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第二部 少年編

第二十回

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 ヨナゴルグ自由都市。サイゴーク北東部にあるヨナゴル半島にある都市だ。現代では100万都市のうち1つ。イーズモーの暗黒卿が整備し、大港湾にしたと言い伝えられている。

 イズヴァルトの時代では既に人口15万人はいた。ヨナゴルグは都市というよりは小さな国だ。港のある旧城市を中心に海沿いの平野に大きく広がっている。

 その広さはナントブルグ大盆地の半分程。ゆえに多くの人々を住まわす事が出来た。ヨナーゴの港はその中央、半島の突端部にある。他は水深の狭い浜辺ばかりで、大きな船を入れるのに適していなかった。

 特筆すべきはその港の東の沖合には、細長い島がいくつもあることだった。そこには暗黒卿が築いた石垣の要塞がいくつもあった。つまりその島々が港の防波堤兼防衛網として機能していた。

(どうしてそんなところで降ろされたのだろうとは思ったけどね。お風呂を貸してくれたのはありがたいけれど……)

 あふっ。風呂場の壁に手をつきながらマイヤは色っぽいため息をついた。尻にはイズヴァルトの手が添えられていた。朝出来立てのザーメンをアナルに注ごうと躍起になって動かしている。いや、いつまでも繋がりたいからと我慢をしている。

「ううっ。だめでござる!」

 我慢が苦手な尿道が、マイヤの腸の奥に精液を注ぎ込んだ。広がったアナルからつつ、と精液がこぼれ出る。お尻が快感と栄養摂取で喜び、身体が温まりだしたのをマイヤは感じた。

 石鹸を手に付けて泡立て、うんちかすがついてしまったイズヴァルトのペニスを丹念にしごく。びゅっ、と残り汁を出したそれをごしごしとしごいた後、湯をかけて口につける。自分の味がする、とマイヤは思った。

「んちゅ……。 (きれいにしたけどやっぱりくさいや。)」
「おおう。マイヤどの……」
「んちゅぱっ。 (でも好きな味。イズヴァルト。枯れ果てるまでたーんと出していいよ? あとついでに。)」

 外で待っている連中の頼みは絶対に聞くな。風呂場はこの島にあるヨナゴルグ防衛軍の砦の中にあった。窓からは潮騒を聞かせてくれる美しい外海が一望できる。この風呂場でのセックスは絶景も楽しめた。

 イズヴァルトは外海を見ながらマイヤのフェラチオに蕩けた。ふぐりの中の精巣を優しく揉まれながらしゃぶる。ペニスは射精を我慢できなかった。

「うあああっ! 晴れ晴れしいでござる!」

 貫く快感とともにびゅるる、とマイヤの口の中でそれははじけた。作りたての二発目を飲み込んでご満悦が顔のマイヤに、そろそろ出ようと呼びかける。彼女は亀頭から口を離し、「うえっ!」と嫌そうな声を出した。

「まさか手を貸すつもり? 一時間以内に風呂場から出たら話に応じるって言ってたけど?」
「面倒ではござるが致し方がないでござるよ。マイヤ。今度はしばらくお留守番するでござる」
「とんだ『はねむーん』だよね?」

 致し方ない、とマイヤは立ち上がりイズヴァルトに抱き着いた。ぷるるんとしたおっぱいを彼の胸にくっつけて行こうと呼びかける。

 脱衣所に出ると鎖帷子を着た武者が数名待っていた。その中のずんぐりむっくりした体型で、あごひげを蓄えたぎょろ目の黒い肌の男が呼びかける。

「もうちんぽとおめこがすっきりしたちや?」

 南のシマナミスタンのドワーフだった。名前はズルフィカル=ブート。この防衛軍に雇われたドワーフの武者である。大陸の南部・シマントスタン地方出身だ。

 ズルフィカルはぺらぺらとしゃべりはじめた。イズヴァルトはシマナミスタンの言葉があまりわからなかった。外国の言語も得意なマイヤに同時通訳してもらって何を話しているのかがやっとわかった。

 要約するとこうだ。別に協力をせんでもええ。事態が収まるまで毎日この砦でへばって気絶するまでおめこをしてええし、港を避けて別の浜から陸にあがってもかまわんよ。

「しかしのう。ヨナーゴは船商いをする衆がごまんとおる。そいつらを助けたいという気持ちがあれば自分だけというのはどうにも気が引けるちや。わしはかまわんよ。なにせここの砦の衆には世話んなったき」

