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第三部 カツランダルク戦記 『第三章・カツランダルクの姉妹』
81 北海からの陰謀の風
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3年前、トーリに決別を告げられたルッソはヨコタールの領主の地位をはく奪され、港の代官の1人としてアヅチハーゲンに飛ばされた。港湾の仕事をしていたのはそういう理由でだ。
更に、彼はアヅチハーゲン地域から出ることを赦されなかった。アスカウにいる両親や子供達以外の文通も禁じられた。トーリのせいである。サキュバス達も身の回りの世話役としてではなく、遠くから観察する監視員として配された。
半ば囚われの身になっていた。仕事以外は何もすることが無かった。そのまま忘れられるだろうな、と思いながら、想像したよりも楽しくて充実している船荷の仕事をやる日々を過ごしていたところで、セイジがやって来た。
休憩室でセイジはルッソに何かを見せた。もじゃもじゃした、蒼にも見える黒い毛をまとめて縛った腕輪だ。それを見たルッソはセイジの手からひったくる。くんかくんか、とにおいを嗅いで目を見張った。
「……これ、トーリの陰毛と腋毛で作った腕輪じゃないか! なんで君が?」
「奥様からいただきましてね……お近づきのしるしとして贈っていただいたのですよ」
半年前より週に1度、奥様のおまんこと尻穴を堪能させていただきまして。トーリがお近づきにする定番のパターンを聞いてルッソはうなずいた。
「あいもかわらずトーリは、肉便器生活を楽しんでいるみたいだね。そろそろおまんこのびらびらが広がってきていんじゃないかな?」
「いえいえ、まるで乙女の様なぴらぴらでしたよ。周りはふっくらとしていて、舐め心地も良くて夢中になってしまいますね……」
「そうだろ? トーリはちんぽを突っ込むよりも全身を頬ずりして舐めまわしたく女の子なんだ……君もその魅力に気づいたってわけだね?」
ええ。カヅノ=セイジは微笑みながら念話魔法を試みていた。しかし頭の中のそれは、ぼやけて伺えない。こいつ、妨害魔法を習得しているのか?
「実は私、アスカウ公様から言伝をいただいておりまして……」
「何を? 俺はあの子に捨てられたんだぜ。向こうはとっくに忘れていると思って過ごしているよ」
「そんな悲しいことを……アスカウ公様はお会いになりたがっておりましたよ、貴方様に」
ルッソは苦笑いした。だったらナントブルグに呼び戻してくれれば、すぐにでも行くのに。追い出されたとはいえルッソもトーリに会いたかった。意固地じゃないから、矜持精神など持ち合わせていなかった。
「ただ、ルッソ様はナントブルグへ手紙を送られるのを禁じられていると聞いておりました。アスカウ公様はご存じの通り、体裁を気になさるお方。そこで、アスカウのご実家に手紙を送るのはいかがでしょう。記録水晶をつけてです」
ご自身が見ている風景でも記録してみてはいかがでしょう。ルッソはさっき、カヅノから魔力の波動を感じて警戒をしていたが解いた。なんだ、それだけを伝えに来たのか。
「わかった。次回送る手紙はそうするよ。トーリにいつかは会いたい、と書いておこう」
カヅノ=セイジは別れを告げて倉庫から出た。張っていた索敵魔法がまた反応した。ルッソの監視役の反応だ。あまり出来の良い連中とは思えなかった。
(2人ってところか。いいや、予備も含めて3名ぐらいか。でもお前らの居場所は探れる。程度の低い魔族の気配が、ぷんぷんと漂っているからな。)
□ □ □ □ □
それからしばらくして、アヅチハーゲン近郊の丘で。見つけ出した最後の1人の断末魔と、思念体が滅びる気配を感じてセイジは悦に浸っていた。
(とりあえずは封じれたか。先にやっておくべきだったな。次はそうしよう。)
どいつも下級のサキュバスだった。戦闘能力は皆無。けれども生かしてはおけなかった。トーリの部下のレベルが下がっている様に思えてしまう、稚拙な連中だった。
(どうやら部下の層が薄くなっているらしい。あやつも力が発揮できなくなって困っているだろうが……ん?)
