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第三部 カツランダルク戦記 『プレリュード』
21 辛いことは甘いものを食べて忘れよう
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イズヴァルトが見た夢は、トーリが見せたものだった。心理操作の魔法術式の1つ、夢見の術というものである。
彼女がイズヴァルトに見せたのは過去に本当に起こったものだ。女王にカミラや他のサキュバスの記憶から得たものである。トーリはそれら全てを繋げてイズヴァルトに教えたのだ。
その真の目的はホーデンエーネン王家の祖が、正義や平和とは程遠い悪逆非道の存在であることを深層心理に叩き込む。イズヴァルトに根深く残る王国への忠義心を削ごうとしたのだ。
しかしこの夢は、夢の途中でトーリが発したささやきは、すぐに忘れてしまう様に仕込んであった。事が失敗に終わった時、イズヴァルトが尋問の中で語らないようにする為である。
性交と射精にくたびれて眠るイズヴァルトの胸にしがみつきながら、トーリは満足げな笑みを浮かべていた。イズヴァルトは見事に術にはまった。この男は今見る夢の中で、マイヤを助けられなかった王国と自分とを責め立てている。
(イズヴァルトさん。だから私がこれから側にいる、いずれマイヤもここに連れ戻してあげるから、私の願いをかなえて欲しいの。)
まずは魔竜に助力を乞うの使者になってもらう。助けを得られなくても、トーリ=カツランダルクによるナントブルグ王国の再建を認めてくれればいい。
トーリはカミラから聞いていた。魔竜をはじめとする魔界の魔族らは、この世界の安定に力を尽くすが世俗にて権力を持つことを禁じられているという。
ただ、一時期だけ、キンキ大陸にて実験的に、魔竜の高い地位にある部下達が大陸の主要な部族に君臨し、導くという時期があった。その頃にトーリの先祖の王国ができた。魔族とニンゲンとの一時期だけの蜜月で出来た国の1つが、カツランダルクの王国だった。
大量の精を吸い、増々艶やかになったトーリの素肌が月の光に照らされて青白く輝いた。イズヴァルトの精液は大量の魔力が含まれていた。深くつながっている幻想を抱かせて放たれた精液はいつもより質が良かった。
この男にかしづかれ、精を吸い続ければ早いうちに先祖返りができるだろう。そうなればサキュバスの女王として君臨することができる。
秘められた力が全て解放されれば天下はすぐに転がり込むはずだ。カツランダルクの女に再び王冠を。イズヴァルトがいれば近いうちに叶う夢だ。
□ □ □ □ □
クリスタはトーリに不信を覚えていた。マルカスが処刑されてから特に顕著になっている。王宮には入らぬと心に誓っていたが、イズヴァルトを慮って適当な理由でごまかしていた。
そもそも、王宮にて当てがわれた部屋に息苦しさを感じて嫌がり、そのままだったイズヴァルトの下宿で寝起きする生活をしていた。トーリを1歩引いた立場で見ていた。近くにいると彼女が漂わせている魅力で、過剰に肯定しそうだったからだ。
ヨーシハルトスの暗殺騒ぎについては、誰が実行犯だったかは気づいていた。マルカスの首が王宮に届いた後、イナンナを詰った。しかしイナンナがどこか、何者かにある程度、魅了されている様に見えた。
イナンナに掴みかかり、非難の言葉を浴びせて一晩が経った。隣の部屋でうなだれ、うずくまっていたイナンナに改めて尋ねた。トーリの瞳が少しの間だけ紅くなり、3つ足の鳥の紋様が浮かんでいたと。
「まさか?」
信じられないとクリスタは思った。その様な瞳を持つ人物を知っていた。その人物がお忍びでカイロネイアに来た時、実際に会って話したことも。
「魔竜さまとおんなじずらな?」
イナンナはうなずいた。その時トーリは魔竜・サイカノマゴイチと同じ瞳をしていた。合点がいった。イナンナがどうして力を貸してしまったのかを。
もちろん『騙り』も疑った。けれどもトーリの祖先の事を考えれば当然の事だと思った。
