聖騎士イズヴァルトの伝説 外伝 『女王の末裔たち』

CHACOとJAGURA

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第二部 『呪いの序曲。イーガの魔王』 (少年編から青年編の間のエピソード。)

44 聖騎士の目覚めの時①

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 キンキ大陸の南東にある大陸、カントニア。
 
 その南西部サガミニアにはツックイーという名の大森林地帯がある。その中には、白エルフの村がいくつも点在している。一番大きな集落は、ヒラッカ河に一番近いところにあった。

 今日の夕時も白エルフ達が、ヒラッカ河沿いのニンゲンの街から戻ってきた。行商や日雇い仕事、あるいは売春稼業を行っていたのだ。

 その一団の中にニンゲンの男がいた。東のエドニア王国にある漁村、カーマタ村出身の傭兵、マルカス=サダルファス。カントニアではちょっとした有名人。弱武者ばかりのエドニアでは珍しく、魔法も使える豪勇だ。

 彼はこの数カ月、ツックイーのエルフ達の御厄介になっていた。ミナッカミニアの女エルフ達にちょっかいを出し、半殺しにされて故郷に戻った時、彼女達と知り合った。

 彼はこのサガミニアでも傭兵として名が知られていたから、エルフ達の商売の仲介役として重宝された。ニンゲンの社会での通貨や市場の事に詳しいのだ。

 世の中には逆らったら絶対に勝てないエルフをも騙す、豪胆な悪徳商人もいる。この種族はのんきでお人よしが多いから詐欺に会う事も結構ある。

 貧乏人の出自で幼い頃から市井にまみれ、自身も結構騙されてきたマルカスには嗅覚があった。儲け話に割って入り、こいつは駄目だぜとエルフ達に忠告する。その里で一番頼れるニンゲンの男でもあった。

 それと彼はヒラッカ河近くのエルフの村のまとめ役、フィリッパ=ゲーアのお気に入りだ。月の半分は彼女の家で暮らしている。もう半分はフィリッパよりも相思相愛な、クリスタという褐色エルフの女医の住まいにだ。

 クリスタは褐色エルフの中で大柄でちょっと太めだ。しかし愛嬌たっぷりの美人で朗らか。特筆すべきはお腹の肉より遥かに重量感のあるおっぱいだ。測ったら105センチもあった。

 唇も厚ぼったい。エルフというのはツックイーの白肌やカイロネイアの褐色も、相場は薄い唇と決まっている。なのにクリスタは違った。話によると幼い頃から漆を塗って腫れさせたらしい。

 問:なぜ唇を厚くしたの?
 クリスタの答え:おらがその頃につきあってたおっちゃんが、おしゃぶりは唇がぶっといほうが気持ちいいって教えたからずらよ。

 クリスタは恋愛体質だった。女エルフの大体がそうなのだが。しかし他の女と比べて尽くしたがる傾向がある。

 とはいえなかなかに孕まない。今年2304歳になったが、500歳ぐらいからおまんこを毎日しているのに、いまだ子供は出来なかった。

「つらいずら。おらもフィリッパさんみたくマルカスのややこを孕みたいのに」

 クリスタの家兼診療所にて。寝台にあおむけになって寝転がるお腹を少し大きくしたフィリッパに愚痴った。それから印を切り右手を淡い光に満たすと、彼女の下腹に当てた。

「珍しい。男の子になるそうずらな」
「ほうズラか? そりゃたまげた!」

 北のミナッカミニアや北部草原地帯の金色エルフは違うが、南のエルフ達は女が生まれることが多かった。男と女の比率で言えば1対4から1対7。純血種はそんなに多くない。

「おらもあかちゃんが欲しいずらよ……」
「めげてはだめズラ。マルカスとたっくさんおまんこをして、そのふんわりした腹ん中に赤ん坊を仕込んで、産まれたらでっけえおっぺえを含ませてやるズラよ?」

 フィリッパは常日頃、クリスタを羨ましいと思っていた。彼女のシャツからはちきれんばかりに盛り上がる乳房を見てだ。男がデカチンを夢見ると同じように、女もでっかいおっぱいが欲しいのだ。フィリッパは背は175センチと高かったが、胸はぺちゃっとしていた。

