツックバーの騎士側で一番強いのは慎重だったが、他の4名は印を切って襲い掛かった。彼等の動きが倍以上早くなった。傲慢なイズヴァルトを半殺しにして笑いものにしようとほくそ笑む。
それに加えて、イズヴァルトは自分を取り囲んだ形でやって欲しいと注文をつけた。囲まれた時にどう対処するか、切り返すのかが戦いの場に役に立つのだと言う。
「調子にのるな! ホーデンエーネンのイズヴァルト!」
「カントニアで強敵とぶち当たったことが無かったのが残念だったな! 俺達は白馬騎士団でも精鋭と言われている者どもぞ!」
始まった。けたたましく稽古場の床を踏む音。盛大に立つ埃。練習用の剣が起こす風の音。真剣であればイズヴァルトは切り刻まれるはずだ。
が、イズヴァルトはなかなかに撃ち返さない。当たらないのは彼等以上に速く動いているからだ。居合わせていた亜人達が目をまんまるくしていた。
ニンゲンとはいえ、強化魔法をかけて囲んで襲い掛かったのにも関わらず、打ち払わずにかわし続けるのは、亜人の戦士でも達人か天才の部類にしか出来なかった。
始まって20秒。身体を柔軟に動かしてかいくぐり続けるイズヴァルトの顔に失望の色が現れた。これでは鍛錬にならぬでござる。そう呟いて剣を振った。
「ひえっ!」
「おわああっ!」
4人が一斉に弾き飛ばされた。白馬騎士団の残る1人は練習用の剣をその場で投げ捨てた。こんなとんでもないのと稽古なんかやっていられん。そのふてくされた態度にメルビナが怒りの声をあげた。
「臆病者が! それでもこの国を守る白馬騎士団の猛者か!」
「人から強いと言われているぐらいだからわかるのですよ! イズヴァルト殿はまるで違う! 私よりも周りにいるエルフやオーガの傭兵に頼んだらいい!」
そう叫んで稽古場から去って行った。イズヴァルトは亜人の傭兵らをにらみすえる。次はそなたたちでござるよ?
「……仕方ねえべえな」
金色エルフの剣士が、さっきの騎士が投げ捨てた剣を拾って構えた。勝負は10秒でついた。青ざめる相手をイズヴァルトは叱り飛ばす。
「身体能力におんぶしすぎでござるよ! その他はまるで素人でござる!」
次にはオーガの戦士が棒を持ってかかった。ハッタールが見つけ出した者だ。しかしお話にならないぐらいに盆暗だとイズヴァルトには思えた。動きは素早く膂力もあるが、ツックイーやカイロネイアの猛者エルフ達ほどではないと思えた。
とはいえ先ほどの金色エルフの剣士よりはしぶとかった。だがついにはイズヴァルトに叩き飛ばされてひっくり返ってしまう。短い裾から見えた長い男根が勢いよく踊っていた。
「その裾から見えるちんちんの技能を鍛えてばかりで、剣を磨くのをおろそかにしているでござるな! 貴殿、それでもオーガでござるか!」
暴れ足りず、鬱憤が溜まっているイズヴァルトは容赦しなかった。さあ次でござる。彼の稽古は2時間も続いた。その場にいる亜人の傭兵は皆、彼に手痛くやられてしまった。
「へえええ……おっそろしいニンゲンだべえ」
「仕方ねえべよ。おれ達なんかよりよっぽど才能があるだよ、このニンゲン……」
亜人の傭兵らは皆、もういやだ、今日の稽古はおしまいだ、と泣きわめいた。オダキソフィアにいたのは「ちょっとかじった程度」の者ばかりだった。
これでは楽しめぬ。思わぬ強敵と出くわし、気迫を全身にみなぎらせて己をバトルマシーンと化す戦いがしたかった。
「もっと骨がある男はおらぬのでござるか! おなごでもよろしいでござる!」
「その辺でやめとくずらよ、イズヴァルトさん」
