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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』
27 ナーガーハーマ
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ホーデンエーネン王国暦350年8月中旬。この時トーリは北ホーデンエーネンのナーガーハーマへ向かう旅の最中にあった。
アスカウから真東の街道を進み、王国中南部東側の最北にある港・ヤマシナッフェンから船でアヅチハーゲンへ向かい、半月ほどの馬車旅で目的地に着く。
この旅は国王の旅でもあるから1万の軍勢を連れての大所帯となった。時間がかかってしまう。2ヶ月でいけるところをおおよそ3ヶ月もかけることとなった。
5月の末頃に出発してかれこれ2ヶ月半にもなるから、そろそろアヅチハーゲンに着くのかと思いきや、まだヤマシナッフェンにいた。トーリがある人物ともめて、船に乗れなかったからである。
「アスカウ公様! なにとぞイズヴァルトのバカ息子が戻って来るまで、ナーガーハーマ入りはなさらぬよういただけませぬか!」
港町の一番高い宿を貸し切った『仮御所』の食堂にて、トーリの眼の前で平伏してそう叫ぶのは、イズヴァルトの実父たるシギサンシュタウフェン公本人だった。
その右には彼の妻でありイズヴァルトの母親のセシリアがいた。顔立ちが息子によく似た、後ろに束ねた黒髪のとても艷やかな女はトーリと遜色ない美人であった。その彼女も食べかすやシミがついた床に膝と額をつけている。
その夫婦の後ろには、イズヴァルトの幼い弟妹らが両親のように平伏していた。小さいのに健気な。ひそひそと語らう武者達の声がトーリの耳に聞こえてくる。
「あのう、シギサンシュタウフェン公さま、セシリア奥様……」
トーリは困っていた。その申し出、昨日も一昨日もございませんでした? いいや、1週間前からずっとこんな調子だ。いくら断ってもこんな様子だ。
「あ、あのう。たとえ身分違いとはいえ、あんまりにもうやうやしく頭を下げられるのは……」
「なにとぞ! なにとぞご再考を!」
「夫と同じくわたくしからも! トーリちゃん、イズヴァルトが戻ってくるまで待ってあげて!」
セシリアがどうにもくだけた口調なのは、西のスオニア王国の大貴族の出自だからである。生まれてすぐに追い出されたが。キッカワンテス家という暗黒卿伝説にも関わる、とんでもない名家の出だとトーリは知っていた。
「あ、あ、あ、あのお……」
だから何度も言っているけどそのつもりは無いんだって。1週間前から言っているのに、トーリはこの一家にこうして訴えられて止めを食らっている。こんなのが続くと悪い噂が立つ。それの始末がまた面倒くさいのだ。
シギサンシュタウフェン一家は油か何かでテカる床板に、額をこすりつけながら説得する。この夫婦にそんなのをやられてしまうとトーリはびびって打開策を思いつけなかった。
そもそも、イズヴァルトの一家には強く出られなかった。そもそもだがナントブルグに行く前はシギサンシュタウフェンの屋敷に何度も呼ばれたことがある。幼いオルフレッドにも愛情を注いでくれた。負いというものがあったのだ。
「だから何度もお伝えしたではありませんか! マイヤちゃん……妹君になにかあったらイズヴァルトは自殺してしまうかもしれません!
「そうです! うちのイズヴァルトが死んじゃったらマイヤちゃんも後を追うかもしれないでしょうし! 別れた? そんなの一時の気の迷いに決まっていますわ! あんなに仲が良い2人ですよ? 信じられません!」
この夫婦は理論や理屈の前に情で押し通すところがあった。そういうのはサキュバスの十八番である心理操作の魔法が効きやすいのだが、そうもいかなかった。とんでもなく魔法抵抗が強いのだ。
トーリは側にいた女中のシャロンに目を向けた。まだ幼い顔立ちなのに悪目立ちする大きな乳房で上着をこんもりとさせている。
茶髪のニンゲンの娘だが、本当は橙色の髪の色をした淫魔だ。ちなみにだが魔族の姿の時のおっぱいは今の3割増しに大きい。とはいえ乳輪が異様に大きくて黒ずんでおり、乳房も垂れてしまっている。そういう趣味の男にはたまらない。
(あなたの魔法でなんとかならない?)