(心を操るだけでなく、とんでもねえところと縁故があると見せびらかしているずら。)
医術と旨い飯とおまんこの事ぐらいしか興味が無いクリスタだが、トーリが何を考えているのかは想像できる。
(おらの小さい頃に見て来たような、魔族が支配する大陸にするつもりずらな。)
ホーデンエーネンが統一するまでのキンキ大陸。その中の多くの国々や部族は、魔竜の部下や信任を受けた魔族によって統治が行われていた。
理由はこうだ。キンキ大陸の人々は他の大陸の者より好戦的で、部族や国同士での衝突がしょっちゅうあった。そのせいか文明が他の大陸よりかなり遅れ、平均寿命も短かった。
イナンナら先輩達からクリスタはこうも聞いていた。3000年以上前は一部の部族をのぞいて、大陸の各部族は無法そのものだったという。チンピラとごろつきがのさばり、喧嘩自慢の単細胞の豪傑がトーナメントで、大族長に選ばれる様な場所であったと。
争いごとをひどく嫌うコンゴウアミダラデンの主は、彼等を啓蒙するかたちで各部族に魔族を派遣した。1000年以上前の話だ。
彼等は大人しく従った。この頃のキンキ大陸はアカサカチハヤの魔族らを、神の使いとあがめていたからだ。マハラ教はまだ入って来なかった。
魔族に統治されたほうがニンゲン達はいくらか穏やかになる、とはクリスタも肯定していた。民主主義とか言うけれど、うまくいった試しがない。いつも『いつのまにか』に、サル山のボスみたいなのが天下を取っている。
どうもニンゲンには強い者にあこがれる、あるいは支配されたがっている感情がある。大仰に過ぎる言い方だが救いというものは無さそうに思えた。クリスタは温厚な強者による支配する世の中には賛成だった。
トーリはきっと良い女王になるだろう。おまんこが充実すれば粗衣粗食でもいいと思う様なサキュバスの子孫である。心の動きもそれに近い。
でも、権力を得ようとすれば必ず戦いが起きる。イズヴァルトはろくでもない数々の争乱に巻き込まれるだろう。はた目から見てあの男は、謀略によくひっかかる人格だと思っていた。
(自分と同類の単細胞だからな。イズヴァルトさんは。)
クリスタはマイヤが残した本を読みながら、ホーデンエーネンの今後のことを考えた。腹が減った。別室でふさぎ込んでいたイナンナを、甘い物でも食べに行こうと誘って外に連れ出した。
「悩んでもどうにもならんずら。おら、なじみになった店があるずらよ」
都の色街にあるアイスクリーム店、『フラウ=ホーデン』というのがクリスタが見つけた店である。マルカスと何回か訪れた店でもあった。
女が立ち、いかがわしいにおいを漂わせる店が並ぶ道を進むとフラウ=ホーデンはあった。前来た時の様にポニーテールの金髪の女が、「んっ!」とうなりながら注文を取りに来た。
随分と露出の多い格好だった。夏用の制服だという。上着は肩で切れるシャツだったし、スカートは股が見えそうなぐらいに短かった。かがむと丸見えになるだろう。
「どーもクリスタさん。今日は別のお連れさんと一緒なんスね。んっ!」
「マルカスは国に帰っちまったずら。ハーマイオニーさん、あいかわらず、喉の調子がよくねえずらな?」
「んっ! おかげさまで。タバコもそうっスけど、最近の恋人どもが揃いも揃って性病まみれなのもあるっスかね?」
「あんまし、イロモノとばっかしというのはよくねえずらよ?」
「んっ! いやいや。性病にかかりまくっている男のちんぽは、大概に立派だし精液も質がいいのばかりなんスよね。やめられねえっス」
店員のハーマイオニー。彼女がサキュバスだというのをクリスタはイナンナに教えた。においでわかるズラよ。ハーマイオニーはひどくヤニ臭かったが、同時に砂糖菓子みたいな体臭、特に股や腋からぷんぷんとにおわせていたからである。
クリスタは注文した。上物サキュバスアイスクリームを2つ。でかいサイズで。ハーマイオニーが聞き届けると、クリスタと比肩するぐらいにおっぱいの大きな美人店員が、牛乳の入った壺を持ってきて現れた。
