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第三部 カツランダルク戦記 『第二章・浸食し始める闇』
60 枢機卿
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タカミ=ジュンはこの時期、アジールに滞在していた。サイゴーク大陸で戦闘を繰り広げるパラッツォ教団軍の支援の為にだ。
パラッツォ教団軍に供給する為の鉄砲や弾薬を運ぶ船が、とかく海賊に襲撃されて困っている。手を貸してほしいとホーデンエーネン側が求めて来た為に護衛団を指揮する仕事を担わされた。
タカミが来てから襲撃はだいぶ減じていた。とはいえサイゴーク海域で交易船を狙う海賊はまだ存在している。
タカミは最初、北部海域最大勢力のタンゴバルド大海賊団だけかと睨んだ。しかし同海賊団を牽制するだけでは事足らなかった。サイゴーク大陸側にも襲撃者がいたのだ。ハリマーヌやイーズモー沿岸部に根城を持つ海賊団である。
彼らはマハラ教の影響が強く、パラッツォ教団に強烈な反感を持っていた。エチウ人が混じっているタンゴバルドと違い、説き伏せるにも骨が折れる。
しかもこれらの海賊団の構成員には、大陸のドワーフやゴブリンの姿もあった。それと、大陸最強の海軍国・ゲースティアも手を貸しているという。イナーヴァニアから勢力を拡張しようとするパラッツォ教団への対抗の為だ。
サイゴーク大陸ではパラッツォ教を禁じる国々が多かった。信徒の処刑はしないが経典を禁じていた。真面目なマハラの学僧は教主コーザに経典に対する反論文が盛んに送りつけたり、論争を申し込む手紙が舞い込むぐらいに忌まわれていた。
これも北方の大国・イナーヴァニアを制してしまったせいである。しかもこの時期、ミスリル鉱山など豊富な地下資源目当てに西のヒッジランドも過半を制した。イーズモーにも侵略が始まっていた。それに対抗し、マハラ教勢力の諸国が同盟を結び、大遠征軍を組織して北上しようとしていた。大戦争の勃発は間近な頃だった。
(こうなるとは……)
アジールの南街区にある、パラッツォ教団のシンパの富豪が貸してくれた屋敷の居間にて、タカミはソファの上で顔をしかめていた。
目の前のテーブルには、行政官や武将としてサイゴークにいる弟子たちの手紙の束がある。最も優秀だと目をかけているヘンリック=イプセンからの文を読むと、思わずため息をついてしまう。
「私とシベリウスは反対しましたが、イナーヴァニアの『名誉司祭騎士』殿らはパラッツォ教の威光を示す為、イーズモー並びに中部諸国まで攻め取るべし、と息をまいております。ヒッジランドの制圧が完全でないゆえ、まだ時期尚早と反論しましたが受け取ってもらえませんでした。軍事はすべて、彼らに主導権がいっております。私とジャンではどうすることもできません……」
サイゴークでの教団軍は、割と快進撃だった。予想以上に早く侵略地域が広がっている。ゆえに『名誉司祭騎士』となったイナーヴァニアの貴族や騎士らが声高に進撃を叫び、思わぬ戦果に変な興奮を覚えてしまった司祭騎士や経典の巫女、好戦的な信徒がそれに続いてしまっている。目指すはスオニアまでだという。
(困ったな……)
タカミは嘆く。やりすぎだ。早過ぎでもある。急速に戦線が拡大し過ぎると後が怖い。
とはいえパラッツォ教を世界宗教とするには今が一番良いのは確かだ。彼が史上最強の魔道士と認めるコーザがいれば1億をゆうに超える世界最大の人口と領土がある。世界制覇するなら、今だ。
不安材料もある。まずは教主コーザだ。『俗界』、つまりは世界進出に対する意気込みが衰えつつあるように見受けられた。積極的に現場に行く人物だが、トーリとの『死闘』の後、エチウ諸島に籠もるようになってしまった。陣頭指揮をするからこそ、カリスマ性が際立ったのに。
不安はもう1つあった。タカミのほかの枢機卿らが気づき初めていたことだ。『甘露(アームリータ)』のみで生きる信徒らに、早死にの兆候が出始めた事である。40前か過ぎぐらいで死ぬのが普通だが、最近は30そこらで死ぬ者が出てきた。
彼がアジールに連れてきた信徒たちも、この異国の地で死んだのが数名いる。病気などではなく突然死だ。悪い病原菌に感染したわけでもない。ましてや性病や腫瘍にも。解剖までしてみたが見つからなかった。昨日も1人、本国への連絡を務めてくれた、まだ25にもならぬ女信徒が冷たくなっていた。
(『甘露(アームリータ)』は亜人達がよく諌めていたな。あればかり使うのはよろしくないと。使いすぎると子孫に悪影響を与えるらしいとな。)
