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第三部 カツランダルク戦記 『第一章・本当の支配者』
02 王太子の妻
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シュケン=マエカワことアナキン=スカルファッカーがいる世界もまた、戦いと慟哭が繰り返される地獄であった。ニンゲンが争い、多く死んでいく世界だ。
数千年を生き殆ど病気知らずのチート存在・亜人に比べ、ニンゲンはあまりにも非力でか弱い存在。ニンゲンとして産まれてしまったシュケンは「大外れだ……」と嘆く。彼にはキリトくんみたいな才能が無かった。
ファンタジーな異世界で無双してウハウハ。そんな野望は早々におさらばした。だからこそ彼は心を入れ替えられる事ができた。ニンゲンとしてごくまっとうに生きる道を選んだからだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
アナキンの元に国元の兄から手紙が届いた。厭味ったらしい小言ばかりだ。ピルリアの様な下賤の娘と夫婦同然に暮すとは世間体が良くない。
そもそもお前はあのアドルフ様の知遇を得ていたのだろう。だったらイーガの貴族の娘と祝言をあげ、かの国とスカルファッカー家が繋がる様に務めろ。あいもかわらずだとアナキンは憤慨した。
「ケノービのくそったれめ。そんなコネを作りたきゃソーロー家の姫を輿入れすりゃいいのに!」
しかし続きがあった。まあ、ピルリアに溺れるのはわからなくもない。俺も包茎手術の傷が癒えた後に頼んでやらせてもらったからな。あの身体と心遣いに惚れない男はいないよ。彼女にセックスを仕込んだ兄や父親が良かったんだろうな。しゃぶり方も腰つきもたまらなかったよ。
「やってたのか。ピルリアなら仕方が無い。彼女はそういう子だから」
あんな美人を得たアナキンは果報者だ。それでも、あの女だけを侍らせるのはよろしくない。そう書いてあった。
「僕の正妻をまたさがしている……ホーデンエーネンの貴族の娘だって?」
貴族の息女は御免蒙りたい。礼儀作法だの貞淑だの言いながら、裏では荒武者とのガン掘りセックスに狂ったり色男と火遊びを繰り返してばかりだ。金遣いも荒い。
しかし手紙の次の文に目が留まった。頼まれたいことがある。聞いてくれたらお見合いの準備は取りやめにしてやろう。どんな条件かその続きを読んで確かめた。
「……マイヤ=トードヴェル=キョウゴクマイヤーに近づき、交流を深めろ、だって?」
□ □ □ □ □
マイヤ=トードヴェル=キョウゴクマイヤー。ホーデンエーネン人で国の若き英雄・イズヴァルトの恋人。元の姓はカモセンブルグである。愛嬌ある可愛らしさがある美少女である。父母とは早いうちに死に別れたが、善良な人たちに育てられた。そのせいか性格に嫌味なところが無いと評判だった。
兵士長の娘で本好きでフェラチオ上手。幼い頃からちんぽをしゃぶりたくって得た金で本を買い、イズヴァルトに知り合ってからはちんぽに吸い付くコバンザメに化したという。
しかしイズヴァルトと別れ、去年に亡くなったイーガの王太子アドルフの嫡子・マルティンのお妃様となった。とはいえイーガの法律では正妻という概念は無い。経済力があるだけ得られるのが妻というものだ。
馬車に巻き込まれて手足を失ったが、マルティンとの間に男児を得てからも夫婦仲は睦まじいと聞いた。いつも隙があるとセックスをしているらしい。ついでだがマイヤは肩幅は広くないのにおっぱいがとても大きくて、95近くあるそうだ。マルティンはパイズリフェラも堪能しているそうだ。
国元では『ちんちんおしゃぶり野糞ぶりぶり姫』という仇名で国元では小さい頃から名前が知られていた。小さい頃の彼女の野糞やフェラチオを致す映像が収められた記録魔法水晶がたくさん生産され、この国にも出回っていた。
その可愛いが汚らしい映像に脳みそをやられたイーガの貴族は、王太子のお妃にうんちぶりぶりの実演をしてほしいとせがんだ。マイヤは「ほいなっ!」と軽く応えてみせた。見たい者を近寄らせると、介護役の小姓・オットーにスカートをめくってもらい、まあるいお尻をおまるに向けて、ぶりぶりぶりぶり。
その柔らかそうな白い尻と、にゅるにゅると景気よくうんこをひねり出す肛門はイーガの貴族達を魅了した。尻女神の化身とマイヤは言われた。尻女神というのは創造神・マハーヴァラの娘達『アプサラーの百姉妹』の1人であるメイナムだ。