シャロンはそっぽを向いた。何度も言ったじゃありませんか、むりです。
(お殿様はオーガ族の血が濃いのですよ。あいつら、わたしらの魔法を一切受け付けません。)
ホーデンエーネン国の古くからいる貴族はたいてい、オーガ族の血を濃く継いでいた。数百年前の大陸戦国時代に、彼らは武勇に優れた子を欲しがった。ゆえにツノが生えた戦士と交配させ続けたのだ。
特にシギサンシュタウフェン家はその傾向が強い。この一家は6世代前からニンゲン同士の婚姻であったが、先祖の血が今も強く残っている。イズヴァルトがトーリの心理魔法にひっかかったのは、彼だけサキュバスの魔法にとても馴染んでいて弱かったからだ。マイヤにぞっこんだったせいだろう。
(そっちの奥様はもっとやばい感じがするわ。)
シギサンシュタウフェンの奥方のセシリアは、もっと恐ろしい何かを感じさせた。妖精と言って差し支えない美貌とふわふわとした雰囲気が、どうにもエルフくさい。この世界での淫魔族の天敵どもの中で、特にヤバ目なのがこういう感じだ。
(そういや、セシリア様のご実家について、カミラがこんなことを言っていたわね。スオニアの大貴族・キッカワンテス家は……)
恐ろしい実力を誇る女エルフの血を継ぐと。キッカワンテス家。かの家の女当主と言えば魔道の才があることで有名だった。髪の毛の色が『忌み色』なだけで追い出されたセシリアが、その一族の良い遺伝を持って行ったみたいだ。今現在の当主が魔道の使いてとして並以下というの噂からも、そうかもしれないと思わせた。
(シャロン。黙ってないで答えなさいよ!)
トーリがうるさく催促する。古いサキュバスなら良い魔法を知っているだろうという期待が籠っていた。
(わたしじゃダメなので『おじょうさま』ががんばってください。あ、カミラを呼んでも無理ですから。)
シャロンとカミラの能力は、ほぼ同等だ。カミラが若干上を行くぐらいある。そのカミラはイーガにいて、国王との密談を繰り返している。ただカミラは、老翁の魅力的な下半身にのめりこんでいるフシがあった。昔の恋人の面影を伺えたというのもあるが。
(じゃあ、どうすればいい?)
(これは試練です、そのぐらい自分でお考えなさい。)
(まあ! あなたってカミラよりも不親切なのね!)
(あの子と比べて知恵が足りないので。お察しください。)
(この……デカ乳輪!)
人が気にしていることでおちょくったり怒らせても無駄です。冷静なシャロンはトーリの罵声をすべて受け流した。不細工な乳輪だと男に罵られるのが好きだ。あそこが潤んでしまう。彼女にとってある意味、誉め言葉でもある。
トーリは感情を吐き出して落ち着きを取り戻し、夫妻に尋ねた。やって来た原因を知りたい。
「ところで、ルッソから手紙をもらいました?」
「ヨーシデン公から? ……頂きましたとも。ルッソ君から送られたアジの塩漬けやら何やらと一緒にだね」
その手紙には、こう書かれていたそうだ。今また王国と教団は戦争を再開しようとしている。教団は新兵器でもって王国を苦戦させているようだ。ナーガーハーマまで攻め込む可能性だってある。トーリとマイヤが危ない。せめてイズヴァルトさんが戻ってくるまで取りやめにしたほうがいいだろう。
(まあっ!)