この世界の医学は魔道のおかげで発達している。水銀やヒ素を不老長寿の薬と見なす様な無知蒙昧は無いはずだ。しかしそれは魔法が使える者が多くいる国でのみだった。つまりそれ以外の国では迷信的な民間療法がまかり通る。例えばこのホーデンエーネンがそうだ。
パラッツォ教は、そろそろやり方を変えねばならぬ時が来たようだ。『甘露(アームリータ)』のみで生きる者は、6歳のうちに射精や生理が始まり子を為せるようになる。しかも男女とも、精力絶倫に。
それは繁殖という観点においては有効だが、40で死ぬ社会構造では技術や知識の伝達においては悪い影響を及ぼしていた。刹那的に生きる者が多いこの世界の住人たちの中でも特に、パラッツォ教徒にその傾向は強いのだ。これでは、例え天下を取ったとしても維持できない。
早死についての対処法は一応はあった。亜人たちとの間の子には起こらないらしい。しかし亜人とのあいのこは、寿命こそ長いが成長が倍以上かかる。これからは海外に打って出る時期だというのにそれでは辛い。
とはいえ、タカミにとって亜人とニンゲンとの間の子は対外戦争の兵としてではなく、できれば別の事で使いたかった。彼と、友とも呼べる間柄にある枢機卿たちが抱いている、大きな志の為にであった。
(だが、パラッツォ教に属しているからな。今はコーザに義理を尽くすほか無いのだ。彼の望みがなった暁には……遠慮なく使わせていただこう。)
その前に目の前の面倒事を片付けなければ。海賊たちを黙らせる方法を考えよう。思案を始めたところに額にツノが生えた小さな女の子がタカミの元にやって来た。彼の娘である。
「父様、お客さんです」
「誰ですか?」
「アスカウ公さまのお使いの、ジュディさまですよ」
ジュディはよく知っている。トーリの部下のサキュバスだ。髪が茜色でもさもさとしていた。スザナという女と一緒に来ることが多かった。
今日顔を見せに来るとは受けていない。まさかまた同衾をせがみに来たのだろうかと思って一応通すことにした。果たしてジュディはアフロヘアーみたいにもさもさした髪の毛をふわ立たせながら現れた。ついでだがこの女は脇毛と陰毛をふっさりと茂らせている。
「本日はお願いにあがりました。タカミ枢機卿猊下におかれましては……」
「ジュディさん、堅苦しいご挨拶は抜きにしてください。私と貴方の仲でしょうに?」
「そうでしたわ。うふふ」
ではいつものように、と一言添えてジュディはスカートの横に手を入れる。腰のあたりまでに切り込みを入れた特注のスカートだ。早めに交合に至る為にである。
ぺろんと前がめくれ上がった。盛りあがりがちな恥ずかしい丘に鬱蒼と茂る茜色の森があった。タカミも立ち上がって法衣の裾をめくろうとした。しかし娘がジュディの陰毛を面白そうに見つめていたので、軽く咳払いをした。
「しばらく席を外しなさい」
「えーっ? 見ていたいです!」
「いけません。大事な秘密の話もあるでしょうし、聞かれたくありませんからね」
娘はしぶしぶ部屋を出ていった。ジュディが裾を上げたタカミに抱きついて腰を落とす。大きなものに貫かれると力強く尻を動かし、熱い吐息を漏らしながら今日来た理由を述べた。
「トーリ様からお願いを預かりました」
パラッツォ教の陰の実力者であるタカミ枢機卿のお力添えで、チンゼーへと向かうマレーネ姫の一向に嫌がらせをしたい。つまりは目的地とは全く違う方角へ向かわせたい。
「何故です?」
「ふう♡ ふう♡ ふう♡ ふう♡ あふっ♡」
タカミの硬い肉杖が、自分から突き込みはじめたものだから、ジュディはあえぐ他のことができなかった。顔はすっかりとろけている。ここからは念話魔法での会話となった。
「イーガのマレーネは国賓として来たはずなのに、ヨーシデンに入ったきり、ナントブルグにいる国王陛下に拝謁しなかった。これはホーデンエーネン王家にとって侮辱そのものです、と、おじょうさまは仰ってました」
「は、はあ……」
いまいち要領を得られない。だからなんだってんだ。たとえぞろぞろとお供を連れていたとしても、王家の姫が隣国の観光地などに遊びに行っても問題は無いだろう。タカミにとってヨーシデンは、風光明媚な保養地という印象しか無い。大抵の重病人がまるまると太って帰ってくるらしいですね。あそこは。
「なのでぎゃふんと言わせたい。けれどホーデンエーネン王国が直接手を下すと国際問題になるから、裏でいろいろとやれそうなタカミ枢機卿にお願いしたい。もちろん、お礼はいたします」
おおよそ1ヶ月間、トーリ本人がお相手をしてくれるという。前の穴や後ろの穴は使い放題。口もだ。用を足す以外はトーリの穴のどれかが入っているぐらいにサービスする。世の男性なら垂涎の話だ。
(……阿呆か!)