 このドワーフは1年前からこの砦で働いていた。この4年前にイワッミーにいる親友の家で居候をし、珍しい茸盆栽を育ててシマナミスタンに持ち帰る途中で路銀が尽きたので雇ってもらったのだとか。

 脱衣所の先の廊下では20歳ぐらいのサイゴーク人の女が1人、こちらをうかがっていた。まんまると太った女だが愛嬌のある顔立ちだ。

 この島の防衛隊の兵站の管理をしている軍属の女だった。お腹が妙に出っ張っているのは、このドワーフの子を宿していたからである。

「わしは産まれてくる赤ん坊の諸々の準備と、エポニーヌをシマナミスタンに連れて行く銭も稼がないといかんから戦うだけちや。イズヴァルトさんはどうするかいな?」

 ヨナゴルグ防衛軍はイズヴァルトに、破格の報酬金を提示していた。イーズモー小金貨で30枚。イワッミーのドワーフの鍛冶工房でミスリルの槍の替え穂を得られる程の金額であった。

「旅銀は十分にあるよ、イズヴァルト。どうこたえる?」
「困っている人のふところから搾り取る様なものはいらぬでござる。ズルフィカルどのと同じ報酬でかまわんでござる」
「……それでも金貨5枚になるよ。だって?」

 それでも十分過ぎる程の金額だと思いつつも、イズヴァルトはズルフィカルと同じ報酬でよいと答えた。仕方ないなあ、とマイヤはぼやきながらシマナミスタン語で答える。交渉は成立した。

「では、これからどうやってヨナゴルグの港を奪還するか、作戦会議を開くでござるよ!」


□ □ □ □ □


 ヨナーゴ港の沖合にある縦に伸びた細長い島・ミホノール。そこにイズヴァルト達が今いる砦があった。ヨナゴルグ防衛軍の東の重要拠点である。イーズモーの暗黒卿の時代に強固な要塞が築かれた。ヨナゴルグ自体が彼によって整備された。

 暗黒卿の時代は、キンキ大陸の覇者となったホーデンエーネン王国が、積極的に海外進出を試みようとした時代でもあった。

 時はジュンエイン侵略王の御代。ホーデンエーネン王国はサイゴーク大陸の北部を統一したばかりの暗黒卿を討とうと、総勢15万の大海軍を編成して侵攻を企図した。

 理由はサイゴークの土地や富ではなかった。侵略王・ジュンエインの個人的野望によるものだ。暗黒卿の娘達が美人ばかりだと聞き、残らず我が物にしようと目論んだのである。

 ジュンエインは12歳の時から死ぬまでずっと、正妃を含む90人の女達に王家の血を継ぐ子を産ませ続ける程、生殖に貪欲だった。彼の夢は世界中のあらゆる人種や亜人族による後宮を作ることだった。

 国王は25人の息子を武将とし、大艦隊を率いさせて侵攻を開始した。その頃からホーデンエーネンは獰猛かつ残虐だとサイゴークでは恐れられていた。

 捕虜となった敵将は両手足を斬って二度と歯向かえなくさせる。敵国の男の種による子供は、男は残らず焼き殺す。女は強姦したあと暴力を用いて脅し、従順な孕み奴隷に。これは抵抗が激しかった城市に対しての行いだったが。

 対する暗黒卿は、ヨナゴルグを海側からだと守りやすく攻めにくい港町に整えた。但し、陸側からの攻撃にはめっぽう弱く、ミホノール島とその他の島々を抑えられたら港を容易に封鎖できるような造りにである。その当時のヨナゴルグはまだ、イーズモーの版図の中だった。

 サイゴークに侵攻するホーデンエーネンの大船団だが、王はヨナゴルグを最初に取れと命じていた。重要拠点を奪われ、暗黒卿をびびらせる為にであった。

 だが暗黒卿は知っていた。ヨナゴルグ港湾を最初に抑えてくるというのを諜報から聞かされたからだ。彼は一計を案じた。固く守るよりも引き込んで一網打尽にしろ。

 そこで1人の側近をヨナゴルグの総督に任命した。若くて美しいイーズモーの大貴族の御曹司。だが口だけは達者で仕事ができない無能。自分に対して陰口を叩いていたのも存じていた。

