聖騎士イズヴァルトの伝説 外伝 『女王の末裔たち』

CHACOとJAGURA

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第二部 『呪いの序曲。イーガの魔王』 (少年編から青年編の間のエピソード。)

35 碩学姫の受難⑦

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「先生、私はいつ頃別の病室に移されるんでしょうか?」

 マイヤは医療魔道士に尋ねた。目覚めてから3週間目。そろそろ外の景色を見てみたい。アドルフと面会する以外の時間は眠ってばかりだ。

 ずっと寝ていて身体の筋肉がすっかり衰えてしまったと思ったが、案外そうでもないらしい。この3週間で動かせるところは全て動けるようになった。

 それと身体の調子もいい。咳をしたり熱が出たりそんなこともない。彼女は知らなかった。

 眠らされている間ずっと、アドルフほか目の前の医療魔道士らに犯され、膣に精液を注がれている事に。

 大量の精液を得て淫魔の血が、彼女を健康体にさせていたのだ。

「窓からでいいからお外を見てみたいの」
「もう少しで診断が下ります。それまでお待ちくださいますように」

 別病室に移してもいいと判断が下れば、晴れてマイヤは外の景色が見られる。気を失ってからおおよそ半年以上。すでに4月の中頃だろうとマイヤは思った。

(どこの病院になるのかな。コーヅケーニッヒの街中だから、公園の木には花が咲いているかも。)

 出来れば外に出たかった。アドルフに頼んで車いすで運んでもらい、ロゼと共に春の花を楽しみたかった。

 柔らかな春の日差しを浴びたい。そうすれば生きる活力がもっと湧いて来るだろうとマイヤは信じていた。

 マイヤに外に出てもいいという診断が下ったのは、その1週間後だった。別の病室の移動にはアドルフが立ち会ってくれるという。マイヤは感謝した。

 けれど、下腹のあたりに妙な感覚を覚えだしたのもこの頃だった。ひょっとして妊娠しているかもしれない。

「妊娠ですか? 気のせいでしょう」

 診断した医療魔道士は否定した。医者の診断を信じる事にしたが、この時彼女の腹の中にはアドルフの子供が育っていた。

 そして退院の日。マイヤはだっこひもをつけてもらい、ロゼを抱きながら車いすに乗せてもらった。いよいよ外を見る事ができる。素晴らしい日になるだろう。

「外はまぶしいかもしれませんが、じきに馴れて来る事でしょう」
「マイヤさん。いっぱい栄養をとって、外に出られるようになってくださいね」

 医療魔道士が言い、アドルフが微笑む。扉が開かれた。マイヤは廊下を見てやけに薄暗いなと思った。

 やけにひんやりとしている。空気が冷たい。コーヅケーニッヒはナントブルグよりも暖かいと思っていたし、こんなに冷たい空気が漂っているのは始めてだった。

(……ここは、本当にコーヅケーニッヒなの?)

 でも自分とロゼの面倒を見てくれた医療魔道士達を疑ってはいけない。階段の先に昇降機があった。それに乗せられて上へあがった。

 地上1階。出たのは廊下だった。すぐ近くに窓がある。久しぶりに見る光はまぶしかった。いや、春の日差しにくらべてまぶしさが足りなかった。

「あ……れ……?」

 マイヤにも外の景色が見えた。木々ばかり。他は何もない。アドルフに何か言おうしても声が出なかった。

 それよりも廊下を出てからだ。病院の割には内装が洗練し過ぎている。どこかの貴族のお屋敷のようだ。もしかして寝ているうちにアドルフらが自分の館に連れてきてくれたのか。