タカミは、サキュバスとそれに類する連中にとって、性的な『ごほうび』は大した価値が無いのを存じていた。テーブルの前のつまみ菓子程度である。性欲へのアクセスが、食欲や睡眠欲よりも易い種族、それがこいつらだ。
「もちろん、我々もついでにおつけします。タカミ様がお好きなお尻の穴ぺろぺろも二十四時間、寝ずにご提供いたしますわ!」
「……それは私の娘たちが好きなことですよ。娘らにやってあげてください。そっちは趣味じゃない」
『アナルれろれろ』はやられるよりもやりたい側だ。タカミは。彼は娘たちにせがまれてよくやってあげていた。息子たちも、小さい頃には望まれればやってあげた。お陰で彼の子供らは尻穴攻めを、されるのもするのも好きになっていた。博愛を尊ぶパラッツォ教徒としては素晴らしい成長の仕方だ。
しかしだからといって、トーリや他のサキュバスのアナルを心ゆくまで舐めることなんかを『報酬』としたくはなかった。だいたいそれは奉仕である。仕事を受けてなおかつサービスをするのは、タダ働きそのものだ。
「しかし、それでは私が損をするだけかと?」
「なんですって! 私との仲じゃありませんか! こんなにも深い間柄を築いているのに、気軽に頼みを聞けないのね、薄情者!」
「いや、あの……」
「と、おじょうさまからは断られそうになった場合の言伝がございました」
否が応でもうん、と言わせるつもりらしい。大体、その程度の嫌がらせならトーリの実力をもってすればできるはずだ。赤子のおむつを取り替えるぐらいに容易いだろう。
(待て。)
ぬるぬるとして温かいジュディの中で、濃いザーメンを放ちながらタカミは考え込んだ。彼女の下腹にピンク色の淫紋が浮かび上がり、ぴかぴかと点滅して輝くのを眺めながら、ある結論に至った。
(まさか、アスカウ公はいつもの力が出ないのか?)
陰茎がまた硬くなる。貸しを作ろう。何かの役に立つはずだ。精液に充たされた肉洞をまた責め始めると、ますます顔がとろけてしまっていたジュディにささやいた。
「よろしいでしょう」
「では、受け入れてくれるのですね?」
「ええ。イーガのマレーネ姫へのいやがらせ、見事に致してみせましょう」
そのためには、敵対するゲースティアの巡視船団の力を借りる。サカーイからチンゼーの海域の諸島には、彼の国の海軍が待機していた。マレーネ達が乗った船を親教団派の密輸船だという虚報を流して襲わせる。ゲースティア海軍は喧嘩っ早いから、問答無用でやってくれるだろう。
魔道をおさめた戦士たちも、海の上のいくさでは手こずるはずだ。ついでだがゲースティアの戦艦は魔道兵器をこれでもか、と備えている。絶対に苦戦するだろう。そこをパラッツォ教団の船団が救いに来てマレーネらをイナーヴァニアへ護送だ。
理屈もちゃんとつける。チンゼーに放った諜報より、近頃シマーヅからイズヴァルトらしき人物を乗せた船が出港したという。周辺諸国にお呼ばれが多く、領地のタネガシマスカルをしょっちゅう空けるイズヴァルトは動きが掴みづらい。サイゴークへ向かったと思われるだろう。
「そういうわけで、楽しみに待っていてください」
「ふわっ♡」
「もちろん、教主様には黙っておきましょう」
「ふわいいっ♡」
役目を果たしたジュディは、安心して肉の悦に溺れることができるようになった。こうなったら明日の明け方まで身体を離してくれない。
法悦を楽しめてタカミの身体は満足できたが、頭は他のことで動きっぱなしだった。
(アスカウ公の弱みを握れるかもしれない。もしもの時の保険も成せるだろうな。うまくいけば……)
パラッツォ教団軍に供給する為の鉄砲や弾薬を運ぶ船が、とかく海賊に襲撃されて困っている。手を貸してほしいとホーデンエーネン側が求めて来た為に護衛団を指揮する仕事を担わされた。
タカミが来てから襲撃はだいぶ減じていた。とはいえサイゴーク海域で交易船を狙う海賊はまだ存在している。
タカミは最初、北部海域最大勢力のタンゴバルド大海賊団だけかと睨んだ。しかし同海賊団を牽制するだけでは事足らなかった。サイゴーク大陸側にも襲撃者がいたのだ。ハリマーヌやイーズモー沿岸部に根城を持つ海賊団である。
