聖騎士イズヴァルトの伝説 外伝 『女王の末裔たち』

CHACOとJAGURA

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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』

14 取り込み

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「はあっ……はあっ……」
 
 朝目覚めていたら既に喘いでいた。昨晩までずっと寝床にいたサミュエルがうつ伏せになって寝ている彼女の背後から抱き着いていた。
 
 20センチにも及ぶペニスが、昨夜の分が残っているその中で盛んに動いている。ううう、ううううとサミュエルは奇声をあげて喜んでいた。
 
「おちんちんきもちいい……きもちいいよう……」
 
 目覚めた瞬間にわっと広がった快感と下腹の弛緩の感覚。眠っているうちに絶頂を果たしたようだ。奥をねっとりと突かれながら彼女は頭の中が一瞬だけ真っ白になり、長く強い下半身の悦に身悶えした。
 
 サミュエル=オルガスムナがやって来てから2か月が経っていた。常にマイヤの部屋で彼女と狂ったように交わっている。この間に父親や兄弟はやって来なかった。
 
 この館でのマイヤの部屋は、すっかりサミュエルの精液と身体のにおいに染められてしまっていた。精力が有り余りがちな男特有の酸っぱいにおい。でもそれが彼女の欲情に火をつけた。抑えきれなかった。
 
「おうううう、ううううう!」
 
 サミュエルが彼女をがっちりと抱えて放精した。どくっ。どくっ。膣内射精を受けて淫魔の先祖の血が喜んだ。マイヤも一緒になって喜ぶとサミュエルに身体の向きを返させてと頼んだ。
 
 まだ硬いペニスが引き抜かれた。サミュエルは手足の無い、まるで人肌のぬいぐるみみたいな体つきのマイヤを仰向けにし、尻を持ち上げさせる。肛門が上を向いた。盛んに収縮していた。
 
 太い指で皺に触れるとマイヤは声をあげた。精液まみれの陰裂がうごめいた。ペニスの先端を窄まりの奥へと進ませる。
 
「あっちゅい……おちり、あっちゅい……」
 
 マイヤは肛門とその奥で深い悦を受け始めた。普通の女の十何倍も悦を覚えやすい膣の中よりも狂おしいものだ。小さい頃からイズヴァルトやその親友のベートーベンがちんぽを楽しませてもらった。馴染ませてくれた。
 
 彼女のアナルと直腸もまた吸精器官だ。いや、彼女特有だが『液状座薬おちゅーしゃ』のほうが、精液に含まれる栄養をより多く吸収することが出来た。
 
 ヴァギナはきつくて中に入りきらないという事で、小さい頃からイズヴァルト精液を吸って来た。滋養に富む彼の精液とそれに含まれるホルモン物質は彼女の第二次性徴を早め、でかでかおっぱいにさせた。8歳でブラジャーみたいなものが欲しくなるほどに育ってしまったのだ。
 
 その育まれたおっぱいを盛んに揺らしながらマイヤは喘いだ。サミュエルが精液を放った。尻穴がふにゃりとなりお腹がぐるぐるとなった。便意だ。
 
「ふえええん……」
 
 せっかく作りたての良いものをいただいたのに排泄するとは。悲しい事だ。マイヤはサミュエルにうんち、と呼びかけて尻を振った。サミュエルは彼女を抱き上げてベッドの下に置いてあった腰掛けに座らせた。
 
 座るところが前かがみになるように湾曲していて、間が大きく広がっている。その中に水を入れた桶が置かれていた。
 
 マイヤをそこに座らせるとサミュエルは彼女の背後に回った。マイヤが気の抜けた声を放つと同時に尻穴が大きく膨らみ、ぐじゅぐじゅとした便が桶の中に落とし込まれていった。
 
 アナルから大便があらかた出ていった。茶色く染まったそれにサミュエルは鼻を近づけ、においを嗅いだ。
 
 ペニスが激しく怒張する。お尻を拭いてとお願いしようとしたマイヤは、急に抱き着かれて慌てふためいた。
 
「さ、サミュエルさん、おしりふいてない!」
「あうう、あうううう!」
「だめ、きちゃないときにおちんちんの先っちょ当てないで! ふえ、ふえーん!」
 
 サミュエルは糞だらけのマイヤの肛門の奥に突っ込んでしまった。さっきよりもほぐれていて滑りがいい。マイヤもより深く感じられるようになったアナルからの悦で言葉を失ってしまった。
 
