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第二部 少年編

第六回

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 翌朝、イズヴァルトは起き上がって「しまったでござる!」と嘆いた。寝間着にと宿の者が用意してくれた腰巻きの中で大量に射精してしまったからである。

 昨日ちゃんとマイヤの口の中で射精をしたのだが、自分の陰嚢がとんでもなく生産力旺盛であることをすっかり失念していた。

 久しぶりの命に関わる戦いであまりにも疲れていたせいか。腰巻きを広げた時に立ち込めたにおいでマイヤは目を覚ました。

「あ、夢精しちゃったんだ?」
「今すぐ脱いで洗ってくるでござるよ」
「待ってて、私が宿の人に替えを持ってきてもらうから」

 マイヤはイズヴァルトが腰に巻いていたものを取り外すと、精液がかかっていた部位を確かめた。

 とても濃い色合いとゼリー状の付着物がついたそれに顔を近づけ、嬉しそうに身悶えをした。

「すんすんすんすん……」
「マイヤ? 洗濯を頼むのでは?」
「後でいいんじゃないかな。うーん!」

 出したての濃いにおいに惹きつけられて、あろうことかマイヤは濡れたところをぺろぺろと舐め始めた。それを見てイズヴァルトは勃起してしまった。

 彼女は腰巻きについた精液をあらかたねぶり取り終えると、そのまま服を脱いで彼の身体にしなだれかかった。

 身体の奥に痛みは残っていたが、傷は治癒魔法でいくらか塞がれていた。交合を行って傷が広がる事はないとも治療をしてくれた者からも聞いている。

「イズヴァルト。もっとすっきりしよっか?」
「ま、マイヤ……」

 彼等にあてがわれていたのは狭い個室部屋だった。マイヤは昨日から風呂に入らずまとわりついていた汗のにおいを漂わせていた。

 イズヴァルトは彼女の大きなおっぱいを胸で感じると、彼女の背中を抱きしめる。座る格好だったイズヴァルトの腰の上にマイヤがまたがると、激しい交合が始まった。

 身体の奥に残っていた痛みと戦いの興奮と負けた悔しさを忘れる為、イズヴァルトはマイヤの乳房にしゃぶりつきながら腰を振る。

 マイヤもまた激しかった。怖い思いをしたから命の危機を喚起された身体が生殖欲に燃えたからだ。

 2人のいつもの交合は、互いに何度も果てるフェラチオとクンニリングスで始まるのだがその日だけは違った。互いに性器の結合を欲した。

 マイヤの中で2度3度暴発を繰り返し、彼女も歓喜を覚えて満足すると、かいた汗を流そうと湯殿に向かった。数メートルの階段をくだったところにあるそこは、崖の上にある温泉となっていた。

 とても寒いのとまだ朝やけがいくらか過ぎた時だったから誰もおらず、身体を清めると湯の中でも2人は口づけあい、絡み合った。

「ふうっ。誰も来ないでござるな?」

 イズヴァルトは湯の中でせわしなく腰を動かすマイヤに呼びかけた。彼女は腕を相手の首にかけて甘いため息をつきながら、大きなペニスと心地よい湯を楽しんでいた。

 しかしそろそろ朝飯時である。飯の前に一風呂という者も来るに違いないと思った2人は愛欲に浸るのを止めた。

 湯の中に入り込んでしまった精液を必死になってたらいですくう間抜けな行いをしている最中だった。

「こんなところにおりましたか!」

 風呂場の入り口から声が。振り向けば監視役だったカルカドの若い側近が立っていた。
 
 彼は前かがみになって湯桶を取るマイヤの垂れたおっぱいと長い性交でぱっくりと開いたままの陰裂を見つめてばかりだった。

「ぬ! 貴殿は!」
「イズヴァルトさん、一大事です! お風呂から出たらすぐに支度して関所へお向かいください!」
「ややっ、もう少し待たれよ! このお湯の中に入り込んでしまった拙者の精液をあらかた抜き取ってからにしていただきたい!」
「そ、そうでしたか。では私もお手伝いいたします!」

