聖騎士イズヴァルトの伝説 外伝 『女王の末裔たち』

CHACOとJAGURA

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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』

16 やはり、鉄砲を

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 マイヤは手始めに便利な生活用品を作らせる事に着手した。振動してマッサージをしてくれる棒。身体にあてる部分の表面を、特殊な樹脂を用いてふにふににさせている。
 
 肩こりやむくんだふくらはぎに当てる用途が主だが、女達の間では股間にあてて「おっ♥ おっ♥ おっ♥ おっ♥ おおっ♥」とよがる使い方で用いられていた。
 
 イーガの工房でも5番目に売れていたものだ。これだけ魔法技術が発達した世の中に未だ発明されていなかったのがマイヤにとって不可解な事だが、この世界の按摩師と手マンの技術が前世の世界の者達よりも優れていると思って考えないことにした。
 
 頭脳明晰で記憶力の良いマイヤは、イーガで造ったものの設計図や材料、工程や使用する術式をしっかりと頭に叩き込んでいた。他の製品のもである。彼女は吸精行為にばかりかまけているが、こういうところではやはり『秀才』であった。
 
 その抜群の記憶力をもとに、念話魔法が使える姉や侍女に図面や工程表を書かせた。トーリはそもそも頭がいいし机仕事は得意だ。領地内の築城や砦の縄張り決めもしたことがあるから図面づくりはお手の物だった。
 
 侍女らもサキュバスが化けたものである。彼女達はおちんぽから精液をいただくだけではなかったのである。そうしてマニュアルを完成させ、魔道士や職人らに渡した。
 
 試作品は半月のうちにできた。しかしその出来はマイヤを満足させるには至らなかった。説明書通りに作れば小刻みに続けて震えるはずなのだが、できたものはどががががっ、と激しく振動するだけだった。
 
「うーん。やさしさが足りないつくりだなあ」
 
 マッサージ棒を右肩にあててもらいながらマイヤはため息をついた。魔道士の能力はイーガに劣るが、この魔道具はそんなに難しい魔法を使うわけではない。職人の技量も合格点のはずだ。
 
 しかし出来上がったものの動き方はよろしくない。ふにふになはずのあてがう部分は硬かった。これはもう一つの要素、会陰にあてて自慰をするという用途にとって好ましくない。
 
「おまんこのうねうねとしたところにぴたっ、とくっついてぶるぶるぶる、と震えるからこそ気持ちよさが増すのに。こんな硬いんじゃ……」
「そんなものなのかしら? 私には想像がつかないけど」
「トーリ。じゃあ試してみてよ」
 
 この部屋にはマイヤとトーリ以外は1人の侍女しかいない。言われたトーリはスカートをめくって大股になってしゃがみ込むと、大きく開いたヴァギナに震える棒をあてがってみた。とてつもない衝撃が奔った。
 
「おっ♡ おっ♡ おっ♡ おっ♡ おっ♡ おっ♡ お゛お゛っ♡」
 
 なんだこれは。手マンなんかより全然気持ちいいわ。震えるそれをクリトリスの周囲に近づけると、白目をむいて「お゛お゛っ♡」と悶えてしまった。開いた陰門からつゆを垂らし、尻をくねらせてしまう。
 
「しゅ、しゅごい♡ こんな便利な道具があるなんて。お゛お゛っ♡」
「トーリはイキやすいから満足できるんだよ。でもイーガで作ったものは本当に良かったんだから」
「そ、そうなの♡ ……お゛お゛っ♡」
 
 あまりにもきつい快楽の為にみっともない顔になってしまう。トーリは会陰から子宮にかけて大きくうねる感覚を覚えて失禁してしまった。じょぼぼぼ、と床の上におしっこがこぼれ出るとあたりに甘い匂いが漂った。
 
(トーリのおしっこ、ネクターみたいなにおいなんだけど病気なのかな?)
 
 マイヤは疑問に思うのだが、これはトーリの『先祖返り』がかなり進行しているという証拠だ。サキュバスのおしっこは甘い桃ジュースや、砂糖の入った清涼飲料水のようなにおいを放つ。マイヤもまた、体調がよほどひどくないとおしっこはアンモニアくさくならなかった。
 
「は、うううう~♡」
 
 深い絶頂のせいでトーリは疲れてしまった。尻をついてへたってしまう。しかし震え続ける棒の先はクリトリスとその周囲を刺激し続けていた。
 
「く、くせになっちゃいそう♡」
「あんまりやりすぎるのはよくないよ、トーリ。さもないとおまんこなめなめで気持ちよくなれない身体になっちゃうよ?」
「うへええ♡ だいじょうぶよ♡ 私のあそこはよわよわざ~こそのものだし♡」
 
