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第三部 カツランダルク戦記 『第二章・浸食し始める闇』
61 オルガスムナ領の騒動
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タカミはマレーネらにかける策を練った後、部下と信頼おける枢機卿らに伝えてナントブルグへ向かった。転移魔法は使わない。仰々しく『パラッツォ教の使節』という名目を掲げて向かう。旅程は半月ほどだ。
付き従った子どもたちや信徒らとの旅は、それはそれは楽しいものだった。
アジールの大河を東へ遡る河船では食事で出されたまずい弁当に辟易し、その終着点たるフジイデール領では旅籠にかかる税の高さに激怒。温泉はゴミどころか、他の客のうんこが浮かんでいたりもしていた。タマテガルデン要害へ続く山道は不案内きわまりなく、苛立ちで腹が膨れ上がってしまった。
要害にたどり着き、一晩の宿とさせてもらった城壁の上にある小屋に入る前、彼は東の空に向けて苦々しく叫んだ。
「ひどいひどい! ホーデンエーネンの方々は、こんな旅をしていらっしゃるのですか!」
パラッツォ教の勢力下と比べ、どこも思いやりに欠けていやしないか? エチウ諸島はもっぱら船旅だが、旅人にはよい食事を提供するし寝床も床暖炉などで温めてくれる。風呂場も常に清掃を滞らせない。
イナーヴァニアでは馬車駅やお掃除用の魔道を住人に教え、快適な旅ができるようにしてもいるのだ。
それと宿場町の性の充実について。同行した信徒によると、娼館は当たり外れがひどいそうだ。ニンゲンに化けたサキュバスがいれば料金以上に楽しめるが、ニンゲンのは最悪だ。
手や穴を使ってできるだけ早く射精させるだけ。時間をかけた愛撫を嫌う。海藻の汁などを使った潤滑剤を使うそうだ。娼婦は悦を得るより金が欲しいらしい。こんなものでは法悦に至れない。
(……最悪ですね!)
アジールはそんなことなかったのだが、内地に入ると悪いところがはっきり見えてしまう。これが世界最強を誇る軍事大国の実情か。軍事費に予算を食い尽くされ、しかも頻発する内乱で民も土地も困窮している。
ただ、内乱や貴族同士のいがみ合いによる小競り合いは、トーリがアスカウ公となってからいくらか落ち着いてはいた。
(やはり、トーリ=カツランダルクに天下を取らせるべきなのだな。)
タカミは腕を組んで東の空の星々を見る。パラッツォ教団内でトーリを危険視する声がたくさん出ている。一番口やかましいのは枢機卿仲間のカヅノ=セイジだ。教主は全く耳に入れる気は見せないが、それをいいことにカヅノは会議で、聞くに堪えない勇ましいことをがなり立てていた。
「枢機卿様」
後ろから女の声が。身体のラインが透けて見える服を着た、経典の巫女だ。しかし正体は教団が抱えるサキュバス。フローネという。元はホーデンエーネン王国の諜報部隊に所属していたが、パラッツォ教がヘッドハンティングしたのだ。
「マツウラ様より、ご報告が。今お伝えしてよろしいでしょうか?」
「かまいませんよ」
マツウラはタカミが策を授けた枢機卿である。報告。作戦は成功。ゲースティアの巡回艦隊を焚き付けてマレーネの船を襲わせ、助けてやった。イズヴァルトが我らと談判をするためにサイゴークに向かったという情報を手に入れた、という嘘を信じてくれた。
「イーガは教団にとって朋友であり師。ゆえに防衛に関わる魔道術式を教えていただきたいとお願いしたら、受けてくれたそうです」
「それはそれは。良いように事が進みましたね」
「ただ……マレーネ様の軍には好き者の女エルフが多いゆえ、サキュバスはあまり近づかせるな、とおっしゃっておりました」
