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第三部 カツランダルク戦記 『第三章・カツランダルクの姉妹』
113 障壁について
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「で、イーガのマルティン王子はマイヤに何を話したのだ?」
書斎でワインが入ったグラスを傾けながら、ケノービはカヅノ=セイジに尋ねた。アスカウでマイヤとマルティン王子らが再会してから2日後の事である。ケノービはナントブルグ郊外にある妾の邸宅にいた。男児を得る為にだ。
「司祭騎士団長殿は大事な用事で、エチウからなかなか抜け出せられないという知らせですよ」
「大事な用事だと? なんだそれは?」
ケノービはワイングラスを書机に置いた。それから椅子を後ろに傾け、脚を開く。テーブルの下にいた妾は、彼のガウンの裾を開いてフェラチオを始めた。カヅノが訪れたのがお楽しみの最中だったから、燻りが収まらなかったのだ。
「クボーニコフの侵攻です」
「なんだそれは! 聞いたことがないぞ、そんな話は!」
王国の外交部はおろか、イーガやパラッツォ教団からも情報が来なかった。
「どうしてクボーニコフがエチウに攻め込んだのだ?」
「サワータキャビク島と周辺諸島の実効支配、ノトゼタシア島の占拠を狙っているようですね。あわよくばエチゴニア島まで奪取しようと目論んでいるようで」
サワータキャビク島はクボーニコフの北、ムーツ大陸の北部沿岸をぐるりと領しているナンブロシア公国に隣接している。島はそれほど人はいないが自治を保っていた。エチウ諸島とナンブロシアとの緩衝地帯に設定されたと同時に、両国の交易の中継地でもある。
「それと、エチゴニアなら想像できるがノトゼタシアは?」
「人が住むに適した土地ではございませんが、至る所に温泉が湧いておりましてな、信徒の隠れた保養地でもあるのですよ。それと、鉱物資源と漁場が豊かでして、ヨーシデン公なら最大限まで生かせそうなところではございまするな」
クボーニコフはとうとう、エチウの攻略に乗り出した。属国である大陸中西部のユーリポフ13小王国とさらに南の小国群に檄を飛ばし、8万からなる大艦隊を派遣したのだ。
その中核はクボーニコフが頼みにする王国水軍だ。海賊あがりのオーガ達が多くいるその艦隊は東の海で最強と恐れられた。苛烈かつ残虐。10年前、アヅチハーゲンでパラッツォ教徒への大虐殺を行ったのはこいつらだ。
そして南の諸国の沿岸部にも、海賊オーガが各国の水軍に組み込まれている。そもそもこの亜人の海賊らの多くは、3000年以上前に実在し、ムーツ大陸西岸部に覇を唱えたオーガの海賊王の子孫でもあった。
その海賊王の名は、チアン=カイシェックだ。千を超す海賊船と五万を超える部下を率い、ムーツ大陸西部海域からキンキ大陸、カントニア大陸沿岸部にまで勢力を伸ばした。海の覇王だった。
チアンの敵はもっぱら、海の上の戦いを得意とする連中だった。カントニア北西部のナエバニア=エルフやミナッカミニア沿岸のエルフ達だ。魔法がほとんど効かぬオーガを多く擁していた彼は常に勝った。ナエバニアと手を組んだ古代ムサシノ帝国の新兵器によって海に沈められるまでは。
その海の覇王だが、とても有名なエピソードがある。陰毛が生えはじめたぐらいの年頃の少女が好きな彼は、長くその歳頃を続ける耳長の娘らを好んでさらい、妾として囲っていた。
そういった娘を己の自慢の長槍で一晩中喘がせた後、子宮にたっぷりと精液を飲み込んだ妾に便器壺の上にしゃがんで糞尿をするように命じた。
大小便と言うのは下腹を力んで行うものだから、膣や子宮の壁も動くものである。幼い娘の陰毛がまだまばらな縦すじからどろりと、自分が放ったものが垂れるのを楽しんで眺めていたという。
そんな悪趣味を毎日の様に為したチアンは、耳長の妾らにたくさんの子を産ませたのだ。クボーニコフ王国の水軍の頭目らや王族や貴族、はたまた、かの国の属国の要職はチアンとエルフ達の子孫であった。彼はムーツ大陸西部の諸王国の祖先でもあったのだ。