入口からのんびりとした調子の女の声がした。褐色エルフのクリスタだった。いいところに来た。稽古の相手をして欲しいでござるとイズヴァルトが求めると、そのつもりは無いずらとクリスタは断った。
「イズヴァルトさん。いきり過ぎずらよ?」
「ややっ。ついつい熱くなってしまったでござる。それよりもパオレッタどのとマリアどのに、いつ出発するか聞かねばならぬでござる」
オダキソフィアに到着してから、丁度1週間が経っていた。ヒッターチに向かう事も、マリアが論じるコーガへの討ち入りもなされないまま、時が過ぎていた。
パオレッタとマリアは、最も期待をかけていた息子が死んで失意のどん底にある皇帝を身体で慰めてやってばかりだった。
その他のエルフ達は身体で賠償しろと、騎士や兵士達を犯し続けている。ついでながら彼等の妻や姉妹も徴発された。女達のほうがエルフとの同衾で熱心だ。エルフ達の女を喜ばせる技が優れているという事だ。
それから、皇帝がすっかり気落ちして、なんでもはいはいと答える様になったので、重臣らは同盟国へ作戦中止の依頼の使者と、ヒッターチに停戦の使者を送った。それにはワイバーン達がかり出された。
「ところで、ホージュリアどのはどうされているでござるか? さっきまでメルビナどのと拙者の立ち合いを見物されていたでござるが?」
「なんかしらんけど、イナンナさんのところに行くとゆってたずら」
ここに滞在してから、どうにもホージュリアが自分のことをじろじろと見る様になったとイズヴァルトは感じていた。それとメルビナもである。
□ □ □ □ □
イナンナにあてがわれた部屋に来た2人は、入っていきなりイナンナの目の前でスカートをめくって彼女にせがんだ。
「し、しんしゃつをしてくだしゃい! しょ、しょくしんを!」
「なんだか胸のあたりが苦しくて、おまたがむずむずするんだべえ! お願い! お願い!」
ほらほら、わかったズラ。イナンナは彼女達を抱き寄せるとベッドに連れて行き、2人が丸出しにしている股を左右の手で探り始めた。
2人ともすっかり濡れ切ってしまっている。優しい手でクリトリスの周囲を探り始めると、2人はのけぞって「うあああ!」と叫んだ。
「むじゅむじゅ、むじゅむじゅがもっとひどくなりゅ!」
「うえええん! ハッタールさまあ!」
膣蜜をこぼして発情してしまったのは、イズヴァルトの凄まじい武勇を見てしまったからだ。ホージュリアはイズヴァルトへの恋慕が増々高まってしまったし、メルビナは彼のますらおぶりを見て、男らしいハッタールの愛撫を思い出したからだ。
「んああああ!」
「じゅくじゅくさせてしまうべえよ!」
イナンナは幼な児2人のラヴィアもこねて治療に務めた。1時間ほどいじり続けるとホージュリアとメルビナの2人は、すっかり落ち着きを取り戻していた。
この2人はイズヴァルトの豪勇ぶりを見て、雌としての劣情を抱いてしまったのだ。生殖行為をしてあの強い男の赤ちゃんを産みたい。そういう類のである。
「ふえええ……イズヴァルトさま、かっこいい……」
「わらわ、陛下のお子を産む前にイズヴァルトさんと子づくりしたいべえなあ……」
自分に正直になりやすい年頃の2人は、絶頂の余韻にひたりながらついついぼやいてしまう。イナンナは2人をたしなめた。
「イズヴァルトさんを知ると他の男が物足りないと思えてしまうズラよ。もっといいちんぽがこの世にあるから、もう少し経験を積んでから夢見るズラよ?」
2人は気が抜けた声で返事した。はーい、そうしましゅ。それでよろしいズラ。ところでとイナンナは、お股丸出しでだらけているメルビナに尋ねた。おまんの連れだった『あいのこ』のぼうずはどこに行ったズラ?