「アドルフさん。ここは本当に病院なのですか?」
「病院だよ。確かにね」

 廊下を進むと広間に出た。調度品や絵が飾られている。貴人や富豪の館の玄関ロビーそのものであった。そこでアドルフはこう告げた。

「でも、お前だけの病院であり、同時に俺の屋敷というわけだよ、マイヤ」

 侮蔑の響きが籠った声だった。マイヤは窓の外の景色を見る。コーヅケーニッヒとは思えない光景だった。

 それよりも自分以外に誰も患者の姿が見えないことではっきりとした。

「……だましてたの?」
「ふん。騙したりはしておらんよ」
「どう見ても外は春じゃないわ。ここはどこ?」
「お得意の知的好奇心とやらで調べればいいだろうに」

 賢さがウリのやつがいちいち人に聞くな。小娘が。アドルフが吐き捨てるとマイヤは全身にひりつくような痛みを感じた。

「うぐ……うああうッ!」

 アドルフは念話魔法でマイヤの頭の中で考えている事を読み取っていた。これはきっと魔法に違いない。教えてくれた何もかもが嘘なんだろう。

 痛みに苦しみ呻きながらも、頭の中は考察と分析を続けていた。ただの交尾バカではないらしい。

(それと、小娘の割には精神的に大人びているようだ。言動や嗜好はガキ同然だがな……なるほど。やはり転生人というのはそういうものか。)

 どうやってここから抜け出せられるだろうか。助けになる人は見つかるのだろうか。少ない材料でだが考え始めている。

 とはいえマイヤは機略に富むタイプでは無かった。記憶力のほうで才能を発揮する。得た知識を活かして何かを作ったり成したりする。

(策士や軍師には向かない知恵者か。まあ、俺がもしここで逃げようとするなら……)

 まずは誰かを籠絡というところだが、あいにくここの屋敷の者達は何が一番美味しいのかを存じている。

(お前の様な若い女が使える王手は封じられているのだよ。諦めたまえよ、おしゃぶり姫。)

 ここで俺の子を孕みながら部下たちに乳房を殴られ、ヴァギナを汚される運命にあるのだ。

「マイヤ。大人しく従ってくれたら大事にしてやろう」

 彼女は全身から急に痛みがひいたのに驚いた。アドルフを見上げてきっと睨む。すると再び体中に激痛が駆け巡った。

「うあああっ! あ、あなた!」
「私に歯向かおうとするからだ。マイヤ」

 マイヤは車椅子の上で身をくねらせる。顔はひきつりこめかみに血管が浮いていた。暴れる彼女をアドルフは呼び出した兵士に取り押さえさせた。

「こ、こんなことをしてホーデンエーネンが!」

 そう叫ぶともっと激しい痛みが背中を襲った。怒る事もできなくなって涙を浮かべめそめそと泣くのをアドルフは見て言った。

「もうお前は誰にも助けられる事はない。孤独のまま終わるのだ」

 突然マイヤを襲った痛みは、魔法陣が描かれた羊皮紙によるものだった。マイヤがここまで痛がるのを見て、これほどまで効果があるのかとむしろ感心を覚えてしまっていた。

「うう……イズヴァルト……トーリ……」
「……だから言っただろう。お前はとっくにホーデンエーネンに見捨てられている」
「見捨てられたりなんか、していない」

 それでもマイヤは信じていると返す。そこまで気骨ある奴らであればどれだけ『楽しめた』か。アドルフは残念というか愉快でならなかった。

 この頃、ホーデンエーネン王家はセイン王の体制づくりの為にどうしようもなかった。

 トーリとカミラは新たに2人、コーヅケーニッヒに手下を向かわせたが、誰もマイヤの本当の居場所を見つけ出せずにいたのである。


□ □ □ □ □


 マイヤの『次の病室』。館の2階の北側にあり、窓はベッドの上で腰掛ても外を覗けない様な高い位置にあった。明るい牢獄というわけだ。

 そこには数名の全裸の男たちが待っていた。誰もが筋骨隆々で顔や身体に古傷がある者達だ。

 誰もがやって来たマイヤを見て嬉しそうに顔を崩していた。くさい息を吐きながら無様な肢体となったマイヤに欲情する。

「マイヤ。イズヴァルトが死んだから代わりをちゃんとつけてやった。感謝しろ」
「そのふざけた言い方は何よ?」

 マイヤの背に激痛が走った。泣き叫ぶ彼女にアドルフはこう語った。

「お前の死んだ恋人はたくましい男だったと聞いたからな。というわけで親切な私はお前好みの浮気相手を与えてやろうと思ったわけさ」

 腹の子には危害を加えるなよ、とアドルフは注意をかけた後に、屈強な男どもは車椅子のマイヤを抱えてベッドに飛び込んだ。

 彼等は寝ているマイヤを犯し続けた者達だった。彼女の乳房がどれだけ大きくて柔らかく、ヴァギナの質がいいのかを熟知している。

「やめて。やめて!」

 マイヤは抗う。しかし痛みを感じないのは、アドルフが念じなかったからだ。寝間着が外され、全裸になると彼女はうち1人に抱きつかれた。

「やめてよ! おねがいだよ!」
「ほら。マイヤさま。昨日もあなたさまのあそこを慰めてくれた俺のちんぽを、また今からねじ込んで差し上げますからね?」
「やだ! イズヴァルト! たすけて!」

