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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』
04 大きなあかちゃん
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マイヤは自宅の寝室で、オットーの口から医師の診断を聞いた。内臓がとても弱っている。特に胃が荒れている。今度の喀血はそのせいだと。
「このまま進行すれば君は胃癌になるそうだ。卵巣の病気といい運が無いな……」
「暴飲暴食は慎んでいたつもりだけど……でも、胃がんになるかもしれないって思いもしなかった……」
やっと再会できたイズヴァルトと別れを告げられ、マイヤは一晩中嘆き狂った。でも自分の夢を得る為に頑張り続ける道を行こうと考えた。
この1か月はずっと休みなしで働いた。陣頭指揮はおろか生産ラインの改良や新製品の発案などに寝る間を惜しんだ。睡眠時間を3時間にしても全然頭がまわることに気が付いた。
自分はやれる。最低でも1年は奮闘して見せよう、マイア=テクニカをもっと大きくしてやろうと意気込んでいたのに、たった1か月とは。
「やだなあ。私、頑張りがきかない身体だったの?」
「そうではない。傍から見ていて君の仕事ぶりは激しかった。心配させるぐらいにな。あと、君は自分の体力を過信しすぎだ」
医者の1人の見立てによれば卵巣の破裂と喪失は、マイヤの成長を止め、新陳代謝能力を大きく削っていた。それから人より早く老いる可能性があるそうだ。マイヤは早死にする可能性が高い。
「でも、私の身体にはサキュバスさんの血が流れているし、精液を摂取すれば……」
「今の君の身体は、その修復機能が大いに減じた状態だという事だ」
マイヤ、もうよさないか。しばらくは夢やイズヴァルトに捨てられた悲しみを忘れて、眠り続けていかないか。死に急ぐような彼女の性格と働きぶりにオットーは危惧を抱いていたのだ。
「また、アドルフのくそやろーにやられたみたいに、眠り続けなくちゃいけないの?」
「ああそうだ。何もせずに寝ていると、アドルフ様の嫌な思い出が勝手に出て来るだろうが我慢してほしい」
マイヤは涙目になり、ふえええん、と泣き始めた。途端に言葉が幼くて甲高くなった。
「やだあ。やだあ! マイヤ、そーごーだいがくのゆめをあきらめたくないんもん! すぐにつくりたいんだもん!」
「馬鹿を言うな。君の身体は無理をするとすぐに壊れるようになったのだ。じっくりと腰をすえてやるようにしてくれ」
「やだああっ! やだあああっ! ふえええええん! こんなからだになったのにながいきなんかしたくないよう。ばらのようにけだかくさいて、うつくしくちるじんせいでいいんだもん!」
「……マイヤ。そんな悲しいことを言わないでくれよ。マルティン様、マレーネ様が君をとても慈しんでいるのだ。早死になんか望まないでおくれ……」
「……ふええん。オットーはどうなの?」
精神年齢が6歳未満に戻ってしまったマイヤの目は、とてもきらきらと輝いていた。まるで赤ん坊のような邪気の無い瞳だ。
それをうるうるとされてオットーは胸をしめつけられた。こいつと関わるのは確かに面倒くさい。ケツのお掃除も毎日やらされている。奥方様のケツ拭き小姓などという仇名だって言われ始めたぐらいだ。
(ど、どう答えてやれば……)
「オットーはマイヤのことどうおもっているの? しゅき? きらい? ……きらいなんて言っちゃ、やだよう……」
マイヤの視線がオットーの心に突き刺さる。参ったなあ。むしろ好きなほうなのだが嫌いなところもある。マルティン様に変な性癖を植えつけないでくれ。特にうんこだ。あんなものをぶりぶりと人前でやらかすんじゃない。平民女め。
「ねえねえ? ねえねえ?」
「んん、まあそうだな……」
オットーはベッドの脇にあった台から子供をあやす為のがらがらベルとおしゃぶりとを取った。がらがらがらと音を立てながらマイヤの口にねじこんだ。
「はーい、よちよち。マイヤちゃんはいいこでちゅからねー!」
ガラガラガラガラ。
これがオットーの答えだ。手にかかるでかい赤ちゃんというのがマイヤへの評価だ。愛情はあるのだが一言いってやりたい。でも、心に傷を負ったあかちゃんをへこませる事は到底言えない。
「うぶぶぶー! (オットーままー!)