「オーラフさんずら。あの人もサキュバスずらよ」
「でけえズラなあ……」
でかいとは失礼な、オーラフは不愉快だった。自分と対抗できるおっぱいの持ち主が側にいるというのに、珍しい目で見るんじゃない。
ハーマイオニーがクリスタらのテーブルに、大きな深皿を置いた。オーラフは壺に入った牛乳をがばがばと飲むとサンダルを脱ぎ、テーブルの上に立ちスカートをめくった。
むっちりとした白い尻だ。イナンナはため息をついた。彼女はでか尻にもあこがれていた。エルフは、肉感的な性的アピールに乏しい身体なのだ。豊満なものにあこがれる習性があった。
「んっ! そいじゃあオーラフさん、やっちゃって!」
「はあーい。げふっ!」
オーラフはしゃがみこんで力み始めた。んんんんん。オーラフのでか尻の真ん中にあったアナルが少しずつ口を広げ、とろ、とろ、と白い液体をこぼし始めた。
それから肛門の肉があらわになるまで広がると、柔らかそうな白い塊が深皿の中へ、にゅるにゅると押し出ていった。
「もちもちしてそうなええ尻ズラな。どれどれ……」
未だにもりもりと穴から出すオーラフの尻をイナンナは鷲掴みにする。ひゃん。クリスタさんのおっぱいといい勝負のもちもちぶりズラ。
「むらむらしちゃったズラ。オーラフさん、ひねり終わったらおめえのけつあな、いじっていいズラか?」
「んんっ。そ、それはちょっと考えさせて……まだお仕事の時間だし」
「オラはむらむらと来ちゃったズラよ?」
オーラフが尻穴をすぼめて出し終えると、イナンナは彼女の尻穴に指を突っ込んだ。
「ふにゅっ♡」
指に心地よい柔肉だ。オーラフはここでも存分に陰茎を挿れて楽しんでいるのだろうとイナンナは思った。
「あふ♡ あふ♡ や、やめてください♡」
「どうしてズラ? おまんらサキュバスは気持ちいいことが大好きなのに、嫌がるのはどういうつもりズラ?」
「気持ちいいのが欲しいんじゃなくって、せーえきが欲しいのよワタシたちは!」
まあまあそんなこと言わずに。イナンナが立ち上がってしゃがんだままのオーラフに抱き着いた。もう片方の手の指で無毛の割れ目のまわりをいじり倒す。オーラフは狂ったように喘ぎだした。
イナンナの指先は魔法がかかっているようだ。柔らかく触れ続けてその気にさせると、今度は力を強めてまさぐってオーラフをさからせる。割れ目がどろりとなったところで襞をくすぐり、陰核の周囲にも刺激を与えた。
「おおう♡ おおおう♡ や、やめて♡」
「おなごのやめては止めるのをやめてという意味ズラよ。オラはよーくわかっているズラ」
「せーえきが飲めないおまんこいじいじ、やだーっ!」
オーラフがびくんびくんと震えた。サキュバスの秘所は本人をすぐに絶頂させる過敏な性感帯である。甘いにおいのする人型の柔らかい脂肪の塊がよがると、イナンナはヴァギナの中に指を突っ込んだ。
まさぐってさらに喘がせる。いいにおいがもっとしてきたズラ。この女はサキュバスでも、かなり上位にあるものだろうと思った。おまんこのあたりから漂ってくるにおいが、果物の甘味を用いた上品な菓子のにおいに近かったからである。
「あ、お客さん。勘違いしないでくださいっス。オーラフさんは魔界でも中位のサキュバスっスよ」
抱き心地の良いオーラフをいじいじしながら首をかしげるイナンナに、ハーマイオニーはこう教えた。魔竜サイカノマゴイチの側近の1人であるっス。
「すげえズラな!」
「いや、そんなすごくないんスけどね……」
オーラフはもともと、魔竜の魔界での領地の役場の事務員だという。その程度。但し仕事は早くて、住民からの評判が良い。
「いいにおいがするのは、オーラフさんの母さんが貴族階級なんスよ。あーしみたいな中流家庭サキュバスと育ちがちがうだけっス」
「そうなんズラか?」
「厳密に言うと中の上のサキュバスっスね。ま、あーしのほうが魔法の才は上っスけど!」