やっぱりそうだった。これはルッソの計略だったのだ。シギサンシュタウフェン公まで呼び出すとはなかなかに汚い真似をする。徹底的に嫌がらせを仕掛け続けるつもりみたいだ。折れるのを待つつもりか。
(その喧嘩、こっちだってやってやろうじゃないの。)
頭が冴えてきたトーリは夫妻に提案した。
「何なら。シギサンシュタウフェン公様もご一緒いただけませんこと?」
「おお……それは名案ですな!」
イズヴァルトの父と母は受け入れた。えらくあっさりと。
「トーリちゃん。あまり手勢は連れてきていないけれど、身の回りの世話ならわたし達にまかせてね」
こうして夫妻と子供たちの同行が決まった。ところでとシギサンシュタウフェン公がトーリに尋ねた。マイヤに会わせて欲しい。夫妻にとって我が娘に等しき彼女の顔をひと目見たい。戻ってきたという話を聞いてからまだ一度も、マイヤと会えなかったのだ。
「いえ。それがですね、マイヤは……」
一足先にマイヤはナーガーハーマに着いていた。彼女にべったりなオルガスムナの若当主と共に。サキュバスらの転移魔法で1日のうちに現地入りを果たしていた。
□ □ □ □ □
ナーガーハーマ。北部最大の貿易港・アヅチハーゲンから西に300キロほど行ったところにある内陸部の城塞都市である。大陸の戦国時代においては、北部に覇を唱えていたオーミゲニア王国の王都でもあった。
街は北部のちょうど中心にある。実際はもう少し南に奥まったところにあったが、ホーデンエーネン王家は北のエチウと戦争があった場合の拠点を置いていた。街の中心にある、クニットモッツェンなる小さな山にある城がそれである。その名もクニットモッツェン城だ。
マイヤ=カツランダルクは大きな革張りの車椅子に乗って、クニットモッツェン城の北の城壁から街を見下ろしていた。
この街の四方八方には丘がある。南側と北側には大河が流れている。北のタッカテオッキと南のアネガウだ。アネガウからはアヅチハーゲンに通じる河川交通も発達していた。
これらの丘はオーミゲニア王国時代、ナーガハーマを守る支城が建てられたという。今は要地となりそうな箇所にのみ、小さな砦があるだけだが。
「あひゅん……うううう……」
マイヤは声を漏らしながら、昨日の会議について、自分が発言した案を思い出す。これらの丘に防塁を築き、居住区を広げる。この平野一帯に軍事と経済の両方を備えた街にしてみてはいかがだろうか。
「んっ……んっ……んっ、んっ……」
彼女はまた唸った。頬を真っ赤に染めて愛らしい声で息を弾ませた。寒いこの辺りとはいえ季節は夏であるのに、彼女は腰のあたりに毛布をかけていた。
「んんんっ……んんっ……」
マイヤは椅子の背もたれを義手で掴んで、腰を上げたり下げたりを繰り返ししていた。車椅子はとても大きくて厚かった。それと、座部に傾斜が設けられており、彼女の腰はレの字に折れ曲がっていた。
「ううううん……うううっ、ふううっ……」
マイヤは肩をガックリと落とした。しばらくして背中から声が聞こえた。もう出てよろしいでしょうか。うっとりとした顔でマイヤはうなずき、側にいた侍女に呼びかけた。
毛布が取り払われた。マイヤが着ていた服は腰のあたりまでしか無かった。侍女が彼女を抱き上げると、彼女の股からとろりとした精液が糸を引いてこぼれ出た。
椅子と背もたれの間に、何かが見えた。愛液をたっぷりとつけたへなったペニスだ。穴から出ていたのだ。もう1人の侍女が背もたれの後ろにあった扉を開けると、下半身を丸出しにした幼いオルガスムナ公が這い出てきた。
「ふうう。苦しかったぁ……」
このおもちゃは楽しいけど息苦しい。侍女に濡れ布で股を拭われながら、おもちゃじゃないよ、とマイヤは答えた。
「マイア=テクニカの新製品……のつもりなんだけどなあ」
正確に言えば試作段階。その名もずばり人間椅子である。マイヤは鉄砲だけでなく、こうした性生活を充実させる為の商品も考え、作っていた。
でもどれもが量産を拒否された。完全受注生産ならやってやるけど、と職人たちに言われた。イーガならばそんなことはないだろうに、悔しい。けれども精液をいただけて身体は満足していた。それがあるから不機嫌にはなれなかった。
「マイヤさま。今日はこの辺で勘弁してください……」
幼いオルガスムナ公は酷く疲れた様子であった。まだ昼前だがマイヤとのセックスはこれで4回目である。しかしここに来る前までは余裕で一日中ハメ倒したことがざらにあった。
「ううん。つき合わせちゃってごめんね、アルトールくん」
マイヤは真っ白なお尻を振った。むちむちとして更に丸みを帯びて、むしゃぶりつきたくなる豊かさだ。それを見てアルトールは勃起してしまったが、胸が苦しくなるのを覚えて控えることにした。