「オーガの水兵か。あいつらの獰猛さをすっかり忘れていたな……魔法抵抗力がすごいそうじゃないか?」
「東のオーガ達ほどではありませんよ。エルフの血が雑に混じっておりますので。とはいえ、やはり面倒ではありますな」
西のオーガ達だが、魔法の炎で産毛ぐらいは焼ける。ついでに陰毛や腋毛もいけた。なのに髪には効かなかった。どうも額のツノや脳みそあたりに魔法抵抗の源があるらしい。カヅノもまたオーガ族だったから存じていた。ついでにあのツノは力を調節してさすると、亀頭をこすられているぐらいの快感をもたらす。男も女もだ。
「しかしクボーニコフからの防衛についてですが、あいにく、『枢機卿』は手を貸しておりません。我々はあくまで、『秘密兵器』ですから」
教主からの出動要請は未だ来ていない。しかしオーガ族は神聖魔法も通じにくいのは本当のことだった。産毛と陰毛を焼いたのが、『シディムの火』でだ。まことに厄介極まりない。
「戦況はどこまで進んでいる? ホーデンエーネンには全く情報が入っておらん。クボーニコフとは同盟国なのに何も通達をしてくれてない。なぜだ?」
「ホーデンエーネンがパラッツォ教団と友好条約を結んでいる。それゆえにクボーニコフは黙っていたのですよ」
「その言い方、なにか企んでいるな?」
ペニスの奥から吹き上がる快感に蕩けていたが、ケノービの声は低かった。策略を巡らせている時のものだ。
「ご明察。ホーデンエーネンからの停戦をクボーニコフは望んじゃいない。むしろ、かつてのように共同作戦を張りたいというのが本心」
「私が属している近衛騎士団もそうだよ。多くの者は教団と戦いたいと望んでいる。昔から吹聴している建前、エチウの各公国の再興が目的ではなく、戦利品が欲しいのだよ」
本音は、奴隷商売がやりたいのである。
「捕虜は売れば稼げるからな。特に女子供が高く売れる。奴隷となれば衣食住だけで満足する。馬車馬のように働かせられる。それとエチウ人の女は……乳が大きい」
セイジはうなずいた。エチウ諸島の者らはとうに滅びたらしいエチウ=オーガの末裔だからだ。ニンゲンとの間のである。エチウの女の多くは、ツノが生えた亜人の女と同じく、胸にたわわなものを実らせていた。
「それで、お前が企んでいるのはどういう事だ?」
「教主と教団の思い上がりを、そろそろ終わりにしたいのですよ。私はパラッツォ教が全世界に広まるなんていう事には興味が無い。エチウ諸島とサイゴークの一部で信仰されればそれで良いのです。そこでまとまってくれるだけで充分だ」
「では、どうしたらよいと思う?」
「ホーデンエーネンとの友好条約を反故にする。サイゴークは近隣諸国とまだくすぶり続けている状態で、その上で攻撃をかけられれば、パラッツォ教団は野望をあきらめざるを得ないでしょう」
カヅノの目的は教団の拡大政策を終わらせることだ。教主は政治のことに口を出さず、『聖根』に女性信者との法悦を繰り返して、魔族の血が混じった子をたくさん授ければいい。それだけでも十分な『強兵政策』だ。
生まれ持っての才能の差はあるのだが、コーザの子は魔道士としての才がある。教主の息子は『司祭騎士』。娘だと『経典の巫女』になる。みんな、何故か40ぐらいで死んでばかりだが、イーガの中堅魔道士かそれ以上の才能があるので、戦力としては充分に期待できた。
「それから……教団はエチウに『俗世の王国』を作るうえで、その主にこそ司祭騎士団長殿を据え置く計画を立てている、ということは存じておりますかな?」
「うすうすはそうするんじゃないかと察していた。教団の大事な戦力になるからな、あいつは。その名前だけで、ホーデンエーネン全土の騎士への牽制となる。しかもサイゴークでも大活躍だろう? 最高の神輿じゃないか?」
イズヴァルトの奴め、本当に忌々しい。ケノービは吐き捨てた。怒りでまたペニスが膨らんでしまった。すっきりさせたいと思い自分の腿をさすっていた妾に命じた。おしゃぶりの再開。ちんぽを愛でられながらだと頭がすっきりする。
「それでマイヤのやつを教団に寄越せ、と言って来たわけだ、教主どもは」
「つまりは、そういうことです。その計画に副司祭騎士団長殿こと、エレクトラ=ガモーコヴィッツが1枚噛んでいる」