彼らはマハラ教の影響が強く、パラッツォ教団に強烈な反感を持っていた。エチウ人が混じっているタンゴバルドと違い、説き伏せるにも骨が折れる。
しかもこれらの海賊団の構成員には、大陸のドワーフやゴブリンの姿もあった。それと、大陸最強の海軍国・ゲースティアも手を貸しているという。イナーヴァニアから勢力を拡張しようとするパラッツォ教団への対抗の為だ。
サイゴーク大陸ではパラッツォ教を禁じる国々が多かった。信徒の処刑はしないが経典を禁じていた。真面目なマハラの学僧は教主コーザに経典に対する反論文が盛んに送りつけたり、論争を申し込む手紙が舞い込むぐらいに忌まわれていた。
これも北方の大国・イナーヴァニアを制してしまったせいである。しかもこの時期、ミスリル鉱山など豊富な地下資源目当てに西のヒッジランドも過半を制した。イーズモーにも侵略が始まっていた。それに対抗し、マハラ教勢力の諸国が同盟を結び、大遠征軍を組織して北上しようとしていた。大戦争の勃発は間近な頃だった。
(こうなるとは……)
アジールの南街区にある、パラッツォ教団のシンパの富豪が貸してくれた屋敷の居間にて、タカミはソファの上で顔をしかめていた。
目の前のテーブルには、行政官や武将としてサイゴークにいる弟子たちの手紙の束がある。最も優秀だと目をかけているヘンリック=イプセンからの文を読むと、思わずため息をついてしまう。
「私とシベリウスは反対しましたが、イナーヴァニアの『名誉司祭騎士』殿らはパラッツォ教の威光を示す為、イーズモー並びに中部諸国まで攻め取るべし、と息をまいております。ヒッジランドの制圧が完全でないゆえ、まだ時期尚早と反論しましたが受け取ってもらえませんでした。軍事はすべて、彼らに主導権がいっております。私とジャンではどうすることもできません……」
サイゴークでの教団軍は、割と快進撃だった。予想以上に早く侵略地域が広がっている。ゆえに『名誉司祭騎士』となったイナーヴァニアの貴族や騎士らが声高に進撃を叫び、思わぬ戦果に変な興奮を覚えてしまった司祭騎士や経典の巫女、好戦的な信徒がそれに続いてしまっている。目指すはスオニアまでだという。
(困ったな……)
タカミは嘆く。やりすぎだ。早過ぎでもある。急速に戦線が拡大し過ぎると後が怖い。
とはいえパラッツォ教を世界宗教とするには今が一番良いのは確かだ。彼が史上最強の魔道士と認めるコーザがいれば1億をゆうに超える世界最大の人口と領土がある。世界制覇するなら、今だ。
不安材料もある。まずは教主コーザだ。『俗界』、つまりは世界進出に対する意気込みが衰えつつあるように見受けられた。積極的に現場に行く人物だが、トーリとの『死闘』の後、エチウ諸島に籠もるようになってしまった。陣頭指揮をするからこそ、カリスマ性が際立ったのに。
不安はもう1つあった。タカミのほかの枢機卿らが気づき初めていたことだ。『甘露(アームリータ)』のみで生きる信徒らに、早死にの兆候が出始めた事である。40前か過ぎぐらいで死ぬのが普通だが、最近は30そこらで死ぬ者が出てきた。
彼がアジールに連れてきた信徒たちも、この異国の地で死んだのが数名いる。病気などではなく突然死だ。悪い病原菌に感染したわけでもない。ましてや性病や腫瘍にも。解剖までしてみたが見つからなかった。昨日も1人、本国への連絡を務めてくれた、まだ25にもならぬ女信徒が冷たくなっていた。
(『甘露(アームリータ)』は亜人達がよく諌めていたな。あればかり使うのはよろしくないと。使いすぎると子孫に悪影響を与えるらしいとな。)
この世界の医学は魔道のおかげで発達している。水銀やヒ素を不老長寿の薬と見なす様な無知蒙昧は無いはずだ。しかしそれは魔法が使える者が多くいる国でのみだった。つまりそれ以外の国では迷信的な民間療法がまかり通る。例えばこのホーデンエーネンがそうだ。
パラッツォ教は、そろそろやり方を変えねばならぬ時が来たようだ。『甘露(アームリータ)』のみで生きる者は、6歳のうちに射精や生理が始まり子を為せるようになる。しかも男女とも、精力絶倫に。