先に昼の食事をとってくる、と告げてアルトールは侍女とともに去った。彼は体型こそ変わらなかったが、顔がむくみ始めていた。マイヤだけでなく侍女ともセックスを行っていたので、身体が疲れ始めていたのだ。
「マイヤさま。アルトールさまはしばらくお休みになられたほうがよろしいでしょう」
侍女がたしなめた。彼女もまたトーリの部下である。
「ちがうよ。アルトールくんがせがんで来るの」
それでついつい許してしまうが、何度かしているうちに自分も火がついてしまいのめり込んでしまう。今のもそうだった。
車椅子を整えられた後、マイヤは腰を下ろしてもらった。これから街のみ周りに行く。ナーガーハーマ拡張のための思案を練る為にだ。食事はその後にするつもりだ。
アスカウから真東の街道を進み、王国中南部東側の最北にある港・ヤマシナッフェンから船でアヅチハーゲンへ向かい、半月ほどの馬車旅で目的地に着く。
この旅は国王の旅でもあるから1万の軍勢を連れての大所帯となった。時間がかかってしまう。2ヶ月でいけるところをおおよそ3ヶ月もかけることとなった。
5月の末頃に出発してかれこれ2ヶ月半にもなるから、そろそろアヅチハーゲンに着くのかと思いきや、まだヤマシナッフェンにいた。トーリがある人物ともめて、船に乗れなかったからである。
「アスカウ公様! なにとぞイズヴァルトのバカ息子が戻って来るまで、ナーガーハーマ入りはなさらぬよういただけませぬか!」
港町の一番高い宿を貸し切った『仮御所』の食堂にて、トーリの眼の前で平伏してそう叫ぶのは、イズヴァルトの実父たるシギサンシュタウフェン公本人だった。
その右には彼の妻でありイズヴァルトの母親のセシリアがいた。顔立ちが息子によく似た、後ろに束ねた黒髪のとても艷やかな女はトーリと遜色ない美人であった。その彼女も食べかすやシミがついた床に膝と額をつけている。
その夫婦の後ろには、イズヴァルトの幼い弟妹らが両親のように平伏していた。小さいのに健気な。ひそひそと語らう武者達の声がトーリの耳に聞こえてくる。
「あのう、シギサンシュタウフェン公さま、セシリア奥様……」
トーリは困っていた。その申し出、昨日も一昨日もございませんでした? いいや、1週間前からずっとこんな調子だ。いくら断ってもこんな様子だ。
「あ、あのう。たとえ身分違いとはいえ、あんまりにもうやうやしく頭を下げられるのは……」
「なにとぞ! なにとぞご再考を!」
「夫と同じくわたくしからも! トーリちゃん、イズヴァルトが戻ってくるまで待ってあげて!」
セシリアがどうにもくだけた口調なのは、西のスオニア王国の大貴族の出自だからである。生まれてすぐに追い出されたが。キッカワンテス家という暗黒卿伝説にも関わる、とんでもない名家の出だとトーリは知っていた。
「あ、あ、あ、あのお……」
だから何度も言っているけどそのつもりは無いんだって。1週間前から言っているのに、トーリはこの一家にこうして訴えられて止めを食らっている。こんなのが続くと悪い噂が立つ。それの始末がまた面倒くさいのだ。
シギサンシュタウフェン一家は油か何かでテカる床板に、額をこすりつけながら説得する。この夫婦にそんなのをやられてしまうとトーリはびびって打開策を思いつけなかった。
そもそも、イズヴァルトの一家には強く出られなかった。そもそもだがナントブルグに行く前はシギサンシュタウフェンの屋敷に何度も呼ばれたことがある。幼いオルフレッドにも愛情を注いでくれた。負いというものがあったのだ。
「だから何度もお伝えしたではありませんか! マイヤちゃん……妹君になにかあったらイズヴァルトは自殺してしまうかもしれません!
「そうです! うちのイズヴァルトが死んじゃったらマイヤちゃんも後を追うかもしれないでしょうし! 別れた? そんなの一時の気の迷いに決まっていますわ! あんなに仲が良い2人ですよ? 信じられません!」
この夫婦は理論や理屈の前に情で押し通すところがあった。そういうのはサキュバスの十八番である心理操作の魔法が効きやすいのだが、そうもいかなかった。とんでもなく魔法抵抗が強いのだ。
トーリは側にいた女中のシャロンに目を向けた。まだ幼い顔立ちなのに悪目立ちする大きな乳房で上着をこんもりとさせている。
茶髪のニンゲンの娘だが、本当は橙色の髪の色をした淫魔だ。ちなみにだが魔族の姿の時のおっぱいは今の3割増しに大きい。とはいえ乳輪が異様に大きくて黒ずんでおり、乳房も垂れてしまっている。そういう趣味の男にはたまらない。
(あなたの魔法でなんとかならない?)
