聖騎士イズヴァルトの伝説 外伝 『女王の末裔たち』

CHACOとJAGURA

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第二部 『呪いの序曲。イーガの魔王』 (少年編から青年編の間のエピソード。)

61 トーリの誤算

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 トーリはアスカウだけでなく、西にあるタカイチゲンシュタットの村ももらい受けていた。この一帯、アスカウ=タカイチゲンシュタット小盆地の半分近くが、トーリ=カツランダルクの御料地だ。

 彼女は見晴らしの良い山にある砦の改築も計画に入れていた。南側のタンバレーネ山岳地帯に盤踞ばんきょする、山の民の山賊団から領地を守る為に、とナントブルグには説明していたが、目的はそうじゃない。乱世になった場合の事を考えてだ。
 
 彼女はセイン王の暗殺を視野に入れていた。年若いジューンショーンも他の王族衆も一網打尽にし、息子のオルフレッドを王にすえたい。

 息子はお飾りでいい。自分はそれを裏で操る。前々からうっすらと考えていた事を本気で考え始めたのは、イズヴァルトとマイヤの一件があったからだ。

(いまだホーデンエーネン王家がのさばったままでは、私の大事な人達が苦しめられてしまう。)

 イズヴァルトは生きていたということで安心したが、マイヤは事故で四肢を失った挙句、イーガのマルティン王子の妾となってしまった。

 マイヤはイズヴァルトと一緒に暮らすのを拒んだという。もう貴方は私にとって過去の男よ。そんなことをはっきりと言ったそうだ。何かの考えがあって言ったに違いないとトーリは信じていたが。

 2人が幸せな家庭を築き、自分と子宝合戦に挑んでくる未来。そう思っていたのにこんなことになるとは。いくら嘆いても嘆き足りない。

 王都への出仕を要請してきた近衛騎士を魅了させ、追い払った日の翌日。トーリはルッソとともに館の建設地に向かった。既に出来上がっている街道沿いの水掘りにかかる橋を越え、坂をのぼる。

 館は既に2階部分が出来上がっていた。後は兵士や旅人が休めるベッドや椅子を運ぶだけである。ここに移り住むつもりは無かった。

「こんなに立派な領主館を……本当に住まないつもりなのかい?」
「ええそうよ。私はルッソの家が気に入っているの。牧童の村こそが私の故郷。あそこに勝るお城は無いわ」

(まあ何せ。牧童の村と俺んちの牧場は、ホーデンエーネン王家創業の地でもあるからね。)

 トーリはもう知っているはず。自分の村がいわくつきの場所であると。つまり、あそこに固執する事は王位争いの野心を抱いているという隠喩とも受け止められた。

 トーリはまだまだ野心を抱いている。彼女の目論見は阻止すべきだとルッソは思った。これからパラッツォ教団と対決する今の王国の王位を得ても、勝利の後に苦難が待ち受けているだけだ。

(もしやるんだったら、教団との戦争が落ち着いてからでいいんじゃないのか?)

 けれどもトーリは、今こそが打って出る時期だと考えていた。王族衆としてどう存在感を出すか。とりあえずナントブルグへの出仕をごね続ける。

 しかしある条件を達したら、ナントブルグへ向かうつもりである。国王セイン自らが来訪する時にだ。その時に初めてナントブルグへ向かうのだが、同行の最中にセインは謎の急死を遂げる事になる。カミラ達の進言による案だ。
 
 王都は稚拙ながら、なかなかに魔法の結界が巡らされていてその隙が無い。でも外に出ればそうもいかない。生半可な魔族よりも優れたカミラたちが、万事うまくやってくれる。

 当然、ジューンショーンが王に即位するはずだ。しかし幼い少年に何ができるだろう。大貴族たちが勝手に離反し、再び戦国時代に向かうだろう。

 それをトーリが人心掌握の魔法でもって王家を結束させ、名誉と勢力を得る。味方が増えれば国王を玉座から引きずり下ろして王族たちを廃滅させる。ついでに裏切者のカツランダルク御三家も皆殺しだ。