セイジは腰に差し戻していた剣を再び抜いた。神聖魔法を繰り出す為に頭の上に、真っ青なアウレオラを顕す。勝負は一瞬でつけてやる。
「待った!」
背後から声が聞こえた。振り向くと茂みから2人の魔道士が顔を出していた。どちらも妙な形をしたレンズを右眼にかけている。
「我々はイーガの魔道士だ! 枢機卿殿、戦う気はない!」
「ほう……俺の役職を存じているとは。けっこう詳しいな?」
「国王陛下の命令で来ている。ルッソ=シュミットに近づく為にだ!」
「何の理由でだ?」
カヅノが尋ねると魔道士たちはこう答えた。イーガ国はトーリ=カツランダルクへの抑止力の為に、ルッソに目をつけた。
「宮廷魔道士たちがルッソ=シュミットの魔力の波動を調べ、妙な魔法の才能があると推察したのだ。サキュバスとは別種の魔族のものだ」
「アスカウと言えばホーデンエーネン王家の創業の地だ。となればルッソもあの一族の血が流れていることだろう。アスカウの村に残った一族が、土地を離れ王国を拓いた面々より、魔法に優れているという言い伝えがあってな……」
その一族は戦争に従事しやすいオーガの血が殆ど混じっていないから、遺伝的にことさら才能があるらしいようだ。
「ほう。そんな仮説が。で、お前らのその眼鏡、なんだ?」
「『すかうたー』だ。これで魔力を測れる」
「さっきのあんたの魔力は300万に届いていたんだ。まじやべえ奴だと思ったよ」
「魔力を。便利だな。ちなみにあのサキュバスはどのくらいだった?」
魔道士の1人が答えた。ざっと20万程度。我々の倍近くあったが淫魔なら怖くない。使える魔法の種類が限られているからだ。これがドワーフやエルフが相手だったら、一瞬で消し炭にされただろう。
「……わかった。ところで手を貸してくれないか。この程度でいい。サキュバスを見つけ次第捕らえて結界つきの牢にぶちこむ。そのぐらいは用意できるだろ?」
「ま、まあ出来ない事は無いが、なんでだ?」
「詳しいことを聞くのか? 捻り殺すぞ?」
「……申し訳ない」
「しかし、俺はお前たちに尋ねる事はできる。その国王の命令についてだ」
カヅノ=セイジは問い詰めた。国王は誰の入れ知恵でそんなことを考えた?
「誰にも言うなよ。機密事項の中の機密ともいうべき情報だ」
「もったいぶらずに早く話せ」
「エチウにいる貴公の教団の教主様から提案されたそうだ。いや、教主様だけではないだろう。国王陛下はいやに乗る気になっていたそうだから……」
(なるほどな。)
次はもう言わなくてもいいが一応聞くことにした。司祭騎士団の副騎士団長からだ。カヅノは薄く笑った。やはりしゃしゃり出て来たか、あの女は。
□ □ □ □ □
元はと言えば、アヅチハーゲンほか北キンキ大陸はセイジの調査・布教活動区分である。最近知った事ばかりなのは、怠けまくっていたせいだ。
ホーデンエーネンではキレイ目の女戦士に喧嘩を吹っ掛け、腕試し試合で負かして慰みものにして強い男の胤を子宮に根付かせたり、ムーツにこっそり渡って、デカパイなことに定評がある女オーガを愛人に囲い、赤ん坊をポコポコと産ませていた。生殖活動ではきっちりと、パラッツォ教的に正しいことをやっていた。
しかし今は怠ける時期では無かった。常々打倒したかったトーリ=カツランダルクを殺す為の策を進めたい。あれはいつか教主と自分の敵になる存在だ。それをうまく隠してイーガの魔道士らと共闘関係を結ぶことにした。
数日後、ルッソが郵便物を出したという知らせを受け、真夜中に郵便局に潜入した。ルッソの手紙は貴族用の『特別枠』の棚に入っていた。それを取り出して中身を調べた。トーリに会いたいというつまらない事が書いてあった。
(出してくれたか。ならばよし。俺が魅力的な代筆をしてやろう。)
暗がりの中でルッソの筆を真似てそれを書いた。こういう内容をだ。
「拝啓、アスカウ公様。私は貴方様の夢の為に、ある計画を立てたので手紙でお伝えいたします。このアヅチハーゲンには沢山の物資を運んだ船が沢山来ております。その船はマイア=テクニカの製品を外国に輸出していますよね。例えば鉄砲とか」