「マイヤちゃん、そんなに泣かないでくだちゃいねー! わらってわらってー!」
「ばぶうー! (うん! ありがとう、オットー!)」
息子がくわえるはずのおしゃぶりをくわえ、息子をあやす時に使うガラガラベルでマイヤはご機嫌になった。
この時から、彼女はそのプレイにのめり込むようになった。鬱屈した心を癒してくれる、赤ちゃんプレイである。
□ □ □ □ □
「はーい。おねえちゃま。今日もいい天気ですわねー!」
部屋に入って来たマレーネがカーテンと窓を開ける。今日の午前は彼女が『マイヤ係』であった。工房に立つことを禁じられ、幼児退行がひどくなっていた彼女はマルティンの家族に『あかちゃん』として可愛がられるようになっていた。
「マレーネちゃん。おはようでちゅ!」
「うふふ……馴れ馴れしい。マレーネさまとお呼びなさいな。この平民芋虫女めが」
「ぴえええん! マレーネちゃん、こわいよー! ぴえーん! ぴえーん!」
マイヤは狂ったように泣いた。ややいたずら心を出し過ぎてしまった。マレーネは彼女のおでこを優しく撫でてやった。
「泣かないで、おねえちゃま。でないとそのまんまお堀にポイ捨てしちゃいますわよ?」
「ぴえええん! 怖いこと言っちゃいやでちゅー!」
「うふふ。みじめみじめ。おねえちゃまを見世物にしてお金を稼ごうかしら? うふふふ……」
口汚いがマレーネはマイヤがとても大好きだ。こんなに可愛い弱者が側にいるなんて。彼女は絶えずマイヤに母性をくすぐられた。マイヤは一方で人たらしで愛され上手のハーフリングの血を引いていたからだ。つまりはホーデンエーネン王家のである。
「はーい。おねえちゃま。先に起きているフェアディナントちゃまと朝ごはんを食べましょう」
「フェアディナントちゃんはもう起きたの?」
「フェアディナントちゃまはしっかり者ですよ。あかちゃんなのに。いつまで経っても母親の自覚が足りないおねえちゃまをさっさと捨てて、早いうちにいろんな女に手を付けておねえちゃまをおばあちゃまとよばせてくれるでしょうね。この10年ぐらいで。うふふふふ……」
マレーネがほくそ笑む。30になるかならないかでおばあちゃんと呼ばれる立場になるのは嫌だなあ、とマイヤは思った。それよりも食事だ。お腹がすいた。
マイヤはマレーネが用意してくれた大型の乳母車に乗せられて食卓へ向かった。車輪が動くたびに可愛い曲が流れる代物だ。幌にはかわいいお馬さんの絵が描かれていた。
「ばぶう、ばぶう。ぶぶっぶー!」
マイヤは阿呆に徹していた。赤ん坊の笑い声や喉の鳴らし方を真似、よだれかけにびちゃびちゃと自分の唾液をこぼしていた。それを見ながらマレーネはうふふと笑う。
食卓にはマルティンや彼の義母のクララ、マルティンとマレーネの姉妹が待っていた。皆がマイヤを赤ちゃんみたく扱い可愛がる。マイヤはもう、こうしてちやほやされて老いることを望んでいた。大人赤ちゃんの毎日、最高だぜ。
その中に冷ややかな目でこの奇矯な家族を見ている者がいた。小姓のオットーと彼女に抱えられているマイヤの息子、フェアディナントである。
「……若君。ひどい有様ですね」
フェアディナントは赤子だというのに、やけにすわった目をしていた。父母の知性を受け継いでいたからこの状況がどうゆがんだものなのかがわかっていた。
「ばぶぅ。 (ああいう母上では親として期待できないね。さっさと乳離れすることにしようか。)」
そうしてマイヤはマルティンらに慈しまれた。うんちをしたいとむずがるとおまるにまたがせてくれるし、身体を洗うときは赤ちゃん用のベビーバスでやさしく、丹念に。
そうした生活が半月も続いた頃に、マイヤはすっかり健康を取り戻した。医者もあと1か月も安静すれば胃が回復すると告げた。
あと1か月だ。1カ月あれば自分はまた工房に立つことができる。期待を胸に抱きながらマイヤはおまるにまたがった。
「うーん。うーん……ぶりぶりでたぁ!」
マイヤが腰をくいとあげてマレーネにせがんだ。おしりふいて。マレーネは大量にでた大便とおしっこを覗き見て嬉しそうに笑いながら、チリ紙でマイヤの尻を拭き始めた、