 どんな粗チンでも気持ちよくなってしまうのがサキュバスの性器だ。その中でも最も感じやすくてはまりやすい、つまりは子づくりをしょっちゅうしたがる様な体質を持つ先祖の血を、トーリとマイヤは引いていた。
 
 こんな魔道具でもホーデンエーネン人は求めるだろうとトーリは思った。翌日、試作品を作った職人と魔道士達をオルガスムナの館に呼びつけて量産しろと命じた。魔道士のうち1人、彼らのまとめ役がけげんそうな顔をしてこう返した。
 
「トーリ様、何をおっしゃっているんです?」
「これはとても良い道具よ。あれ、名前は…これ、イーガではどんな名前で売られているのかしら、マイヤ?」
「『ブルワーカー』という商品名だよ」
「なんなのそれ?」
 
 まるで意味が分からない言葉だ。転生人が記した前世の世界の事物をまとめた書物に出てきそうな。妹が説明した。ぶるぶると震える動きをするので名付けたのだと。ワーカーというのは前世の世界でのある国の言葉で、労働者という意味あいらしい。
 
「ふーん。そうなのね……」
「最初はぷるぷると揺れるんでぷるぷるワーカーという名前を考えていたんだけど、そっちだとへまをしてばかりの部下に苛立たされる上司の絵を想像しちゃったからブルワーカーに変えたんだよ。トーリ的にはどっちがいいかな?」
「『揉みほぐし真心棒』でどうかしら? なに、マイヤ。みんなも何か言いたそうな顔をしているけど?」
 
 尋ねるトーリだったが彼らの心を読んでわかっていた。自分のネーミングセンスはどうも壊滅的なようだ。商品の名前とかに口を出すのはやめようと考えた。それよりも『ブルワーカー』の量産を拒む魔道士だ。
 
「貴方は何か意見があるようね。どうぞおっしゃって?」
「こほん。ではお言葉に甘えて」
 
 そもそもケチをつけるつもりだったがその魔道士が言った。

「天下の英才たるマイヤ様が手掛ける工房が、こんなしょうもないものを造るのはどうかと思うのですが?」
 
 こんな道具は、エルフやゴブリンの里に行けば似たようなものがある。自分はカントニアやムーツを旅してきたので存じている。

 特に、ミナッカミニア山岳にあるカタシナシュフ=エルフではほとんど多くの里で造られている類似品があり、震える部分の表面がぷにぷにとしていて細長く、穴の中に挿れられる優れものがある。『もちもちん棒』という名称だ。その名前を聞いてトーリが目を輝かせた。
 
「もちもちん棒……その道具、初耳ね♡」
「トーリ、なんでそんなにうれしそうにするのかな?」
「あら、いけないわ。でもどうして、貴方はそんな道具を存じているの?」

 トーリはその魔道士の顔を覗き込んでみた。この頃のその手の職業人としては珍しく、フードを深く被っていて背が高い。

 心を読めたので性別や性格はわかっていたが、人の心を読めると悟られないようにしたい。だからとぼけるのだ。

「ちょっと顔が見えないわ。これはアスカウ公の命として聞いてちょうだい。その被り物を脱いでくださいな?」

 魔道士は戸惑いながらフードをめくった。とても長い顔をしていて顎が突き出ている。長い顔だがしっかりした骨格であった。少し見えた歯並びも良かった。

 髪の毛は茶色で目つきは鋭く眉が濃い。マイヤは前世で似たような顔を見たことがあると思った。魔道士ではなく格闘家に類する人物だ。

(……猪木に似ているかも?)

 しかし違和感があった。顔がごついのではない。その顔を覆う皮膚がどうにも脂っぽさが無く、柔和に映える乳白色であったことだ。女だった。声を聞けば体格の割にはやや甲高いなと思ったが、この魔道士は女性だったのだ。

「魔道士リットフェンテルト。貴方の顔を初めて見るわ」

 女豪傑とも言えそうなごつい顔を赤く染めてうつむく女魔道士を見てトーリは微笑みを向けた。この人物の顔を確かめることが出来た、という満足感を得ただけで、容姿に対しての優越感は特になかった。自分もお腹がちょっとしわしわだから、そんな事を思えない。

「あまり見られたくなかったのですが、この顔を……」

 リットフェンテルトの声はか細かった。今更なんだい、と他の魔道士達がじろりと見ていた。職場の仲間は彼女の素顔を見ていたのである。

「この様な醜い顔をアスカウ=タカイチゲンシュタット公様にお見せするのは……」
「自虐はよして頂戴。魔道士リットフェンテルト、私が聞きたいのは貴方の経験と希望よ。『ブルワーカー』を作るだけでは満足できない。もっと他のものを作りたい。そういう事でいいのかしら?」


