聖騎士イズヴァルトの伝説 外伝 『女王の末裔たち』

CHACOとJAGURA

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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』

09 女王の妹

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(どうして私はここにいるの?)

 目覚めればホーデンエーネン王宮の謁見室だった。しかも服を着せられている。まとっていたのは豊乳を際立たせる胸開きのドレス。マイヤは車椅子に座らされていた。

 目の前には随分とやつれて荒っぽさが抜けきっているセイン王と、何人も子供を産んだのに腰回りがちょっと太くなっただけであの頃のまんまに見えるトーリがいた。

 いいや。トーリに関しては違う。段違いに艶っぽくなった。清く楚々とした雰囲気と容貌からにじみ出る、貪婪な性欲臭というものを嗅ぎ取った。『おちんぽ大好き淫乱少女』であるマイヤだからわかる。

「マイヤ、おかえりなさい」

 トーリが駆け出してマイヤに抱きついた。こんな身体になって、と涙を流す。香水に混じっていた姉の体臭を嗅ぎ取った。ひどく甘ったるい。まるで熟しすぎた南国の果実の様だ。

(でもこのにおいは……)

 サキュバスのにおいによく似ている。特にあそこから漂う匂いと同質。いや、あれよりも数倍に良い香りと思えた。いつまでも嗅ぎたくなる芳香だった。

「トーリ、私はどうしてここに?」
「気にしないでいいのよ。貴方はこれから私と一緒に暮らすのよ」
「トーリと? 私は、私には……」

 もう家族がいる。マルティン王子と息子のフェアディナントが。それから自分を姉の様に慕ってくれるマレーネもいる。

 それからシモの世話係のオットーや、いろいろと面倒を見てくれるクララもだ。そして何よりも、イズヴァルトに捨てられた悲しみを忘れさせてくれる、マイア=テクニカがあった。

「トーリ、私はイーガに戻らないといけないの」
「マイヤ、つらいことがあったのに戻りたいの?」
「うん。私にはあの国が必要なのよ。それから故郷でもある。戻らなければならない。あそこで暮らし続けて、いつの日にか」

 イズヴァルトが迎えに来るのを待っている。そう言おうとした時に頭の奥に強い痛みとしびれを覚えて目を閉じた。

(い、痛い……)

 頭痛は段々と重くなり思考を妨げていく。イーガに戻りたい。戻らなければ。あそこには私と共に生きてくれる人たちがいる。

(それは違う。貴方の妄想よ。このホーデンエーネンにこそ貴方を必要とする、愛してくれる人達がいるのよ。)

 いいや違う。私はイーガに戻らなくちゃ。今、ホーデンエーネンに戻っても何も出来ない。フェアディナンドを育ててマイア=テクニカで夢を叶える準備をしたい。

(夢を叶えるのはここでできるわ、マイヤ。むしろこの国に貴方の夢があったじゃない?)

 夢。ああそうだ。マイヤは抱きしめてくれているトーリに幼い頃に語った夢を思い出した。この野蛮に近い王国に、学問の園の頂点を築く夢だ。総合大学を建てたい。

(マイヤ。私が貴方の夢を叶えさせてあげる。私を信じてついて来て。)

 頭の痛みがひいた。マイヤは目を開けた。トーリの顔が目の前にあった。妹の自分でもはっとなるような美貌だった。

 しかし記憶にあったトーリの瞳は紫色だ。でも今は紅い。その真ん中にうっすらと何かが描かれていた。
 
 三つ足の鳥だ。前世にあった熊野本宮の八咫烏にも似ていたが微妙に違う。翼が4つも6つもあるように見えた。いや、それは実際にトーリの瞳の中で羽ばたいていたのだ。
 
 それと顔。異様だった。その鳥には4つの眼があったのだ。それらがマイヤに向けて焦点を合わせた。
 
 途端、マイヤは胸のあたりが苦しくなり、強烈な悪寒を覚えた。それから全身の、血管という血管が熱くなった。魔族の末裔たる者の血が働きかけたのだ。頭の中で何者かが呼びかける声がした。
 
