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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』

15 第二工房

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 トーリがオルガスムナ家を半ば吸収したのは、自分の手勢を増やす以外にも理由があった。マイヤに実力を発揮させる為にである。
 
 イーガにあるマイア=テクニカ。その工房をこのホーデンエーネンでも造らせる。本領であるアスカウ=タカイチゲンシュタットの税金では小さなものしか造れないが、オルガスムナ家の財布を握れば大きい工房を建てられる。職人も多く雇える。
 
 この時トーリは、日本の大名で言えば36万石クラスの領主の税収を得ていた。アスカウ=タカイチゲンシュタットが1万石ぐらいで国王から愛妾として加増さた5万石分。それからオルガスムナ家が30万石。あくまで計算上であるから実質はもっと少なかったが。
 
 それでもかなりの収入だ。トーリはオルガスムナに工房を建てようと考えた。あそこには鍛冶工房が沢山あるし城下が潤っているから魔道士もやって来る。
 
「マイヤ。宮廷からの裁可が降りたから下見に行くわよ」
 
 トーリは寝室のベッドの上ではだかんぼうになったアルトールに甘えられているマイヤに呼び掛けた。2人は行為の真っ最中だった。
 
「ふえええっ。と、トーリ。どこに?」
「貴方の新しい仕事場よ。というか金のなる木ね」
「お金のなる木?」
 
 トーリがオルガスムナの城下町に行くと告げるとアルトールは喜んだ。墓参りの日からずっと、彼はナントブルグにある館で暮していた。王城で暮らすマイヤと毎日会う為にである。
 
 マイア=テクニカの第二工房をホーデンエーネン国内に建てよう。トーリのその申し出にマイヤはあまり乗り気ではなかった。健康を害したというのもあったがホーデンエーネンではどんな製品が売れるのか想像できたからだ。
 
 とはいえやはり、そろそろ動きたいと彼女は切実に思っていた。眠ているかセックスしているだけではどこか物足りないと感じ始めていた。いや、ずっとセックスをし続けていても良いのだが、それはどうかと悩み出していたからだ。
 
 マイヤはトーリのオルガスムナ領行きに同行した。馬車ではなくアルトールが用意してくれたイーガ産の浮き板を用いた馬曳き輿でだ。通常の馬車の倍近くの大きさであるそれは、比較的大封の貴族か富豪しか持たぬ代物だ。
 
 そこまで大きいのは中に寝台を置いていたからだ。この輿は一種のキャンピングカーとも言えた。貴族、特に婦人たちの中でも宿屋やテントを張っての旅を嫌う者に好まれている。
 
 しっかりした木の屋根と壁が施されたその中で、トーリは一糸まとわぬ姿で屈強な男に組み敷かれていた。この旅について来てくれる護衛の兵士だ。
 
 総勢20名いる男達は、1時間ごとにかわりばんこでトーリの相手を務めていた。オルガスムナ領までの2日間、トーリはたくましい男達に抱かれて快楽の海を漂っていた。
 
「んひっ♥ あひい♥ ひいーっ!」
 
 この浮き輿は初めてである。綿を敷き詰めた寝台の上で盛んに尻をたわませながらトーリは相手の男の激しい挿入を堪能する。うおっ、と叫ぶ声とともに膣の中に精液が流れ込んでくると、トーリは次の男を呼んで来いと相手に命じた。行為が始まってから、きっかり1時間経過したからだ。
 
「本当に1時間で交代するのですね、トーリ様?」
「そうよ。みんな平等におちんちんを気持ちよくして欲しいからそうしているの」
 
 トーリの腹の中でまだ硬いままのペニスを収めたままだった護衛は、トーリの美しい顔を見て離れたくないと嘆いた。この男とは何度か寝ていたからどれだけしぶとい腰とペニスなのかをトーリはよく存じていた。
 
「1時間と言わず、2時間や3時間は……」
 
 懇願しながら腰を動かすとトーリはうめいてしまう。やだっ、おちんちんはまだまだ物欲しそうにしているわ……。

「ごめんなさいね。そういうわがままは聞いてあげられないの。この旅に同行してくれるお礼でもあるわけだし」
 
 お願いだからこの硬くておっきいのを抜いてくれないかしら。そうささやきながら心理操作の魔法をかけてやると男は彼女の裸身から離れて服を着始めた。
 
 それからしばらくして新しい男が入って来た。この人物もトーリの間男だ。精液が垂れたヴァギナを向けて誘うと覆いかぶさって来た。
 
 具足を外さず、ズボンのベルトを緩めて下腹だけを出す。トーリの頭1つ分背が高いこの男は、胴に着こんだ鎖甲をまとったまま挿入するのを好んでいた。彼女の柔膣の絶品具合をよく知っていた硬いものが入り込んできた。
 