「イーガの密使から聞いたよ。国王はかつての義娘を重宝している。エレクトラは祖国との連絡役となった。奴が一番面倒くさい。殺せないか?」
それは無理でしょう。教主は彼女を信頼している。策士だがよい未来を考えて計画を練るからなくてはならない存在なのだ。あと、ゴブリンやエルフの里であやしげな薬を使って改造した彼女のまんこは、かなりびりびりと来る珍品なのだとか。
「それと、副団長殿がイズヴァルトの子をまた産んだ、というお話はご存じですかな? 女の子です。ヴィクトリアという、きゃつにとって大切な師と同じ名前の」
「トンダバヤシ撤退戦の功労者と同じ名か。イズヴァルトめ、今のイーガ王子とも繋がりが出来たな?」
「ヴィクトリアは二番目の子ですよ。2人にはエレナという娘がおります。それに、マレーネ姫の2人の子の父親もまた、イズヴァルト」
アスカウの会合でマイヤはその2人をひどく可愛がったらしい。いずれは養女に迎えるという話が持ち上がった。マレーネは未婚だからその方が良かった。脚萎えだが美少女だ。
だが、イーガはイズヴァルトとマレーネの婚姻に動いているそうだ。国王が勝手に決めたそうだ。イーガの国内法ではある程度の地位の女性は重婚が可能である。遺伝子検査が進歩していて、子の父親が何者か判明するからだ。
「しかもイズヴァルトはマイヤとの婚姻もできるようで。きゃつはイーガではマレーネ様を。ホーデンエーネンではマイヤ様を妻にできるそうです」
そして婚姻が形式化したエチウでは、エレクトラがイズヴァルトの実質的な『女房』だ。ただ、あの男は教主とその『妻』より、信徒の女との子造りを奨励されている。すぐれた胤による子を量産するのが目的だ。イズヴァルトはしぶしぶ受けているという。
「……まったく、羨ましいと思えるぐらいの艶福者だな。気に入らん」
「結婚などというものは、女が仕事や財を持つようになり子の父親がはっきりとわかるようになれば、たちまち価値を減じてしまうものでしょうな。子孫を残すのが生き物の本義ですから。となれば、するのは目的があったり相思相愛であったり。男女の仲というのはうつろいやすいモノなのですよ」
「ブスのくせに男どものウケがいい、チュバッカと長く付き合えばわかるもんさ。あんな女でも不倫の相手にしたがる男がいるんだぞ、この世の中には?」
ケノービは嘲りに満ちた声で吐き捨て、ワインを口に含んだ。この男は女を見る目が無いな、とセイジは思った。
(あんな『上物』、そうそういないぞ……?)
チュバッカは確かにデブスだが、素晴らしい肌と良き雰囲気と締りの良いあそこだった。子育てや『香道』の生徒への面倒見の良さも悪くない。お話をするだけでも何故か心がほかほかしてしまう。もし妻にするなら、ああいう女がいいのだよ。美人はごく一部以外、大抵が浅はかで性悪だ。
「しかし、イズヴァルトはエレクトラとの間に子をもう1人為し、その上、教主からは目をかけられている。がんじがらめだな?」
「そしてクボーニコフとの戦いに加えられております。奴が来ぬ緒戦は押され気味でしたが、今ではエチゴニアの近海で膠着状態です」
「ふん、パラッツォ教団はとうとうあいつを墓場に入る日まで抱え込みそうだな。くそくらえだ」
「でしょうが、教主はますますきゃつを重用しますぞ? 教団の要職にある者の娘らは何名か、イズヴァルトの子を腹の中に入れております。今度は教主殿の直接の娘に種付けを為すように呼びかけておりましてな……」
そしてだ。『枢機卿』らの娘達の中で親元から離れた者らを幾人かを、教主はイズヴァルトの専用の妻にさせる予定だ。どの娘もツノが生えており、100年ぐらい前にコーザの娘らとの間に生まれた者達だ。全員が亜人の防衛部隊に加えられていた。武芸の腕はろくでもなかったが。
その目的はずばり、枢機卿らとイズヴァルトに強い接点を持たせる為にだ。それと教主は全エチウ人に、不世出の豪傑の血を混ぜようとしている。理由は教団の後継者として、イズヴァルトを望んでいるからだ。エチウに建てる予定の神聖帝国の『父』を、すべての国民の『父』にするのだ。血は絆よりも濃くて強い。
