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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』
31 ご挨拶
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こういう話を残っているらしい。離脱が起こったパラッツォ教軍の陣地では事が起きる前々日の晩、旅装の女達が一杯の飯と酒と寝床を求めて訪れたという。
彼女達は誰もが見目麗しくて淫らだった。1人だけをのぞいて他は、衣服の上からも豊かな乳房と尻を蓄えた、性愛と生殖の為に産まれた様な体つきが伺えたという。
粗末な夕食と薄い酒を貰った彼女らは、決まって服を脱ぎ男達を誘った。恐ろしく淫乱で技巧にも長けていたそうだ。1人の男から精をいただいたら休まずに別に男と。魅力的な美貌と身体は彼等の心を支配した。
いや、一番多くの男達を虜にしたのは、他と比べて乳が薄い女だった。背は高く蒼にも見える艶やかな黒髪の女。男心をあまりそそらぬ細い身体であったが、女達の中で一番美しかったそうだ。
、男達は彼女に殺到した。乱交の最中に、その女の喘ぎ喜ぶ姿と美しさに欲情して加わった女までもが。乱交は誰もが眠ることなく、陣地を離れるまで続いたそうだ。
「と、砦に残っていた者から聞いております」
カヅノ=サトシの話にコーザはうなずくばかりだった。食事を終えた彼等の娘達がコーザの座席に集まった。まだ10にもいかぬ年頃に見えるが、500年も生きるオーガ族のこの子らは中年か、そろそろ初老にさしかかるニンゲンと同じぐらいの年齢だった。
「きょうしゅさま。ほーえつをください!」
「おっきな『せいこん』で大事な教えを説いてください!」
「ほーえつ! ほーえつ!」
ははは、とコーザは笑いながら立ち上がると、その中の1人の娘を抱き上げた。毛織の衣の裾をめくるとちいちゃな丸尻があらわになる。父親たちが見ている中、コーザは前をはだけて既に屹立していた『聖根』を娘の割れ目に押し当てた。
「よろしいですか?」
「うん! はやくはやく!」
むき出しになっていた先端が柔らかい谷の奥に進む。たっぷりと濡れていた。小さな入口は縁が極度に発達したそれをすんなり受け入れると、貫かれることで生じる心地よさが娘の身体全体に伝わった。
「あう……あう……」
挿れられただけで娘は恍惚の中にいた。コーザの『聖根』は往復をするたびに、必ず『法悦』を幼い下腹に与えた。あまりの気持ちよさに彼女は粗相をしてしまうと、他の女の子達はげらげらと笑った。
「もらしてるー! もらしてるー!」
「もう神様がみえちゃったのー?」
皆にコーザがたしなめた。あまりからかってはいけませんよ。子供達の父親2人は苦笑する。母親らに子育てを任せきりだったから、品よく成長できなかったのだろう。とはいうものの、彼女達の年頃なら、成人した女ぐらいの知性はあるはずなのだが。
「あ……うっ……!」
女の子が『聖根』を受け入れたままうなだれて前髪を垂らした。快楽が続くのが過ぎてとうとう気絶してしまったのだ。コーザの胸に2本の柔らかいツノがあたる。この時にようやく『聖液』が放たれ、娘のちっちゃな子宮に注ぎ込まれた。亜人の腹でも一撃で子を宿させる途方もないものであるが、その心配は無かった。貫きながらコーザが避妊の魔法をかけたからである。
気絶した女の子を椅子に座らせると別の娘がねだった。次はこの娘の番だ。そろそろ乙女の頃といった顔つきだ。その娘は服を脱ぎなだらかな曲線を描く腹と、将来は豊かな双丘となるのが伺える、膨らみかけというのにやや難がある盛り上がった乳房をさらした。
この子はサトシの娘だ。父親が念話でコーザに呼びかけた。
「その子、トーリャはすでに生理が来ております。本人も赤ん坊を産んでみたいと常々言っておりましたから、試し児を産ませてみたいのですがいかがでしょう?」
「よろしいのですか?」
「今更なにをおっしゃる。これまでに教主殿は、私の4人の娘の子の父親となったではありませんか?」