それは繁殖という観点においては有効だが、40で死ぬ社会構造では技術や知識の伝達においては悪い影響を及ぼしていた。刹那的に生きる者が多いこの世界の住人たちの中でも特に、パラッツォ教徒にその傾向は強いのだ。これでは、例え天下を取ったとしても維持できない。
早死についての対処法は一応はあった。亜人たちとの間の子には起こらないらしい。しかし亜人とのあいのこは、寿命こそ長いが成長が倍以上かかる。これからは海外に打って出る時期だというのにそれでは辛い。
とはいえ、タカミにとって亜人とニンゲンとの間の子は対外戦争の兵としてではなく、できれば別の事で使いたかった。彼と、友とも呼べる間柄にある枢機卿たちが抱いている、大きな志の為にであった。
(だが、パラッツォ教に属しているからな。今はコーザに義理を尽くすほか無いのだ。彼の望みがなった暁には……遠慮なく使わせていただこう。)
その前に目の前の面倒事を片付けなければ。海賊たちを黙らせる方法を考えよう。思案を始めたところに額にツノが生えた小さな女の子がタカミの元にやって来た。彼の娘である。
「父様、お客さんです」
「誰ですか?」
「アスカウ公さまのお使いの、ジュディさまですよ」
ジュディはよく知っている。トーリの部下のサキュバスだ。髪が茜色でもさもさとしていた。スザナという女と一緒に来ることが多かった。
今日顔を見せに来るとは受けていない。まさかまた同衾をせがみに来たのだろうかと思って一応通すことにした。果たしてジュディはアフロヘアーみたいにもさもさした髪の毛をふわ立たせながら現れた。ついでだがこの女は脇毛と陰毛をふっさりと茂らせている。
「本日はお願いにあがりました。タカミ枢機卿猊下におかれましては……」
「ジュディさん、堅苦しいご挨拶は抜きにしてください。私と貴方の仲でしょうに?」
「そうでしたわ。うふふ」
ではいつものように、と一言添えてジュディはスカートの横に手を入れる。腰のあたりまでに切り込みを入れた特注のスカートだ。早めに交合に至る為にである。
ぺろんと前がめくれ上がった。盛りあがりがちな恥ずかしい丘に鬱蒼と茂る茜色の森があった。タカミも立ち上がって法衣の裾をめくろうとした。しかし娘がジュディの陰毛を面白そうに見つめていたので、軽く咳払いをした。
「しばらく席を外しなさい」
「えーっ? 見ていたいです!」
「いけません。大事な秘密の話もあるでしょうし、聞かれたくありませんからね」
娘はしぶしぶ部屋を出ていった。ジュディが裾を上げたタカミに抱きついて腰を落とす。大きなものに貫かれると力強く尻を動かし、熱い吐息を漏らしながら今日来た理由を述べた。
「トーリ様からお願いを預かりました」
パラッツォ教の陰の実力者であるタカミ枢機卿のお力添えで、チンゼーへと向かうマレーネ姫の一向に嫌がらせをしたい。つまりは目的地とは全く違う方角へ向かわせたい。
「何故です?」
「ふう♡ ふう♡ ふう♡ ふう♡ あふっ♡」
タカミの硬い肉杖が、自分から突き込みはじめたものだから、ジュディはあえぐ他のことができなかった。顔はすっかりとろけている。ここからは念話魔法での会話となった。
「イーガのマレーネは国賓として来たはずなのに、ヨーシデンに入ったきり、ナントブルグにいる国王陛下に拝謁しなかった。これはホーデンエーネン王家にとって侮辱そのものです、と、おじょうさまは仰ってました」
「は、はあ……」
いまいち要領を得られない。だからなんだってんだ。たとえぞろぞろとお供を連れていたとしても、王家の姫が隣国の観光地などに遊びに行っても問題は無いだろう。タカミにとってヨーシデンは、風光明媚な保養地という印象しか無い。大抵の重病人がまるまると太って帰ってくるらしいですね。あそこは。
「なのでぎゃふんと言わせたい。けれどホーデンエーネン王国が直接手を下すと国際問題になるから、裏でいろいろとやれそうなタカミ枢機卿にお願いしたい。もちろん、お礼はいたします」
おおよそ1ヶ月間、トーリ本人がお相手をしてくれるという。前の穴や後ろの穴は使い放題。口もだ。用を足す以外はトーリの穴のどれかが入っているぐらいにサービスする。世の男性なら垂涎の話だ。
(……阿呆か!)