「……気をつけましょう」
女エルフにとってサキュバスは『いぢめてあそぶおもちゃ』である。心理操作の魔法がほとんど効かないので得意芸が役に立たない。しかもサキュバスは非力だ。甘い味がするおまんこをちゅぱちゅぱされまくるおそれがある。本業の搾精がおろそかになってしまう。
「それから、先にナントブルグに向かっているジュディからも連絡がございました。トーリ様は今現在、オルガスムナ領にいらっしゃるとのことです」
入ったのは1週間前だが、最低でもここ1ヶ月は滞在するだろう。会うならオルガスムナの城下町にしてほしいとのことだった。
「……何用で?」
「現オルガスムナ領主、アルトール様がお亡くなりになられた、と」
「アルトール……かなり年若い領主と聞き及んでおりますが、本当のことでしょうか?」
「そうらしいですね。3日後に葬儀が行われるそうです」
□ □ □ □ □
オルガスムナの少年領主・アルトール=オルガスムナはこの年、14歳でみまかった。卒した時、愛人として囲っていた1歳年上のメイドを腹の上に乗せていた。腹上死だった。
アルトールは幼い頃からセックスに夢中だった。マイヤの身体を知ってからますますその傾向が強くなった。この1~2年、気分が優れぬ日が多く続いた。しかし寝込んでいた時にも女を侍らせてセックスに興じていたのだ。荒淫である。
死の半年前は仮病や体調不良を使い、常にセックスをし続けた。学問や武芸をおろそかにして交合の悦に浸りこむ。彼は2人の兄を暗殺したから、良心の呵責に耐えきれずに現実から逃避したのだ。
若きオルガスムナ公逝去。トーリが知らせを受けたのは、タカミが出発してから5日後のことだった。
「まさか、アルトールさんがこんなにも早くに、お亡くなりになられるなんて……」
彼女から見てアルトールは順調に『育って』いた。体つきはやせっぽちのちびだが、ぶら下げている陰茎と子種袋は黒々としていて、色街の女泣かせ男と遜色無いご立派な大きさに成長していた。あれを味わったことを幾度もある。一晩に5発、6発はざらにあった。
葬式では傍らに、彼の最後の膣内射精を受け取ったメイドの少女がいた。メイドは大きなお腹を抱えていた。来月出産予定で、腹の子の父親はアルトールだった。
この少年領主には20名近くの子供がいた。アルトールは娼婦や女中、領地内の村長や庄屋の娘などに産ませたのだ。カツランダルクの男児というものは大抵は子沢山になるが、女以上に早死するか不運がつきまとう。アルトール自身も、長兄のサミュエルと次兄のスピキオもそうだった。
棺が墓地に納められた。トーリはオルガスムナの3兄弟の、計50名以上の遺児たちの将来を考えた。これだけ沢山のおこちゃまたち、どうしようかしら。考えていたところで、側にいたアルトールのメイドが呼びかけて来た。
「アスカウ公さま、お願いがございます」
「どうしたの? 言ってご覧なさい」
メイドは慈悲を求める。アスカウ公さまの領地の屋敷で、わたしを雇ってください。彼女は腹の子を次の領主の座の争いに加えたくないと言った。
「オルガスムナのご本家は、ほとんどがまだ小さな子どもばかり。それを前のお屋形様のご親族衆が物言いをなされているのは、ご存知のことでしょう?」
ですわね。トーリはうなずいた。このメイドの乳が自分よりも二周りぐらい大きいのを気にしながら、幼い妊婦にこう告げた。
「貴方と、貴方のお腹の中にいる赤ちゃんは、もちろん庇護いたしますよ。でも、アスカウではなく別のところを考えております」
アスカウ=タカイチゲンシュタットは、代官も役人も数が足りている。彼らを活かすには他の場所があった。マイヤが建設している最中のヨーシデンの学芸都市だ。将来のことだが。