その鉄砲を売って銭を得るわけだが、ムーツには金や銀や宝石よりも良いものがあるのではないのか。例えば、馬に乗った並の騎士をたった1人で20人相手出来る優れた戦士だ。クボーニコフには彼等が船に乗って、湾岸海域を支配したりもしている。
「どうぞ私を、クボーニコフやユーリポフ諸王国にお遣わしください。オーガの戦士を200名、いや、300名連れて来させて見せましょう。なんなら毒に知悉したゴブリンの薬師も。亜人であれば陸路で、あの険しいアカサカチハヤの山岳を踏破できることでしょう。彼等を迂回させ、アスカウに集結させるのです。彼等を近衛にし、現王家打倒の軍をあげる。南天騎士団も動いてくれるに違いありません」
よし、できた。謀反を起こす計画の草案である。しかしトーリがこれに乗るとは、当然思っていなかった。彼女は既に天下をとっている。ジョーケイン王子の母親であり、国王の執権という立場にいたからだ。わざわざ飾りの王冠を壊す真似は不要だ。
しかし、ルッソ=シュミットが乱心したと思わせるのが肝要だ。この手紙はアスカウのルッソの実家に届く前に、誰かによって検閲されるだろう。つまりは『献策』がばれるのだ。
中身を入れ替えた手紙を、うまく封印仕直して棚に戻すと、彼はアヅチハーゲンにある聖堂に戻った。思ってもみなかった来客が礼拝所で待っていた。タカミ=ジュンだ。
「奇遇だな。どうしてここへ?」
「ちょっとふらっと立ち寄ってみたまでです。この1週間、貴方が布教の仕事をしに戻って来ていると聞きましたから」
タカミは眼でカヅノの表情を追った。カヅノは薄い笑みを浮かべて答える。お前のたくらみ、乗ってやったぞ?
「最近は仕事で充実しているよ。ところでこれから、この街に住まわせている愛人の家に向かう」
べっぴんの元女剣士だ。こっちが首をかけ、代わりに相手には身体を賭けさせた。深手を負わせてオーガちんぽの素晴らしさを、たっぷりと堪能させてやったから従順だ。久しぶりに抱く女だが一緒にどうだ、と誘った。
「……そう致しましょう。貴方の『収集品』は、素晴らしいものばかりですからね」
タカミの真意がわかった。どうやらルッソを救うつもりは無いようだ。タカミもまた、トーリ=カツランダルクを嫌っている口だったのか、とセイジは理解した。
更に、彼はアヅチハーゲン地域から出ることを赦されなかった。アスカウにいる両親や子供達以外の文通も禁じられた。トーリのせいである。サキュバス達も身の回りの世話役としてではなく、遠くから観察する監視員として配された。
半ば囚われの身になっていた。仕事以外は何もすることが無かった。そのまま忘れられるだろうな、と思いながら、想像したよりも楽しくて充実している船荷の仕事をやる日々を過ごしていたところで、セイジがやって来た。
休憩室でセイジはルッソに何かを見せた。もじゃもじゃした、蒼にも見える黒い毛をまとめて縛った腕輪だ。それを見たルッソはセイジの手からひったくる。くんかくんか、とにおいを嗅いで目を見張った。
「……これ、トーリの陰毛と腋毛で作った腕輪じゃないか! なんで君が?」
「奥様からいただきましてね……お近づきのしるしとして贈っていただいたのですよ」
半年前より週に1度、奥様のおまんこと尻穴を堪能させていただきまして。トーリがお近づきにする定番のパターンを聞いてルッソはうなずいた。
「あいもかわらずトーリは、肉便器生活を楽しんでいるみたいだね。そろそろおまんこのびらびらが広がってきていんじゃないかな?」
「いえいえ、まるで乙女の様なぴらぴらでしたよ。周りはふっくらとしていて、舐め心地も良くて夢中になってしまいますね……」
「そうだろ? トーリはちんぽを突っ込むよりも全身を頬ずりして舐めまわしたく女の子なんだ……君もその魅力に気づいたってわけだね?」
ええ。カヅノ=セイジは微笑みながら念話魔法を試みていた。しかし頭の中のそれは、ぼやけて伺えない。こいつ、妨害魔法を習得しているのか?