サトシだけではない。セイジもだ。他の枢機卿らも。妊娠の準備が整った娘は1度はコーザの子を産みたがった。コーザもまた、この枢機卿らに自分の娘や孫娘ともいえる教典の巫女を与え、子を産ませて来たのだ。
「複雑なお心の内かと思われますが、お察しいたします」
コーザはそう告げると、うるんだ瞳を向けてせがむトーリャの尻を抱いて持ち上げた。脚を開いてあらわになった花弁は蜜で濡れていた。その奥はさっきの子よりも熱かった。子宮が、生殖の本能が目覚めて吠えているのだろう。
長大な『聖根』が奥まで進んだ。トーリャの中が熱くなっているとコーザは思った。ゆっくりと引くと彼女は大声をあげた。恥らいあるものではない。悦楽を倍加させる麻薬を用いての交合で狂った女の声だった。
「ほしい! ほしい!」
『聖根』が再び奥へと滑り込み、行き止まりを優しく突いた。トーリャは腰を振り始めた。脂肪をつけ始めた尻と腰が激しく運動する。女の子達がその腰遣いを見てはしゃぎ始めた。父親たちと少ない男の子達はたしなめる事はしなかった。『法悦』の時は微笑みながら見守るもの。あるいは喜び励ますべきものである。トーリャの覚醒と受胎を邪魔してはいけないのだ。
「はうんっ! ううん! はっはっ……んんんっ!」
トーリャは喘ぎ続ける。コーザは腰を動かすことなく彼女の好きなようにさせた。 自分から動く必要はなかった。身体能力が凄まじいオーガの娘の腰遣いはニンゲンの比ではない。倍以上の速さである。彼女の下腹の奥は、硬いものを攻めたてる様に、ぬめった肉壁が吸いついて絡み、赤ん坊の素を出させようと仕掛けていた。
「トーリャ! トーリャ!」
「がんばれ! がんばれ!」
トーリャの姉妹や『いとこ』達が励ます。その声がコーザの真心に響いた。よがり狂い、神の名を叫び始めた娘の腹に子胤をくれてやった。排卵が起こりしばらく経って着床した。この娘は10か月後、より膨らんだ乳房を産んだ赤ん坊に含ませる事となる。
女の子達全員に『法悦』を与え、寝室に連れていってやった後にコーザはセイジとサトシに告げた。
「今から参りませんか。ご挨拶に」
「誰にです?」
「カツランダルクの女王にですよ。少し、お土産が必要かと思いますが、もしかしたら向こうは大層なものを求めてこないかもしれません」
御戯れを。サトシはうなずけなかった。敵中に堂々と入るなどとは危険すぎる。しかし弟は違った。
「良い考えですな。トーリというホーデンエーネンのメスガキを懲らしめる絶好の機会となりますぞ!」
語気が荒い。教主がたしなめようとするとセイジは鼻息を荒くしてまくしたてた。
「その小娘はセイン王の愛妾となり、国政を思いのままにあやつっていると聞き及んでおります。かの女があの大陸にあったという、サキュバスの王国の子孫であれば、いかはほどの才能かはわかりませぬが心理掌握の魔法で為したのでしょう。南天騎士団とかいう格好つけた雑兵どもの首魁や騎士達も虜にしたと聞き及んでおります。きっと計り知れない才能がある。でも殺すなら今です。今しか」
「セイジ。言葉が乱暴に過ぎるぞ! コーザ殿の前だろうが!」
兄に叱られてもセイジは止まらなかった。
「ここで雌雄を決してやりましょう。コーザ殿にはアカサカチハヤの魔竜も一目置く力がある。それから我ら、枢機卿には、この世界の魔法のあらゆる防護術式が通じない、神聖魔法の使い手……いやはや、教主殿も習得しておりましたな、半魔の身であるのに?」
セイジが吐く息は臭かった。美男なのに台無しと思えるにおいだった。コーザは不愉快とも思わず微笑んだまま。彼は思った。仕方ないですね、駄々っ子につきあうのもまた、神の愛を知る機会でしょう。
「よろしいでしょう。今すぐ、他の枢機卿らに呼びかけてみましょう……タカミ=ジュンさんやオハラ=タカシさんに……」
タカミ=ジュンとオハラ=タカシは、枢機卿らの中でも一際優れているとコーザが見立てた人物だった。タカミについては、才覚ある司祭騎士のヘンリック=イプセンに学ばせたことがある。神聖魔法と政治のことに関してだ。イプセンは魔道士よりも政治家としての才能があった。