 男はマイヤの力と重さを失った脚を軽々と広げさせ、極太のそれをねじこんだ。

 マイヤは信じていた。自分の陰裂は始めて相手するこの男のペニスを拒むはずだと。

 強く押し付けられ、陰唇が引き込まれる。そこで押し返すと思いきや、膣奥はそのペニスを奥に届くまですんなりと受け入れてしまった。

 膣はそのペニスをよく存じている。この数ヶ月、数日間に1回はやってきた馴染みだからだ。マイヤは悦を感じてしまい、自分がわからなくなった。

(……どういう事?)

 男のペニスが膣肉を撫で始める。あまりにも慣れていた形に、マイヤは既に抵抗の意思を失ってしまった。

「はうう……あ、あううう……」

 相手のくさい息が顔に吹きかかる。自分の口や胸に亀頭を押し付けるいやな汗の匂いを放つ他の男達。それから生殖器から放たれる強いオスの香り。

(たくさんの……おちんちん……)

 膣をこねられる快楽を受けながら、マイヤは耽溺たんできしたいと思ってしまった。お腹が熱い。それよりも子宮が、身体が、快楽と精液を欲している。

「おおっ。締りがよくなりましたぜ、マイヤさま!」

 男は喜んでいた。更なるペニスとの密着と吸精を求めて締りが強化されたヴァギナを乱暴にこする。

 眠らされていた時よりも目覚めて意志を持った時のほうが、マイヤの身体は性交に適していた。悦楽のせいではにかみ、甘えた声を出す彼女に男たちは欲情した。

 マイヤは身体を桜色に染めながら、最初の男からの激しいピストンと放出を受けた後、次の男とすぐに媾い始めた。

 それが3人4人。入れ替わりが続いてもマイヤはもっと欲しいとねだって甘え続けた。

 アドルフはその一部始終をヒッポタルトと見物し続けた。部下共は腹の赤ん坊に気をつけろといういい付けを忘れ、愛らしく振る舞う女だるまとのセックスに熱中し続けている。

 これで不具の子が出来てしまったらどうするのだ。アドルフは苛立ちを覚えたがそれでもいい、と結論づけた。こんな淫魔の出来損ないみたいな色情狂が生む子など、どうなってしまっても構わない。

(マルティンさえいればいい。他の子は全て道具だ。イーガ王家に役立つ婚姻の為のな。)

 アドルフは快楽で己をごまかすマイヤの姿を見て、これからどう彼女を料理してやろうかと考えた。最終目的は人間廃棄物。文字通りの廃人にしてやる。

「ヒッポタルト。今日はマイヤを抱くのをやめた」
「どうしてです、殿下?」
「たまには休みたいのだよ。この1週間はここには来ない」

 手足を失いながらも胴体と乳房は残り、愛らしい顔から愛欲のため息をつく芋虫娘は可愛く思える。

 大きな男にのしかかられ、頬や首筋によだれをつけながらヴァギナを貫かれる様は、父親が愛しい赤ん坊を慈しむ様にも。

 ただ、アドルフはもっといいものを見たい、味わいたいと思っていた。

「その間、お前達はマイヤを徹底的に感激させてやってくれ……そうだな。麻薬漬けにするのはどうだ?」
「ほほう……あまり進められませんな。お腹の子に差し障りがあるはずでしょうから」

 別に構わんよとアドルフは返した。とにかくこの娘はそもそもイーガ王家にとっては生きてちゃいけない女なのだが、慈悲心があって生かしておいているのだ。

「もし万が一、俺の元からまんまと逃げ出させたりしても……あの小娘が生きていると信じている男の手元に戻っても」
 
 愛らしさとやらはそのままで、もう二度と誰からも愛されそうにもない糞女に仕立て上げてしまえ。

 ヒッポタルトにならできる。マイヤを廃人にする手段を存じている。麻薬の使い方。どうやって中毒にさせるかをだ。
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