「イズヴァルトをエチウに追い出すことは別に構わんよ。だが、奴隷貿易や近衛騎士団の『結束』を揺るがす真似は気に食わない。どう仲たがいをさせる、我が国とエチウを?」
「エレクトラが目論んでいたもう1つの道筋……北部諸侯を王国から独立させ、イズヴァルトがそこの主にするようにすればよいでしょう」
「ふざけたことを言うなよ……?」
それこそホーデンエーネンにとっては大損害だ。けれどもパラッツォ教団が弱体化し、ホーデンエーネンとの緊張が高まったままにするには、それが一番だとカヅノ=セイジは言い張った。
「できればキンキ大陸北部全土をまるごと、がいいと思いますな。イズヴァルトはパラッツォ教団を抜けたということでエチウからは信用されず、ホーデンエーネンはよく知る手ごわい人物の国だから容易に手出しできないでしょう。更にコンゴウアミダラデン。ホーデンエーネンは安心して南部の統治に専念できます」
「……まあな。実のところだが、北部はあまり興味が無い。豊かな南部があれば我が国は充分だと思っている」
アカサカチハヤを隔てた北部は統治が難しい。これまで北部諸侯の連中が王家に忠誠を誓っていたのが不思議なくらいだと、ケノービは言った。
「エチウから奴隷を刈るのは難しくなるでしょうが、その代わりに今のホーデンエーネンにはもっと富をもたらす『金の卵を産む鶏』がおりますし」
「マイア=テクニカのことか。うむ、そうだな。となればマイヤは邪魔だ。あいつがいる限りは国内の工房を接収できん。俺の『神輿』が本家にとって代わった後のことを思えば、ヨーシデン公は殺すか追い出しておきたい」
「その算段を、裏でお進めになられているのでしょう?」
ケノービはにやりと笑った。
「今のマイヤはイズヴァルトと別れたせいで国民どもから人気が無い。とはいえあの女と近しい者からは愛されている……が、そうではない奴がごく一部にいる。お前も探らせているだろう?」
「いいえ、あそこにはタカミ=ジュン枢機卿が目を光らせておりますゆえ、なかなか近づけませんよ?」
「じゃあ、俺が進めておくからな。ちょうどいい人物がいるんだよ。死んだトーリも重宝していた外国の建築家なんだが……」
マイヤの近辺を多く伝えてくれるスパイとなっている。マイヤを追い払う段階に入ったら有利に進めるように協力してくれるだろう。野望への道はそこからだ。
書斎でワインが入ったグラスを傾けながら、ケノービはカヅノ=セイジに尋ねた。アスカウでマイヤとマルティン王子らが再会してから2日後の事である。ケノービはナントブルグ郊外にある妾の邸宅にいた。男児を得る為にだ。
「司祭騎士団長殿は大事な用事で、エチウからなかなか抜け出せられないという知らせですよ」
「大事な用事だと? なんだそれは?」
ケノービはワイングラスを書机に置いた。それから椅子を後ろに傾け、脚を開く。テーブルの下にいた妾は、彼のガウンの裾を開いてフェラチオを始めた。カヅノが訪れたのがお楽しみの最中だったから、燻りが収まらなかったのだ。
「クボーニコフの侵攻です」
「なんだそれは! 聞いたことがないぞ、そんな話は!」
王国の外交部はおろか、イーガやパラッツォ教団からも情報が来なかった。
「どうしてクボーニコフがエチウに攻め込んだのだ?」
「サワータキャビク島と周辺諸島の実効支配、ノトゼタシア島の占拠を狙っているようですね。あわよくばエチゴニア島まで奪取しようと目論んでいるようで」
サワータキャビク島はクボーニコフの北、ムーツ大陸の北部沿岸をぐるりと領しているナンブロシア公国に隣接している。島はそれほど人はいないが自治を保っていた。エチウ諸島とナンブロシアとの緩衝地帯に設定されたと同時に、両国の交易の中継地でもある。
「それと、エチゴニアなら想像できるがノトゼタシアは?」
「人が住むに適した土地ではございませんが、至る所に温泉が湧いておりましてな、信徒の隠れた保養地でもあるのですよ。それと、鉱物資源と漁場が豊かでして、ヨーシデン公なら最大限まで生かせそうなところではございまするな」
クボーニコフはとうとう、エチウの攻略に乗り出した。属国である大陸中西部のユーリポフ13小王国とさらに南の小国群に檄を飛ばし、8万からなる大艦隊を派遣したのだ。