「逆らうな。抗うな。忠義を抱け……死してもなお、従え」
 
 トーリの口が少しだけ開いた。爽やかでもあり重苦しい甘さを漂わせる息が発せられ、マイヤの鼻孔を支配した。
 
「貴方と私の2人で、これから造っていくの」
 
 新しい世界を。争いを嫌い、平和を愛し、ありとあらゆる男に慈愛を注ぎ、全ての女達を導いたナントブルグの女王が夢見た理想郷。それをこのホーデンエーネンで築くのよ。
 
「うん……トーリ、私、ずっと側にいるから」
 
 無力なマイヤに抗う事は無理だった。
 
 
□ □ □ □ □
 
 
 マイヤを救ったのはカミラだった。彼女は部下とともに前もって船乗り達に近づき洗脳した。マイヤが危機一髪のところでケノービの家来達の行動を封じたのである。マイヤを犯させたのは身体が弱っている今の彼女には、回復の為にできるだけ多くの精液が必要だったからだ。
 
 ケノービの部下2人、ギードとピエロはトーリのアジトに連れて行かれた。領地・タカイチゲンシュタットの南に広がる森の中にあった。蔦でカモフラージュされていて肉眼ではなかなか見つけ出せない丸太小屋がそれだ。
 
 捕らえられてから3日。ギードとピエロは精力剤ばかりを飲まされてカミラの部下に貪られていた。縛り上げて寝台の上に寝かせた2人を、彼女達はかわりばんこにまたがって犯していた。
 
 魔法で食欲を失わされ、代わりに性欲ばかりを増幅させられたギードとピエロにとっては、この拉致はとても嬉しい出来事であった。
 
 淫魔達の肌は吸いつきぶりが良かった。その上に乳房と尻が大きく美形である。ねだる彼女達に彼等はありったけの精力を注ぎ込んだ。
 
 しつこいぐらいにくねって貪る舌と口でしゃぶられ、上に乗っかられては何度射精してもつながるのは終わらない。
 
 しかし悲しいかな。彼等の身体は着実に蝕まれていた。連れて行かれた時よりも頬はこけ、肌は張りを失っていた。
 
 落ちくぼんだ目をぎらつかせながら上に乗るサキュバスの内臓を押し上げる。たまらない。止まらない。2人は性交する機械と化していた。でもあと一週間もすれば、その動きは止まるだろう。

「うあ……うあああ……」
 
 サキュバスのうち1人にまたがられているギードはうめいていた。快楽のせいで思考が滞ってしまい、まともにしゃべることが出来なくなっていた。隣のベッドのピエロも同じくである。
 
「ああっ♥ もっともっと強くして♥」
 
 ギードの相手のサキュバスが尻をくねらせる。淫魔の魔法でペニスは射精しても固くなったままだ。秘薬で頭や筋肉にいく栄養を全て陰嚢に持っていかせている。死ぬまでこき使えるはずだ。
 
 カミラはこの2人を生かしておかぬと決めていた。彼女の部下もだ。白い裸体で精を、命を根こそぎ吸い出してやる。そう決めたサキュバス達は悪魔であった。
 
 白い太ももと尻が揺れ、乳房が弾んでいる。ピエロは相手のサキュバスの乳首にむしゃぶりついた。腰を動かしてペニスを歓喜に包ませながら女乳に甘える。
 
「うふっ♥ おちんちん、まだまだお元気ね♥」
「我慢しないでどんどん出していいのよ♥ さあ、気にせずびゅーっと出しちゃいなさい?」
 
 貫かれながらサキュバスたちは甘い声で彼等にささやく。すると彼等にかけた洗脳術式が括約筋を高ぶらせるのだ。我慢しない射精ありきの交合に牡の器官とその奥の管が喜ぶ。ピエロ達は盛んに腰を振り上げた。
 
「ああっ♥ ああっ♥」
「すっごく激しい! いいっ♥ だ、だめ、ワタシ、またいっちゃいそう!」
 
 乳白色の女体が揺れる。その重さと熱さ、柔らかさに性欲を極限まで引き出されたギードとピエロがペニスを力強く押し上げた。
 
 作りたての精液を淫魔達の子宮の中に撃ち込まれた。2人は痴呆老人の様によだれをたらしながら、おおっ、おおっ、とうめいた。サキュバスらは下腹の淫紋を輝かせた。絶頂にも至っていたが、ここで終わらなかった。
 
 耳元で再びささやきかける。アナタのとてもたくましいのがもっと欲しいの。射精を終えたばかりのペニスが硬直した。それをいいことに淫魔達は再び尻を揺らし始めた。
 
 この様子をカミラは部屋の入口で見守っていた。この分では1週間も持たないかもしれない。けれどもこのまま果て続けて死んでいいと思っていた。重要な情報をマイヤの身体に対する薄汚い絶賛とともに聞き取ったからだ。
 
(あの可愛いマイヤ様を、淫乱穴だるまなどと罵るなんて……)
 