「オルガスムナより暖かいヨーシデン。そこに妹が大きな都を作ろうとしています。必ず果たされるでしょう。この10年以内に」
「『おしゃぶりぶりぶり姫』さまのですね!」
「え、ええ。まあ……」
ひどいあだ名だ。おしゃぶり姫だけでもひどいのに、そこに糞をたれるブリブリがつくとは最悪だ。しかしそれもマイヤの人気ゆえにである。
「マイヤが作る都には、そうごうだいがく、というお名前の学問所や学生の宿泊寮。たくさんの蔵書を入れる図書館や、彼らのきんたまのお世話をする公設売春宿が建てられるでしょう。そこの管理者や職員はたくさん必要よ。だから、オルガスムナのご兄弟が遺された子どもたちには、そこで働いてもらうように取り計らうわ」
「まあ……素敵なことをお考えになられていたのですね!」
ついでにトーリは付け加えた。このメイドは子供を産んだ後、ヨーシデンにあるマイヤの館の女中として雇う。マイヤは給料の払いが良く、福利厚生に厚かった。少しずつ評判になっていた。ケチなオルガスムナ公家より待遇がだいぶ違うはずだ。
トーリ、いや、カツランダルクの正当本家にとってオルガスムナ家は、先祖の王国の滅亡に手を貸した裏切り者だ。本来ならば三兄弟の子どもたちを闇に葬ってもいいはずである。それをしないのは情けと名声の為にである。慈悲深い女領主のままでありたいのだ。表向きは。
埋葬が終わるとトーリは、中年の貴族らに囲まれた。欲深そうで、どこか間抜けにも思える顔ばかりだ。オルガスムナ家の親族衆であった。
「アスカウ公様、館で食事をしながらお話をいたしましょう。料理人や食材は我々が用意しておりますので」
「これからのオルガスムナ家の事についてです。後継ぎ様がたは皆が幼く、政務を全うすることができませぬ。そろそろ、我ら親族衆の中から後継者を決めたいのですが、いかがでしょう?」
どいつも脂ぎった顔ばかりだ。しかし彼らの下半身がどれだけ『潤沢』かをトーリは知っていたから、この滞在期間にどれだけ彼らの肌から、精力の現れである油っけを吸い取れるか妄想し、女膣をじゅん、と潤わせていた。
「うふふ。できれば、夜を徹してのお話と致したいですわ♡」
そりゃあもちろん。むしろ食事をしながらでも。親族衆はいやらしい表情を浮かべながら、トーリとお付きの護衛を馬車に乗せ、館へ向かった。
その道すがらである。館へ続く坂道にて武装した騎士や兵士の集団が集まり、道を阻んでいた。誰もがトーリの息がかかった者達ではなかった。親族衆の私兵らだ。
たちまち馬車は取り囲まれた。真向かいの親族衆の長老2人はほくそ笑んでいた。
(騙したわね?)
トーリは彼らを睨んだ。扉が開き、護衛の武者が荒くれた兵士らに引っ張り出されて、どつき回される。アスカウ公の家来への暴力は王族衆への狼藉に他ならない。
だが、オルガスムナの親族衆はそこまで頭が回る者達ではない。執務室で書面とのにらめっこや民の手助けなどではなく、戦場で猛者を気取って暴れまわり、たおやかな女の下腹の奥に力強く突き立てるほうを好む野蛮者ばかりである。
「ここはオルガスムナ。アスカウ公様の領地じゃございませんよ?」
「いわば我らの庭でございます。いかようにも言い繕えますぞ?」
トーリはたちまちこの2人に押さえつけられた。右側のには未だ癒えぬ腕を掴まれ悲鳴をあげた。
もう1人にナイフで彼女のスカートの裾を斬った。白絹のタイツで覆われたすねと真っ白な太ももがあらわになった。さらにその先に手を突っ込まれ、感じやすいところをいじくられた。雑な愛撫だ。それでも性感に貪欲な身体には響いてしまう。
「くくく、とても良くお感じになられておりますな。さすがはご本家さま」
「アスカウ公様。よろしければ次のオルガスムナ公は、我らの種による男児で構いませんぞ? いや、次の次ですかな?」
(……ふざけるな!)