シャロンはそっぽを向いた。何度も言ったじゃありませんか、むりです。
(お殿様はオーガ族の血が濃いのですよ。あいつら、わたしらの魔法を一切受け付けません。)
ホーデンエーネン国の古くからいる貴族はたいてい、オーガ族の血を濃く継いでいた。数百年前の大陸戦国時代に、彼らは武勇に優れた子を欲しがった。ゆえにツノが生えた戦士と交配させ続けたのだ。
特にシギサンシュタウフェン家はその傾向が強い。この一家は6世代前からニンゲン同士の婚姻であったが、先祖の血が今も強く残っている。イズヴァルトがトーリの心理魔法にひっかかったのは、彼だけサキュバスの魔法にとても馴染んでいて弱かったからだ。マイヤにぞっこんだったせいだろう。
(そっちの奥様はもっとやばい感じがするわ。)
シギサンシュタウフェンの奥方のセシリアは、もっと恐ろしい何かを感じさせた。妖精と言って差し支えない美貌とふわふわとした雰囲気が、どうにもエルフくさい。この世界での淫魔族の天敵どもの中で、特にヤバ目なのがこういう感じだ。
(そういや、セシリア様のご実家について、カミラがこんなことを言っていたわね。スオニアの大貴族・キッカワンテス家は……)
恐ろしい実力を誇る女エルフの血を継ぐと。キッカワンテス家。かの家の女当主と言えば魔道の才があることで有名だった。髪の毛の色が『忌み色』なだけで追い出されたセシリアが、その一族の良い遺伝を持って行ったみたいだ。今現在の当主が魔道の使いてとして並以下というの噂からも、そうかもしれないと思わせた。
(シャロン。黙ってないで答えなさいよ!)
トーリがうるさく催促する。古いサキュバスなら良い魔法を知っているだろうという期待が籠っていた。
(わたしじゃダメなので『おじょうさま』ががんばってください。あ、カミラを呼んでも無理ですから。)
シャロンとカミラの能力は、ほぼ同等だ。カミラが若干上を行くぐらいある。そのカミラはイーガにいて、国王との密談を繰り返している。ただカミラは、老翁の魅力的な下半身にのめりこんでいるフシがあった。昔の恋人の面影を伺えたというのもあるが。
(じゃあ、どうすればいい?)
(これは試練です、そのぐらい自分でお考えなさい。)
(まあ! あなたってカミラよりも不親切なのね!)
(あの子と比べて知恵が足りないので。お察しください。)
(この……デカ乳輪!)
人が気にしていることでおちょくったり怒らせても無駄です。冷静なシャロンはトーリの罵声をすべて受け流した。不細工な乳輪だと男に罵られるのが好きだ。あそこが潤んでしまう。彼女にとってある意味、誉め言葉でもある。
トーリは感情を吐き出して落ち着きを取り戻し、夫妻に尋ねた。やって来た原因を知りたい。
「ところで、ルッソから手紙をもらいました?」
「ヨーシデン公から? ……頂きましたとも。ルッソ君から送られたアジの塩漬けやら何やらと一緒にだね」
その手紙には、こう書かれていたそうだ。今また王国と教団は戦争を再開しようとしている。教団は新兵器でもって王国を苦戦させているようだ。ナーガーハーマまで攻め込む可能性だってある。トーリとマイヤが危ない。せめてイズヴァルトさんが戻ってくるまで取りやめにしたほうがいいだろう。
(まあっ!)
やっぱりそうだった。これはルッソの計略だったのだ。シギサンシュタウフェン公まで呼び出すとはなかなかに汚い真似をする。徹底的に嫌がらせを仕掛け続けるつもりみたいだ。折れるのを待つつもりか。
(その喧嘩、こっちだってやってやろうじゃないの。)
頭が冴えてきたトーリは夫妻に提案した。
「何なら。シギサンシュタウフェン公様もご一緒いただけませんこと?」
「おお……それは名案ですな!」
イズヴァルトの父と母は受け入れた。えらくあっさりと。
「トーリちゃん。あまり手勢は連れてきていないけれど、身の回りの世話ならわたし達にまかせてね」
こうして夫妻と子供たちの同行が決まった。ところでとシギサンシュタウフェン公がトーリに尋ねた。マイヤに会わせて欲しい。夫妻にとって我が娘に等しき彼女の顔をひと目見たい。戻ってきたという話を聞いてからまだ一度も、マイヤと会えなかったのだ。
「いえ。それがですね、マイヤは……」
一足先にマイヤはナーガーハーマに着いていた。彼女にべったりなオルガスムナの若当主と共に。サキュバスらの転移魔法で1日のうちに現地入りを果たしていた。
□ □ □ □ □