「『あいのこ』の……ああ、ピサロ=アマルフィだべえな?」
「ほうズラ。えらく尻穴を描くのが得意って聞いたから、オラもいっぺん自分のケツを描いてもらいたかったず」
「用事を思いついたのでワイバーンを1匹貸してほしいと言われたから、そうしてやっただけじゃ。この3日間姿を見せん」
ハッタールと計画した策が裏目に出て、いたたまれなくなったのだろうとメルビナは答えた。その真夜中である。ウーラ要塞から急報が届いたのは。
不寝番として詰めていた宮殿の騎士達が、パオレッタとマリアを愛撫と陰茎とで楽しませていたイズヴァルトのところにやって来た。
彼女達に頼まれての行いであったが苛立ちから少しは解放されるその行いに熱中していたイズヴァルトは、いきなり舞い込んできたその話に驚いた。
「なぜでござる! 今頃になって……何を考えているのでござるか!」
果たして、イズヴァルトが驚いた話とは何だったのか?
その続きについてはまた、次回にて。
その集団の先頭、一人だけ鎧具足をまとう若く軽薄そうな金色エルフこそが、大族長ギタナスの長子、ミヒャエル。そして彼が連れていた数名のエルフ達の中には、『七本槍』と呼ばれる屈指の豪勇の者がいた。
「へファイスティオンのぼっちゃん。おれの部下達がツックバーで大手柄をあげたべえよ」
対ヒッターチ同盟に反対する家臣達が皇帝の息子のうち1人を祭りあげようとした。そいつがオダキソフィアからウーラへと向かう皇帝を捕えようとしたので、遠矢を得意とする者に射殺させた。
「同盟の崩壊を未然に防いでやったべえ。これがヌマタラシュクの凄さ、っていうもんだべえよ。あっはっはっ!」
ミヒャエルはうすっぺらい顔に笑みを浮かべて大笑いした。銀色に輝く彼の鎧は、ミナッカミニアのエルフが好む装飾でごてごてに飾られていた。
兜のひさしの上には、前のめりにしゃがんで二本の男根を膣と尻穴に入れられて喘ぐ女エルフの銀の像が取りつけられていた。卑猥な像を兜に飾るのは、ミナッカミニアのエルフの好みであった。
胸甲の左右の胸には、フェラチオをする女エルフの横顔が刻まれ、その背中には四つん這いになって尻を突きつけて振り向く裸形の美女エルフの彩色画が。これもミナッカミニアのエルフが好む装飾である。
ちなみにだが北のエルフは写実派だ。南のエルフと違いデフォルメ無しである。これを卑猥で淫欲をそそらせる良きモノと見るか、グロテスクだと見るかは人それぞれである。
他にも彼等は、勃起した自分のペニスから型をとって造った男根像を兜にかざったり、お気に入りの女の乳房や女陰のレプリカを肩甲に取りつけたりと飾るのに余念が無かった。悪趣味、と断じるのは偏見というものだろう。
「で、その皇子とは誰にあたるのかね?」
「ハッタールとかいう野郎だべえ! 千里眼の魔法で姿を見たらしいなあ。とっても太っちょでいかつい顔をしていたみてえだが、遠矢が見事に命中、だべえよ!」
喜ぼうとしたへファイスティオンの顔が凍り付いた。寄りにもよってあのハッタールか? ツックバーで一番油断ならぬ男だとは常々思っていたが、かの皇子は皇帝が最も将来を期待している長子であった。
「ははははっ! なーにしょぼくれているんだべえ?」
「あ、いやそのう……ハッタール本人だとは決まっておらぬと思うが。どうかのう、ミヒャエル殿?」
「なーにびびってるんだべえ! それもしっかり確認したらしいべえ! でっけえ声でおれっちはハッタール、なんて叫んでいたらしいべえな!」
こめかみを震わせながらへファイスティオンは嘆いた。ハッタールの決起は予想外だった。皇子周辺にも諜報を送っていたが隠しきられた。なかなかに尻尾がつかめないから、判断が鈍ってしまった。
どうごまかすか。つまりはハッタールの抹殺を、コーガ王家は知らぬ存ぜぬで返す方法を模索し始めた。この件に関わるとツックバーは同盟を切るばかりか、ヒッターチに向けていた兵をこちらに向けかねないからだ。
