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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』
23 直訴状
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直訴の日、セイン王はナントブルグの王城に戻っていた。かつてのような会戦は無く、散発的な小競り合いのみで下火になっていた対パラッツォ教戦線から戻ってきて、トーリに息子を産ませようとくたくたになるまで頑張っていた。
「うおおおお、トーリ!」
昼間だというのに、ベッドを激しくぎしつかせて喘ぐトーリの上に乗ったセインは狂おしく腰を振る。
「お、おうさま~♡」
セイン王の狂い切ったピストンにトーリはご満悦だった。明日まで蟹股で歩くハメになるだろうが、セイン王の溜まりに溜まった生殖欲を広げた脚で受け止める。
「うおおおおおお!」
「あああああああ♡」
二人の息をぴったりだった。閨を続けて身体の相性というのも良いことがわかっていた。セインはトーリにとっていわばおじ、である。血が近いのだ。ゆえに身体の構造も。
「すっ、すっ、すいついてくるぅ!」
セインはどっぷりとトーリの中で放った。今日3度目の膣内射精だ。陰茎は狂おしく硬くなったままだったのでまた腰を振り始めた。そこに国王の老いた侍従が飛び込んできた。
「陛下、いつまでなさるおつもりですか! もうそろそろでアジール公との会合のお時間ですぞ!」
「え、そんな時間かあ……わかった。ルッソをこっちに連れて来い。嫁さんの腹の中で、どっちの子胤が孕ませるか競争しようぜと伝えてくれ!」
「御戯れも大概になされい! さっさと支度を整えてアジール公とお顔合わせを!」
「……わかったよ、じい」
この老侍従は幼い頃のセインの守り役だった。生ケツを思い切りよく引っぱたかれてセインは渋々服を着た。
トーリとの子造りの邪魔をされた形であるが、この時セインは廷臣や武将らが妾にと選んだ女達にたくさん子を産ませていた。10人以上もだ北部諸侯の中には娘をセインに差し出して『お手付き』にした者が何人かいた。
正妻はまだいないがセインは跡継ぎに困るということは今の時点では無かった。産まれた赤ん坊の中には男児もいたからだ。しかし宮廷ではトーリとの間の子が望まれた。他の妾達に子を産ませるセインと間男を咥え込み続けるトーリにとって避けて通れぬ仕事であった。
ルッソは書院で待っていた。今日はオルフレッドと上の娘のコリアンナと一緒だ。
「よう、兄弟。オルフレッドとご令嬢と一緒に来たのか」
セインが気さくに呼び掛けた。セインはルッソに身分を問わない国王の友人として認めた者だ。ずけずけと遠慮なくものを言えることを赦している。そもそもがセインは身分がどうのとか考えるのが苦手な男だ。
「陛下。お久しぶりでございます」
ルッソが深々と頭をさげた。友人と認められたからといって国王の前である。コリアンナも見様見真似でスカートをつまんでお辞儀をした。オルフレッドは王族として認知されているから軽く頭を下げただけだ。
「直訴状を見せてみろ。ま、トーリの使いからどんな概要なのかを聞いたけどな。どれどれ……」
概要はこうだった。諸外国を不安にさせ、ホーデンエーネンを将来的に苦しめるだろう新兵器の輸出をアジールの港からは認めない。いや、できるのであれば王国とイーガだけに出回る道具のままにさせたい。
「特にマイヤがこちらに戻ってから設計した新式の鉄砲はもってのほかである。火薬と弾を入れて魔法の火打ちでポン、と出す代物は画期的な兵器となるだろう。似たような話をマイヤが教えてくれた。異世界では鉄砲を使って最強の騎馬武者軍団を倒したノッブ=ナーガという武将がいたという。鉄砲が発達すれば騎士の肩身が狭くなるだろう。そのことを考えても鉄砲を発展させるのはよろしくない……とかずらずら書いているな」