「いいえ、教主殿と我々兄弟で向かうんですよ。恐れる事はありません」
セイジのこの提案には、流石のコーザも笑えなかった。この者は自分の能力を過信しすぎているきらいがあるようですね、昔から。絶対にそう言うだろうと思っていたから一息入れてその申し出を受け入れた。負けん気が強い者というのは、痛い負けを知れば知るほど程強くなる、と、神もおっしゃっておりましたね。
□ □ □ □ □
一刻後、コーザとカヅノ兄弟はナーガハーマの東にある南北の河川の縦断道路の建設現場にいた。クニットモッツェン山城の真東だ。盛り土の上にあがり、コーザはなるほどとつぶやいた。
「運河を造り北と南の河川交通を連携させる。クニトモッツエン城の城下の近くに船が着く事になるゆえ、物資の輸送が楽になる……というところでしょうか?」
当たらずとも遠からず。資金不足の為に止む無くマイヤは道路にしたのである。この工事計画がホーデンエーネンのもう1つの『珠玉』と言われる『おしゃぶり姫』の発案なのをコーザはカヅノ兄弟から聞いた。愛嬌とおしゃぶりとぶりぶりだけが取柄ではない、未来の宰相の幻をコーザは見ていた。我が国に欲しい。
「感心している場合ではありません、教主殿」
サトシが注意をうながす。ここに来てから見張られている。ニンゲンではなく魔族の気配だ。それ程魔力は強くないが、トーリ配下のサキュバスだろう。
「流石ですね。ここから100メートル北に1人、東の砦に1人。クニトモッツエン城は『ご本人さん』をのぞいて10名ほど詰めておりますね……城をでて伺っているのは中級のサキュバスでしょう」
「そこまでおわかりですか」
「同じ種族の血を引いておりますからね……しかし、城のほうはあまり近寄りたくないものです……」
そこはかとなくプレッシャーを感じる。予想以上に手ごわい相手になるかもしれないとコーザは思った。魔竜を退かせた力を持つ、という話を誰かの報告で聞いた覚えがあるのだが、戦いとなれば膝をつけさせるのに苦労するというのは確かのようだ。
気配。恐るべき魔の気が不意に膨張しだしたのを感じ取った。同時に、速やかに勃起して『聖液』を放ってしまった。カヅノ兄弟も「んっ?」と首を傾げた後に「わっ!」と叫んだ。彼等も勃起し射精してしまったのだ。気力があるセイジはそれでも気力を保てたが、兄のサトシは腰に力が入らなくなりしゃがみ込んでしまった。
これは恐ろしく優れたサキュバスの魔力によるものだ。コーザはそう思った。名うての戦士が闘気を、研鑽を積み重ねた魔道士が魔力を身体から漂わすのと同じように、サキュバスでも特に恐ろしい者は遠くからでもひしと感じさせる淫気を放って来る。
「気づかれたようですね……」
コーザはカヅノ兄弟らに言った。『聖液』を放っても『聖根』の高ぶりはおさまらない。ますます盛んになっていた。それは他の2人も同じだった。コーザはかつて、この感じを体験したことがあった。彼の実母であるサキュバスのクラリスが常に放っていた。
(お母さまの淫気に互する……いや、それ以上かもしれません。)
城のほうを見たまま黙っていると、セイジがご挨拶をするべきですと提案してきた。彼は血気盛んだ。先手必勝を好む。つまりは痛い目を見せてやろうという事だ。しかし奇襲は無理だろう。既に気づかれている。
「お土産、持参したほうがよろしかったでしょうか……」
「何を言っているのです! さっさと倒してしまいましょう、トーリとかいう小娘を!」
それからたっぷりと種付けを楽しもうというのがセイジの魂胆だった。ホーデンエーネンのサキュバスの女王の子孫とやらに、俺の子を産ませてみせようじゃないか。妹のほうもいるらしいから両方を楽しんでやろう。ちなみにだが彼はおっぱいが大きいと噂されているマイヤを先に抱いてみたいと考えていた。
「……セイジさん、少々侮り過ぎていますよ?」
「ふふふ。何をおっしゃいます?」
「もうすぐ近くに来ているのです。我々が顔を合わせたい相手というのが……」
なに?