「クリスタさんはきっと、ナハリジャーヤの姉妹の血が濃いズラな?」
「あははは。そうかもしれんずら!」

 クリスタの祖母は、シマナミスタンのナハリジャーヤ島に住むエルフである。あの島の女エルフは誰もが乳房が大きい。かつ、エルフという種族の中で最強と名高かった。力を籠めれば背中に鬼の面が浮き上がるぐらいに筋肉質なのだ。

 ところで、とフィリッパは尋ねた。今日はマルカスがこの家で御厄介になる日なのに、未だ戻ってこねえズラ。いつもは一仕事の後、大食いのクリスタの為に料理を作りに飛んで戻るはずなのに。ちょっと遅くねえズラか?

「ああ。それはなあ……」

 クリスタが答えた。今夜は帰ってこないだろう。明日の朝までこの村で別仕事だという。

「なんでズラ?」
「イナンナ先生のところに向かったずらよ。それでわかるかのう?」

 フィリッパはうなずいた。クリスタの医術の師で村の郊外に住むイナンナの家には、長らく治療を受けていたニンゲンの青年がいた。

 3年前にキンキ大陸から連れてこられたその若者は、先月ようやく治療を終えたという。しかし身体は随分とやせ細ってしまった。

 毒を盛られて生死の境目をさまよい、エルフ達によって助けられたイズヴァルトである。


□ □ □ □ □


 夜。そのイナンナの家の前で木刀が打ち合う音が鳴り響いていた。身長190センチほどで、顔にいくつも古傷をつけた禿げ頭で筋肉質の大柄な男が、一歩引いて木刀を正眼に構える。

「病み上がりだっていうのに、なかなかやるなあ?」

 にやりと笑ったこの男こそ、マルカス=サダルファス。数年前まではふさふさだったが、ミナッカミニアで怖い思いをして全部抜けてしまった。

 対するのは背丈は同じ程のがりがりの青年だ。髪は伸ばして肩まで切り揃えている。女顔の美青年だ。

 しかし髪は灰色。顔立ちはとても若いのにもったいなかった。かつては茶色だったそうだが、この3年の闘病で色が変わったらしい。若者は無言で踏み込む。

 痩せて軽くなったのに闘気は凄まじかった。この美青年が病んでいなければ、とっくに1本取られていただろうとマルカスが断じるぐらいに彼は強い。

 ベッドから這い出てきたばかりだというのに圧が激しかった。とにかく素早い。それどころか膂力も。木刀が打ち鳴らされる。強い、とマルカスは恐れた。

「ちっ。やりやがるなイズヴァルトの坊主!」
 
 名を呼ばれた青年が飛び退いた。マルカスが必殺の手で彼の木刀を弾こうとしたからだ。手のうちはもう読んでいるでござるよ、マルカスどの。

 マルカスの必殺の突き。それがかわされてイズヴァルトの一撃を喰らった。マルカスの木刀が手から離れる。一本。しかし鍛錬はそれだけでは終わらない。

 この後は棒や小剣を用いた鍛錬が行われる。マルカスはエドニアでも指折りの猛者だ。しかしこのキンキ大陸から来た若武者にはかなわない。

 30となった彼の年齢もあるだろうが、しかし病気から治ったばかりの若造に勝てないとは。昨日もそうだったし一昨日もそうだ。

「とりあえず休憩にしようぜ、イズヴァルト?」

 呼びかけるとイズヴァルトは姿勢を崩してひざまずいた。荒い呼吸をし始めた。まだ本調子では無かったのだ。

「大丈夫か? 今夜はこのぐらいにしておくか?」
「まだまだでござる……」

 そう呟いてイズヴァルトは昏倒してしまった。マルカスは気を失ったイズヴァルトを軽々と持ち上げ、イナンナの家の中に入れた。

 食堂で書物を読みながら薬の調合をしていたイナンナを見ると、話がちがうじゃねえかと文句を垂れた。

「どうしたズラか?」
「お前さん、イズヴァルトはもう本調子だから夜を徹しての鍛錬もできる、って太鼓判を押してただろ?」

 コイツが強いのは確かだ。しかし持久力が落ちている。これでは『はんぶんエルフ』の改造手術をやってあげた甲斐が無いぞ、と皮肉った。

「……まだ終わってなかったかもズラな」
「はあ? 終わってなかっただと?」
「身体の筋肉やら臓器の細胞が、充分に『はんぶんエルフ』のものになっていないみたいズラ。おかしいズラな……」