むちむちしていて大変な美貌を持ち、豊穣な土となるうんこを常にひねっていると語られている。ピルリアからその女神がムーツ大陸にある1つの伝説のもとになっていると寝物語で聞かされた。
荒れ野を己のぶりぶりうんちで沃野に変えたというヨー=キヒというオーガの天女の伝説だ。ついでだがオーガ女は「ぼん、きゅっ、ぼんっ!」なナイスバディの持ち主が多いらしいとも聞いた。精巣の生産を活発にさせる話である。
(しかしな……マイヤと名乗っている女の子は……)
アドルフ王子が助け出した漁師の娘、ローザという名前だったはずだ。そっくりさんの偽物だ。ホーデンエーネンとの間で起こった合戦の和議の席で、イズヴァルトと名乗る人物と話をしたらしい。イーガは彼女をマイヤ本人として認め、豪華な披露宴もあげたが、騙されているのではとアナキンは疑っていた。
それと、マイヤ=カモセンブルグはホーデンエーネン王家に連なる人物だとつい最近わかったと兄から教えられた。ならば即刻国元に引き戻すはずである。イズヴァルトと名乗る灰色髪の青年もあれは偽物だろう。背は高いがかなりのやせっぽちだったからだ。映像水晶の中のイズヴァルトはとてもたくましかった。
(本物はきっと、今頃母国に戻って『本物』のおしゃぶり姫とせっせと子づくりをしているはず。なにせ国の英雄のイズヴァルトとお姫様だもんな。イズヴァルトを王族に、という声は昔からあったし、王家も積極的にそのようにしたいはずだろう。)
疑いは晴れなかった。そんな中でアナキンは兄の要求通りにマイヤに近づき始めた。魔道学問所に通うホーデンエーネンの貴族の御曹司としてだ。最初の出会いは宴の席であった。
マイヤは義手義足をつけてパーティに参加していた。赤ん坊を夫の妹に預けておめかしして宴で注目を浴びていた。愛らしいブルーのドレスは遠慮なしに胸の大きさを目立たせていた。
(ローザもおめかしするとあそこまできれいになるのか。それと、可愛いのにえらくどすけべなにおいをぷんぷんさせているな。あんな雰囲気を出すのは初めて見た。)
アナキンは『おしゃぶり姫のそっくりさん』が眠っているところしか見たことがなかった。彼は未だに偽物だと信じていた。母国の品性が無敵のアイドル・おしゃぶり姫なら、今頃王宮のさまざまなちんぽをしゃぶり倒しているはずだろう。
偽物にあいさつを。初めまして奥方様。思い切って秘密を暴露してみた。この世界に転生してからずっと、役に立たない前世の経歴をだ。
「まあ! 貴方も転生人だったのね!」
「ええ、マイヤさま……イーガではマイアさま、とお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」
マイアとはイーガ語圏でのマイヤの呼び方である。異界の豊穣の女神が元の名前らしい。何故そんな名前をつけるのかというと、「異界の神? なんだかすっげー素敵!」と名付け親が思ったからである。マイヤの父母もそうだった。
「でもマイアって、ローマとかギリシャの女神様でしたよね、たしか?」
「キンキ大陸の人たちって、向こうのイタリアやドイツと言葉のイントネーションが近いから。けど大昔だとへんてこりんな名前の人が多かったらしいよ?」
マイヤは古代キンキ大陸人の名前について語る。男性名だとンダグラシャブブイパとかボゴルバッソベルン、女だとネネネイナとかニャーチロなどというきわめて覚えにくい名前ばかりであったと。
「魔界の……きわめて低い魔族の名前がよく似ているらしいけど……」
「は、はは。そうなのですね! うわあ。ネーミングセンスひどすぎ。転生人がいなけりゃへんてこりんな名前ばかりだったかもしれませんね……」
お互いが転生人ということで話がはずんだ。アナキンは前世を語る。シュケン=マエカワという沖縄出身のサラリーマン。いやあ、死ぬ前ぐらいに発生した、『ただ事ではない風邪』のせいで、日本はひどいことになっちゃいましたよ。
「ン? 貴方の前世の時代にはそんな伝染病が流行ってたの?」
「ええまあ。そのせいで僕の行きつけだったパチンコ店とガールズバーは潰れちゃいまして……そんな中でもアル中のフラー(注:馬鹿者という意味。)ばかりなうちなーんちゅは居酒屋で騒ぎ倒してたから、お医者さんがでーじひどい目にあったさーよ」
忘れかけている沖縄弁を交えながら前世を語る。ロシアがご乱心を起こしてウクライナに攻めた事も覚えている限りを語った。深刻そうな顔をしながらマイヤは考え込んだ。自分が死んでから何年後の話だろうか?