「うんちふいたらお尻とおまたをきれいにしましょうね。おねえちゃま」
「うん!」
マレーネは侍女とともにマイヤを持ち上げ、腰を沐浴用の桶に漬け込んだ。消毒薬を薄く入れたそれに手を突っ込み、マイヤの尻穴を指でぐにゅぐにゅとまさぐった。
「ふいいいいい♥」
「おねえちゃま。うんちをするとおしりのあながとてもほぐれますのね?」
「ほいーっ♥」
「うふふふ。こんな奥まで指が入るなんて。おちんちんをくわえたがっているんじゃありませんの?」
マイヤは嬉しそうにうなずいた。大好きな肛門性交はしばらくご無沙汰であった。マレーネが陰裂にも手を差し入れてぐにぐにとさせる。
「ひぎいー♥ ひぎー♥」
「うふふ。おねえちゃま、あかちゃんになっていると感じるときは豚みたいな声を出すんですのね?」
「ぶ、ぶたさん……」
よがって喜んでいたマイヤの顔が、急に重く沈んでしまった。ひぐっ。えぐっ。いきなり嗚咽し始めたのでマレーネは焦った。
どうやら豚に関するトラウマを植え付けられたらしい。マレーネはアノーヅの別荘にある養豚場のことを思い出した。亡き父のアドルフが建てたものだ。
食用ではなくペット用の豚を飼育していたのだが、おもしろい豚さん達だった。専用の囲いの上で尻を丸出しにしてうんちをひねり落とすと、それをおいしそうに食べてくれた。豚便所というやつだ。
マレーネは自分の糞小便をおいしそうに飲み食いする豚を面白がり、愛着も持った。マルティンはこうしたトイレを避けていたが彼女や姉妹たちは用を足す時は豚便所でしていた。魔王アドルフの娘達もまた、加虐に悦びを見出す魔性があったのだ。
「ふえええん。ぶたしゃんきらい。ぶーちゃんだいきらいだよう……」
「お、おねえちゃま……」
マイヤは泣き続けた。いつの間にか桶の中で下痢便をだらだらとこぼし出していた。
(豚さんがらみでおねえちゃまは、お父様にひどいことを……。)
この大きな赤ちゃんの心のあちらこちらには、いろんな地雷が埋まっていたのだ。
「このまま進行すれば君は胃癌になるそうだ。卵巣の病気といい運が無いな……」
「暴飲暴食は慎んでいたつもりだけど……でも、胃がんになるかもしれないって思いもしなかった……」
やっと再会できたイズヴァルトと別れを告げられ、マイヤは一晩中嘆き狂った。でも自分の夢を得る為に頑張り続ける道を行こうと考えた。
この1か月はずっと休みなしで働いた。陣頭指揮はおろか生産ラインの改良や新製品の発案などに寝る間を惜しんだ。睡眠時間を3時間にしても全然頭がまわることに気が付いた。
自分はやれる。最低でも1年は奮闘して見せよう、マイア=テクニカをもっと大きくしてやろうと意気込んでいたのに、たった1か月とは。
「やだなあ。私、頑張りがきかない身体だったの?」
「そうではない。傍から見ていて君の仕事ぶりは激しかった。心配させるぐらいにな。あと、君は自分の体力を過信しすぎだ」
医者の1人の見立てによれば卵巣の破裂と喪失は、マイヤの成長を止め、新陳代謝能力を大きく削っていた。それから人より早く老いる可能性があるそうだ。マイヤは早死にする可能性が高い。
「でも、私の身体にはサキュバスさんの血が流れているし、精液を摂取すれば……」
「今の君の身体は、その修復機能が大いに減じた状態だという事だ」
マイヤ、もうよさないか。しばらくは夢やイズヴァルトに捨てられた悲しみを忘れて、眠り続けていかないか。死に急ぐような彼女の性格と働きぶりにオットーは危惧を抱いていたのだ。
「また、アドルフのくそやろーにやられたみたいに、眠り続けなくちゃいけないの?」
「ああそうだ。何もせずに寝ていると、アドルフ様の嫌な思い出が勝手に出て来るだろうが我慢してほしい」
マイヤは涙目になり、ふえええん、と泣き始めた。途端に言葉が幼くて甲高くなった。
「やだあ。やだあ! マイヤ、そーごーだいがくのゆめをあきらめたくないんもん! すぐにつくりたいんだもん!」