 若い武者は服を脱いで湯船の掃除に加わったが、マイヤの裸が気になって致し方がなく、痛いぐらいに勃起してしまった。

 このままでは先輩方に申し訳がたたぬということで、彼女にフェラチオで抜いてもらってすっきりさせてもらう事にしたが、ついつい4度も頼んでしまった。

 2時間過ぎてようやく関所にたどり着くと、カルカド配下の武将らが西の城壁の上に集まり、棺の前で何かを真剣に話し合っていた。

「何事でござるか!」

 イズヴァルトに一番年かさの武将が振り向いた。眉間にしわを寄せて悩んでいる様子だった。

「カルカド様が何者かに殺害されたのです。お妾様がたも含めてですが」
「マリアンナとかいう女が怪しいと思うのですが、かの女も行方しれずで……」
「マリアンナ? 何者でござるか?」

 関所を占拠した山賊達の情婦。鼻がいささか大きいがカルカドが夜伽を命じたくなるぐらいの美女だったと皆が言った。

 その女の簡単なあらましについて語られると、マイヤは首をかしげた。女の顔は知らぬがあんな美人を妾にしたカルカドが寝床に誘いたくなる程の美貌とは。

「ふーん……ナントブルグに出稼ぎに行って連れされられたって……そのぐらいの美人さんだったら娼館やどこかのお金持ちのおめかけさんでいられると思うのですが」

 本当にそういう人生をたどってきたのかな、と改めて疑問を口にする。イズヴァルトは悩んだ。とびっきりの美少女でも田舎の牧場の平凡な倅と慎ましく暮らす人物が身近にいたからだ。

「山賊さん達にあらためて確認できませんか? 本当に彼等の情婦だったのが疑わしい……」

 マイヤが提案すると武者達は、大層に気まずそうな顔になった。山賊らは残らず殺してしまったのだ。

 捕らえられた者らはカルカドの命によって昨日のうちに残らず斬首され、東の城壁の前に見せしめとして並べられていた。

「見ていきますかな、マイヤさま? 野犬や鳥が食い荒らしてはおりますが、カルカド様の命令通りにきっちり横に並べておりますよ?」
「いえいえいえ! そんなひどいものは見たくありません!」
「……ナントブルグのお嬢さまがたは怖がりなのですね。領内の娘どもは面白がって処刑場に集まったりするのですが」
 
 そんな娯楽はたくさん、とマイヤは首を振り続けた。深刻そうな顔で話し合っていた理由について尋ねた。どうにもカルカドの死そのものが原因では無さそうに思えたからだ。

「例え賊の討伐ごときのいくさでも、武人が戦って死ぬのは道理。カルカド様はこの度もカシバフェルト公に前もって遺書をお渡ししておりました」
「跡目のことはご心配なく。カルカド様には成人されたご子息が10人おられます」
「一番上のご長男のアッカド様は庶子扱いでございますが今年で25。すでにカシバフェルトの代官衆として功績があり、皆に将来を嘱望される程でございます」
「跡目の事についてはお気遣いなく。問題となるのは……」
 
 カルカドの死に方についてであった。天幕の中で全裸のまま。しかも妾2人と外にいた護衛の数名を巻き添えにしての間抜けな死に方をカシバフェルト公にどうお伝えすればよいのか。

 これを討ち死にすべきか否かで朝から真剣に話し合っていたのだと皆が言う。イズヴァルトであればどうすべきか。答えてほしいと武者たちは言った。

「なにゆえかような事を拙者に?」
「世に名高き麒麟児たるイズヴァルトさんに決定していただきたくて……」
「幼くして武者として抜群の武勇を誇り、かつ戦場で敵の前でマイヤさまにちんちんをしゃぶられてもおどおどすることのない、胆力優れた御仁であればきっと良い判断をしてくれるかと思った次第です」