腕を組んで立派な乳房を強調しながら、ハーマイオニーは自信たっぷりに言い切った。ただ魔界は階級社会なので下剋上は至難の業。サキュバスはおちんぽハメハメがデキさえすれば、幸福度が限界まで高くなる種族だから、野心を持つ者は殆どいなかった。
「ほーん。そんで今、クリスタさんが美味しそうに食べているやわらかうんこはなんなんズラか?」
「サキュバスアイスクリームってやつっス。食べるの手伝いますんで口広げてくださいっス」
ハーマイオニーはスプーンを取って、深皿にこんもりと盛られたそれをすくい、口を開けたイナンナに白いうんこを食べさせた。
「んまっ!」
冷たく、甘く、口ざわりが良いうんこであった。いいや、うんこではなくソフトクリームだ。これは癖になってしまう味だとイナンナが激賞すると、オーラフは満足げに笑みを浮かべた。
ハーマイオニーは汚い咳払いをしながら頭を下げた。味にうるさそうな白エルフに褒められるのは大変光栄であると喜んだ。ツックイーのエルフは気難しいのばかりで、サキュバスを見たらすぐにいじめてくる凶暴な連中ばかりだと聞いたからだ。
「そりゃあオラの村のみんなは、おまんらおちんぽ狩りの化け物を見たら喧嘩をふっかける様な連中ばっかだけど、実は仲良くしたいと思っているからそうしているだけズラ。ひねくれものばかりなんズラよ?」
「クリスタさんみたいなカイロネイア=エルフや、シマナミスタンのエルフのねえさんがたは、結構フレンドリーな方が多いっスけどね」
「ふれんどり? ああ、なかよしこよしという意味ズラか。おまんもこのあとどうズラ? オラとなかよしこよしをするズラか?」
イナンナにささやかれ、ハーマイオニーはいひひと笑った。ガンガン突かれて精液をいただく性愛に飽きていたところだ。
たまには女の器官に熟知した同性と遊びたかった。イナンナの指遣いを見て楽しめるとも思ったりも。
「……そりゃあそうとクリスタさん。どうしてオラをここに連れて来たズラか? わざわざオラを元気づける為にここに連れて来たわけじゃないズラな?」
「もぐもぐ……ん? おらはそれ以外考えてねえずらよ」
イナンナは盛りすぎてキスを求めて来たオーラフとぶちゅぶちゅしながら思った。魔竜の家来が働いている店に連れて来るなんて、どう考えても何かを企んでいるからだろうに。
彼女がイズヴァルトに見せたのは過去に本当に起こったものだ。女王にカミラや他のサキュバスの記憶から得たものである。トーリはそれら全てを繋げてイズヴァルトに教えたのだ。
その真の目的はホーデンエーネン王家の祖が、正義や平和とは程遠い悪逆非道の存在であることを深層心理に叩き込む。イズヴァルトに根深く残る王国への忠義心を削ごうとしたのだ。
しかしこの夢は、夢の途中でトーリが発したささやきは、すぐに忘れてしまう様に仕込んであった。事が失敗に終わった時、イズヴァルトが尋問の中で語らないようにする為である。
性交と射精にくたびれて眠るイズヴァルトの胸にしがみつきながら、トーリは満足げな笑みを浮かべていた。イズヴァルトは見事に術にはまった。この男は今見る夢の中で、マイヤを助けられなかった王国と自分とを責め立てている。
(イズヴァルトさん。だから私がこれから側にいる、いずれマイヤもここに連れ戻してあげるから、私の願いをかなえて欲しいの。)
まずは魔竜に助力を乞うの使者になってもらう。助けを得られなくても、トーリ=カツランダルクによるナントブルグ王国の再建を認めてくれればいい。
トーリはカミラから聞いていた。魔竜をはじめとする魔界の魔族らは、この世界の安定に力を尽くすが世俗にて権力を持つことを禁じられているという。
ただ、一時期だけ、キンキ大陸にて実験的に、魔竜の高い地位にある部下達が大陸の主要な部族に君臨し、導くという時期があった。その頃にトーリの先祖の王国ができた。魔族とニンゲンとの一時期だけの蜜月で出来た国の1つが、カツランダルクの王国だった。
大量の精を吸い、増々艶やかになったトーリの素肌が月の光に照らされて青白く輝いた。イズヴァルトの精液は大量の魔力が含まれていた。深くつながっている幻想を抱かせて放たれた精液はいつもより質が良かった。