「馬鹿を言うな。君の身体は無理をするとすぐに壊れるようになったのだ。じっくりと腰をすえてやるようにしてくれ」
「やだああっ! やだあああっ! ふえええええん! こんなからだになったのにながいきなんかしたくないよう。ばらのようにけだかくさいて、うつくしくちるじんせいでいいんだもん!」
「……マイヤ。そんな悲しいことを言わないでくれよ。マルティン様、マレーネ様が君をとても慈しんでいるのだ。早死になんか望まないでおくれ……」
「……ふええん。オットーはどうなの?」
精神年齢が6歳未満に戻ってしまったマイヤの目は、とてもきらきらと輝いていた。まるで赤ん坊のような邪気の無い瞳だ。
それをうるうるとされてオットーは胸をしめつけられた。こいつと関わるのは確かに面倒くさい。ケツのお掃除も毎日やらされている。奥方様のケツ拭き小姓などという仇名だって言われ始めたぐらいだ。
(ど、どう答えてやれば……)
「オットーはマイヤのことどうおもっているの? しゅき? きらい? ……きらいなんて言っちゃ、やだよう……」
マイヤの視線がオットーの心に突き刺さる。参ったなあ。むしろ好きなほうなのだが嫌いなところもある。マルティン様に変な性癖を植えつけないでくれ。特にうんこだ。あんなものをぶりぶりと人前でやらかすんじゃない。平民女め。
「ねえねえ? ねえねえ?」
「んん、まあそうだな……」
オットーはベッドの脇にあった台から子供をあやす為のがらがらベルとおしゃぶりとを取った。がらがらがらと音を立てながらマイヤの口にねじこんだ。
「はーい、よちよち。マイヤちゃんはいいこでちゅからねー!」
ガラガラガラガラ。
これがオットーの答えだ。手にかかるでかい赤ちゃんというのがマイヤへの評価だ。愛情はあるのだが一言いってやりたい。でも、心に傷を負ったあかちゃんをへこませる事は到底言えない。
「うぶぶぶー! (オットーままー!)
「マイヤちゃん、そんなに泣かないでくだちゃいねー! わらってわらってー!」
「ばぶうー! (うん! ありがとう、オットー!)」
息子がくわえるはずのおしゃぶりをくわえ、息子をあやす時に使うガラガラベルでマイヤはご機嫌になった。
この時から、彼女はそのプレイにのめり込むようになった。鬱屈した心を癒してくれる、赤ちゃんプレイである。
□ □ □ □ □
「はーい。おねえちゃま。今日もいい天気ですわねー!」
部屋に入って来たマレーネがカーテンと窓を開ける。今日の午前は彼女が『マイヤ係』であった。工房に立つことを禁じられ、幼児退行がひどくなっていた彼女はマルティンの家族に『あかちゃん』として可愛がられるようになっていた。
「マレーネちゃん。おはようでちゅ!」
「うふふ……馴れ馴れしい。マレーネさまとお呼びなさいな。この平民芋虫女めが」
「ぴえええん! マレーネちゃん、こわいよー! ぴえーん! ぴえーん!」
マイヤは狂ったように泣いた。ややいたずら心を出し過ぎてしまった。マレーネは彼女のおでこを優しく撫でてやった。
「泣かないで、おねえちゃま。でないとそのまんまお堀にポイ捨てしちゃいますわよ?」
「ぴえええん! 怖いこと言っちゃいやでちゅー!」
「うふふ。みじめみじめ。おねえちゃまを見世物にしてお金を稼ごうかしら? うふふふ……」
口汚いがマレーネはマイヤがとても大好きだ。こんなに可愛い弱者が側にいるなんて。彼女は絶えずマイヤに母性をくすぐられた。マイヤは一方で人たらしで愛され上手のハーフリングの血を引いていたからだ。つまりはホーデンエーネン王家のである。
「はーい。おねえちゃま。先に起きているフェアディナントちゃまと朝ごはんを食べましょう」
「フェアディナントちゃんはもう起きたの?」
「フェアディナントちゃまはしっかり者ですよ。あかちゃんなのに。いつまで経っても母親の自覚が足りないおねえちゃまをさっさと捨てて、早いうちにいろんな女に手を付けておねえちゃまをおばあちゃまとよばせてくれるでしょうね。この10年ぐらいで。うふふふふ……」