「ちなみに、前世の没年はいつ?」
「西暦でいうと2024年の12月ですね。僕は24歳でした。戦争やら景気低迷やらで東京のどこもかしこも荒んでいたなあ……」
「私は1985年の8月12日だよ。御巣鷹山に墜落した飛行機に乗っていたの」
ジャンボ機墜落事故か。前世でも生まれる前の話だ。随分と有名な事故で死んだのだな。そう思いながらアナキンはマイヤに尋ねた。
「もしかして、こちらの世界と前世の世界は時間の流れが違うんじゃありませんか?」
「そうみたい。もし私たちがかつて住んでいた世界と時が同じだったら、アナキンさんは1985年の6年前、1979年に死んだ人じゃないと繋がらないもの。でも違う。時間の流れが違う、というのを確信させる話があってね……」
この世界の数百から数千年前に、自分達の世界の数十年先、数百年先の人物が転生人として生まれ変わっていたのだ。マイア=テクニカで製造している『たぶれっとぱっど』も、もとはアナキンの前世の同年代に生きた人物が書に記した。
「『たぶれっとぱっど』か。あれも僕の時代には出回っていましたね。インターネットに繋がらないのはどうかと思ってますが?」
「その機能も検討中だよ。イーズモーの『てれぽん通信網』を模したものを魔道技術省に研究させているの。まずは『たぶれっとぱっど』で、イーガ国内でどこでも手紙を送るとかね」
それなら役に立てるかもしれない。アナキンは期待したがマイヤから詳しく聞くと自分の出る幕は無いと諦めた。メールアドレスに相当する仕組みや自分の端末を保証する証明システムは既に完成していたのだ。
(ローザめ。漁師の娘のくせに、やけに頭がいいんだな。でも本を読めばそのぐらい考えつくか。それにマイヤさんの過去も調べ上げたのだろう。前世のエピソードなんて本人が面白がって吹聴していたりするだろうし。)
いや、『たぶれっとぱっど』やメールシステムについてはローザを庇護したアドルフ王子の発想だったかもしれない。あの人は本当の天才だった。前世の自分の未来を生きた転生人の書物を沢山読んでいたのだろう。
アナキンは目の前にいるマイヤを、あくまで『偽物』と決め込むことにした。ローザの狂言につきあってやることにするか。宴の日からマイヤとの交流が始まった。
数千年を生き殆ど病気知らずのチート存在・亜人に比べ、ニンゲンはあまりにも非力でか弱い存在。ニンゲンとして産まれてしまったシュケンは「大外れだ……」と嘆く。彼にはキリトくんみたいな才能が無かった。
ファンタジーな異世界で無双してウハウハ。そんな野望は早々におさらばした。だからこそ彼は心を入れ替えられる事ができた。ニンゲンとしてごくまっとうに生きる道を選んだからだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
アナキンの元に国元の兄から手紙が届いた。厭味ったらしい小言ばかりだ。ピルリアの様な下賤の娘と夫婦同然に暮すとは世間体が良くない。
そもそもお前はあのアドルフ様の知遇を得ていたのだろう。だったらイーガの貴族の娘と祝言をあげ、かの国とスカルファッカー家が繋がる様に務めろ。あいもかわらずだとアナキンは憤慨した。
「ケノービのくそったれめ。そんなコネを作りたきゃソーロー家の姫を輿入れすりゃいいのに!」
しかし続きがあった。まあ、ピルリアに溺れるのはわからなくもない。俺も包茎手術の傷が癒えた後に頼んでやらせてもらったからな。あの身体と心遣いに惚れない男はいないよ。彼女にセックスを仕込んだ兄や父親が良かったんだろうな。しゃぶり方も腰つきもたまらなかったよ。
「やってたのか。ピルリアなら仕方が無い。彼女はそういう子だから」
あんな美人を得たアナキンは果報者だ。それでも、あの女だけを侍らせるのはよろしくない。そう書いてあった。
「僕の正妻をまたさがしている……ホーデンエーネンの貴族の娘だって?」
貴族の息女は御免蒙りたい。礼儀作法だの貞淑だの言いながら、裏では荒武者とのガン掘りセックスに狂ったり色男と火遊びを繰り返してばかりだ。金遣いも荒い。
しかし手紙の次の文に目が留まった。頼まれたいことがある。聞いてくれたらお見合いの準備は取りやめにしてやろう。どんな条件かその続きを読んで確かめた。
「……マイヤ=トードヴェル=キョウゴクマイヤーに近づき、交流を深めろ、だって?」