 自分の見立てではとっくに、ハーフエルフみたいな肉体を得ているはず。ハーフエルフは毒や病原菌に強く、力もニンゲンごときでは到底勝てぬはずだ。

 なのにマルカスと何度も叩きあってやっと勝ったのは、どうにもいただけない話だ。何を間違ったんズラなあとイナンナは浮世離れした美貌に、とぼけた様子の表情を浮かべた。

「まだなりきれていねえってことでいいだろ。イズヴァルトは寝床に置いとくから。イナンナさんはあいつがいつ治るか調べてみろよ?」
「そうするズラ……」

 こんな結果になってしまえば、自分はもう用事が無い。マルカスはクリスタのところに戻ると言って帰って行った。

 イナンナはイズヴァルトの寝室に入り、ベッドの上に寝かされている彼の横に立った。それかあおもむろに彼が履いていたズボンの紐をほどいて引きずり下ろした。

 30センチもある巨根があった。白い肌にそぐわず黒々としている。しかし陰毛は灰色だ。『はんぶんエルフ』の過酷な治療は、彼の身体を大いに変貌させてしまった。

 それをつかんでしごき始める。段々とペニスに血が集まってきた。激しく動くと気を失うが下半身は元気である。

(こっちは、もう元に戻っているのに。)

 しごきながらイナンナは思う。担がれてから1カ月間はだらりとしたまま。治療が終わった半年前には勃起しだすようになった。

 4カ月前には夢精も起こすようになった。彼はずっと眠っていたが、うわごとでマイヤという娘の名前をよくつぶやき、麻には必ず下着を濡らしていた。

(そうして目覚めた2か月には、自分からしこしこするようになったズラ。でも……。)

 イナンナは充分に勃起したペニスから手を離してスカートをめくった。下着代わりの短い腰履きの紐をほどくと、イズヴァルトの上にまたがった。

 己の秘所にそれを受け入れ、ゆっくりと腰を動かす。これがいけないズラか。イナンナはぐっすりと眠っているイズヴァルトをよく犯していた。こんなにおおきなちんぽが夢精や小便にだけ使われるのが、もったいないと思ったからである。

「んっ……んっ!」

 せわしなく腰を振る。太くてしかも自分の膣と相性が抜群のペニスだ。彼女はすぐに果てた。しかしイズヴァルトはまだ出さない。

(オラの中ですっきりするズラよ。)

 イズヴァルトは眠って表情を動かさぬままだ。イナンナは更に腰を早く振る。彼女はまたもアクメを覚えた。その後に肉棒が激しく脈打った。

「……ふう」

 彼女はまたがっていたペニスを膣から出す。それからお清めのフェラチオを、鈴口から精液が伝っていた太いペニスに施した。

 イズヴァルトが放った精液をいくらかシャーレの中に入れ、顕微鏡で確かめる。常人の5倍はいると思われる精子が活発に泳いでいた。

(なるほどズラ。きんたまはとっくに完成されているズラ。ふうむ……。)

 精虫の数が多い。という事はそっちに治療の成果が集中しているという事だろうか。風呂に入ったイナンナはため息をついた。もう少し投薬量を増やさねば。

 『はんぶんエルフ』の改造手術は今、予後の回復をはかる段階にあった。しかしイズヴァルトの活発な生殖器が、その時間を長引かせていたのに違いない。

(まだまだズラな……)

 熱い湯の中でイナンナは思い出した。目覚めたイズヴァルトが泣きながらせがんでいた。早くマイヤに会いたい。自分は無事だったんだと教えてあげたい。

 イナンナは是非にもそうしたかった。けれども人里離れたツックイーではなかなかキンキ大陸の話が入って来ない。ましてや、拉致されて深い闇の中に閉じ込められた少女の話は、一切耳にしたことが無かった。
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