 整地して軍備を整えた後、ジューンショーンを王位に就ける。トーリが後見役として万事を差配する。ホーデンエーネンの大貴族と戦い、打ち破る。計画はこれだけで充分だ。自分にはそれだけの力量がある。

(あとは、オルフレッドがしっかりしてくれれば……)

 新築の館を眺めながらトーリはつぶやく。問題は期待をかけたいその嫡子が、男の子の夢である立身出世の為の鍛錬よりも、女の子とのいちゃいちゃを好む事だった。


□ □ □ □ □


 オルフレッドは父親のイズヴァルトに、恵まれた体格と武の才能を授られた。ただ、カミラの見立てによると魔法の才も優れているそうだ。魔法戦士としての素質がある。

 世間一般でのものの見方では麒麟児だ。武芸と学問の吸収が速い。騎士にさせる為6歳ごろまでシギサンシュタウフェン家に預けられたが、7歳になってからは3か月ごとに住む場所を変える事にした。

 アスカウとシギサンシュタウフェンを行ったり来たりだ。オルフレッドはルッソに寂しがられていたし、シギサンシュタウフェン公と奥方にも愛されていたからだ。

 オルフレッドはアスカウでは羊の世話をしながら思い切り遊び、シギサンシュタウフェンでは武術を磨いた。でも、彼に剣術を仕込んだ師範は、彼を早々に見切っていた。

「オルフレッド君は天才だけど、大成はしないだろう。才能をきわめるという愚直さが無い」

 まだ幼いオルフレッドをそう断じるのは、気が逸り過ぎではあるが、オルフレッドは武術を学ぶのと同じくらい、村の女の子のちょっかいに熱心に応じた。速い話おちんちんとおまんこのいじりあいっこである。

 オルフレッドは母によく似た美少年だ。それから年齢に比べて立派なおちんちんときんたまの持ち主。4歳の頃に勃起をよくするようになった。水遊びで彼の裸を見ると女の子達は皆びっくり。わあ、おっきい!

 初めての射精はシギサンシュタウフェンの村で為した。7歳の時だ。ある日、館の下男の娘である、世話役の女の子と一緒に風呂に入った。オルフレッドにつけられた侍女の様なものだ。

 娘は容易に勃起し、しかも皮をすぐにめくれるちんこをいじるのが大好きだった。いつもの様にごしごしごし。ううっ、とオルフレッドは悶える。

「き、きもちいいよう……」

 ごしごしごしごし。あら、また硬くなったね。呼びかけてしごき続けているうちに、オルフレッドのペニスが強く脈打った。

「な、なにこれ!」

 オルフレッドが叫び、大量の精液が風呂の床に飛び散った。うわあすごい! 娘はにっこり笑ったまま。

「わあっ……な、なにこれ……」

 お尻を震わせながらオルフレッドが尋ねると、女の子は股を開いてぽっかりと空いた膣を指し示した。今度はこれに挿れるのよ。

 初めての女膣の感触と性交の気持ちよさに、オルフレッドは感激した。その娘の中で何度も何度も果て、女体の素晴らしさを学んだ。

 その娘とは秘密の関係が続いた。娘はオルフレッドの子を宿した後、20歳ほど年上の独身の農夫と結婚した。腹ボテだったので貰い手がなかなかみつからなかったからだ。

 そんなことも知らずにオルフレッドはアスカウに戻ると、女の子達と思い切り遊び惚けた。男友達よりも女友達ばかりだ。とにかく彼はモテにモテた。おおらかですけべな妹のコリアンナが、「女たらし!」と罵るぐらいにである。

 そして彼は2人の『おねえちゃん』と特に仲が良かった。お隣さんのゼーゼマン家のロッテンマイヤーと運送屋の令嬢のハンナ。2人とも15歳でマイヤの同年代の友人。『おまんこぺろぺろ』で女膣を開発された助平者だった。

 トーリはロッテンマイヤーのほうを気に入っていた。お料理が上手いし弟や妹達の面倒見がいいからだ。気もきく。

 対してハンナはおっぱいがばかでかく、色気を武器にするところがあって気に入らなかった。マイヤいわくおまんこのにおいと味でわがままさがよくわかるとか。それから叔父と一緒に寝ているそうだ。性的な意味で。