「あっ、ひっ、はひいっ、いひいいい……」
 
 気に必要などもうない。マイヤは喜びを感じる機械となった。サミュエルのペニスを糞まみれにする肛門性交は、侍女がドアをノックする30分後まで続いた。
 
 
□ □ □ □ □
 
 
 年が明け、ホーデンエーネン王国暦350年の1月。サミュエルは父のメイスが送った使いとともに館を去った。
 
 メイスがやって来れなかったのは病床にあったからだ。彼の病気はかなり進行していた。シマナミスタンからやって来たエルフの医者を呼んだが、病魔が巣くい過ぎて手遅れだと診断されたのもこの頃だった。
 
 館でのサミュエルはマイヤの性生活にとっての良きパートナーであり友人でもあった。恋人と呼ぶに値しないのは、性欲由来の友情が2人の間に芽生えていたからである。
 
 とはいえ、父の命令でサミュエルは領地に戻らなければならなかった。家督を継ぐ為にである。でもこの男はあくまで繋ぎだ。13歳の時に侍女に産ませた庶長子が実質的な後継者だった。
 
 親しくなりいつも身体をつなぎ合わせていたサミュエルがいなくなったのは、マイヤにとって寂しい限りである。1週間、彼女は窓から冬の空を見上げながら寂しく過ごした。あてがわれた男は何人かいたが、サミュエルのちんぽの堅さ太さと精液の質には到底かなわなかった。
 
 けれどもサミュエルが去ってから8日目の朝、マイヤは突然の知らせをトーリから聞かされて驚いた。
 
「ど、どうしてなの?」
 
 サミュエルが水難事故に遭い死んだという。領地に帰ってすぐ、お気に入りの侍女と船遊びをしていた時にだ。
 
 彼は家来と侍女と共に釣り船に乗った。やや大きな川船だった。その船の上で釣りをせず、侍女と時を忘れる様なセックスに興じていた。その時に船が転覆して、冷たい川の水の中で一緒に溺れ死んだという。
 
「そ、そんなことが……トーリ、今すぐ弔問に行きましょうよ?」
「それは、できないわ」
「どうして?」
 
 理由を尋ねた。大公が葬儀を行わず、弔問も断るらしいとトーリは答えた。
 
「メイスさんのご一家とは仲が良かったんでしょ? どうして会う事ができないの?」
「マイヤ、サミュエルさんはそれだけあのおうちでは困り者だったという事なのよ」
「困り者って……ひどい言い方じゃない!」
 
 言葉は使えないし本能の赴くままに動くサミュエルだったが、サミュエルはとても優しかった。純朴そうに笑う顔をしていたいい人だったのに。マイヤはカツランダルク統の当主としてそれは無いんじゃないのかと抗弁した。
 
「公式の葬儀が無くたってお悔やみを言いにお伺いするべきだよ、トーリ」
「わかったわ。メイスさんに手紙を書くから」
 
 トーリはマイヤの部屋から出た。そこにニンゲンの侍女に化けたカミラが呼びかけて来た。
 
「カミラ、しばらくしたら使いを私の部屋に連れて来て」
「マイヤ様のお願いをお聞き届けなさるのですか?」
「手紙を書いて出す、とは言ったわ」
 
 トーリは小さな声でささやく。でも届けさせるとは言っていない。その前に始末しろとカミラに告げた。
 
「とうの昔に、そちらの手筈も整えております」
「ソゴプールのエルフは、こういう仕事は得意な方かしら?」
「ゾウズジャヤに比べれば質が落ちるかと。しかしながら、ナントブルグの貴族らが抱えている連中よりも数倍は、出来が良いですよ」
 
 しかし乱用はなさいますな。そう注意を促してカミラは去った。
 
 その日の夜にオルガスムナ家の館で火事が起きた。当主メイスとサミュエルの子を含む、オルガスムナ家の主だった人物が焼死した。
 
 数日後、今度はナントブルグの別宅で暮していたスピキオ=オルガスムナが街中でならずものに刺されて死ぬという事件が起きた。
 
 トーリはこの時になってカツランダルク本家としての権限を用いた。オルガスムナ家の当主として幼いアルトールを指名したのだ。
 
 
□ □ □ □ □
 
 
(どうしてこうなってしまったんだろう……)
 