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マイヤ=トードヴェル=キョウゴクマイヤー。ホーデンエーネン人で国の若き英雄・イズヴァルトの恋人。元の姓はカモセンブルグである。愛嬌ある可愛らしさがある美少女である。父母とは早いうちに死に別れたが、善良な人たちに育てられた。そのせいか性格に嫌味なところが無いと評判だった。
兵士長の娘で本好きでフェラチオ上手。幼い頃からちんぽをしゃぶりたくって得た金で本を買い、イズヴァルトに知り合ってからはちんぽに吸い付くコバンザメに化したという。
しかしイズヴァルトと別れ、去年に亡くなったイーガの王太子アドルフの嫡子・マルティンのお妃様となった。とはいえイーガの法律では正妻という概念は無い。経済力があるだけ得られるのが妻というものだ。
馬車に巻き込まれて手足を失ったが、マルティンとの間に男児を得てからも夫婦仲は睦まじいと聞いた。いつも隙があるとセックスをしているらしい。ついでだがマイヤは肩幅は広くないのにおっぱいがとても大きくて、95近くあるそうだ。マルティンはパイズリフェラも堪能しているそうだ。
国元では『ちんちんおしゃぶり野糞ぶりぶり姫』という仇名で国元では小さい頃から名前が知られていた。小さい頃の彼女の野糞やフェラチオを致す映像が収められた記録魔法水晶がたくさん生産され、この国にも出回っていた。
その可愛いが汚らしい映像に脳みそをやられたイーガの貴族は、王太子のお妃にうんちぶりぶりの実演をしてほしいとせがんだ。マイヤは「ほいなっ!」と軽く応えてみせた。見たい者を近寄らせると、介護役の小姓・オットーにスカートをめくってもらい、まあるいお尻をおまるに向けて、ぶりぶりぶりぶり。
その柔らかそうな白い尻と、にゅるにゅると景気よくうんこをひねり出す肛門はイーガの貴族達を魅了した。尻女神の化身とマイヤは言われた。尻女神というのは創造神・マハーヴァラの娘達『アプサラーの百姉妹』の1人であるメイナムだ。
むちむちしていて大変な美貌を持ち、豊穣な土となるうんこを常にひねっていると語られている。ピルリアからその女神がムーツ大陸にある1つの伝説のもとになっていると寝物語で聞かされた。
荒れ野を己のぶりぶりうんちで沃野に変えたというヨー=キヒというオーガの天女の伝説だ。ついでだがオーガ女は「ぼん、きゅっ、ぼんっ!」なナイスバディの持ち主が多いらしいとも聞いた。精巣の生産を活発にさせる話である。
(しかしな……マイヤと名乗っている女の子は……)
アドルフ王子が助け出した漁師の娘、ローザという名前だったはずだ。そっくりさんの偽物だ。ホーデンエーネンとの間で起こった合戦の和議の席で、イズヴァルトと名乗る人物と話をしたらしい。イーガは彼女をマイヤ本人として認め、豪華な披露宴もあげたが、騙されているのではとアナキンは疑っていた。
それと、マイヤ=カモセンブルグはホーデンエーネン王家に連なる人物だとつい最近わかったと兄から教えられた。ならば即刻国元に引き戻すはずである。イズヴァルトと名乗る灰色髪の青年もあれは偽物だろう。背は高いがかなりのやせっぽちだったからだ。映像水晶の中のイズヴァルトはとてもたくましかった。
(本物はきっと、今頃母国に戻って『本物』のおしゃぶり姫とせっせと子づくりをしているはず。なにせ国の英雄のイズヴァルトとお姫様だもんな。イズヴァルトを王族に、という声は昔からあったし、王家も積極的にそのようにしたいはずだろう。)
疑いは晴れなかった。そんな中でアナキンは兄の要求通りにマイヤに近づき始めた。魔道学問所に通うホーデンエーネンの貴族の御曹司としてだ。最初の出会いは宴の席であった。
マイヤは義手義足をつけてパーティに参加していた。赤ん坊を夫の妹に預けておめかしして宴で注目を浴びていた。愛らしいブルーのドレスは遠慮なしに胸の大きさを目立たせていた。
(ローザもおめかしするとあそこまできれいになるのか。それと、可愛いのにえらくどすけべなにおいをぷんぷんさせているな。あんな雰囲気を出すのは初めて見た。)
アナキンは『おしゃぶり姫のそっくりさん』が眠っているところしか見たことがなかった。彼は未だに偽物だと信じていた。母国の品性が無敵のアイドル・おしゃぶり姫なら、今頃王宮のさまざまなちんぽをしゃぶり倒しているはずだろう。
偽物にあいさつを。初めまして奥方様。思い切って秘密を暴露してみた。この世界に転生してからずっと、役に立たない前世の経歴をだ。