タカミは、サキュバスとそれに類する連中にとって、性的な『ごほうび』は大した価値が無いのを存じていた。テーブルの前のつまみ菓子程度である。性欲へのアクセスが、食欲や睡眠欲よりも易い種族、それがこいつらだ。
「もちろん、我々もついでにおつけします。タカミ様がお好きなお尻の穴ぺろぺろも二十四時間、寝ずにご提供いたしますわ!」
「……それは私の娘たちが好きなことですよ。娘らにやってあげてください。そっちは趣味じゃない」
『アナルれろれろ』はやられるよりもやりたい側だ。タカミは。彼は娘たちにせがまれてよくやってあげていた。息子たちも、小さい頃には望まれればやってあげた。お陰で彼の子供らは尻穴攻めを、されるのもするのも好きになっていた。博愛を尊ぶパラッツォ教徒としては素晴らしい成長の仕方だ。
しかしだからといって、トーリや他のサキュバスのアナルを心ゆくまで舐めることなんかを『報酬』としたくはなかった。だいたいそれは奉仕である。仕事を受けてなおかつサービスをするのは、タダ働きそのものだ。
「しかし、それでは私が損をするだけかと?」
「なんですって! 私との仲じゃありませんか! こんなにも深い間柄を築いているのに、気軽に頼みを聞けないのね、薄情者!」
「いや、あの……」
「と、おじょうさまからは断られそうになった場合の言伝がございました」
否が応でもうん、と言わせるつもりらしい。大体、その程度の嫌がらせならトーリの実力をもってすればできるはずだ。赤子のおむつを取り替えるぐらいに容易いだろう。
(待て。)
ぬるぬるとして温かいジュディの中で、濃いザーメンを放ちながらタカミは考え込んだ。彼女の下腹にピンク色の淫紋が浮かび上がり、ぴかぴかと点滅して輝くのを眺めながら、ある結論に至った。
(まさか、アスカウ公はいつもの力が出ないのか?)
陰茎がまた硬くなる。貸しを作ろう。何かの役に立つはずだ。精液に充たされた肉洞をまた責め始めると、ますます顔がとろけてしまっていたジュディにささやいた。
「よろしいでしょう」
「では、受け入れてくれるのですね?」
「ええ。イーガのマレーネ姫へのいやがらせ、見事に致してみせましょう」
そのためには、敵対するゲースティアの巡視船団の力を借りる。サカーイからチンゼーの海域の諸島には、彼の国の海軍が待機していた。マレーネ達が乗った船を親教団派の密輸船だという虚報を流して襲わせる。ゲースティア海軍は喧嘩っ早いから、問答無用でやってくれるだろう。
魔道をおさめた戦士たちも、海の上のいくさでは手こずるはずだ。ついでだがゲースティアの戦艦は魔道兵器をこれでもか、と備えている。絶対に苦戦するだろう。そこをパラッツォ教団の船団が救いに来てマレーネらをイナーヴァニアへ護送だ。
理屈もちゃんとつける。チンゼーに放った諜報より、近頃シマーヅからイズヴァルトらしき人物を乗せた船が出港したという。周辺諸国にお呼ばれが多く、領地のタネガシマスカルをしょっちゅう空けるイズヴァルトは動きが掴みづらい。サイゴークへ向かったと思われるだろう。
「そういうわけで、楽しみに待っていてください」
「ふわっ♡」
「もちろん、教主様には黙っておきましょう」
「ふわいいっ♡」
役目を果たしたジュディは、安心して肉の悦に溺れることができるようになった。こうなったら明日の明け方まで身体を離してくれない。
法悦を楽しめてタカミの身体は満足できたが、頭は他のことで動きっぱなしだった。
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