「実は私、アスカウ公様から言伝をいただいておりまして……」
「何を? 俺はあの子に捨てられたんだぜ。向こうはとっくに忘れていると思って過ごしているよ」
「そんな悲しいことを……アスカウ公様はお会いになりたがっておりましたよ、貴方様に」
ルッソは苦笑いした。だったらナントブルグに呼び戻してくれれば、すぐにでも行くのに。追い出されたとはいえルッソもトーリに会いたかった。意固地じゃないから、矜持精神など持ち合わせていなかった。
「ただ、ルッソ様はナントブルグへ手紙を送られるのを禁じられていると聞いておりました。アスカウ公様はご存じの通り、体裁を気になさるお方。そこで、アスカウのご実家に手紙を送るのはいかがでしょう。記録水晶をつけてです」
ご自身が見ている風景でも記録してみてはいかがでしょう。ルッソはさっき、カヅノから魔力の波動を感じて警戒をしていたが解いた。なんだ、それだけを伝えに来たのか。
「わかった。次回送る手紙はそうするよ。トーリにいつかは会いたい、と書いておこう」
カヅノ=セイジは別れを告げて倉庫から出た。張っていた索敵魔法がまた反応した。ルッソの監視役の反応だ。あまり出来の良い連中とは思えなかった。
(2人ってところか。いいや、予備も含めて3名ぐらいか。でもお前らの居場所は探れる。程度の低い魔族の気配が、ぷんぷんと漂っているからな。)
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それからしばらくして、アヅチハーゲン近郊の丘で。見つけ出した最後の1人の断末魔と、思念体が滅びる気配を感じてセイジは悦に浸っていた。
(とりあえずは封じれたか。先にやっておくべきだったな。次はそうしよう。)
どいつも下級のサキュバスだった。戦闘能力は皆無。けれども生かしてはおけなかった。トーリの部下のレベルが下がっている様に思えてしまう、稚拙な連中だった。
(どうやら部下の層が薄くなっているらしい。あやつも力が発揮できなくなって困っているだろうが……ん?)
セイジは腰に差し戻していた剣を再び抜いた。神聖魔法を繰り出す為に頭の上に、真っ青なアウレオラを顕す。勝負は一瞬でつけてやる。
「待った!」
背後から声が聞こえた。振り向くと茂みから2人の魔道士が顔を出していた。どちらも妙な形をしたレンズを右眼にかけている。
「我々はイーガの魔道士だ! 枢機卿殿、戦う気はない!」
「ほう……俺の役職を存じているとは。けっこう詳しいな?」
「国王陛下の命令で来ている。ルッソ=シュミットに近づく為にだ!」
「何の理由でだ?」
カヅノが尋ねると魔道士たちはこう答えた。イーガ国はトーリ=カツランダルクへの抑止力の為に、ルッソに目をつけた。
「宮廷魔道士たちがルッソ=シュミットの魔力の波動を調べ、妙な魔法の才能があると推察したのだ。サキュバスとは別種の魔族のものだ」
「アスカウと言えばホーデンエーネン王家の創業の地だ。となればルッソもあの一族の血が流れていることだろう。アスカウの村に残った一族が、土地を離れ王国を拓いた面々より、魔法に優れているという言い伝えがあってな……」
その一族は戦争に従事しやすいオーガの血が殆ど混じっていないから、遺伝的にことさら才能があるらしいようだ。
「ほう。そんな仮説が。で、お前らのその眼鏡、なんだ?」
「『すかうたー』だ。これで魔力を測れる」
「さっきのあんたの魔力は300万に届いていたんだ。まじやべえ奴だと思ったよ」
「魔力を。便利だな。ちなみにあのサキュバスはどのくらいだった?」
魔道士の1人が答えた。ざっと20万程度。我々の倍近くあったが淫魔なら怖くない。使える魔法の種類が限られているからだ。これがドワーフやエルフが相手だったら、一瞬で消し炭にされただろう。
「……わかった。ところで手を貸してくれないか。この程度でいい。サキュバスを見つけ次第捕らえて結界つきの牢にぶちこむ。そのぐらいは用意できるだろ?」
「ま、まあ出来ない事は無いが、なんでだ?」
「詳しいことを聞くのか? 捻り殺すぞ?」
「……申し訳ない」
「しかし、俺はお前たちに尋ねる事はできる。その国王の命令についてだ」
カヅノ=セイジは問い詰めた。国王は誰の入れ知恵でそんなことを考えた?