トーリは抗うが押さえ付けられた。それでもいじられているから下腹は潤ってしまう。がしがしと乱暴に指を動かした者がいきり立ってベルトを緩めた。
そそり立ち、上を向いている凶暴なものが取り出されたのをトーリは目にした。割礼を施された『女性用懲罰棒』だ。トーリはこの男のそれに、何度も甘い『おしおき』を受けたことがある。でも今度のは屈辱付きだ。
(……こ、こういうのもいいかも♡)
ときめいてしまう。ぬるり。殴られ続ける護衛らを目にしてすぐ思い直す。脅迫されているのだ。そのついでに犯される。強姦ごときでは屈しないが、家来が殺されかかるのには動揺してしまう。
「さあ、始めましょうか?」
トーリは脚を広げさせられた。股に割り込まれ、怒張したものが入ろうとした。その時だった。
「各々がた! 何をなさっているのです!」
聞いたことがある声だった。挿入されずに止まった。トーリに種付けしようとした2人の男は窓から顔を出した。
声は坂道の下からだった。パラッツォ教の聖職者の、真っ白な法衣をまとった黒髪の男が前に立ち、後ろには武装した信徒たちが控えて親族衆の兵士どもを睨んでいた。
細い目をしたその聖職者はパラッツォ教の枢機卿、タカミ=ジュンだった。
付き従った子どもたちや信徒らとの旅は、それはそれは楽しいものだった。
アジールの大河を東へ遡る河船では食事で出されたまずい弁当に辟易し、その終着点たるフジイデール領では旅籠にかかる税の高さに激怒。温泉はゴミどころか、他の客のうんこが浮かんでいたりもしていた。タマテガルデン要害へ続く山道は不案内きわまりなく、苛立ちで腹が膨れ上がってしまった。
要害にたどり着き、一晩の宿とさせてもらった城壁の上にある小屋に入る前、彼は東の空に向けて苦々しく叫んだ。
「ひどいひどい! ホーデンエーネンの方々は、こんな旅をしていらっしゃるのですか!」
パラッツォ教の勢力下と比べ、どこも思いやりに欠けていやしないか? エチウ諸島はもっぱら船旅だが、旅人にはよい食事を提供するし寝床も床暖炉などで温めてくれる。風呂場も常に清掃を滞らせない。
イナーヴァニアでは馬車駅やお掃除用の魔道を住人に教え、快適な旅ができるようにしてもいるのだ。
それと宿場町の性の充実について。同行した信徒によると、娼館は当たり外れがひどいそうだ。ニンゲンに化けたサキュバスがいれば料金以上に楽しめるが、ニンゲンのは最悪だ。
手や穴を使ってできるだけ早く射精させるだけ。時間をかけた愛撫を嫌う。海藻の汁などを使った潤滑剤を使うそうだ。娼婦は悦を得るより金が欲しいらしい。こんなものでは法悦に至れない。
(……最悪ですね!)
アジールはそんなことなかったのだが、内地に入ると悪いところがはっきり見えてしまう。これが世界最強を誇る軍事大国の実情か。軍事費に予算を食い尽くされ、しかも頻発する内乱で民も土地も困窮している。
ただ、内乱や貴族同士のいがみ合いによる小競り合いは、トーリがアスカウ公となってからいくらか落ち着いてはいた。
(やはり、トーリ=カツランダルクに天下を取らせるべきなのだな。)
タカミは腕を組んで東の空の星々を見る。パラッツォ教団内でトーリを危険視する声がたくさん出ている。一番口やかましいのは枢機卿仲間のカヅノ=セイジだ。教主は全く耳に入れる気は見せないが、それをいいことにカヅノは会議で、聞くに堪えない勇ましいことをがなり立てていた。
「枢機卿様」
後ろから女の声が。身体のラインが透けて見える服を着た、経典の巫女だ。しかし正体は教団が抱えるサキュバス。フローネという。元はホーデンエーネン王国の諜報部隊に所属していたが、パラッツォ教がヘッドハンティングしたのだ。
「マツウラ様より、ご報告が。今お伝えしてよろしいでしょうか?」
「かまいませんよ」
マツウラはタカミが策を授けた枢機卿である。報告。作戦は成功。ゲースティアの巡回艦隊を焚き付けてマレーネの船を襲わせ、助けてやった。イズヴァルトが我らと談判をするためにサイゴークに向かったという情報を手に入れた、という嘘を信じてくれた。
「イーガは教団にとって朋友であり師。ゆえに防衛に関わる魔道術式を教えていただきたいとお願いしたら、受けてくれたそうです」
「それはそれは。良いように事が進みましたね」
「ただ……マレーネ様の軍には好き者の女エルフが多いゆえ、サキュバスはあまり近づかせるな、とおっしゃっておりました」