 オルフレッドはこの2人のおねえちゃんに可愛がられていた。性交こそ致さなかったが弟の様に可愛がられているそうだ。姉さん女房は悪くはないが、精通が始まったオルフレッドが間違いを起こしそうで気が気でならない。

 館がいよいよ完成に近づいたある日。オルフレッドは母と喧嘩をした。自分の将来についてだ。最近はしょっちゅう言い争いが起こる。

 母はいずれオルフレッドを代理としてナントブルグに置きたいと考えていたが、息子は武者なんぞやりたくないと返して大げんかになった。

「トーリ母さん。自分の都合ばっかり押し付けるなよ!」
「私は貴方の適性や将来のことを考えて次の領主になって欲しいの! なんだかんだで貴方も王族衆なのよ!」
「うるさい! 母さんは駄々をこねてナントブルグの王様に会わないじゃないか! 父さんはしょっちゅうお伺いに行くのに、どうしてこの村に引っ込んでばかりなのさ!」
「オルフレッド、私には私のやり方があるのよ! 口だししなさんな!」

 はたから聞くと姉弟げんかである。無理もない。トーリとオルフレッドは13歳しか歳が違わないのだから。

 口喧嘩はトーリが優勢だ。今日はいつも2人をなだめるルッソやシュミット夫妻はいなかった。アスカウの東20キロ先にある交易町のレストランに、自分達の牧場の羊を引き渡しに行っていたからである。

「母さんはいつもいつも! 自分の考えを俺に押し付ける!」

 オルフレッドはそう叫んでトーリにつかみかかった。9歳でもかなりの力の持ち主で武術も学んでいたが、何故かトーリにはかなわなかった。拳や蹴りがことごとくかわされてしまう。

 トーリはオルフレッドを羽交い絞めにした。それを見たコリアンナ達が強くたしなめると、彼女は力を緩めてしまった。

 その隙にオルフレッドは逃げ出した。家を出て行ったオルフレッドを追いかけよう、とコリアンナが言うと、放っておきなさいよ、とトーリはそっけなく返した。

「お母ちゃん。兄ちゃんにはそっけないね!」
「いつものことよ。頭を冷やしたら戻って来るわ。今夜はオルフレッドが好きな羊肉のハンバーグよ。羊肉の香味串もつけてね」
「……それ、お母ちゃんも好きなやつじゃん?」

 トーリとオルフレッドは食べ物の趣味がよく似ていた。羊肉がとても大好き。もちろん、食べられるのは牧場の羊たちだ。

 女の子といちゃいちゃして、おちんちんのいらいらをすっきりして好物を食べれば落ち着くだろう。そう思ってトーリは精魂込めてハンバーグを作った。

 夕方になった。オルフレッドは帰って来なかった。翌朝まで待ったが帰って来たのは東の街で親子水入らずで大沐浴場つきの旅館に泊まったルッソ達だった。

「トーリ。あれ? オルフレッドは?」
「……帰ってこないのよ」

 トーリは事情を説明した。そりゃだめだろうとルッソ達は思った。トーリはどうにもオルフレッドに対して厳し過ぎる。まだ9歳なんだぞ?

 ルッソは外に出て馬に乗った。オルフレッドがどこにいるのかわからないが探してみよう。とりあえずはサキュバス達に声をかける。姿を消して空き家で暮らしていた彼女達に、オルフレッドがどこにいるか見当はつかないかと尋ねた。

「オルフレッド坊ちゃまですか……」
「昼間に宿場のほうに向かいましたが、見かけたのはそれだけですね……」

 彼女達はあくまでトーリの護衛とご用聞きだ。昨日はトーリにオルフレッドの後をつけるように命じられなかったらしい。マイヤがああなったのに抜けているなあ、とルッソは思った。あるいは昼間から精液摂取に励んでいたかもしれない。

 ルッソは彼女達も連れて宿場へと向かった。オルフレッドを見た者はいなかった。彼が息子の姿を見るのは、これから半年の後の事だった。
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