この男にかしづかれ、精を吸い続ければ早いうちに先祖返りができるだろう。そうなればサキュバスの女王として君臨することができる。
秘められた力が全て解放されれば天下はすぐに転がり込むはずだ。カツランダルクの女に再び王冠を。イズヴァルトがいれば近いうちに叶う夢だ。
□ □ □ □ □
クリスタはトーリに不信を覚えていた。マルカスが処刑されてから特に顕著になっている。王宮には入らぬと心に誓っていたが、イズヴァルトを慮って適当な理由でごまかしていた。
そもそも、王宮にて当てがわれた部屋に息苦しさを感じて嫌がり、そのままだったイズヴァルトの下宿で寝起きする生活をしていた。トーリを1歩引いた立場で見ていた。近くにいると彼女が漂わせている魅力で、過剰に肯定しそうだったからだ。
ヨーシハルトスの暗殺騒ぎについては、誰が実行犯だったかは気づいていた。マルカスの首が王宮に届いた後、イナンナを詰った。しかしイナンナがどこか、何者かにある程度、魅了されている様に見えた。
イナンナに掴みかかり、非難の言葉を浴びせて一晩が経った。隣の部屋でうなだれ、うずくまっていたイナンナに改めて尋ねた。トーリの瞳が少しの間だけ紅くなり、3つ足の鳥の紋様が浮かんでいたと。
「まさか?」
信じられないとクリスタは思った。その様な瞳を持つ人物を知っていた。その人物がお忍びでカイロネイアに来た時、実際に会って話したことも。
「魔竜さまとおんなじずらな?」
イナンナはうなずいた。その時トーリは魔竜・サイカノマゴイチと同じ瞳をしていた。合点がいった。イナンナがどうして力を貸してしまったのかを。
もちろん『騙り』も疑った。けれどもトーリの祖先の事を考えれば当然の事だと思った。
(心を操るだけでなく、とんでもねえところと縁故があると見せびらかしているずら。)
医術と旨い飯とおまんこの事ぐらいしか興味が無いクリスタだが、トーリが何を考えているのかは想像できる。
(おらの小さい頃に見て来たような、魔族が支配する大陸にするつもりずらな。)
ホーデンエーネンが統一するまでのキンキ大陸。その中の多くの国々や部族は、魔竜の部下や信任を受けた魔族によって統治が行われていた。
理由はこうだ。キンキ大陸の人々は他の大陸の者より好戦的で、部族や国同士での衝突がしょっちゅうあった。そのせいか文明が他の大陸よりかなり遅れ、平均寿命も短かった。
イナンナら先輩達からクリスタはこうも聞いていた。3000年以上前は一部の部族をのぞいて、大陸の各部族は無法そのものだったという。チンピラとごろつきがのさばり、喧嘩自慢の単細胞の豪傑がトーナメントで、大族長に選ばれる様な場所であったと。
争いごとをひどく嫌うコンゴウアミダラデンの主は、彼等を啓蒙するかたちで各部族に魔族を派遣した。1000年以上前の話だ。
彼等は大人しく従った。この頃のキンキ大陸はアカサカチハヤの魔族らを、神の使いとあがめていたからだ。マハラ教はまだ入って来なかった。
魔族に統治されたほうがニンゲン達はいくらか穏やかになる、とはクリスタも肯定していた。民主主義とか言うけれど、うまくいった試しがない。いつも『いつのまにか』に、サル山のボスみたいなのが天下を取っている。
どうもニンゲンには強い者にあこがれる、あるいは支配されたがっている感情がある。大仰に過ぎる言い方だが救いというものは無さそうに思えた。クリスタは温厚な強者による支配する世の中には賛成だった。
トーリはきっと良い女王になるだろう。おまんこが充実すれば粗衣粗食でもいいと思う様なサキュバスの子孫である。心の動きもそれに近い。
でも、権力を得ようとすれば必ず戦いが起きる。イズヴァルトはろくでもない数々の争乱に巻き込まれるだろう。はた目から見てあの男は、謀略によくひっかかる人格だと思っていた。
(自分と同類の単細胞だからな。イズヴァルトさんは。)
クリスタはマイヤが残した本を読みながら、ホーデンエーネンの今後のことを考えた。腹が減った。別室でふさぎ込んでいたイナンナを、甘い物でも食べに行こうと誘って外に連れ出した。