「……気をつけましょう」
女エルフにとってサキュバスは『いぢめてあそぶおもちゃ』である。心理操作の魔法がほとんど効かないので得意芸が役に立たない。しかもサキュバスは非力だ。甘い味がするおまんこをちゅぱちゅぱされまくるおそれがある。本業の搾精がおろそかになってしまう。
「それから、先にナントブルグに向かっているジュディからも連絡がございました。トーリ様は今現在、オルガスムナ領にいらっしゃるとのことです」
入ったのは1週間前だが、最低でもここ1ヶ月は滞在するだろう。会うならオルガスムナの城下町にしてほしいとのことだった。
「……何用で?」
「現オルガスムナ領主、アルトール様がお亡くなりになられた、と」
「アルトール……かなり年若い領主と聞き及んでおりますが、本当のことでしょうか?」
「そうらしいですね。3日後に葬儀が行われるそうです」
□ □ □ □ □
オルガスムナの少年領主・アルトール=オルガスムナはこの年、14歳でみまかった。卒した時、愛人として囲っていた1歳年上のメイドを腹の上に乗せていた。腹上死だった。
アルトールは幼い頃からセックスに夢中だった。マイヤの身体を知ってからますますその傾向が強くなった。この1~2年、気分が優れぬ日が多く続いた。しかし寝込んでいた時にも女を侍らせてセックスに興じていたのだ。荒淫である。
死の半年前は仮病や体調不良を使い、常にセックスをし続けた。学問や武芸をおろそかにして交合の悦に浸りこむ。彼は2人の兄を暗殺したから、良心の呵責に耐えきれずに現実から逃避したのだ。
若きオルガスムナ公逝去。トーリが知らせを受けたのは、タカミが出発してから5日後のことだった。
「まさか、アルトールさんがこんなにも早くに、お亡くなりになられるなんて……」
彼女から見てアルトールは順調に『育って』いた。体つきはやせっぽちのちびだが、ぶら下げている陰茎と子種袋は黒々としていて、色街の女泣かせ男と遜色無いご立派な大きさに成長していた。あれを味わったことを幾度もある。一晩に5発、6発はざらにあった。
葬式では傍らに、彼の最後の膣内射精を受け取ったメイドの少女がいた。メイドは大きなお腹を抱えていた。来月出産予定で、腹の子の父親はアルトールだった。
この少年領主には20名近くの子供がいた。アルトールは娼婦や女中、領地内の村長や庄屋の娘などに産ませたのだ。カツランダルクの男児というものは大抵は子沢山になるが、女以上に早死するか不運がつきまとう。アルトール自身も、長兄のサミュエルと次兄のスピキオもそうだった。
棺が墓地に納められた。トーリはオルガスムナの3兄弟の、計50名以上の遺児たちの将来を考えた。これだけ沢山のおこちゃまたち、どうしようかしら。考えていたところで、側にいたアルトールのメイドが呼びかけて来た。
「アスカウ公さま、お願いがございます」
「どうしたの? 言ってご覧なさい」
メイドは慈悲を求める。アスカウ公さまの領地の屋敷で、わたしを雇ってください。彼女は腹の子を次の領主の座の争いに加えたくないと言った。
「オルガスムナのご本家は、ほとんどがまだ小さな子どもばかり。それを前のお屋形様のご親族衆が物言いをなされているのは、ご存知のことでしょう?」
ですわね。トーリはうなずいた。このメイドの乳が自分よりも二周りぐらい大きいのを気にしながら、幼い妊婦にこう告げた。
「貴方と、貴方のお腹の中にいる赤ちゃんは、もちろん庇護いたしますよ。でも、アスカウではなく別のところを考えております」
アスカウ=タカイチゲンシュタットは、代官も役人も数が足りている。彼らを活かすには他の場所があった。マイヤが建設している最中のヨーシデンの学芸都市だ。将来のことだが。
「オルガスムナより暖かいヨーシデン。そこに妹が大きな都を作ろうとしています。必ず果たされるでしょう。この10年以内に」
「『おしゃぶりぶりぶり姫』さまのですね!」
「え、ええ。まあ……」
ひどいあだ名だ。おしゃぶり姫だけでもひどいのに、そこに糞をたれるブリブリがつくとは最悪だ。しかしそれもマイヤの人気ゆえにである。
「マイヤが作る都には、そうごうだいがく、というお名前の学問所や学生の宿泊寮。たくさんの蔵書を入れる図書館や、彼らのきんたまのお世話をする公設売春宿が建てられるでしょう。そこの管理者や職員はたくさん必要よ。だから、オルガスムナのご兄弟が遺された子どもたちには、そこで働いてもらうように取り計らうわ」