 マイヤは船に乗り込んでから行われたレイプされている最中、荒々しい交合に感じて欲情してしまい、自分からねだり、男のものを咥えたりもしたという。
 
 『おしゃぶり姫』のそっくりな別人とだけ聞いていたのに、フェラチオはとんでもなく絶品だったとギードとピエロはべた褒めしていた。あと、あのふんわりでかでかおっぱいによるちんずりがたまらなかった。またやりてぇ。
 
 カミラはこの2人を、生かしておく価値は無いと思っていた。しかしこうして部下達と楽しませているのは、ちんぽを生やしていて精液が出るからである。つまりはそれだけの存在だ。死ぬならさっさと死ねばいい。
 
(そしてこの凡骨どもを遣わしたのが、あの裏切り者達の末裔というわけね……。)
 
 ギードとピエロの主君、ソーロー家の入り婿で当主のケノービ=ソーロー。つまらぬ策士だとカミラは記憶していた。トーリとマイヤが幼い頃、ハーフリングの刺客を送った事も覚えていた。襲撃者の首を送り届けて脅したのだが、こんなことを企むとは。
 
(さて、トーリ様にお伺いせねば。)
 
 この国にいる目の上のたんこぶをどう始末するかをこれから聞きたい。カミラとしてはすぐさま、あの男を闇討ちで滅ぼしたかった。
 
 
□ □ □ □ □
 
 
 目覚めた日の昼過ぎ、マイヤは車椅子に乗せられてトーリとともに王宮の中庭を散策していた。その最中に今のホーデンエーネンで何が起きているのかを詳しく聞いた。
 
 パラッツォ教団との戦いの指揮をとる近衛騎士団の専横が目立ち、北部諸侯の反感を喰らって協力を拒まれ、作戦に滞りが生じている。軍費も底をつきかけており、これ以上の作戦の続行は難しい。
 
 国内の民百姓も戦争が続いて疲弊している。アスカウ=タカイチゲンシュッタットでも徴兵逃れが現れた。宮廷ではこの話ばかり。イズヴァルトに戻って来て欲しいとみんなが嘆いている。
 
「イズヴァルトは、どうして出ていっちゃったの?」
 
 マイヤには理解できない。自分に嫌われるように仕向けてまで故国をとったのに。それから浮気相手のトーリが彼のきんたまを、ぎゅっとつかみ続けていたはずだろうに。
 
「自分がもうこの国には要らない、いる場所が無いと思ったからよ」
「何がなんでも絶対に残るべきだと思うんだけどなあ。イズヴァルトがいればみんなが安心するだろうし」
「そこまではわからない。私もルッソの心の内がわからないし……」
 
 ルッソには心読みの魔法が効かない。だから遠ざけることにした。廷臣らが勧める形の上での離縁を行った。何か起きた時に巻き添えになったり、自分の野望を阻まれるのを避けたかった。
 
 名ばかりだがアジール公にさせてもらい、見習いだが外交官の職に任じて貰っている。外交官としてのルッソは頼りないが人当たりの良さで評判がいいらしい。諸外国の地理や言葉を覚えるの早いそうだ。
 
「この秋は使節団としてムーツ大陸の南西部にあるムラカミヴィア王国あたりに滞在しているはずだわ」
「ルッソならうまくやれると思うよ? でも、ルッソみたいな良い旦那さんと別れるなんてよくないよ? セイン様もトーリとの赤ちゃんを欲しがっても、そこまで考えていなかったでしょうに?」
「そうね。けど、私はルッソにのびのびとしてもらいたいの。セイン陛下の男の子を産んだら、私はアスカウに戻るつもり。ルッソや子供達といつまでもあそこで暮そうと決めているの」
 
 半分は嘘だ。トーリの目的は現在のホーデンエーネン王家の打倒。それからオルフレッド、あるいはセインとの間の子を傀儡王として玉座に据え、アスカウで院政を敷くのだ。祖先が住んでいた館が取り壊されたナントブルグに、死ぬまで居座るつもりは無い。
 
 アスカウを自分の本拠と考えていたのは意趣返しのつもりだった。あの地こそホーデンエーネン一族創業の地である。ルッソの家の牧場には、あの一族の最初の城の跡が点在していた。
 
 それを成し遂げる為にマイヤを呼び戻した。彼女の知識と才能を使って富を築く。洗脳して収奪する方法ではなくそちらを取るのは、後の世の誹りを受けぬ為にであった。
 
(そしてカツランダルクの復讐は完成する。マイヤ、私の為に力を尽くしなさい。)
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