□ □ □ □ □


 女魔道士リットフェンテルト。背が高く、マイヤが前世の顎がごつい格闘家によく似ていると思ってしまった彼女は生粋のホーデンエーネン人女性だ。

 本名はエウレカ=リットフェンテルト。出身はオルガスムナ領で代々、領主お付きの魔道士の家系の生まれであった。

 この時47歳で初老の域だが、いろいろと経験を重ねていた。18歳で魔道士見習いとなり、22の歳で勉学のためにカントニアやエチウの亜人の里で魔法の修行を。35の手前でオルガスムナに戻ってきた。

 女としての役割も務めたそうだ。13の歳に結婚した夫との間に2人の娘を授け、滞在先の里にいる亜人らと間に庶子を儲けたりもした。

 夫は留学していた頃に亡くなっている。娘2人は母が亜人達と生殖を楽しんでいた最中にさっさと嫁いで孫を産んでいた。娘達も遺伝子を残せたのである。ちなみにだが長女の子孫にアネモネという女がいた。ギルバート=カツランダルクが忌み嫌った、ナントブルグ矯風会の首魁だ。

 そのエウレカ=リットフェンテルトだが、マイヤの工房で作るべきなのは鉄砲だとトーリに力説した。

「あの職人たちが言う通りです。ホーデンエーネンは武をもって尊しと為すいくさびと達の国。肩こりや陰核の周辺をほぐす棒などではなく、イーガで造られた魔法発火式の鉄砲こそ、皆が望む製品なのでございます!」
 
 マイヤが露骨に嫌な顔をした。それだったらたぶれっとぱっどにしてほしい。けれどもエウレカは鉄砲がいいと言い張った。鉄砲には理想がある。ロマンで夢見せてくれる。

「たぶれっとぱっどにはそんな『夢』が無いのです! 人類の進歩としていささか弱い感じがする!」
「でも、あれは狩りの道具以外にも人殺しの道具になるよ? あれをホーデンエーネンで生産するのは……」

 殺傷力に富んだ魔法が発達しているイーガであれば、鉄砲は軍隊に正式採用されず、『遊び道具』のままで終わるとマイヤは計算していた。しかし魔法があまり発達していないホーデンエーネンでは、違う用いられ方をするだろう。

「それです。人殺しの手段こそが、人類の進歩を実感できる道具なのですよ。実はワタクシ、鉄砲を3丁ほどイーガから取り寄せましたの」

 エウレカは武器の愛好家でもあった。若干だが武芸もできる。イーガで取り寄せた鉄砲……これは旧式の火縄銃と火打石銃であったが、その轟音と的を割った破壊力に惚れ込んだとエウレカは言った。

「鉄砲。あれこそがマイヤ様の名を不朽にする発明品です」
「あれ、前世にあったもののパクリだよ?」
「それでも構いません。設計図があったとしても発明したのが自分だと言い張ってそれが世に広まれば、マイヤ様が鉄砲の発明者とみんな思ってくれるはずです」
 
 しかも鉄砲というものが女性達に権力や権利を取り戻す、良い象徴になるだろうとエウレカは叫ぶ。職人らがうんざりとした表情をしていた。またはじまったよ、とぼやく声がもれた。

「弾を放つ筒。それは殿方のおちんぽの隠喩だとか世の人は言うかもしれません。しかしワタクシは違うかと思います」
「うーんとね、前世でも鉄砲は『ふろいと』という学者さんがおちんちんのたとえみたいなことを言ってたんだけどなあ」
「銃身を見てでしょう。私が言っているのは筒です。筒の穴」

 その穴からは人を殺す弾が飛び出す。男性のちんぽの先にある鈴口と例えられるだろうがそもそも男のちんぽの先はぱっくり空き続ける事は無い。だったら、女の膣口のほうがよほど似つかわしい。

 鉄砲の穴は女のぱっくり開いた穴、そのものだろう。そこから人殺しの卵子、つまりは弾丸が飛び出る。それで死ぬのは戦場では大概、女達を犯したり騙したりしてはらませる男たちばかりだ。

「女戦士も殺しますが、このホーデンエーネンではそんなに多くはおりません。弓矢に比べてみても鉄砲は女のおまんこにたとえ易い。ほら、男の神が矢に姿を変え、便所穴におまんこを丸出しにしてうんちをしていた女神様のあそこを突いて孕ませた、という異界の神話がございましたでしょう?」
「あれね。その世界で前世を生きていたからわかるよ。うん、弓矢だと確かにおちんちんのたとえにしかならないよね。けど鉄砲は、やっぱり……」

 しどろもどろになって拒むマイヤだったが、結局は押し切られてしまった。他の魔道士や職人も鉄砲を造りたかったからだ。

 こうして1週間後に鉄砲の試作品が出来上がった。魔法で火薬を発火させる最新式銃のコピーだ。こちらの造りの堅牢さと命中精度は、マイヤも驚くほどの出来栄えだった。
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