マレーネがほくそ笑む。30になるかならないかでおばあちゃんと呼ばれる立場になるのは嫌だなあ、とマイヤは思った。それよりも食事だ。お腹がすいた。
マイヤはマレーネが用意してくれた大型の乳母車に乗せられて食卓へ向かった。車輪が動くたびに可愛い曲が流れる代物だ。幌にはかわいいお馬さんの絵が描かれていた。
「ばぶう、ばぶう。ぶぶっぶー!」
マイヤは阿呆に徹していた。赤ん坊の笑い声や喉の鳴らし方を真似、よだれかけにびちゃびちゃと自分の唾液をこぼしていた。それを見ながらマレーネはうふふと笑う。
食卓にはマルティンや彼の義母のクララ、マルティンとマレーネの姉妹が待っていた。皆がマイヤを赤ちゃんみたく扱い可愛がる。マイヤはもう、こうしてちやほやされて老いることを望んでいた。大人赤ちゃんの毎日、最高だぜ。
その中に冷ややかな目でこの奇矯な家族を見ている者がいた。小姓のオットーと彼女に抱えられているマイヤの息子、フェアディナントである。
「……若君。ひどい有様ですね」
フェアディナントは赤子だというのに、やけにすわった目をしていた。父母の知性を受け継いでいたからこの状況がどうゆがんだものなのかがわかっていた。
「ばぶぅ。 (ああいう母上では親として期待できないね。さっさと乳離れすることにしようか。)」
そうしてマイヤはマルティンらに慈しまれた。うんちをしたいとむずがるとおまるにまたがせてくれるし、身体を洗うときは赤ちゃん用のベビーバスでやさしく、丹念に。
そうした生活が半月も続いた頃に、マイヤはすっかり健康を取り戻した。医者もあと1か月も安静すれば胃が回復すると告げた。
あと1か月だ。1カ月あれば自分はまた工房に立つことができる。期待を胸に抱きながらマイヤはおまるにまたがった。
「うーん。うーん……ぶりぶりでたぁ!」
マイヤが腰をくいとあげてマレーネにせがんだ。おしりふいて。マレーネは大量にでた大便とおしっこを覗き見て嬉しそうに笑いながら、チリ紙でマイヤの尻を拭き始めた、
「うんちふいたらお尻とおまたをきれいにしましょうね。おねえちゃま」
「うん!」
マレーネは侍女とともにマイヤを持ち上げ、腰を沐浴用の桶に漬け込んだ。消毒薬を薄く入れたそれに手を突っ込み、マイヤの尻穴を指でぐにゅぐにゅとまさぐった。
「ふいいいいい♥」
「おねえちゃま。うんちをするとおしりのあながとてもほぐれますのね?」
「ほいーっ♥」
「うふふふ。こんな奥まで指が入るなんて。おちんちんをくわえたがっているんじゃありませんの?」
マイヤは嬉しそうにうなずいた。大好きな肛門性交はしばらくご無沙汰であった。マレーネが陰裂にも手を差し入れてぐにぐにとさせる。
「ひぎいー♥ ひぎー♥」
「うふふ。おねえちゃま、あかちゃんになっていると感じるときは豚みたいな声を出すんですのね?」
「ぶ、ぶたさん……」
よがって喜んでいたマイヤの顔が、急に重く沈んでしまった。ひぐっ。えぐっ。いきなり嗚咽し始めたのでマレーネは焦った。
どうやら豚に関するトラウマを植え付けられたらしい。マレーネはアノーヅの別荘にある養豚場のことを思い出した。亡き父のアドルフが建てたものだ。
食用ではなくペット用の豚を飼育していたのだが、おもしろい豚さん達だった。専用の囲いの上で尻を丸出しにしてうんちをひねり落とすと、それをおいしそうに食べてくれた。豚便所というやつだ。
マレーネは自分の糞小便をおいしそうに飲み食いする豚を面白がり、愛着も持った。マルティンはこうしたトイレを避けていたが彼女や姉妹たちは用を足す時は豚便所でしていた。魔王アドルフの娘達もまた、加虐に悦びを見出す魔性があったのだ。
「ふえええん。ぶたしゃんきらい。ぶーちゃんだいきらいだよう……」
「お、おねえちゃま……」
マイヤは泣き続けた。いつの間にか桶の中で下痢便をだらだらとこぼし出していた。
(豚さんがらみでおねえちゃまは、お父様にひどいことを……。)
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