その中核はクボーニコフが頼みにする王国水軍だ。海賊あがりのオーガ達が多くいるその艦隊は東の海で最強と恐れられた。苛烈かつ残虐。10年前、アヅチハーゲンでパラッツォ教徒への大虐殺を行ったのはこいつらだ。
そして南の諸国の沿岸部にも、海賊オーガが各国の水軍に組み込まれている。そもそもこの亜人の海賊らの多くは、3000年以上前に実在し、ムーツ大陸西岸部に覇を唱えたオーガの海賊王の子孫でもあった。
その海賊王の名は、チアン=カイシェックだ。千を超す海賊船と五万を超える部下を率い、ムーツ大陸西部海域からキンキ大陸、カントニア大陸沿岸部にまで勢力を伸ばした。海の覇王だった。
チアンの敵はもっぱら、海の上の戦いを得意とする連中だった。カントニア北西部のナエバニア=エルフやミナッカミニア沿岸のエルフ達だ。魔法がほとんど効かぬオーガを多く擁していた彼は常に勝った。ナエバニアと手を組んだ古代ムサシノ帝国の新兵器によって海に沈められるまでは。
その海の覇王だが、とても有名なエピソードがある。陰毛が生えはじめたぐらいの年頃の少女が好きな彼は、長くその歳頃を続ける耳長の娘らを好んでさらい、妾として囲っていた。
そういった娘を己の自慢の長槍で一晩中喘がせた後、子宮にたっぷりと精液を飲み込んだ妾に便器壺の上にしゃがんで糞尿をするように命じた。
大小便と言うのは下腹を力んで行うものだから、膣や子宮の壁も動くものである。幼い娘の陰毛がまだまばらな縦すじからどろりと、自分が放ったものが垂れるのを楽しんで眺めていたという。
そんな悪趣味を毎日の様に為したチアンは、耳長の妾らにたくさんの子を産ませたのだ。クボーニコフ王国の水軍の頭目らや王族や貴族、はたまた、かの国の属国の要職はチアンとエルフ達の子孫であった。彼はムーツ大陸西部の諸王国の祖先でもあったのだ。
「オーガの水兵か。あいつらの獰猛さをすっかり忘れていたな……魔法抵抗力がすごいそうじゃないか?」
「東のオーガ達ほどではありませんよ。エルフの血が雑に混じっておりますので。とはいえ、やはり面倒ではありますな」
西のオーガ達だが、魔法の炎で産毛ぐらいは焼ける。ついでに陰毛や腋毛もいけた。なのに髪には効かなかった。どうも額のツノや脳みそあたりに魔法抵抗の源があるらしい。カヅノもまたオーガ族だったから存じていた。ついでにあのツノは力を調節してさすると、亀頭をこすられているぐらいの快感をもたらす。男も女もだ。
「しかしクボーニコフからの防衛についてですが、あいにく、『枢機卿』は手を貸しておりません。我々はあくまで、『秘密兵器』ですから」
教主からの出動要請は未だ来ていない。しかしオーガ族は神聖魔法も通じにくいのは本当のことだった。産毛と陰毛を焼いたのが、『シディムの火』でだ。まことに厄介極まりない。
「戦況はどこまで進んでいる? ホーデンエーネンには全く情報が入っておらん。クボーニコフとは同盟国なのに何も通達をしてくれてない。なぜだ?」
「ホーデンエーネンがパラッツォ教団と友好条約を結んでいる。それゆえにクボーニコフは黙っていたのですよ」
「その言い方、なにか企んでいるな?」
ペニスの奥から吹き上がる快感に蕩けていたが、ケノービの声は低かった。策略を巡らせている時のものだ。
「ご明察。ホーデンエーネンからの停戦をクボーニコフは望んじゃいない。むしろ、かつてのように共同作戦を張りたいというのが本心」
「私が属している近衛騎士団もそうだよ。多くの者は教団と戦いたいと望んでいる。昔から吹聴している建前、エチウの各公国の再興が目的ではなく、戦利品が欲しいのだよ」
本音は、奴隷商売がやりたいのである。
「捕虜は売れば稼げるからな。特に女子供が高く売れる。奴隷となれば衣食住だけで満足する。馬車馬のように働かせられる。それとエチウ人の女は……乳が大きい」
セイジはうなずいた。エチウ諸島の者らはとうに滅びたらしいエチウ=オーガの末裔だからだ。ニンゲンとの間のである。エチウの女の多くは、ツノが生えた亜人の女と同じく、胸にたわわなものを実らせていた。
「それで、お前が企んでいるのはどういう事だ?」