セイジと淫気にやられたサトシがコーザを見る。教主は南の方角に顔を向けた。すぐそこに、感じなかったはずのおぞましい程の淫気を放つ女がいた。
月光に照らされ、蒼にも見える黒髪をなびかせて微笑む長身の女だ。浮世離れ、いいや、まるでこの世のものとは思えないたおやかな美しさをたたえる容貌に、この世で最もみだらな娼館のあるじの様な気配を全身から漂わせている女。
トーリ=カツランダルクであった。
彼女達は誰もが見目麗しくて淫らだった。1人だけをのぞいて他は、衣服の上からも豊かな乳房と尻を蓄えた、性愛と生殖の為に産まれた様な体つきが伺えたという。
粗末な夕食と薄い酒を貰った彼女らは、決まって服を脱ぎ男達を誘った。恐ろしく淫乱で技巧にも長けていたそうだ。1人の男から精をいただいたら休まずに別に男と。魅力的な美貌と身体は彼等の心を支配した。
いや、一番多くの男達を虜にしたのは、他と比べて乳が薄い女だった。背は高く蒼にも見える艶やかな黒髪の女。男心をあまりそそらぬ細い身体であったが、女達の中で一番美しかったそうだ。
、男達は彼女に殺到した。乱交の最中に、その女の喘ぎ喜ぶ姿と美しさに欲情して加わった女までもが。乱交は誰もが眠ることなく、陣地を離れるまで続いたそうだ。
「と、砦に残っていた者から聞いております」
カヅノ=サトシの話にコーザはうなずくばかりだった。食事を終えた彼等の娘達がコーザの座席に集まった。まだ10にもいかぬ年頃に見えるが、500年も生きるオーガ族のこの子らは中年か、そろそろ初老にさしかかるニンゲンと同じぐらいの年齢だった。
「きょうしゅさま。ほーえつをください!」
「おっきな『せいこん』で大事な教えを説いてください!」
「ほーえつ! ほーえつ!」
ははは、とコーザは笑いながら立ち上がると、その中の1人の娘を抱き上げた。毛織の衣の裾をめくるとちいちゃな丸尻があらわになる。父親たちが見ている中、コーザは前をはだけて既に屹立していた『聖根』を娘の割れ目に押し当てた。
「よろしいですか?」
「うん! はやくはやく!」
むき出しになっていた先端が柔らかい谷の奥に進む。たっぷりと濡れていた。小さな入口は縁が極度に発達したそれをすんなり受け入れると、貫かれることで生じる心地よさが娘の身体全体に伝わった。
「あう……あう……」
挿れられただけで娘は恍惚の中にいた。コーザの『聖根』は往復をするたびに、必ず『法悦』を幼い下腹に与えた。あまりの気持ちよさに彼女は粗相をしてしまうと、他の女の子達はげらげらと笑った。
「もらしてるー! もらしてるー!」
「もう神様がみえちゃったのー?」
皆にコーザがたしなめた。あまりからかってはいけませんよ。子供達の父親2人は苦笑する。母親らに子育てを任せきりだったから、品よく成長できなかったのだろう。とはいうものの、彼女達の年頃なら、成人した女ぐらいの知性はあるはずなのだが。
「あ……うっ……!」
女の子が『聖根』を受け入れたままうなだれて前髪を垂らした。快楽が続くのが過ぎてとうとう気絶してしまったのだ。コーザの胸に2本の柔らかいツノがあたる。この時にようやく『聖液』が放たれ、娘のちっちゃな子宮に注ぎ込まれた。亜人の腹でも一撃で子を宿させる途方もないものであるが、その心配は無かった。貫きながらコーザが避妊の魔法をかけたからである。
気絶した女の子を椅子に座らせると別の娘がねだった。次はこの娘の番だ。そろそろ乙女の頃といった顔つきだ。その娘は服を脱ぎなだらかな曲線を描く腹と、将来は豊かな双丘となるのが伺える、膨らみかけというのにやや難がある盛り上がった乳房をさらした。
この子はサトシの娘だ。父親が念話でコーザに呼びかけた。
「その子、トーリャはすでに生理が来ております。本人も赤ん坊を産んでみたいと常々言っておりましたから、試し児を産ませてみたいのですがいかがでしょう?」
「よろしいのですか?」
「今更なにをおっしゃる。これまでに教主殿は、私の4人の娘の子の父親となったではありませんか?」
サトシだけではない。セイジもだ。他の枢機卿らも。妊娠の準備が整った娘は1度はコーザの子を産みたがった。コーザもまた、この枢機卿らに自分の娘や孫娘ともいえる教典の巫女を与え、子を産ませて来たのだ。