「まあ……素敵なことをお考えになられていたのですね!」
ついでにトーリは付け加えた。このメイドは子供を産んだ後、ヨーシデンにあるマイヤの館の女中として雇う。マイヤは給料の払いが良く、福利厚生に厚かった。少しずつ評判になっていた。ケチなオルガスムナ公家より待遇がだいぶ違うはずだ。
トーリ、いや、カツランダルクの正当本家にとってオルガスムナ家は、先祖の王国の滅亡に手を貸した裏切り者だ。本来ならば三兄弟の子どもたちを闇に葬ってもいいはずである。それをしないのは情けと名声の為にである。慈悲深い女領主のままでありたいのだ。表向きは。
埋葬が終わるとトーリは、中年の貴族らに囲まれた。欲深そうで、どこか間抜けにも思える顔ばかりだ。オルガスムナ家の親族衆であった。
「アスカウ公様、館で食事をしながらお話をいたしましょう。料理人や食材は我々が用意しておりますので」
「これからのオルガスムナ家の事についてです。後継ぎ様がたは皆が幼く、政務を全うすることができませぬ。そろそろ、我ら親族衆の中から後継者を決めたいのですが、いかがでしょう?」
どいつも脂ぎった顔ばかりだ。しかし彼らの下半身がどれだけ『潤沢』かをトーリは知っていたから、この滞在期間にどれだけ彼らの肌から、精力の現れである油っけを吸い取れるか妄想し、女膣をじゅん、と潤わせていた。
「うふふ。できれば、夜を徹してのお話と致したいですわ♡」
そりゃあもちろん。むしろ食事をしながらでも。親族衆はいやらしい表情を浮かべながら、トーリとお付きの護衛を馬車に乗せ、館へ向かった。
その道すがらである。館へ続く坂道にて武装した騎士や兵士の集団が集まり、道を阻んでいた。誰もがトーリの息がかかった者達ではなかった。親族衆の私兵らだ。
たちまち馬車は取り囲まれた。真向かいの親族衆の長老2人はほくそ笑んでいた。
(騙したわね?)
トーリは彼らを睨んだ。扉が開き、護衛の武者が荒くれた兵士らに引っ張り出されて、どつき回される。アスカウ公の家来への暴力は王族衆への狼藉に他ならない。
だが、オルガスムナの親族衆はそこまで頭が回る者達ではない。執務室で書面とのにらめっこや民の手助けなどではなく、戦場で猛者を気取って暴れまわり、たおやかな女の下腹の奥に力強く突き立てるほうを好む野蛮者ばかりである。
「ここはオルガスムナ。アスカウ公様の領地じゃございませんよ?」
「いわば我らの庭でございます。いかようにも言い繕えますぞ?」
トーリはたちまちこの2人に押さえつけられた。右側のには未だ癒えぬ腕を掴まれ悲鳴をあげた。
もう1人にナイフで彼女のスカートの裾を斬った。白絹のタイツで覆われたすねと真っ白な太ももがあらわになった。さらにその先に手を突っ込まれ、感じやすいところをいじくられた。雑な愛撫だ。それでも性感に貪欲な身体には響いてしまう。
「くくく、とても良くお感じになられておりますな。さすがはご本家さま」
「アスカウ公様。よろしければ次のオルガスムナ公は、我らの種による男児で構いませんぞ? いや、次の次ですかな?」
(……ふざけるな!)
トーリは抗うが押さえ付けられた。それでもいじられているから下腹は潤ってしまう。がしがしと乱暴に指を動かした者がいきり立ってベルトを緩めた。
そそり立ち、上を向いている凶暴なものが取り出されたのをトーリは目にした。割礼を施された『女性用懲罰棒』だ。トーリはこの男のそれに、何度も甘い『おしおき』を受けたことがある。でも今度のは屈辱付きだ。
(……こ、こういうのもいいかも♡)
ときめいてしまう。ぬるり。殴られ続ける護衛らを目にしてすぐ思い直す。脅迫されているのだ。そのついでに犯される。強姦ごときでは屈しないが、家来が殺されかかるのには動揺してしまう。
「さあ、始めましょうか?」
トーリは脚を広げさせられた。股に割り込まれ、怒張したものが入ろうとした。その時だった。
「各々がた! 何をなさっているのです!」
聞いたことがある声だった。挿入されずに止まった。トーリに種付けしようとした2人の男は窓から顔を出した。
声は坂道の下からだった。パラッツォ教の聖職者の、真っ白な法衣をまとった黒髪の男が前に立ち、後ろには武装した信徒たちが控えて親族衆の兵士どもを睨んでいた。
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