「教主と教団の思い上がりを、そろそろ終わりにしたいのですよ。私はパラッツォ教が全世界に広まるなんていう事には興味が無い。エチウ諸島とサイゴークの一部で信仰されればそれで良いのです。そこでまとまってくれるだけで充分だ」
「では、どうしたらよいと思う?」
「ホーデンエーネンとの友好条約を反故にする。サイゴークは近隣諸国とまだくすぶり続けている状態で、その上で攻撃をかけられれば、パラッツォ教団は野望をあきらめざるを得ないでしょう」
カヅノの目的は教団の拡大政策を終わらせることだ。教主は政治のことに口を出さず、『聖根』に女性信者との法悦を繰り返して、魔族の血が混じった子をたくさん授ければいい。それだけでも十分な『強兵政策』だ。
生まれ持っての才能の差はあるのだが、コーザの子は魔道士としての才がある。教主の息子は『司祭騎士』。娘だと『経典の巫女』になる。みんな、何故か40ぐらいで死んでばかりだが、イーガの中堅魔道士かそれ以上の才能があるので、戦力としては充分に期待できた。
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「うすうすはそうするんじゃないかと察していた。教団の大事な戦力になるからな、あいつは。その名前だけで、ホーデンエーネン全土の騎士への牽制となる。しかもサイゴークでも大活躍だろう? 最高の神輿じゃないか?」
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「つまりは、そういうことです。その計画に副司祭騎士団長殿こと、エレクトラ=ガモーコヴィッツが1枚噛んでいる」
「イーガの密使から聞いたよ。国王はかつての義娘を重宝している。エレクトラは祖国との連絡役となった。奴が一番面倒くさい。殺せないか?」
それは無理でしょう。教主は彼女を信頼している。策士だがよい未来を考えて計画を練るからなくてはならない存在なのだ。あと、ゴブリンやエルフの里であやしげな薬を使って改造した彼女のまんこは、かなりびりびりと来る珍品なのだとか。
「それと、副団長殿がイズヴァルトの子をまた産んだ、というお話はご存じですかな? 女の子です。ヴィクトリアという、きゃつにとって大切な師と同じ名前の」
「トンダバヤシ撤退戦の功労者と同じ名か。イズヴァルトめ、今のイーガ王子とも繋がりが出来たな?」
「ヴィクトリアは二番目の子ですよ。2人にはエレナという娘がおります。それに、マレーネ姫の2人の子の父親もまた、イズヴァルト」
アスカウの会合でマイヤはその2人をひどく可愛がったらしい。いずれは養女に迎えるという話が持ち上がった。マレーネは未婚だからその方が良かった。脚萎えだが美少女だ。
だが、イーガはイズヴァルトとマレーネの婚姻に動いているそうだ。国王が勝手に決めたそうだ。イーガの国内法ではある程度の地位の女性は重婚が可能である。遺伝子検査が進歩していて、子の父親が何者か判明するからだ。
「しかもイズヴァルトはマイヤとの婚姻もできるようで。きゃつはイーガではマレーネ様を。ホーデンエーネンではマイヤ様を妻にできるそうです」
そして婚姻が形式化したエチウでは、エレクトラがイズヴァルトの実質的な『女房』だ。ただ、あの男は教主とその『妻』より、信徒の女との子造りを奨励されている。すぐれた胤による子を量産するのが目的だ。イズヴァルトはしぶしぶ受けているという。
「……まったく、羨ましいと思えるぐらいの艶福者だな。気に入らん」
「結婚などというものは、女が仕事や財を持つようになり子の父親がはっきりとわかるようになれば、たちまち価値を減じてしまうものでしょうな。子孫を残すのが生き物の本義ですから。となれば、するのは目的があったり相思相愛であったり。男女の仲というのはうつろいやすいモノなのですよ」
「ブスのくせに男どものウケがいい、チュバッカと長く付き合えばわかるもんさ。あんな女でも不倫の相手にしたがる男がいるんだぞ、この世の中には?」
ケノービは嘲りに満ちた声で吐き捨て、ワインを口に含んだ。この男は女を見る目が無いな、とセイジは思った。
(あんな『上物』、そうそういないぞ……?)