「悩んでもどうにもならんずら。おら、なじみになった店があるずらよ」
都の色街にあるアイスクリーム店、『フラウ=ホーデン』というのがクリスタが見つけた店である。マルカスと何回か訪れた店でもあった。
女が立ち、いかがわしいにおいを漂わせる店が並ぶ道を進むとフラウ=ホーデンはあった。前来た時の様にポニーテールの金髪の女が、「んっ!」とうなりながら注文を取りに来た。
随分と露出の多い格好だった。夏用の制服だという。上着は肩で切れるシャツだったし、スカートは股が見えそうなぐらいに短かった。かがむと丸見えになるだろう。
「どーもクリスタさん。今日は別のお連れさんと一緒なんスね。んっ!」
「マルカスは国に帰っちまったずら。ハーマイオニーさん、あいかわらず、喉の調子がよくねえずらな?」
「んっ! おかげさまで。タバコもそうっスけど、最近の恋人どもが揃いも揃って性病まみれなのもあるっスかね?」
「あんまし、イロモノとばっかしというのはよくねえずらよ?」
「んっ! いやいや。性病にかかりまくっている男のちんぽは、大概に立派だし精液も質がいいのばかりなんスよね。やめられねえっス」
店員のハーマイオニー。彼女がサキュバスだというのをクリスタはイナンナに教えた。においでわかるズラよ。ハーマイオニーはひどくヤニ臭かったが、同時に砂糖菓子みたいな体臭、特に股や腋からぷんぷんとにおわせていたからである。
クリスタは注文した。上物サキュバスアイスクリームを2つ。でかいサイズで。ハーマイオニーが聞き届けると、クリスタと比肩するぐらいにおっぱいの大きな美人店員が、牛乳の入った壺を持ってきて現れた。
「オーラフさんずら。あの人もサキュバスずらよ」
「でけえズラなあ……」
でかいとは失礼な、オーラフは不愉快だった。自分と対抗できるおっぱいの持ち主が側にいるというのに、珍しい目で見るんじゃない。
ハーマイオニーがクリスタらのテーブルに、大きな深皿を置いた。オーラフは壺に入った牛乳をがばがばと飲むとサンダルを脱ぎ、テーブルの上に立ちスカートをめくった。
むっちりとした白い尻だ。イナンナはため息をついた。彼女はでか尻にもあこがれていた。エルフは、肉感的な性的アピールに乏しい身体なのだ。豊満なものにあこがれる習性があった。
「んっ! そいじゃあオーラフさん、やっちゃって!」
「はあーい。げふっ!」
オーラフはしゃがみこんで力み始めた。んんんんん。オーラフのでか尻の真ん中にあったアナルが少しずつ口を広げ、とろ、とろ、と白い液体をこぼし始めた。
それから肛門の肉があらわになるまで広がると、柔らかそうな白い塊が深皿の中へ、にゅるにゅると押し出ていった。
「もちもちしてそうなええ尻ズラな。どれどれ……」
未だにもりもりと穴から出すオーラフの尻をイナンナは鷲掴みにする。ひゃん。クリスタさんのおっぱいといい勝負のもちもちぶりズラ。
「むらむらしちゃったズラ。オーラフさん、ひねり終わったらおめえのけつあな、いじっていいズラか?」
「んんっ。そ、それはちょっと考えさせて……まだお仕事の時間だし」
「オラはむらむらと来ちゃったズラよ?」
オーラフが尻穴をすぼめて出し終えると、イナンナは彼女の尻穴に指を突っ込んだ。
「ふにゅっ♡」
指に心地よい柔肉だ。オーラフはここでも存分に陰茎を挿れて楽しんでいるのだろうとイナンナは思った。
「あふ♡ あふ♡ や、やめてください♡」
「どうしてズラ? おまんらサキュバスは気持ちいいことが大好きなのに、嫌がるのはどういうつもりズラ?」
「気持ちいいのが欲しいんじゃなくって、せーえきが欲しいのよワタシたちは!」
まあまあそんなこと言わずに。イナンナが立ち上がってしゃがんだままのオーラフに抱き着いた。もう片方の手の指で無毛の割れ目のまわりをいじり倒す。オーラフは狂ったように喘ぎだした。