「う……ん……!」
 
 無言のセックスが始まった。それでもトーリは楽しめた。彼女の陰裂の奥はサキュバスと同等、つまりはえぐられて掻き込まれるだけで絶頂を覚えてしまうからだ。
 
 トーリが20名の男をとっかえひっかえしている間、マイヤはアルトールとだけちゅっちゅをしていた。この5歳年下の少年がせがむからである。
 
「あひゅっ。はあっ。あああっ。アルトールくん、アルトールくん……」
 
 のしかかられ、唇をついばまれていたマイヤは少年の体温の熱さを感じていた。少年というよりはまだ子供だが。
 
 アルトールはマイヤの口元に自分のよだれをつけながら腰を振り続ける。ぐちゅぐちゅとした中で2人の兄より小さいものをめいいっぱいに。この少年のペニスは小さかったが、幼い頃の施術を受け女を孕ませるほど使い込んでいたから、大人のお盛ん男のもののミニチュアみたいな形状だった。
 
 陰裂が叩かれ、ぱちゅっ、ぱちゅっ、という音が響く。この輿は防音性能も良かった。外からはマイヤのよがる声が漏れて来なかった。
 
「あ……う……っ……」
 
 腹の奥からじわじわと来る波に襲われた。今日で何度目だっただろう。出発してからずっとアルトールとこうして交わっていた。食事はほとんど取らず、水と果物だけだった。
 
 アルトールもうめいた。そしてまた動き始める。彼は兄2人が夢中になったマイヤの身体をこれでもか、というぐらいに堪能していた。しかしマイヤはどうにも嫌なものを感じていた。
 
(ううーん……)
 
 しつこすぎやしないかなあ。アルトールは幼い陰嚢から製造した精液をありったけ自分に注いでくれる。しかしそれがどうにも度が過ぎているきらいがある。朝から晩まで休むこともしないし、勉学や武芸もやめてしまっている。将来の領主様なのに不安でならない。
 
「アルトールくん、すこし休憩しようよ?」
 
 アルトールは答えた。嫌だ、離れたくない。マイヤが再び諭すとしがみついてがしがしと腰を動かした。ちょっと痛い。快感は得られるが。
 
「おべんきょうは? 私が見てあげるから持ってきた本を読もうよ?」
「やだっ! やだっ!」
 
 アルトールは駄々をこねて止めなかった。またもアルトールは気持ちよさそうな深い溜息をついた。困ったものだとマイヤは思った。
 
 勉強をすすめたがこの少年は頭が良い部類ではない。本も声に出して読むだけで内容を理解している感じではなかった。メイスがスピキオと並ぶ賢い子だと褒めていたが、ダメな子の中のできるほう、というのが実情のようだ。
 
 アルトールはまたしつこく腰を動かし始めた。元気があってよいのだが、どうにも寿命を削る様な性交にしか思えなかった。しかしサミュエルも朝から晩までつきあってくれたが、あの男は無尽蔵と思しきふぐりの持ち主だったから別によかった。
 
 最近の態度もいただけない。アルトールはマイヤの前でわがままを言うようになった。随分と横柄になったとも思える。
 
(アルトールくん、私の恋人きどりのつもりなのかな。)
 
 膣の構造を気にすること無く、ぐいぐいぐい、と力強く腰をくねらせるセックスに辟易しつつも、マイヤは感じて喘いだ。彼女の膣も姉と同じく適応力がある有能な代物だったからだ。
 
 しかし離れないまま押さえつける様に挑むそのやり方は、どうにも思いやりに欠けるところがある気がしてならなかった。スキピオさんもそうだったなあ。サミュエルさんは激しかったけどもうちょっと優しかったよ。
 
「ま、マイヤさん……」
 
 アルトールがせわしなく息をはずませながら呼びかけて来た。
 
「どうしたの?」
「離れたくないなあって思ったのです。ずっと、こうしていたいですね?」
 
 マイヤは笑ってごまかした。アルトールにはオルガスムナ家の当主としての大事な仕事が待っている。子供を産める女性を妻にして後継者を産ませることだ。
 
 もう子供を産めない自分はあくまで、彼にとっての通過点だとマイヤは考えていた。自分はもうやり尽くしてしまった。とても不本意なあり方で。
 
 
□ □ □ □ □ 
 
 
 2日して、オルガスムナ城に入るとすぐにマイヤは風呂に入れられた。あまりにもくさかったからだ。アルトールの汗と精液が原因だった。彼女のあそこは1週間ぐらい置かないとチーズ臭くならない。
 
「じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ、うふふふふ~!」
 
 一緒に入ったトーリに身体を洗われてマイヤはご機嫌だった。トーリも牡汁くさくてかなわなかった。風呂で男達が染み込ませた牡汁のにおいと自分の内から精製された女臭とを洗い流すと、アルトールの家宰に食堂に案内された。
 
 そこにはこの領地の腕利きの職人や魔道士たちが待っていた。マイヤの工房の為に集められた者達だ。食事をしながら彼等と話すと、マイヤは自分の中に眠っていたやる気を引き出してしまった。多くの人に会うのが久しぶりだったせいもある。
 