 その者に娘を与えて一家に加えた。娘達の中で一番美人であるが、顔と肢体と子を産む能力以外に何の才もないわがままで手に余る娘だった。

 暗黒卿は目論んでいた。その通りに総督はホーデンエーネンに内応し、彼等を港の中に引き入れた。暗黒卿の罠にかかったのだ。

 ホーデンエーネンの海軍が湾の中に入り込み、街で英気を養ってからイーズモーと決戦をせんと休んでいたところで、暗黒卿は包囲殲滅作戦を実行。

 ジュンエイン王の25人の息子たちは残らず首をあげられ、裏切った総督は暗黒卿の娘ごと市街戦の最中に討ち果たされた。15万のホーデンエーネン兵は帰順した者以外は全員、海の魚の餌となった。

「その後に暗黒卿は港街の陸側の防御施設を強化して、西からも東からも備えるようにしたんだって。そんなことがヨナゴルグの市史に書いてあったよ?」
「娘をいけにえにしてまで勝利を果たすとは……やっぱり暗黒卿とはお友達にはなれそうにないでござるな」

 しかし愛用の剣とこれから奉納する剣は、暗黒卿とのゆかりが深い代物である。しかも背負っている大剣のほうは覇王の愛用の剣でもあった。

 この島の防衛軍を困らせているのは、ヨナゴルグの親イーズモーの派閥であった。パラッツォ教団との全面対決を決め込んでいるかの国に近づいている者達だった。

 対して島の防衛軍や港町の城壁の外側にいたのは、教団がらみの騒乱で中立を決め込もうとしている者達だった。布教は認めるが属国にはならない、教団もそう宣言する相手には手を出さないらしい。

「軍議でイーズモー派が5000、こちらは7000と聞いていたけど。ひょっとするとイーズモーから援軍が来るかもしれないよ、イズヴァルト?」
「の、前に決着をつけるのが常道でござる。問題はどこから攻めるかでござるが……」

 決起したイーズモー派は行政庁を本拠としている。暗黒卿の時代には城であった。それから港に停泊している軍船を全て掌握した。投石砲を積んでいる厄介な軍艦ばかりだ。

「陸側の守りは鉄壁らしいよ。何せ覇王が築城技術を駆使して築いたらしいからね。『覇王の剣』で城門を破れる事も出来るだろうけど……」
「魔法を防ぐ結界を埋め込んでいると軍議で聞いたでござる。時間がかかる。それでは援軍が到着してしまうかもしれないでござるよ。最短時間で終わる作戦を取りたいでござる」

 その為には船に乗って潜入し、まずは軍船を叩き潰すべし。軍船こそがイーズモー派の心の拠り所に違いないとイズヴァルトは言った。最強の武器を台無しにすれば相手はきっと意気消沈することだろう。

「マイヤ。何か策はござらぬか?」
「海から夜陰にまぎれて突入するしか無いなあ。まあでも向こうの軍艦は24時間見張りがついているんだっけ?」

 ズルフィカルから聞いた話だと一度海側からの突入を試みたが火矢や弩弓の猛射撃に遭い断念したという。その時に船を何隻か失った。姫竜の牙で矢を避ける方法もあるけれど、別の方法もあるはずだ。

「うーん。『きっこうせん』みたいなのが考えられるかなあ」
「なんでござる? そのお船は?」
「亀みたいに平べったくて屋根を鉄の板にして砲弾から耐えられるようにしたものだよ」

 マイヤの前世の世界にあった船で、これでふないくさに勝ったのだという。それを作って防備が弱いところを襲って上陸し、どこかの城壁を奪えば戦いが終わるのではないだろうか。

「防衛軍内でのもめ事らしいから、両派が市街戦を繰り広げるわけではないでしょうし。城壁を奪ったら勝ちだと思うよ?」

 なるほど、と思いイズヴァルトはすぐに砦の武将らに申し立てた。

「と、いう船を作っていただきたいでござる!」

 一から建造は無理だから、せめて残っている船のうち1隻か2隻をその様に改造してほしい。船はあった。屋形船みたく平らな小型の漕ぎ船が4隻。

「その4隻とも屋根があります。でもそれを覆う鉄が必要ですね」
「どこから仕入れればいいんだろう。この砦には鍛冶場はあるけど矢や槍用のものだし。ううむ……」

 武将達が考え込んで黙ってしまった。しかしそこに「鉄のことは心配しなさんな!」と声が部屋の入口から。

 さて、その声の主は何者で、どうしてその様に返せたのか?

 その続きについてはまた、次回にて。
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