「複雑なお心の内かと思われますが、お察しいたします」
コーザはそう告げると、うるんだ瞳を向けてせがむトーリャの尻を抱いて持ち上げた。脚を開いてあらわになった花弁は蜜で濡れていた。その奥はさっきの子よりも熱かった。子宮が、生殖の本能が目覚めて吠えているのだろう。
長大な『聖根』が奥まで進んだ。トーリャの中が熱くなっているとコーザは思った。ゆっくりと引くと彼女は大声をあげた。恥らいあるものではない。悦楽を倍加させる麻薬を用いての交合で狂った女の声だった。
「ほしい! ほしい!」
『聖根』が再び奥へと滑り込み、行き止まりを優しく突いた。トーリャは腰を振り始めた。脂肪をつけ始めた尻と腰が激しく運動する。女の子達がその腰遣いを見てはしゃぎ始めた。父親たちと少ない男の子達はたしなめる事はしなかった。『法悦』の時は微笑みながら見守るもの。あるいは喜び励ますべきものである。トーリャの覚醒と受胎を邪魔してはいけないのだ。
「はうんっ! ううん! はっはっ……んんんっ!」
トーリャは喘ぎ続ける。コーザは腰を動かすことなく彼女の好きなようにさせた。 自分から動く必要はなかった。身体能力が凄まじいオーガの娘の腰遣いはニンゲンの比ではない。倍以上の速さである。彼女の下腹の奥は、硬いものを攻めたてる様に、ぬめった肉壁が吸いついて絡み、赤ん坊の素を出させようと仕掛けていた。
「トーリャ! トーリャ!」
「がんばれ! がんばれ!」
トーリャの姉妹や『いとこ』達が励ます。その声がコーザの真心に響いた。よがり狂い、神の名を叫び始めた娘の腹に子胤をくれてやった。排卵が起こりしばらく経って着床した。この娘は10か月後、より膨らんだ乳房を産んだ赤ん坊に含ませる事となる。
女の子達全員に『法悦』を与え、寝室に連れていってやった後にコーザはセイジとサトシに告げた。
「今から参りませんか。ご挨拶に」
「誰にです?」
「カツランダルクの女王にですよ。少し、お土産が必要かと思いますが、もしかしたら向こうは大層なものを求めてこないかもしれません」
御戯れを。サトシはうなずけなかった。敵中に堂々と入るなどとは危険すぎる。しかし弟は違った。
「良い考えですな。トーリというホーデンエーネンのメスガキを懲らしめる絶好の機会となりますぞ!」
語気が荒い。教主がたしなめようとするとセイジは鼻息を荒くしてまくしたてた。
「その小娘はセイン王の愛妾となり、国政を思いのままにあやつっていると聞き及んでおります。かの女があの大陸にあったという、サキュバスの王国の子孫であれば、いかはほどの才能かはわかりませぬが心理掌握の魔法で為したのでしょう。南天騎士団とかいう格好つけた雑兵どもの首魁や騎士達も虜にしたと聞き及んでおります。きっと計り知れない才能がある。でも殺すなら今です。今しか」
「セイジ。言葉が乱暴に過ぎるぞ! コーザ殿の前だろうが!」
兄に叱られてもセイジは止まらなかった。
「ここで雌雄を決してやりましょう。コーザ殿にはアカサカチハヤの魔竜も一目置く力がある。それから我ら、枢機卿には、この世界の魔法のあらゆる防護術式が通じない、神聖魔法の使い手……いやはや、教主殿も習得しておりましたな、半魔の身であるのに?」
セイジが吐く息は臭かった。美男なのに台無しと思えるにおいだった。コーザは不愉快とも思わず微笑んだまま。彼は思った。仕方ないですね、駄々っ子につきあうのもまた、神の愛を知る機会でしょう。
「よろしいでしょう。今すぐ、他の枢機卿らに呼びかけてみましょう……タカミ=ジュンさんやオハラ=タカシさんに……」
タカミ=ジュンとオハラ=タカシは、枢機卿らの中でも一際優れているとコーザが見立てた人物だった。タカミについては、才覚ある司祭騎士のヘンリック=イプセンに学ばせたことがある。神聖魔法と政治のことに関してだ。イプセンは魔道士よりも政治家としての才能があった。
「いいえ、教主殿と我々兄弟で向かうんですよ。恐れる事はありません」
セイジのこの提案には、流石のコーザも笑えなかった。この者は自分の能力を過信しすぎているきらいがあるようですね、昔から。絶対にそう言うだろうと思っていたから一息入れてその申し出を受け入れた。負けん気が強い者というのは、痛い負けを知れば知るほど程強くなる、と、神もおっしゃっておりましたね。