もうちょっと短くまとめろよ。大事なところだけかいつまんで書け。セインは舌打ちしながらルッソに呼び掛けた。セインは字こそかけるが本を読むのは苦手なのだ。兵法書ぐらいしか興味が無かった。
ルッソはたどたどしい声で言いはじめた。
「てっぽう、海外に出る。サイゴークとカントニア、ドワーフとエルフがいる」
「そうだな。確かにいるよな」
「あいつら、鍛冶や改良がとても得意。特にドワーフ、冶金技術がすごい。もっといいものをつくる。殺傷力がすごくなる。鎧、貫く」
「火縄式でも薄いのだったら充分貫通するぜ? 弾の大きさと火薬の量で威力が決まるらしいな。で?」
「もっといい鉄砲ができる。みんな新兵器量産。そうなるとホーデンエーネンに恨みをもっている国、煩わしいと思っている国、もしかしたらと勝利を目指して侵攻するかもしれない」
「ありうるな。でもまあ、ホーデンエーネンを亡ぼせそうなでかい国ってのは、東のウマヤーノとクボーニコフ、西じゃイナーヴァニアぐらいかと思えるんだが……ん?」
待てよ。一番大事な勢力を忘れていた。パラッツォ教団だ。イナーヴァニアの過半を吸収し、サイゴーク南部に勢力を伸ばそうとしている今現在をもって最大の国である。
「あ……そういや……」
こんな報告を近衛騎士団と聖騎士団の両方から受けていた。パラッツォ教団にも鉄砲を備えた部隊ができているそうだ。敵兵の骸が握っていたのはイーガ産の『サーペンタイン』の他に、形がいびつで精度がまるでダメな模造品があったという。およそ50丁の『偽物』を押収した。
「鉄砲、パラッツォ教団も作り出しているようだな……」
イーガとエチウの仲が良いことを王は知っていた。イーガの北東の港町に戦乱から逃げて来たパラッツォ教徒の住宅地を作ったぐらいだ。イーガはかの諸島の天然資源を欲しがった。おっぱいがでかいエチウの女を捕まえて女奴隷として売ったり、自分の慰みものにしようとするばかりのどこかの蛮国と大違いだ。
「つまり、イーガで造ったマイヤの鉄砲を仕入れて鍛冶屋に作らせた、ってことがエチウ以外にも出て来るだろう、ってか?」
「そゆこと。私の危惧はやっぱり当たった。私賢い。ほめてほめて」
「チョーシこいてんじゃねえよ。しかし兄弟。とてもいいことに気が付いてくれた。正直言って俺もおもちゃぐらいにしか見て無かった。音がすげーとか弾丸が板を貫通しやがったぜ、とか喜んだりしたが、あんなもん使うんだったら魔道士が細工した自動弩弓のほうがよっぽどこええ。が……」
セイン王は去年戦死した近衛騎士団のカシバフェルト公の提言書を思い出した。いつの日か科学が魔法を凌駕した時、鉄砲という兵器はとんでもない凶悪な兵器として世を席巻するだろう、という一文から始まるものだ。
カシバフェルト公は鉄砲の可能性に着目していた。彼の死後、近衛騎士団は鉄砲の集団戦法を研究して実験的な鉄砲隊の編成を開始していた。
「そういや、鉄砲隊は弩弓部隊と似た要領で編成できるらしいな。近衛騎士団の連中、弩弓自慢を集めて『狙撃隊』とかいうのを作ってイキがってたぜ。聖騎士団の連中が言うには、相当やべえ戦功をあげたみたいだが」
狙撃隊。鉄砲の中でも特に出来がいいものを弩弓の名手らに持たせた。数は100も満たなかったが、敵将を撃ち殺した事もあったそうだ。もっとも、弩弓でもできる事ではあるのだが。
「そういうことですよ。陛下、マイヤに恐ろしいものを作らせちゃダメです。あいつにはしょうもない発明品やちんちんやおまんこを気持ちよくさせる道具を作らせるべきです。そもそも転生人というのは……」
世界を亡ぼしかねない知識を持っているかもしれない。おばを悪く言われてオルフレッドとコリアンナは気分を害した。特にコリアンナだ。おとうちゃん、マイヤちゃんにちんちんをしゃぶらせて喜んでいたくせにひどいことを言うなあ。
「あっ。そうだな。マイヤだ! あいつ、イーガの工房で山ほど鉄砲をこさえて諸外国に売り飛ばしていたんだっけな!」
ルッソの助言を聞いてしまったから、セインはその事に憤りを覚えてしまった。あいつこそ逆賊だ。さっさとトーリから引き離してイズヴァルトに押し付けてやらなきゃ。あんなあぶねえ女はあぶねえ野郎に押し付けるに限る!