「……その話、絶対に言い広めぬ様によろしく頼むぞ、ミヒャエル殿?」
「わかっているべえ! わはは! おれは口が堅いから、おめえさまの都合が悪くなること、絶対に言い広めねえべえ!」
ミヒャエルが大笑いして去って行く。この後連れてきた仲間達と娼館で遊び惚ける為にだ。
「さて……どうしたものか」
へファイスティオンはまだ暖かい玉座に座り、裏から聞こえる現王の豚の鳴き声の様な喘ぎを聞きながら頭を抱えてうずくまった。
□ □ □ □ □
「ぜんぜん活躍できないでござった……」
イズヴァルトは至極残念がった。救出劇でオダキソフィアの街を駆け、残虐な魔道士や片手で100キロぐらいの斧を振る様な、たくさんの強敵と死闘を繰り広げる事を期待していたのに。
オダキソフィアに入ってみれば拍子抜け。これまで敵対した白馬騎士団の武者達が「ツックイーのエルフ様ご一向、大歓迎!」という横断幕まで作って迎え入れられたのはどういうことだろうか。
「解せぬ。ああ、解せぬでござるよ!」
イズヴァルトはその苛立ちを、貴族たちが侍らせてくれた美女たちにではなく、オダキソフィアで屈指の腕自慢と言われる武芸者達にぶつけた。暴れ足りず、鬱憤が溜まっていたからだ。
キンキ大陸屈指の勇者の武勇を間近で見られるぞと、ホージュリアとメルビナが稽古場に立ち会った。どきどき、わくわく、と2人して目を輝かせていた
ホージュリアは船上で、イズヴァルトがものすごく強いクリスタと互角以上の打ち合いをしていたのを見た事があったが、メルビナはこれが初めてだ。
イズヴァルトが長い木刀握りしめる。最初は白馬騎士団の強豪が相手だった。無理やりに突き合わされたその数、5名。
「……全員で一斉にかかって来るがよろしかろう」
何を、と怒りだす者が出た。観客の中にもいた。しかし立ち会う騎士の中で一番強いのは、イズヴァルトの構えを見ただけで恐怖を感じていた。実戦だったらまず生きて帰れないだろうな。
「……もうひとつ。貴殿らは魔法を使ってよいでござる。身体強化の魔法ぐらいは使えるでござろう?」
「ははは。小癪なことをぬかすな!」
ツックバーの騎士側で一番強いのは慎重だったが、他の4名は印を切って襲い掛かった。彼等の動きが倍以上早くなった。傲慢なイズヴァルトを半殺しにして笑いものにしようとほくそ笑む。
それに加えて、イズヴァルトは自分を取り囲んだ形でやって欲しいと注文をつけた。囲まれた時にどう対処するか、切り返すのかが戦いの場に役に立つのだと言う。
「調子にのるな! ホーデンエーネンのイズヴァルト!」
「カントニアで強敵とぶち当たったことが無かったのが残念だったな! 俺達は白馬騎士団でも精鋭と言われている者どもぞ!」
始まった。けたたましく稽古場の床を踏む音。盛大に立つ埃。練習用の剣が起こす風の音。真剣であればイズヴァルトは切り刻まれるはずだ。
が、イズヴァルトはなかなかに撃ち返さない。当たらないのは彼等以上に速く動いているからだ。居合わせていた亜人達が目をまんまるくしていた。
ニンゲンとはいえ、強化魔法をかけて囲んで襲い掛かったのにも関わらず、打ち払わずにかわし続けるのは、亜人の戦士でも達人か天才の部類にしか出来なかった。
始まって20秒。身体を柔軟に動かしてかいくぐり続けるイズヴァルトの顔に失望の色が現れた。これでは鍛錬にならぬでござる。そう呟いて剣を振った。
「ひえっ!」
「おわああっ!」
4人が一斉に弾き飛ばされた。白馬騎士団の残る1人は練習用の剣をその場で投げ捨てた。こんなとんでもないのと稽古なんかやっていられん。そのふてくされた態度にメルビナが怒りの声をあげた。
「臆病者が! それでもこの国を守る白馬騎士団の猛者か!」
「人から強いと言われているぐらいだからわかるのですよ! イズヴァルト殿はまるで違う! 私よりも周りにいるエルフやオーガの傭兵に頼んだらいい!」
そう叫んで稽古場から去って行った。イズヴァルトは亜人の傭兵らをにらみすえる。次はそなたたちでござるよ?