□ □ □ □ □
一刻後、コーザとカヅノ兄弟はナーガハーマの東にある南北の河川の縦断道路の建設現場にいた。クニットモッツェン山城の真東だ。盛り土の上にあがり、コーザはなるほどとつぶやいた。
「運河を造り北と南の河川交通を連携させる。クニトモッツエン城の城下の近くに船が着く事になるゆえ、物資の輸送が楽になる……というところでしょうか?」
当たらずとも遠からず。資金不足の為に止む無くマイヤは道路にしたのである。この工事計画がホーデンエーネンのもう1つの『珠玉』と言われる『おしゃぶり姫』の発案なのをコーザはカヅノ兄弟から聞いた。愛嬌とおしゃぶりとぶりぶりだけが取柄ではない、未来の宰相の幻をコーザは見ていた。我が国に欲しい。
「感心している場合ではありません、教主殿」
サトシが注意をうながす。ここに来てから見張られている。ニンゲンではなく魔族の気配だ。それ程魔力は強くないが、トーリ配下のサキュバスだろう。
「流石ですね。ここから100メートル北に1人、東の砦に1人。クニトモッツエン城は『ご本人さん』をのぞいて10名ほど詰めておりますね……城をでて伺っているのは中級のサキュバスでしょう」
「そこまでおわかりですか」
「同じ種族の血を引いておりますからね……しかし、城のほうはあまり近寄りたくないものです……」
そこはかとなくプレッシャーを感じる。予想以上に手ごわい相手になるかもしれないとコーザは思った。魔竜を退かせた力を持つ、という話を誰かの報告で聞いた覚えがあるのだが、戦いとなれば膝をつけさせるのに苦労するというのは確かのようだ。
気配。恐るべき魔の気が不意に膨張しだしたのを感じ取った。同時に、速やかに勃起して『聖液』を放ってしまった。カヅノ兄弟も「んっ?」と首を傾げた後に「わっ!」と叫んだ。彼等も勃起し射精してしまったのだ。気力があるセイジはそれでも気力を保てたが、兄のサトシは腰に力が入らなくなりしゃがみ込んでしまった。
これは恐ろしく優れたサキュバスの魔力によるものだ。コーザはそう思った。名うての戦士が闘気を、研鑽を積み重ねた魔道士が魔力を身体から漂わすのと同じように、サキュバスでも特に恐ろしい者は遠くからでもひしと感じさせる淫気を放って来る。
「気づかれたようですね……」
コーザはカヅノ兄弟らに言った。『聖液』を放っても『聖根』の高ぶりはおさまらない。ますます盛んになっていた。それは他の2人も同じだった。コーザはかつて、この感じを体験したことがあった。彼の実母であるサキュバスのクラリスが常に放っていた。
(お母さまの淫気に互する……いや、それ以上かもしれません。)
城のほうを見たまま黙っていると、セイジがご挨拶をするべきですと提案してきた。彼は血気盛んだ。先手必勝を好む。つまりは痛い目を見せてやろうという事だ。しかし奇襲は無理だろう。既に気づかれている。
「お土産、持参したほうがよろしかったでしょうか……」
「何を言っているのです! さっさと倒してしまいましょう、トーリとかいう小娘を!」
それからたっぷりと種付けを楽しもうというのがセイジの魂胆だった。ホーデンエーネンのサキュバスの女王の子孫とやらに、俺の子を産ませてみせようじゃないか。妹のほうもいるらしいから両方を楽しんでやろう。ちなみにだが彼はおっぱいが大きいと噂されているマイヤを先に抱いてみたいと考えていた。
「……セイジさん、少々侮り過ぎていますよ?」
「ふふふ。何をおっしゃいます?」
「もうすぐ近くに来ているのです。我々が顔を合わせたい相手というのが……」
なに?
セイジと淫気にやられたサトシがコーザを見る。教主は南の方角に顔を向けた。すぐそこに、感じなかったはずのおぞましい程の淫気を放つ女がいた。
月光に照らされ、蒼にも見える黒髪をなびかせて微笑む長身の女だ。浮世離れ、いいや、まるでこの世のものとは思えないたおやかな美しさをたたえる容貌に、この世で最もみだらな娼館のあるじの様な気配を全身から漂わせている女。
トーリ=カツランダルクであった。
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