「あれ? イズヴァルトさんとは愛想が尽きて別れたのじゃないのですか?」
「……こいつは秘密な。イーガの王様から聞いたんだが、マイヤのやつはあの時、魔法で心を操られていたらしい。マルティンのガキがあいつにぞっこんだったから魔法を解かなかったらしいんだが。今は違う」
イーガにとってマイヤはお役御免だ。マルティンにせがれをくれてやった。それから……。
「マイヤはもう子供が産めないらしい」
「なんだって!」
とうちゃん……。子供達が不安がった。どういうことなのだろう?
「子宮に巣くった病魔のせいで卵巣ってのを取っちまったそうだ。あいつはもうガキを産めねえ。しかしマルティンはあいつにまだぞっこんだ。戻すとマルティンが石女とばかりやることになる」
イーガにとってそれはよろしくない事である。マルティンには次々と子供を作って欲しい。事実、マルティンは既に妾を何人も押し付けられたという。いずれは正妻となりうる他国の姫を迎えるそうだ。
「そうなのか……」
「あいつはもうイーガに戻らなくていい。が、ホーデンエーネンでもイズヴァルトを振ったってことで国民の多くに嫌われるようになった。居場所はトーリの側だけだぜ」
「なら、イズヴァルトさんに引き取ってもらって……」
「それをトーリがやりたくねえってんだ」
マイヤが金のなる木だということもあるが、長く離れ離れになった肉親だからしばらくは一緒にいたい。しばらくというのは10年ぐらいだという。セインはトーリに急かされていた。悪いエルフにそそのかされたイズヴァルトさんをさっさとこの国に連れ戻してよ?
「それで、イズヴァルトさんは今どこに? カントニアですか?」
「いいや、出て行った。シマナミスタンだかチンゼーに行ったらしいな。エルフ達はおろか、ろくでもねえ年増ババアを同行させているらしい」
「ろくでもない? 何者ですか?」
問われたセインはため息をついた。イーガのマルティン王子の実の母親。エレクトラ=ガモーコヴィッツという。
「とんでもない美人っていう噂なんだが、それ以上にうさんくせえことをやっているっていう話があるらしい。ついでに、このホーデンエーネンじゃ何件か起きた貴族の暗殺事件に関わっているっていう話があるんだよ」
「うおおおお、トーリ!」
昼間だというのに、ベッドを激しくぎしつかせて喘ぐトーリの上に乗ったセインは狂おしく腰を振る。
「お、おうさま~♡」
セイン王の狂い切ったピストンにトーリはご満悦だった。明日まで蟹股で歩くハメになるだろうが、セイン王の溜まりに溜まった生殖欲を広げた脚で受け止める。
「うおおおおおお!」
「あああああああ♡」
二人の息をぴったりだった。閨を続けて身体の相性というのも良いことがわかっていた。セインはトーリにとっていわばおじ、である。血が近いのだ。ゆえに身体の構造も。
「すっ、すっ、すいついてくるぅ!」
セインはどっぷりとトーリの中で放った。今日3度目の膣内射精だ。陰茎は狂おしく硬くなったままだったのでまた腰を振り始めた。そこに国王の老いた侍従が飛び込んできた。
「陛下、いつまでなさるおつもりですか! もうそろそろでアジール公との会合のお時間ですぞ!」
「え、そんな時間かあ……わかった。ルッソをこっちに連れて来い。嫁さんの腹の中で、どっちの子胤が孕ませるか競争しようぜと伝えてくれ!」
「御戯れも大概になされい! さっさと支度を整えてアジール公とお顔合わせを!」
「……わかったよ、じい」
この老侍従は幼い頃のセインの守り役だった。生ケツを思い切りよく引っぱたかれてセインは渋々服を着た。
トーリとの子造りの邪魔をされた形であるが、この時セインは廷臣や武将らが妾にと選んだ女達にたくさん子を産ませていた。10人以上もだ北部諸侯の中には娘をセインに差し出して『お手付き』にした者が何人かいた。
正妻はまだいないがセインは跡継ぎに困るということは今の時点では無かった。産まれた赤ん坊の中には男児もいたからだ。しかし宮廷ではトーリとの間の子が望まれた。他の妾達に子を産ませるセインと間男を咥え込み続けるトーリにとって避けて通れぬ仕事であった。