ナーガーハーマ。北部最大の貿易港・アヅチハーゲンから西に300キロほど行ったところにある内陸部の城塞都市である。大陸の戦国時代においては、北部に覇を唱えていたオーミゲニア王国の王都でもあった。
街は北部のちょうど中心にある。実際はもう少し南に奥まったところにあったが、ホーデンエーネン王家は北のエチウと戦争があった場合の拠点を置いていた。街の中心にある、クニットモッツェンなる小さな山にある城がそれである。その名もクニットモッツェン城だ。
マイヤ=カツランダルクは大きな革張りの車椅子に乗って、クニットモッツェン城の北の城壁から街を見下ろしていた。
この街の四方八方には丘がある。南側と北側には大河が流れている。北のタッカテオッキと南のアネガウだ。アネガウからはアヅチハーゲンに通じる河川交通も発達していた。
これらの丘はオーミゲニア王国時代、ナーガハーマを守る支城が建てられたという。今は要地となりそうな箇所にのみ、小さな砦があるだけだが。
「あひゅん……うううう……」
マイヤは声を漏らしながら、昨日の会議について、自分が発言した案を思い出す。これらの丘に防塁を築き、居住区を広げる。この平野一帯に軍事と経済の両方を備えた街にしてみてはいかがだろうか。
「んっ……んっ……んっ、んっ……」
彼女はまた唸った。頬を真っ赤に染めて愛らしい声で息を弾ませた。寒いこの辺りとはいえ季節は夏であるのに、彼女は腰のあたりに毛布をかけていた。
「んんんっ……んんっ……」
マイヤは椅子の背もたれを義手で掴んで、腰を上げたり下げたりを繰り返ししていた。車椅子はとても大きくて厚かった。それと、座部に傾斜が設けられており、彼女の腰はレの字に折れ曲がっていた。
「ううううん……うううっ、ふううっ……」
マイヤは肩をガックリと落とした。しばらくして背中から声が聞こえた。もう出てよろしいでしょうか。うっとりとした顔でマイヤはうなずき、側にいた侍女に呼びかけた。
毛布が取り払われた。マイヤが着ていた服は腰のあたりまでしか無かった。侍女が彼女を抱き上げると、彼女の股からとろりとした精液が糸を引いてこぼれ出た。
椅子と背もたれの間に、何かが見えた。愛液をたっぷりとつけたへなったペニスだ。穴から出ていたのだ。もう1人の侍女が背もたれの後ろにあった扉を開けると、下半身を丸出しにした幼いオルガスムナ公が這い出てきた。
「ふうう。苦しかったぁ……」
このおもちゃは楽しいけど息苦しい。侍女に濡れ布で股を拭われながら、おもちゃじゃないよ、とマイヤは答えた。
「マイア=テクニカの新製品……のつもりなんだけどなあ」
正確に言えば試作段階。その名もずばり人間椅子である。マイヤは鉄砲だけでなく、こうした性生活を充実させる為の商品も考え、作っていた。
でもどれもが量産を拒否された。完全受注生産ならやってやるけど、と職人たちに言われた。イーガならばそんなことはないだろうに、悔しい。けれども精液をいただけて身体は満足していた。それがあるから不機嫌にはなれなかった。
「マイヤさま。今日はこの辺で勘弁してください……」
幼いオルガスムナ公は酷く疲れた様子であった。まだ昼前だがマイヤとのセックスはこれで4回目である。しかしここに来る前までは余裕で一日中ハメ倒したことがざらにあった。
「ううん。つき合わせちゃってごめんね、アルトールくん」
マイヤは真っ白なお尻を振った。むちむちとして更に丸みを帯びて、むしゃぶりつきたくなる豊かさだ。それを見てアルトールは勃起してしまったが、胸が苦しくなるのを覚えて控えることにした。
先に昼の食事をとってくる、と告げてアルトールは侍女とともに去った。彼は体型こそ変わらなかったが、顔がむくみ始めていた。マイヤだけでなく侍女ともセックスを行っていたので、身体が疲れ始めていたのだ。
「マイヤさま。アルトールさまはしばらくお休みになられたほうがよろしいでしょう」
侍女がたしなめた。彼女もまたトーリの部下である。
「ちがうよ。アルトールくんがせがんで来るの」
それでついつい許してしまうが、何度かしているうちに自分も火がついてしまいのめり込んでしまう。今のもそうだった。
車椅子を整えられた後、マイヤは腰を下ろしてもらった。これから街のみ周りに行く。ナーガーハーマ拡張のための思案を練る為にだ。食事はその後にするつもりだ。
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