「まあ! 貴方も転生人だったのね!」
「ええ、マイヤさま……イーガではマイアさま、とお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」
マイアとはイーガ語圏でのマイヤの呼び方である。異界の豊穣の女神が元の名前らしい。何故そんな名前をつけるのかというと、「異界の神? なんだかすっげー素敵!」と名付け親が思ったからである。マイヤの父母もそうだった。
「でもマイアって、ローマとかギリシャの女神様でしたよね、たしか?」
「キンキ大陸の人たちって、向こうのイタリアやドイツと言葉のイントネーションが近いから。けど大昔だとへんてこりんな名前の人が多かったらしいよ?」
マイヤは古代キンキ大陸人の名前について語る。男性名だとンダグラシャブブイパとかボゴルバッソベルン、女だとネネネイナとかニャーチロなどというきわめて覚えにくい名前ばかりであったと。
「魔界の……きわめて低い魔族の名前がよく似ているらしいけど……」
「は、はは。そうなのですね! うわあ。ネーミングセンスひどすぎ。転生人がいなけりゃへんてこりんな名前ばかりだったかもしれませんね……」
お互いが転生人ということで話がはずんだ。アナキンは前世を語る。シュケン=マエカワという沖縄出身のサラリーマン。いやあ、死ぬ前ぐらいに発生した、『ただ事ではない風邪』のせいで、日本はひどいことになっちゃいましたよ。
「ン? 貴方の前世の時代にはそんな伝染病が流行ってたの?」
「ええまあ。そのせいで僕の行きつけだったパチンコ店とガールズバーは潰れちゃいまして……そんな中でもアル中のフラー(注:馬鹿者という意味。)ばかりなうちなーんちゅは居酒屋で騒ぎ倒してたから、お医者さんがでーじひどい目にあったさーよ」
忘れかけている沖縄弁を交えながら前世を語る。ロシアがご乱心を起こしてウクライナに攻めた事も覚えている限りを語った。深刻そうな顔をしながらマイヤは考え込んだ。自分が死んでから何年後の話だろうか?
「ちなみに、前世の没年はいつ?」
「西暦でいうと2024年の12月ですね。僕は24歳でした。戦争やら景気低迷やらで東京のどこもかしこも荒んでいたなあ……」
「私は1985年の8月12日だよ。御巣鷹山に墜落した飛行機に乗っていたの」
ジャンボ機墜落事故か。前世でも生まれる前の話だ。随分と有名な事故で死んだのだな。そう思いながらアナキンはマイヤに尋ねた。
「もしかして、こちらの世界と前世の世界は時間の流れが違うんじゃありませんか?」
「そうみたい。もし私たちがかつて住んでいた世界と時が同じだったら、アナキンさんは1985年の6年前、1979年に死んだ人じゃないと繋がらないもの。でも違う。時間の流れが違う、というのを確信させる話があってね……」
この世界の数百から数千年前に、自分達の世界の数十年先、数百年先の人物が転生人として生まれ変わっていたのだ。マイア=テクニカで製造している『たぶれっとぱっど』も、もとはアナキンの前世の同年代に生きた人物が書に記した。
「『たぶれっとぱっど』か。あれも僕の時代には出回っていましたね。インターネットに繋がらないのはどうかと思ってますが?」
「その機能も検討中だよ。イーズモーの『てれぽん通信網』を模したものを魔道技術省に研究させているの。まずは『たぶれっとぱっど』で、イーガ国内でどこでも手紙を送るとかね」
それなら役に立てるかもしれない。アナキンは期待したがマイヤから詳しく聞くと自分の出る幕は無いと諦めた。メールアドレスに相当する仕組みや自分の端末を保証する証明システムは既に完成していたのだ。
(ローザめ。漁師の娘のくせに、やけに頭がいいんだな。でも本を読めばそのぐらい考えつくか。それにマイヤさんの過去も調べ上げたのだろう。前世のエピソードなんて本人が面白がって吹聴していたりするだろうし。)
いや、『たぶれっとぱっど』やメールシステムについてはローザを庇護したアドルフ王子の発想だったかもしれない。あの人は本当の天才だった。前世の自分の未来を生きた転生人の書物を沢山読んでいたのだろう。
アナキンは目の前にいるマイヤを、あくまで『偽物』と決め込むことにした。ローザの狂言につきあってやることにするか。宴の日からマイヤとの交流が始まった。
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