「……仕方ねえべえな」
金色エルフの剣士が、さっきの騎士が投げ捨てた剣を拾って構えた。勝負は10秒でついた。青ざめる相手をイズヴァルトは叱り飛ばす。
「身体能力におんぶしすぎでござるよ! その他はまるで素人でござる!」
次にはオーガの戦士が棒を持ってかかった。ハッタールが見つけ出した者だ。しかしお話にならないぐらいに盆暗だとイズヴァルトには思えた。動きは素早く膂力もあるが、ツックイーやカイロネイアの猛者エルフ達ほどではないと思えた。
とはいえ先ほどの金色エルフの剣士よりはしぶとかった。だがついにはイズヴァルトに叩き飛ばされてひっくり返ってしまう。短い裾から見えた長い男根が勢いよく踊っていた。
「その裾から見えるちんちんの技能を鍛えてばかりで、剣を磨くのをおろそかにしているでござるな! 貴殿、それでもオーガでござるか!」
暴れ足りず、鬱憤が溜まっているイズヴァルトは容赦しなかった。さあ次でござる。彼の稽古は2時間も続いた。その場にいる亜人の傭兵は皆、彼に手痛くやられてしまった。
「へえええ……おっそろしいニンゲンだべえ」
「仕方ねえべよ。おれ達なんかよりよっぽど才能があるだよ、このニンゲン……」
亜人の傭兵らは皆、もういやだ、今日の稽古はおしまいだ、と泣きわめいた。オダキソフィアにいたのは「ちょっとかじった程度」の者ばかりだった。
これでは楽しめぬ。思わぬ強敵と出くわし、気迫を全身にみなぎらせて己をバトルマシーンと化す戦いがしたかった。
「もっと骨がある男はおらぬのでござるか! おなごでもよろしいでござる!」
「その辺でやめとくずらよ、イズヴァルトさん」
入口からのんびりとした調子の女の声がした。褐色エルフのクリスタだった。いいところに来た。稽古の相手をして欲しいでござるとイズヴァルトが求めると、そのつもりは無いずらとクリスタは断った。
「イズヴァルトさん。いきり過ぎずらよ?」
「ややっ。ついつい熱くなってしまったでござる。それよりもパオレッタどのとマリアどのに、いつ出発するか聞かねばならぬでござる」
オダキソフィアに到着してから、丁度1週間が経っていた。ヒッターチに向かう事も、マリアが論じるコーガへの討ち入りもなされないまま、時が過ぎていた。
パオレッタとマリアは、最も期待をかけていた息子が死んで失意のどん底にある皇帝を身体で慰めてやってばかりだった。
その他のエルフ達は身体で賠償しろと、騎士や兵士達を犯し続けている。ついでながら彼等の妻や姉妹も徴発された。女達のほうがエルフとの同衾で熱心だ。エルフ達の女を喜ばせる技が優れているという事だ。
それから、皇帝がすっかり気落ちして、なんでもはいはいと答える様になったので、重臣らは同盟国へ作戦中止の依頼の使者と、ヒッターチに停戦の使者を送った。それにはワイバーン達がかり出された。
「ところで、ホージュリアどのはどうされているでござるか? さっきまでメルビナどのと拙者の立ち合いを見物されていたでござるが?」
「なんかしらんけど、イナンナさんのところに行くとゆってたずら」
ここに滞在してから、どうにもホージュリアが自分のことをじろじろと見る様になったとイズヴァルトは感じていた。それとメルビナもである。
□ □ □ □ □
イナンナにあてがわれた部屋に来た2人は、入っていきなりイナンナの目の前でスカートをめくって彼女にせがんだ。
「し、しんしゃつをしてくだしゃい! しょ、しょくしんを!」
「なんだか胸のあたりが苦しくて、おまたがむずむずするんだべえ! お願い! お願い!」
ほらほら、わかったズラ。イナンナは彼女達を抱き寄せるとベッドに連れて行き、2人が丸出しにしている股を左右の手で探り始めた。
2人ともすっかり濡れ切ってしまっている。優しい手でクリトリスの周囲を探り始めると、2人はのけぞって「うあああ!」と叫んだ。