イナンナの指先は魔法がかかっているようだ。柔らかく触れ続けてその気にさせると、今度は力を強めてまさぐってオーラフをさからせる。割れ目がどろりとなったところで襞をくすぐり、陰核の周囲にも刺激を与えた。
「おおう♡ おおおう♡ や、やめて♡」
「おなごのやめては止めるのをやめてという意味ズラよ。オラはよーくわかっているズラ」
「せーえきが飲めないおまんこいじいじ、やだーっ!」
オーラフがびくんびくんと震えた。サキュバスの秘所は本人をすぐに絶頂させる過敏な性感帯である。甘いにおいのする人型の柔らかい脂肪の塊がよがると、イナンナはヴァギナの中に指を突っ込んだ。
まさぐってさらに喘がせる。いいにおいがもっとしてきたズラ。この女はサキュバスでも、かなり上位にあるものだろうと思った。おまんこのあたりから漂ってくるにおいが、果物の甘味を用いた上品な菓子のにおいに近かったからである。
「あ、お客さん。勘違いしないでくださいっス。オーラフさんは魔界でも中位のサキュバスっスよ」
抱き心地の良いオーラフをいじいじしながら首をかしげるイナンナに、ハーマイオニーはこう教えた。魔竜サイカノマゴイチの側近の1人であるっス。
「すげえズラな!」
「いや、そんなすごくないんスけどね……」
オーラフはもともと、魔竜の魔界での領地の役場の事務員だという。その程度。但し仕事は早くて、住民からの評判が良い。
「いいにおいがするのは、オーラフさんの母さんが貴族階級なんスよ。あーしみたいな中流家庭サキュバスと育ちがちがうだけっス」
「そうなんズラか?」
「厳密に言うと中の上のサキュバスっスね。ま、あーしのほうが魔法の才は上っスけど!」
腕を組んで立派な乳房を強調しながら、ハーマイオニーは自信たっぷりに言い切った。ただ魔界は階級社会なので下剋上は至難の業。サキュバスはおちんぽハメハメがデキさえすれば、幸福度が限界まで高くなる種族だから、野心を持つ者は殆どいなかった。
「ほーん。そんで今、クリスタさんが美味しそうに食べているやわらかうんこはなんなんズラか?」
「サキュバスアイスクリームってやつっス。食べるの手伝いますんで口広げてくださいっス」
ハーマイオニーはスプーンを取って、深皿にこんもりと盛られたそれをすくい、口を開けたイナンナに白いうんこを食べさせた。
「んまっ!」
冷たく、甘く、口ざわりが良いうんこであった。いいや、うんこではなくソフトクリームだ。これは癖になってしまう味だとイナンナが激賞すると、オーラフは満足げに笑みを浮かべた。
ハーマイオニーは汚い咳払いをしながら頭を下げた。味にうるさそうな白エルフに褒められるのは大変光栄であると喜んだ。ツックイーのエルフは気難しいのばかりで、サキュバスを見たらすぐにいじめてくる凶暴な連中ばかりだと聞いたからだ。
「そりゃあオラの村のみんなは、おまんらおちんぽ狩りの化け物を見たら喧嘩をふっかける様な連中ばっかだけど、実は仲良くしたいと思っているからそうしているだけズラ。ひねくれものばかりなんズラよ?」
「クリスタさんみたいなカイロネイア=エルフや、シマナミスタンのエルフのねえさんがたは、結構フレンドリーな方が多いっスけどね」
「ふれんどり? ああ、なかよしこよしという意味ズラか。おまんもこのあとどうズラ? オラとなかよしこよしをするズラか?」
イナンナにささやかれ、ハーマイオニーはいひひと笑った。ガンガン突かれて精液をいただく性愛に飽きていたところだ。
たまには女の器官に熟知した同性と遊びたかった。イナンナの指遣いを見て楽しめるとも思ったりも。
「……そりゃあそうとクリスタさん。どうしてオラをここに連れて来たズラか? わざわざオラを元気づける為にここに連れて来たわけじゃないズラな?」
「もぐもぐ……ん? おらはそれ以外考えてねえずらよ」
イナンナは盛りすぎてキスを求めて来たオーラフとぶちゅぶちゅしながら思った。魔竜の家来が働いている店に連れて来るなんて、どう考えても何かを企んでいるからだろうに。
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