ルッソは書院で待っていた。今日はオルフレッドと上の娘のコリアンナと一緒だ。
「よう、兄弟。オルフレッドとご令嬢と一緒に来たのか」
セインが気さくに呼び掛けた。セインはルッソに身分を問わない国王の友人として認めた者だ。ずけずけと遠慮なくものを言えることを赦している。そもそもがセインは身分がどうのとか考えるのが苦手な男だ。
「陛下。お久しぶりでございます」
ルッソが深々と頭をさげた。友人と認められたからといって国王の前である。コリアンナも見様見真似でスカートをつまんでお辞儀をした。オルフレッドは王族として認知されているから軽く頭を下げただけだ。
「直訴状を見せてみろ。ま、トーリの使いからどんな概要なのかを聞いたけどな。どれどれ……」
概要はこうだった。諸外国を不安にさせ、ホーデンエーネンを将来的に苦しめるだろう新兵器の輸出をアジールの港からは認めない。いや、できるのであれば王国とイーガだけに出回る道具のままにさせたい。
「特にマイヤがこちらに戻ってから設計した新式の鉄砲はもってのほかである。火薬と弾を入れて魔法の火打ちでポン、と出す代物は画期的な兵器となるだろう。似たような話をマイヤが教えてくれた。異世界では鉄砲を使って最強の騎馬武者軍団を倒したノッブ=ナーガという武将がいたという。鉄砲が発達すれば騎士の肩身が狭くなるだろう。そのことを考えても鉄砲を発展させるのはよろしくない……とかずらずら書いているな」
もうちょっと短くまとめろよ。大事なところだけかいつまんで書け。セインは舌打ちしながらルッソに呼び掛けた。セインは字こそかけるが本を読むのは苦手なのだ。兵法書ぐらいしか興味が無かった。
ルッソはたどたどしい声で言いはじめた。
「てっぽう、海外に出る。サイゴークとカントニア、ドワーフとエルフがいる」
「そうだな。確かにいるよな」
「あいつら、鍛冶や改良がとても得意。特にドワーフ、冶金技術がすごい。もっといいものをつくる。殺傷力がすごくなる。鎧、貫く」
「火縄式でも薄いのだったら充分貫通するぜ? 弾の大きさと火薬の量で威力が決まるらしいな。で?」
「もっといい鉄砲ができる。みんな新兵器量産。そうなるとホーデンエーネンに恨みをもっている国、煩わしいと思っている国、もしかしたらと勝利を目指して侵攻するかもしれない」
「ありうるな。でもまあ、ホーデンエーネンを亡ぼせそうなでかい国ってのは、東のウマヤーノとクボーニコフ、西じゃイナーヴァニアぐらいかと思えるんだが……ん?」
待てよ。一番大事な勢力を忘れていた。パラッツォ教団だ。イナーヴァニアの過半を吸収し、サイゴーク南部に勢力を伸ばそうとしている今現在をもって最大の国である。
「あ……そういや……」
こんな報告を近衛騎士団と聖騎士団の両方から受けていた。パラッツォ教団にも鉄砲を備えた部隊ができているそうだ。敵兵の骸が握っていたのはイーガ産の『サーペンタイン』の他に、形がいびつで精度がまるでダメな模造品があったという。およそ50丁の『偽物』を押収した。
「鉄砲、パラッツォ教団も作り出しているようだな……」
イーガとエチウの仲が良いことを王は知っていた。イーガの北東の港町に戦乱から逃げて来たパラッツォ教徒の住宅地を作ったぐらいだ。イーガはかの諸島の天然資源を欲しがった。おっぱいがでかいエチウの女を捕まえて女奴隷として売ったり、自分の慰みものにしようとするばかりのどこかの蛮国と大違いだ。
「つまり、イーガで造ったマイヤの鉄砲を仕入れて鍛冶屋に作らせた、ってことがエチウ以外にも出て来るだろう、ってか?」
「そゆこと。私の危惧はやっぱり当たった。私賢い。ほめてほめて」
「チョーシこいてんじゃねえよ。しかし兄弟。とてもいいことに気が付いてくれた。正直言って俺もおもちゃぐらいにしか見て無かった。音がすげーとか弾丸が板を貫通しやがったぜ、とか喜んだりしたが、あんなもん使うんだったら魔道士が細工した自動弩弓のほうがよっぽどこええ。が……」