チュバッカは確かにデブスだが、素晴らしい肌と良き雰囲気と締りの良いあそこだった。子育てや『香道』の生徒への面倒見の良さも悪くない。お話をするだけでも何故か心がほかほかしてしまう。もし妻にするなら、ああいう女がいいのだよ。美人はごく一部以外、大抵が浅はかで性悪だ。
「しかし、イズヴァルトはエレクトラとの間に子をもう1人為し、その上、教主からは目をかけられている。がんじがらめだな?」
「そしてクボーニコフとの戦いに加えられております。奴が来ぬ緒戦は押され気味でしたが、今ではエチゴニアの近海で膠着状態です」
「ふん、パラッツォ教団はとうとうあいつを墓場に入る日まで抱え込みそうだな。くそくらえだ」
「でしょうが、教主はますますきゃつを重用しますぞ? 教団の要職にある者の娘らは何名か、イズヴァルトの子を腹の中に入れております。今度は教主殿の直接の娘に種付けを為すように呼びかけておりましてな……」
そしてだ。『枢機卿』らの娘達の中で親元から離れた者らを幾人かを、教主はイズヴァルトの専用の妻にさせる予定だ。どの娘もツノが生えており、100年ぐらい前にコーザの娘らとの間に生まれた者達だ。全員が亜人の防衛部隊に加えられていた。武芸の腕はろくでもなかったが。
その目的はずばり、枢機卿らとイズヴァルトに強い接点を持たせる為にだ。それと教主は全エチウ人に、不世出の豪傑の血を混ぜようとしている。理由は教団の後継者として、イズヴァルトを望んでいるからだ。エチウに建てる予定の神聖帝国の『父』を、すべての国民の『父』にするのだ。血は絆よりも濃くて強い。
「イズヴァルトをエチウに追い出すことは別に構わんよ。だが、奴隷貿易や近衛騎士団の『結束』を揺るがす真似は気に食わない。どう仲たがいをさせる、我が国とエチウを?」
「エレクトラが目論んでいたもう1つの道筋……北部諸侯を王国から独立させ、イズヴァルトがそこの主にするようにすればよいでしょう」
「ふざけたことを言うなよ……?」
それこそホーデンエーネンにとっては大損害だ。けれどもパラッツォ教団が弱体化し、ホーデンエーネンとの緊張が高まったままにするには、それが一番だとカヅノ=セイジは言い張った。
「できればキンキ大陸北部全土をまるごと、がいいと思いますな。イズヴァルトはパラッツォ教団を抜けたということでエチウからは信用されず、ホーデンエーネンはよく知る手ごわい人物の国だから容易に手出しできないでしょう。更にコンゴウアミダラデン。ホーデンエーネンは安心して南部の統治に専念できます」
「……まあな。実のところだが、北部はあまり興味が無い。豊かな南部があれば我が国は充分だと思っている」
アカサカチハヤを隔てた北部は統治が難しい。これまで北部諸侯の連中が王家に忠誠を誓っていたのが不思議なくらいだと、ケノービは言った。
「エチウから奴隷を刈るのは難しくなるでしょうが、その代わりに今のホーデンエーネンにはもっと富をもたらす『金の卵を産む鶏』がおりますし」
「マイア=テクニカのことか。うむ、そうだな。となればマイヤは邪魔だ。あいつがいる限りは国内の工房を接収できん。俺の『神輿』が本家にとって代わった後のことを思えば、ヨーシデン公は殺すか追い出しておきたい」
「その算段を、裏でお進めになられているのでしょう?」
ケノービはにやりと笑った。
「今のマイヤはイズヴァルトと別れたせいで国民どもから人気が無い。とはいえあの女と近しい者からは愛されている……が、そうではない奴がごく一部にいる。お前も探らせているだろう?」
「いいえ、あそこにはタカミ=ジュン枢機卿が目を光らせておりますゆえ、なかなか近づけませんよ?」
「じゃあ、俺が進めておくからな。ちょうどいい人物がいるんだよ。死んだトーリも重宝していた外国の建築家なんだが……」
マイヤの近辺を多く伝えてくれるスパイとなっている。マイヤを追い払う段階に入ったら有利に進めるように協力してくれるだろう。野望への道はそこからだ。
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サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
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