 イズヴァルトは返事に困った。それだけの理由で急ぎだと呼びつけないでいただきたいものでござるよ。

「さて、イズヴァルトさんであればどうするか、お聞かせいただけないでしょうか」
「……討ち死にでよろしかろう」

 夜の休息中に奇襲を仕掛けられたのだ、と報告すればいいと答えた。
 
「戦場での本陣の天幕の中でおまんこをしている最中に、敵方の奇襲にあい死んだ武将も古今、たくさんいたでござろう」
「確かにそうかもしれませんな?」
「というかそんなことを話し合うよりカルカドどのを討った張本人を探すべきでござるよ。例えばどんな武器だったとか、太刀筋でどこの流派の剣術なのかを……」

 とりあえず遺体を見せていただくでござる、とイズヴァルトは棺の中をあらためた。カルカドの遺体を見て腕を組む。

「……匕首でバッサリやられたような感じでござるな。この首の傷は……わからぬでござるが、傷の周りがひどいしもやけになっているでござる」

 カルカドの首の傷と、胸を貫かれた妾2人の穿ちの周囲はよく見れば紫色に変色して膨れ、ふやけていた。

「……氷の刃でござろうか?」

 エイオンを思い出す。彼以外にもエルフがもう1人か2人いたのではないのかと推測する。山賊に手を貸すエルフというのがどうにも理解できなかった。

「この遺体、王都に送り魔道士どのらに確認頂いたほうが良いかもしれぬでござる」
「なにゆえにでしょうか?」
「もしかしたら傷でどのような魔法術式を使ったかがわかるかも。でもだめ元でという事でござるよ」

 とにかく貴殿らはカルカドの無念を晴らすためにも、まずは殺害に関与したと思われるマリアンヌとかいう女を探し出すように、とイズヴァルトは告げた。

 後日談となるがカシバフェルト公の武者らは手を尽くしたけれども、結局カルカドの仇を見つけ出せずじまいに終わったという。


□ □ □ □ □


 キッヒャーが宿場町にやって来たのは2日後の事だった。その頃にはイズヴァルトの身体の傷もだいぶ癒え、旅を続けられるようになっていた。

 馬車の中でイズヴァルトは、カルカドとその妾を討った凍傷を伴う魔法について調べる為に書を開いていた。

 マイヤが持ってきた書物の1つ。各大陸の魔法術式について一覧にしているものだ。

「イズヴァルト。ああいう傷でわかるものなの?」
「聖騎士団の座学で学んだ程度でござるが。例えば氷で作った刃物や錐などは、カントニアの北部のエルフが得意とする魔法らしいでござる」

 その書物のカントニアのエルフの魔法について記した記述を見せる。北部のエルフ、俗に言う金色エルフは氷の剣で狩った獣の肉をさばいたり、危急の時は身を守る事もあるとあった。

「氷の魔法は金色エルフの得意分野らしいでござる。その教え受けたウマヤーノやウツノミーア、ヒッターチの北部各国の魔道士もまた同じくでござる、と」
「たぶんエルフだね。そのあたりの人達でこのホーデンエーネンに来る理由は、せいぜい商売だと思うよ」

 あのエイオンという変な髪型のエルフがやったのではないかとマイヤは言った。そうに違いないとイズヴァルトもうなずいた。

「であればこそ決着をつけなければならぬでござるな。カルカドどのの為にも」
「勝てそうにもない、と言ってたのに? イズヴァルト、この旅はまずは、ヴィクトリアさんの故郷に無事にたどり着くのが目的なんだよ?」

 ここでいらぬ面倒事に巻き込まれてはいけない、と戒めた。仕方なくイズヴァルトは受け入れる事にした。

 深入りせずにヴィクトリアの故郷へ。そう自分に言い聞かせて西の港まで向かう事にするのだが、果たして無事に旅を進める事が出来るのであろうか?

 その続きについてはまた、次回にて。
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