 話はすぐに決まってしまった。工房を城下町の北に建てる。魔道士や職人の腕がどれだけかを聞いてマイヤは作るものを決めた。
 
「シャワーみたいに水がぴゅーっと出る、携帯型お尻洗浄機にしましょう!」
 
 携帯型お尻洗浄機、『たぶれっとぱっど』や鉄砲の次に売れているマイア=テクニカの主力製品だ。500ミリリットルほどの容量の水筒に水を出すヘッドがついてる魔法製品。
 
 安価でどこでもケツが洗える事で一般市民にも浸透していた。スイッチ1つで女性器を洗うビデモードにも変化する。少女達の間では勢いを強めてクリトリスを刺激するのに用いられていた。
 
 しかしこの提案に職人たちが異議を唱えた。そんなものでは男のロマンを満たせないぜ。糞がついた尻穴なぞ木べらか家畜の舌できれいにする彼等は、お尻の穴をほかの用途に使うマイヤの上品さは理解できなかった。
 
「武器だよ武器! 投石砲や鉄砲がつくりてえ!」
「マイヤ様、お願いしますよ。俺達に夢を見させてくだせえ!」
 
 やっぱりそうなってしまうのか。それでもマイヤは武器を作るのは良くないと返した。なんなら、包丁を使わなくても野菜や果物の皮がむける道具や、ちんちんをとっても大きくさせる吸引機とかあるから。どれもマイア=テクニカの商品でもある。
 
「つべこべうるせえなあ、おしゃぶり姫!」
 
 職人のうち1人が怒鳴った。禿げ頭を黄色い布で巻いた太った老人だった。
 
「イズヴァルトさんを捨てたくせにえらそうな!」
「す、すててなんかいないんだもん!」
 
 マイヤは涙目になった。イズヴァルトのことは忘れさせて。ぜんぜんあきらめていないんだもん、と思ってもいたけれど、今は仕事に集中したかった。
 
「イーガのおえらいさんの妾になって、いい暮らしをしたけどいじめられて逃げ帰った癖に!」
「に、逃げ帰ってなんかいないよ! そんな言いがかり初めてだよ!」
 
 イーガでは最初の3年間は踏んだり蹴ったりだったが、その後は赤ちゃんみたくちやほやされた。手足の無いだるま女あかちゃん、かあいいでちゅねえ。ばぶばぶぅ、と可愛がられたのに。
 
「イーガのみんなは約数名はクソだったけど、とてもやさしかったんだから!」
「うるせえや、イズヴァルトさんを捨てただけでてめえは万死に値する!」
「捨ててなんかいないんだもん! 私はイズヴァルトが戻ってきたらうんちとおしっこのおせわを毎日してもらうつもりなんだもん! イズヴァルトの座敷わんちゃんになる腹積もりなんだもん!」
 
 それを聞いてアルトールは青ざめた。そうはさせてはならない。マイヤさんはぼくのものだ。マイヤのみっともなくもかつての恋人に愛情をいまだ抱いている告白にも、その職人は信じられぬと笑ってつばを吐き捨てた。
 
「けっ! イズヴァルトさんを用済みだと言って捨てたやつなんかに手を貸すのはやっぱ取りやめだっ! このくそあま、ツラ見ただけで反吐が出る!」
 
 その職人と他数名が帰って行ってしまった。呆気にとられていたトーリに家宰がそっと告げた。あの親父は領内一の職人ですよ。彼までに心理掌握の魔法をかけていなかった自分を彼女は恥じた。
 
「ふえっ。ふえええん……」
 
 思い切り罵られてしまった為にマイヤは泣いてしまった。アルトールがあの職人の首を切ると息をまくが、家来たちにたしなめられた。トーリが妹を諭した
 
「みんながみんな、仲良くなれると思っちゃだめよ、マイヤ」
「ふえええん、慰め方、ちょっと違うんじゃない?」
「違うのは確かよ。でも、そう思ったほうが手っ取り早いわ」
 
 本当は違った。下々の間でマイヤは、とても深く恨まれていたのだ。『イズヴァルトにくっつくおしゃぶり姫』だったのに、それを振ってイーガの王子のお妾になるとは。
 
 ホーデンエーネンの王族だとわかっても、人々はマイヤを恨んだ。とっても強くてやさしい騎士であるイズヴァルトの手綱を引っ張るのがお前の勤めなんじゃないかと皆が心の中でつっこんでいた。
 
 いやむしろ、お姫様なのだからイズヴァルトを養えよ。天下無双のイズヴァルトを王国を守らせろ。休戦と開戦を繰り返すパラッツォ教団とのぐだぐだで長ったらしい戦いや、度々起こる地方反乱がうまく収まらないのを、イズヴァルトがいないからだと人々は思っていた。だからマイヤを憎んだ。
 
 この場にいた他の魔道士や職人たちは黙っていたが、出ていった職人たちと同じ気持ちだった。手足が無いという異様な身体に嫌悪感もあったし、果たしてこの娘の下で満足に働けるのかと疑問に思っていた。
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