 父のメイスと兄のサミュエル、それと同母兄のスピキオが眠る墓の前でアルトールは嘆いていた。自分がオルガスムナ家の当主になってしまった。
 
 スピキオの死から1か月が経っていた。あれよあれよという内に叔父達はオルガスムナ領から遠く離れた土地に追い出され、自分だけがこの領地にいるたった1人の男児になってしまった。
 
 そうなったのはトーリが宮廷に献言したからだ。館に王からの使者がやって来て何もかもが決まってしまった。叔父らのうち1人はこの命令に抗い、自分の館がある村に戻って挙兵しようとしたが瞬く間に片づけられてしまった。
 
 家督を継げる男児はアルトールしかいなかった。弟たち、あるいは2人の兄や自分が侍女や娼婦に産ませた子供にも男の子はいたが、生みの母親ごとトーリによってタカイチゲンシュタットにある彼女の支城に連れて行かれてしまった。
 
 穏やかな環境で子供達をのびのびと育てたい、という事で。アルトールもそれを信じていた。これが実質的には人質だと理解できていなかった。
 
「……」
 
 墓の前で手を合わせて祈っているが、彼は不安と同じぐらいに期待を覚えていた。これで自分がオルガスムナ家の領主様だ。勇気を出して邪魔なたんこぶを2つ外した甲斐があった。
 
(兄さんたち、新しい世界で達者に暮らしてくれ。)
 
 どういうことか。スピキオの提案で兄弟は暗殺者を雇った。兄が懇意にしている娼館のあるじが教えてくれた。なかなかに仕事を受けてくれないという気難しいが優れた亜人らしいと聞いた。
 
 しかし通常料金と提示された金額の3倍を支払った事で話がすんなりといった。兄が亡き母の宝石や美術品を売り払ったから工面できた。
 
 サミュエルはすんなりと死んでくれた。船遊び中の転覆事故と装われてだ。スピキオとアルトールが憎んだのはマイヤの事でだった。
 
 スピキオは『だるま姫』のかわいらしさと身体と愛嬌にすっかり恋してしまっていた。トーリの館にひんぱんに使いをやって、サミュエルがマイヤを独占している事を知った。ちんぽだけが取柄のうすのろのくせに。
 
 オルガスムナ家にはスピキオを次の当主にと推す家臣らもいたから、サミュエルの死はスピキオにとっても好都合だった。長兄の事故死の後に今度は父が火事で焼け死んだ。これには兄弟は関わっていない。
 
 サミュエルが死んだ知らせを受けてスピキオは大はしゃぎした。これでマイヤ様にもっとお近づきになれるとアルトールの前で言った。それがこの少年に殺意を覚えさせた。あの日、マイヤ様を僕に貸してくれなかった兄が憎い。
 
 娼館に向かう兄が暴漢に刺されたのは、アルトールが絡んでいた。兄を殺したのは刺客だ。こちらは銀貨5枚で事が為せた。手を汚さずに人を殺すのはとても簡単な事なのだなと思った。マイヤの柔肌を独り占めにした憎い奴がもう1人減った。
 
 アルトールは祈りを終えた。それから後ろを振り返る。車いすに乗った喪服のマイヤと、それを押すトーリが立っていた。
 
「アルトールさん……」
 
 マイヤはひどく心配そうに彼をうかがっていた。あまりにも心もとなさそうに背中を丸めていたからだ。
 
 彼はマイヤの元に駆け寄ってひざまづいた。
 
「心配なさらないでください。僕は1人でもやっていけます」
「無理しなくてもいいんだよ?」
「いえ、無理なんかしていません」
 
 心の中では期待を抱いていた。この愛くるしいだるま姫を娶るまでのし上がりたい。マイヤは聖騎士イズヴァルトの元恋人であり、イーガの王子マルティンの妾だったという事でも、一部の男達の間に羨望を抱かれていた。彼女を妻にするのはある種の名誉だとも言われていたぐらいだ。
 
「でも誰かが近くにいてくれたら、きっともっと頑張れると思いますよ」
 
 アルトールはマイヤの眼をまっすぐに見つめた。トーリは目を細めてそれを眺める。この少年はマイヤにぞっこんだという事か。
 
 アルトールはトーリの後見を得て、マイヤの側に置かれる事となった。トーリの養子としてである。ホーデンエーネン王国暦350年2月の事である。
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