セイン王は去年戦死した近衛騎士団のカシバフェルト公の提言書を思い出した。いつの日か科学が魔法を凌駕した時、鉄砲という兵器はとんでもない凶悪な兵器として世を席巻するだろう、という一文から始まるものだ。
カシバフェルト公は鉄砲の可能性に着目していた。彼の死後、近衛騎士団は鉄砲の集団戦法を研究して実験的な鉄砲隊の編成を開始していた。
「そういや、鉄砲隊は弩弓部隊と似た要領で編成できるらしいな。近衛騎士団の連中、弩弓自慢を集めて『狙撃隊』とかいうのを作ってイキがってたぜ。聖騎士団の連中が言うには、相当やべえ戦功をあげたみたいだが」
狙撃隊。鉄砲の中でも特に出来がいいものを弩弓の名手らに持たせた。数は100も満たなかったが、敵将を撃ち殺した事もあったそうだ。もっとも、弩弓でもできる事ではあるのだが。
「そういうことですよ。陛下、マイヤに恐ろしいものを作らせちゃダメです。あいつにはしょうもない発明品やちんちんやおまんこを気持ちよくさせる道具を作らせるべきです。そもそも転生人というのは……」
世界を亡ぼしかねない知識を持っているかもしれない。おばを悪く言われてオルフレッドとコリアンナは気分を害した。特にコリアンナだ。おとうちゃん、マイヤちゃんにちんちんをしゃぶらせて喜んでいたくせにひどいことを言うなあ。
「あっ。そうだな。マイヤだ! あいつ、イーガの工房で山ほど鉄砲をこさえて諸外国に売り飛ばしていたんだっけな!」
ルッソの助言を聞いてしまったから、セインはその事に憤りを覚えてしまった。あいつこそ逆賊だ。さっさとトーリから引き離してイズヴァルトに押し付けてやらなきゃ。あんなあぶねえ女はあぶねえ野郎に押し付けるに限る!
「あれ? イズヴァルトさんとは愛想が尽きて別れたのじゃないのですか?」
「……こいつは秘密な。イーガの王様から聞いたんだが、マイヤのやつはあの時、魔法で心を操られていたらしい。マルティンのガキがあいつにぞっこんだったから魔法を解かなかったらしいんだが。今は違う」
イーガにとってマイヤはお役御免だ。マルティンにせがれをくれてやった。それから……。
「マイヤはもう子供が産めないらしい」
「なんだって!」
とうちゃん……。子供達が不安がった。どういうことなのだろう?
「子宮に巣くった病魔のせいで卵巣ってのを取っちまったそうだ。あいつはもうガキを産めねえ。しかしマルティンはあいつにまだぞっこんだ。戻すとマルティンが石女とばかりやることになる」
イーガにとってそれはよろしくない事である。マルティンには次々と子供を作って欲しい。事実、マルティンは既に妾を何人も押し付けられたという。いずれは正妻となりうる他国の姫を迎えるそうだ。
「そうなのか……」
「あいつはもうイーガに戻らなくていい。が、ホーデンエーネンでもイズヴァルトを振ったってことで国民の多くに嫌われるようになった。居場所はトーリの側だけだぜ」
「なら、イズヴァルトさんに引き取ってもらって……」
「それをトーリがやりたくねえってんだ」
マイヤが金のなる木だということもあるが、長く離れ離れになった肉親だからしばらくは一緒にいたい。しばらくというのは10年ぐらいだという。セインはトーリに急かされていた。悪いエルフにそそのかされたイズヴァルトさんをさっさとこの国に連れ戻してよ?
「それで、イズヴァルトさんは今どこに? カントニアですか?」
「いいや、出て行った。シマナミスタンだかチンゼーに行ったらしいな。エルフ達はおろか、ろくでもねえ年増ババアを同行させているらしい」
「ろくでもない? 何者ですか?」
問われたセインはため息をついた。イーガのマルティン王子の実の母親。エレクトラ=ガモーコヴィッツという。
「とんでもない美人っていう噂なんだが、それ以上にうさんくせえことをやっているっていう話があるらしい。ついでに、このホーデンエーネンじゃ何件か起きた貴族の暗殺事件に関わっているっていう話があるんだよ」
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