「誰にも言うなよ。機密事項の中の機密ともいうべき情報だ」
「もったいぶらずに早く話せ」
「エチウにいる貴公の教団の教主様から提案されたそうだ。いや、教主様だけではないだろう。国王陛下はいやに乗る気になっていたそうだから……」
(なるほどな。)
次はもう言わなくてもいいが一応聞くことにした。司祭騎士団の副騎士団長からだ。カヅノは薄く笑った。やはりしゃしゃり出て来たか、あの女は。
□ □ □ □ □
元はと言えば、アヅチハーゲンほか北キンキ大陸はセイジの調査・布教活動区分である。最近知った事ばかりなのは、怠けまくっていたせいだ。
ホーデンエーネンではキレイ目の女戦士に喧嘩を吹っ掛け、腕試し試合で負かして慰みものにして強い男の胤を子宮に根付かせたり、ムーツにこっそり渡って、デカパイなことに定評がある女オーガを愛人に囲い、赤ん坊をポコポコと産ませていた。生殖活動ではきっちりと、パラッツォ教的に正しいことをやっていた。
しかし今は怠ける時期では無かった。常々打倒したかったトーリ=カツランダルクを殺す為の策を進めたい。あれはいつか教主と自分の敵になる存在だ。それをうまく隠してイーガの魔道士らと共闘関係を結ぶことにした。
数日後、ルッソが郵便物を出したという知らせを受け、真夜中に郵便局に潜入した。ルッソの手紙は貴族用の『特別枠』の棚に入っていた。それを取り出して中身を調べた。トーリに会いたいというつまらない事が書いてあった。
(出してくれたか。ならばよし。俺が魅力的な代筆をしてやろう。)
暗がりの中でルッソの筆を真似てそれを書いた。こういう内容をだ。
「拝啓、アスカウ公様。私は貴方様の夢の為に、ある計画を立てたので手紙でお伝えいたします。このアヅチハーゲンには沢山の物資を運んだ船が沢山来ております。その船はマイア=テクニカの製品を外国に輸出していますよね。例えば鉄砲とか」
その鉄砲を売って銭を得るわけだが、ムーツには金や銀や宝石よりも良いものがあるのではないのか。例えば、馬に乗った並の騎士をたった1人で20人相手出来る優れた戦士だ。クボーニコフには彼等が船に乗って、湾岸海域を支配したりもしている。
「どうぞ私を、クボーニコフやユーリポフ諸王国にお遣わしください。オーガの戦士を200名、いや、300名連れて来させて見せましょう。なんなら毒に知悉したゴブリンの薬師も。亜人であれば陸路で、あの険しいアカサカチハヤの山岳を踏破できることでしょう。彼等を迂回させ、アスカウに集結させるのです。彼等を近衛にし、現王家打倒の軍をあげる。南天騎士団も動いてくれるに違いありません」
よし、できた。謀反を起こす計画の草案である。しかしトーリがこれに乗るとは、当然思っていなかった。彼女は既に天下をとっている。ジョーケイン王子の母親であり、国王の執権という立場にいたからだ。わざわざ飾りの王冠を壊す真似は不要だ。
しかし、ルッソ=シュミットが乱心したと思わせるのが肝要だ。この手紙はアスカウのルッソの実家に届く前に、誰かによって検閲されるだろう。つまりは『献策』がばれるのだ。
中身を入れ替えた手紙を、うまく封印仕直して棚に戻すと、彼はアヅチハーゲンにある聖堂に戻った。思ってもみなかった来客が礼拝所で待っていた。タカミ=ジュンだ。
「奇遇だな。どうしてここへ?」
「ちょっとふらっと立ち寄ってみたまでです。この1週間、貴方が布教の仕事をしに戻って来ていると聞きましたから」
タカミは眼でカヅノの表情を追った。カヅノは薄い笑みを浮かべて答える。お前のたくらみ、乗ってやったぞ?
「最近は仕事で充実しているよ。ところでこれから、この街に住まわせている愛人の家に向かう」
べっぴんの元女剣士だ。こっちが首をかけ、代わりに相手には身体を賭けさせた。深手を負わせてオーガちんぽの素晴らしさを、たっぷりと堪能させてやったから従順だ。久しぶりに抱く女だが一緒にどうだ、と誘った。
「……そう致しましょう。貴方の『収集品』は、素晴らしいものばかりですからね」
タカミの真意がわかった。どうやらルッソを救うつもりは無いようだ。タカミもまた、トーリ=カツランダルクを嫌っている口だったのか、とセイジは理解した。
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