「むじゅむじゅ、むじゅむじゅがもっとひどくなりゅ!」
「うえええん! ハッタールさまあ!」
膣蜜をこぼして発情してしまったのは、イズヴァルトの凄まじい武勇を見てしまったからだ。ホージュリアはイズヴァルトへの恋慕が増々高まってしまったし、メルビナは彼のますらおぶりを見て、男らしいハッタールの愛撫を思い出したからだ。
「んああああ!」
「じゅくじゅくさせてしまうべえよ!」
イナンナは幼な児2人のラヴィアもこねて治療に務めた。1時間ほどいじり続けるとホージュリアとメルビナの2人は、すっかり落ち着きを取り戻していた。
この2人はイズヴァルトの豪勇ぶりを見て、雌としての劣情を抱いてしまったのだ。生殖行為をしてあの強い男の赤ちゃんを産みたい。そういう類のである。
「ふえええ……イズヴァルトさま、かっこいい……」
「わらわ、陛下のお子を産む前にイズヴァルトさんと子づくりしたいべえなあ……」
自分に正直になりやすい年頃の2人は、絶頂の余韻にひたりながらついついぼやいてしまう。イナンナは2人をたしなめた。
「イズヴァルトさんを知ると他の男が物足りないと思えてしまうズラよ。もっといいちんぽがこの世にあるから、もう少し経験を積んでから夢見るズラよ?」
2人は気が抜けた声で返事した。はーい、そうしましゅ。それでよろしいズラ。ところでとイナンナは、お股丸出しでだらけているメルビナに尋ねた。おまんの連れだった『あいのこ』のぼうずはどこに行ったズラ?
「『あいのこ』の……ああ、ピサロ=アマルフィだべえな?」
「ほうズラ。えらく尻穴を描くのが得意って聞いたから、オラもいっぺん自分のケツを描いてもらいたかったず」
「用事を思いついたのでワイバーンを1匹貸してほしいと言われたから、そうしてやっただけじゃ。この3日間姿を見せん」
ハッタールと計画した策が裏目に出て、いたたまれなくなったのだろうとメルビナは答えた。その真夜中である。ウーラ要塞から急報が届いたのは。
不寝番として詰めていた宮殿の騎士達が、パオレッタとマリアを愛撫と陰茎とで楽しませていたイズヴァルトのところにやって来た。
彼女達に頼まれての行いであったが苛立ちから少しは解放されるその行いに熱中していたイズヴァルトは、いきなり舞い込んできたその話に驚いた。
「なぜでござる! 今頃になって……何を考えているのでござるか!」
果たして、イズヴァルトが驚いた話とは何だったのか?
その続きについてはまた、次回にて。
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シルフィと他にもう1人いる幼馴染が恋人で、故郷の村で待っている。
・イケメン施術師
大人気オイルマッサージ店の受付兼施術師。
腕の良さとその甘いマスクから女性客のリピート必至である。
アステリアの最初の施術を担当。
・肥満施術師
大人気オイルマッサージ店の知らざれる裏の施術師。
見た目が醜悪で女性には生理的に受け付けられないような容姿のためか表に出てくることはないが、彼の施術を受けたことがある女性客のリピート指名率は90%を超えるという。
シルフィの最初の施術を担当。
・アルバード
シルフィ、アステリアの幼馴染。
アステリアの恋人で、故郷の村で彼女らを待っている。
【R18短編】聖処女騎士はオークの体液に溺れイキ果てる。
濡羽ぬるる
ファンタジー
聖騎士アルゼリーテはオークの大群に犯される中、メスの快楽に目覚めてゆく。過激、汁多め、オカズ向けです。
※自作中編「聖処女騎士アルゼリーテの受難」から、即楽しめるよう実用性重視のシーンを抜粋し、読みやすくヌキやすくまとめた短編です。
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